2007年7月11日のブログ記事一覧-ミューズの日記
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和声学あれこれ(13)転調 その4 共通和音を利用した転調II型

前回はI型として主和音同士を繋いで同主調や並行調(平行調)に転調する技法を
みてきました。もっとも技法と云っても段落や大きな楽節で完全終止した先行調に
後続調(同主調や並行調)の主和音を繋ぐだけですが。
今回は途中で転調するパターン(II型)をみてみます。
最も基本的なのが共通和音を利用した方法で、転調技術が未発達であった昔から
使われていた方法です。勿論今でも使われています。自然な転調ができるメリットがありますが転調先は限られます。
即ち、先行調と後続調で同一の和音が無いと転調できない訳です。
例えば、ハ長調の下属和音はヘ長調の主和音と同じですので、これにへ長調の
下属和音や属和音を続けて転調します。上記の例題曲でみますと6小節がそうです。
また、ト長調に転調するならハ長調の属和音はト長調の主和音と読み変えてこれに
下属和音や属和音を続けて転調します。例として20小節目から転調が始まりますが、この場合は曲の流れから主調の調的安定感が感じられますので、ハ長調がそのまま最後まで続くとみても良いでしょう。そうすると21小節第3拍は何でしょうか?
22小節のVをト長調のIと読み変えた時のそのV7で、これをVのV(ごのご)といい、一時的転調と云って頻繁に使われる手法です。(18小節めも同じでVIのVと云います。)基本的には、一時的転調は終止を確立せずに元調に戻り、本格的転調は
カデンツの法則に則り完全終止形(T+S+D+T)をとります。
この一時的転調という名称を嫌い、シュテールはauskomponierte Stufe(日本語訳は不祥)という名前を提案しています。転調するつもりのない瞬間的な転調法です。
また、イ短調へ転調する場合の例として11小節目を見て下さい。
さて、元調に戻るにはこの場合同じ方法を使います。
例として9・14・22小節目など。
この短い曲の中でも結構共通和音を使ってあっちこっち調が変わっています。
また、このように同じ和音でも調によって機能や役割(T.S.D.)が違います。
これを機能和声といい、理論として古典期に集大成されました。
では、最後に共通和音をまとめてみましょう。

  A:主要三和音の共通和音の公式(長調の場合)

或る長調の主和音はその属調の下属和音と下属調の属和音と同じ
  〃 の下属和音はその下属調の主和音と同じ
  〃 の属和音はその属調の主和音と同じ

  B:主要三和音の共通和音の公式(短調の場合)

或る短調の主和音はその属調の下属和音と同じ
  〃 の下属和音はその下属調の主和音と同じ
  〃 の属和音の共通和音は無い。(短調の属和音は同主調の属和音の借用の為)

と、以上の事が云えると思います。
時間に余裕のある方は副和音のII,III,VI, についても、また、各調についても調べてみましょう。
次回はちょっと進化して、共通和音を省いていきなり後続調の属和音から入る方法です。転出和音と転入和音の連結方法が問題となります。

                              服部修司





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