消防士 兼 旅人の日記

消防署での出来事、ダラダラした日常生活を綴ります。

硫化水素による自損行為

2008-04-30 01:04:03 | 消防・救急
ここ連日のようにニュースで取り上げられている、硫化水素による自損(自殺)行為。日本全国いたるところで発生しているようです。

私の勤める市でも決して例外ではなく、私自身はこの手の事案に出場していませんが、反対番や他署ではやはりありました。

縊首(いしゅ、首つり)、練炭によるCO中毒に代わる方法として、硫化水素による自損行為が良い表現ではないですが流行りのようです。その点についてのちょっとした私なりの解説を今回の記事にしてみようと思います。


密閉狭隘(きょうあい)区域である薬剤を混合し、硫化水素を発生させる。

確実性が高いことと二次災害を巻き起こすことで、ちょっと厄介なモノです。

この薬剤は容易に手に入るため、(薬剤名については伏せさせて頂きます)インターネットでの情報が急速に広がったらしいのです。そしてそれがニュースになり、連鎖的に毎日どこかでこのようなことが起きています。

そして、このような現場ではほとんどの割合で『硫化水素発生中、近づくな』との意味の張り紙がしてあることも。

濃度が低いうちは、頭痛や吐き気を催したり咳き込む程度ですが、濃度が高ければ致命的中毒~即死。目、気道、肺に強い刺激と炎症が起こります。


先ほども挙げましたが、厄介なのは二次災害を巻き起こすこと。

高知県では周辺住民が100人近くが病院で手当てを受けたとの情報もありますし、避難したと言う方もいたようです。

我々消防職員も、巻き添えをくって病院へ行ったという方もいたほどです。


消防隊は空気呼吸器、救助隊は陽圧式の化学防護服を持っていますが、救急隊には化学防護服も空気呼吸器も無い。

一応防毒マスクなるものは装備品にありますが、それだけで有毒な硫化水素を防ぎきれるかと考えれば、やはり怖いものがあります。私の消防では、硫化水素による自損行為、またはそれが疑われるものは救急隊の他に指揮隊、消防隊、救助隊も出場しています。


硫化水素の特徴は、卵が腐ったような匂いがします。青酸とほぼ同等の毒性があるとも言われています。

もし万が一このような匂いがした場合はうかつに近づかないこと、そして硫黄臭い匂いがすると119番通報して下さい。


目に見えない分、怖い災害です。

もし自分が出場するようなことがあれば、安全管理を徹底しなければいけないと改めて思うのでした。子供も産まれるし、まだまだ死ねませんからね。



明日はお休みです。