紫草(日本ムラサキ)の記

日本ムラサキの紫根は輸入品に頼っています。薬用また、染料として国産紫根の生産普及、流通を期待しています。

ムラサキ種子の発芽抑制物質について

2015-02-14 08:11:18 | ムラサキの栽培
 ムラサキ特集 6
古い文献である。当ブログの奥深くにムラサキ特集1~5までが収録されている。

発芽に関する内容のページがあり参考になろうかと、追加で記載する事にした。ムラサキの種子入手の経緯などの多少の前文と、やや難解な化学物質名の列挙の箇所を省略して抜粋してみた。

「ノート」と題された実験結果内容で、「ムラサキ種に関する小さな発芽実験」としてその検証結果を1月のブロブにアップ済みである。



「植物と自然」2 1978 2月増大号 ムラサキ特集  (ニューサイエンス社)

<ノート>ムラサキ種子の発芽
         藤原敏行(藤原医院院長)


p52から、該当箇所のみ抜粋 アンダーラインはブログ管理者による
 (前14行 略)
われわれが日常栽培している園芸植物、農作物は、その永年の栽培の歴史の間に人類に都合のよい方向に淘汰され、その発芽特性も一斉発芽ものが多い。これに対して野生の樹木雑草類の場合は、一斉発芽することは少なく、多くは次から次へと発芽して、その期間の長いものは数カ年にわたって逐次発芽するもので、この不一斉発芽がまた自然の脅威から、その種族の生存を守ることに好都合であるものと解されている。この不一斉発芽の機序としては後熟、休眠、硬実性、光発芽、発芽抑制物質の存在などが知られている。ムラサキの種子についてこれらの性質についての私の所見を述べてみたい。

(1)後塾と休眠について
栽培期間中の7~8がつの間は毎日スプリンクーラーで撒水栽培している間に枝上で発芽した種子2個を発見した。また採種直後の種子の果皮を取り除いて、湿った濾紙の上に置くと、ただちに発芽生育を開始した。さらに採種直後に種子を十分に水洗すると、採種直後でもよく発芽した。この結果、後熟、休眠は認められないようである。

(2)硬実性について
種皮が水を通さないため胚や胚乳が膨潤せず、したがって発芽しないでいる種子を硬実(Hard seeds)という、これは不発芽の原因が種子にあるためで、植物の種類によって、種子の全部がこの硬実である場合と、透水性の普通種子の中に何割かの割合で、硬実が混在する場合とがある。ムラサキの場合は全部がこの硬い果皮を有するが、また臍部に細孔を有するので透水性はあまり問題とならない。(後4行 略)

(3)光発芽について
十分水洗した種子は明所、暗所のいずれでもよく発芽する。また流水中で水洗を長期間強行すると、太陽光線下で水中でも発芽するので、発芽に対して光線の影響は認められないようである。

(4)発芽抑制物質(germination inhibitor)について
上記(1)(3)の場合はともに種子を十分に水洗した場合であるが、このムラサキの種子をそのまま植木鉢にに播種して、乾燥を防ぐ程度に灌水した場合の発芽率は、30~40%である。十分に種子を水洗して、この発芽抑制物質を除去すると、年中何時でも95%以上の発芽を見ることができる。

この発芽抑制物質についてはボナー、ゴールストン共著の「植物の生理」には次のように説明してある。「グワユールはアメリカ南部やメキシコの砂漠地帯に生える灌木で、ゴムを生産する植物であるが、その種子は、よく湿った濾紙の上に播いておいてもなかなか発芽しない。ところがその種子を水で長時間洗えば、容易に発芽するようになる。それは、種子を包んでいる殻に強力な発芽抑制物質が含まれているためであることが、明らかにされている。その阻害物質は水溶性のもので、種子や殻から水洗によって洗い去られるものであった。(中4行 略)親木から離れた種子が砂漠の土の上に横たわっているところに雨が降っても、少々の雨量では阻害物質が十分に溶かし去られないので発芽が行われないが、種子の発芽後の成長に必要なだけの水分が,十分残るほどの大雨があった時には、阻害物質が溶かし去られて発芽が起こるからである。
(中11行 略)」

 水洗の方法としては、金網にのせて水道水を連続的に注ぐ、眼の粗い布に包んで流水中にひたす、あるいは播種後毎日100mm雨量に相当する灌水を行うなどいずれの方法も有効であるが、その期間は1週間前後を要することを体験している。(後3行 略)
      以上

この文献を基に小さな実験をしてみた。ムラサキの種30粒を使い、15粒ずつに分けて半分を水洗してみた。水洗方法は食器洗い用のスポンジの荒く固い面に挟み揉み、あるいは擦り流水をかけ発芽抑制物質を除去する。発芽抑制物質は見えないので、ナイロンたわし(スリーエム)の硬い面で数回種を擦り水を掛け流しただけである。

結果は文献に近い結果であった。30粒の内最も早く発芽したのは水洗した15粒の方で日毎に発芽が続いた。1週間で半数が発芽する。水洗しない15粒からは1粒が発芽したのみでその後の1週間で1粒の発芽を見るが残り13粒はまだ発芽の兆しは無い。この時点の結果を見て実験セットは解体終了とした。


ムラサキ種子の発芽に関して水洗方法はほとんど知られていないが、かなり効果的であると思われる。1月の検証実験では水洗は短時間で不十分かと思われたが、何もせずにそのままに播いた種と比べたら大きな違いであった。

ムラサキ種子の播種の際には,種が流失しない様に袋に入れるなどの何らかの工夫をして水洗方法を施してから播いてみる事をお薦めしたい。

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厳寒の2月ムラサキの発芽

2015-02-13 19:02:31 | 植物
ムラサキの発芽 2015 如月

この冬最強と言われた寒気に見舞われた2月、留守中の自宅の温室でムラサキは変わりなく発芽したが主が留守の故か少し元気がない。中には逆子も2粒、腹を立てた発芽か・・・すまん!



2/1に播種。ただし奥2列は発根種、手前2列は2粒が発芽、これは普通の種。種を播いて10日間沖縄へ避寒するが沖縄も寒かった。



10日間放ったらかしにされての発芽、発根種とは云え芽は出したが陽も受けられず些か元気が無い。右2列は管理人がいないので寝ている種が多い様だ。湿った砂が重いのかも知れない。



この苗は12月に発芽した越冬ムラサキ、本葉は4~7枚とマチマチだが2ヶ月を過ぎても生育は緩やかである。温室内の設定温度が最高20℃の故であろう。20℃が最低気温とならなければロゼット状態を脱することはできない。この状態で寒さに耐えるが、根の生育は盛んである。



この苗は11/4に発芽して急伸するが10cmで本葉は11枚先端にまとまっている。根元を見ると新しい芽が覗いている。これぞ越冬ムラサキと云えるのかも知れない。畑に移植したいが北信濃の春はまだ遠い。

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ムラサキ種 発芽検証 4

2015-02-13 16:06:23 | 植物
紫草(日本ムラサキ)発芽のコツ(再)

ムラサキの発芽について過去のページを再掲載

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厳寒の冬を(2014)ムラサキの発芽検証で過ごした。
 
播種前の準備として冷温(1~2℃)3週間の保管が、まず問題であった。冷蔵庫の温度は6~7℃で条件とは合わない。日毎に氷を替えての管理は3週間の期間、無理があった。都合の良い事に70cmを越える雪が来た。雪中保管に切り替える事が出来た。3月下旬残雪が消えるとエアークッションで梱包された包みが出てきた。置き忘れていたような贈り物である。



Photo



温室内(設定温度20℃)で1週間ほど保管をしていると、パック内で幾つかの種が発根し始めている。これから種を播く事にする。既に発根しているので発芽することは間違いないのだが。


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問題は種を播く用土である。赤玉土と鹿沼土を発泡スチロールの容器に10cmほど敷き(少しずつ敷いて水を吸わせる)軽く掘り起こして、フカフカな状態にして表面を平らにしてから種を播く列を3cmほどの深さに溝を作る。

その溝に川砂を流し込む(乾いていると上手く溝に入る)。霧吹きスプレーで砂に水分を含ませる。種を置き並べて行くが、あらかじめ種はテッシュペーパーの上に包んで水分を取っておいた方は扱い易い。

種が並び終えたら、スプレーで水分で包み、乾いた砂を浅くかけて種が隠れる程度にして、乾いた砂にスプレーで水分を含ませて、種播きを終える。小石を含む重い砂は良くない。種はあくまで深くならないように砂をかける。5~10mm以内が望ましい。




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種蒔き後4~5日するとドンドンと発芽してくる。温室内気温は20℃設定で最低16~7℃、日中日差しのある時は30℃を越える日もあった。蓋付き発泡スチロールは保温効果抜群で、これは発芽に大変役立ったと思われる。

発根していない種も10日もすれば発芽する。発根種は別畝にすれば良いかも知れない


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発芽に至る最大のコツは、固い殻を如何に割って根を出すかにかかっている。
川砂を使うのは、発根後、殻を帽子のようにして芽を出す際、障害にならない為である。また砂だと根も良く伸びる。
移植の際、苗をいためる事なく作業が出来るなど利点が多い。

2013年は発芽の条件が解らず手探りで、たまたま畑のビニールを掛けた苗床から1列が続々と発芽し、移植も上手くいって100株程を栽培する事が出来た。そこからたくさんの種の収穫となった。

3月下旬2年物の新芽もたくさん確認できた。芽が出ない株も土を取り除いてやると、白い芽が見える。その土は掘るにつれ、ひんやりと冷たかった。

紫草(日本ムラサキ)絶滅危惧植物の自然界での発芽はさておき、小さな温室ではムラサキの苗で一杯である。

         

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