祭りのあと2016
バンドでも室内楽のアンサンブルでもそうだが、楽器の間の関係は完全に平等ではない。
バンドのリズム、グルーブを決めるのは、最も説得力のある演奏ができるメンバーである。
おそらく、こんなことを言っても意味が分からないと思うので、リンクしたライブ映像をよく聴いてみてほしい。
リード・ギターを弾いているのは、元ナンバーガールの田渕ひさ子。とにかく迫力のある力強い演奏で有名なギタリストだ。
彼女の弾くリフに注目してみてほしい。そして、ベースの音と比べてみてほしい。
ベースはかなり入り込んで演奏している。しかし、曲全体のグルーブから見ると、音が少し軽く乗っていることに気が付くはずだ。
例えば、本来ベースが8分音符を連打する場合、それぞれの♪の強さは異なる。そして、コンマ数秒の違いによって、グルーブを強めることになる。
しかし、ここでのベースは、8分音符が少し走っていて、音も軽くなっているのが分かるだろう。
実際のところは、田渕ひさ子が弾くギターのリフが曲のグルーブを作っている。
ドラムとベースのリズムセクションが曲全体を軽くしそうになるところを、田渕のギターがそれを引き留めている。
元ギターの湯浅がいた時は、湯浅は他のメンバーが作るグルーブに乗っかっていた。
リード・ギターなのだからそれでいいのだ。
祭りのあと2015
2015年の演奏と比べてみると、よく分かるだろう。
2016年のライブでは、田渕ひさ子のギターのレベルがあまりにも高いため、逆のことが起きてしまっている。
繰り返しになって申し訳ないが、田渕のギターが実質的なグルーブを決定しているのだ。リード・ギターであるにも関わらず。
どうしてこういうことになかというと、最初のテーゼに戻るが、バンドというのは最も説得力のある演奏ができるメンバーによってリズムが決まるからである。
「説得力」というのは、音の重さ、大きさ、さらには気持ちの良さなど、様々な要素で構成されている。
グルーブは演奏家ひとりひとりのなかにあるが、実はそれぞれに優劣があることも少なくない。
説得力は必ずしも音の数で決まるわけでもない。
例えば、マイルス・デイビスはモードジャズに移行してから、どんどん音数が減っていき、最終的に最小限の音でバンドのグルーブをコントロールしていた。
だから、結局のところ、演奏のレベルの違いということになってしまう。
久しぶりに楽器の上手さ、ということについて考えさせられる恐ろしい映像だった。
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