それでも僕はテレビを見る

社会‐人間‐テレビ‐間主観的構造

エース帰る、ラテン女たち戻る

2012-06-05 21:22:21 | イギリス生活事件簿
エースが実家に帰った。

最近、ちょくちょく帰る。彼には時間があるのだ。

エースは通らねばいけない試験をしくじった。それゆえ、彼はもう一年ここにいるらしい。

エースはその試験の直前とてもナーバスで、結果が発表される日も同じようにナーバスだった。

彼は僕にその試験の結果が良くないとまずいと説明してくれていた。

僕が外から帰ってくると、彼はアジア人の恋人と一緒に楽しそうに部屋にいたので、僕は結果が良かったものと思っていた。

しかし、そうではなかった。



エースがとっているコースは心理学なのだが、それは彼が学部で勉強してきたものではなかった。

心理学は文系のなかでも最も理系に近い分野で、エースの頭の使い方は明らかにそれに向いていない。

それでも彼が心理学をとったのにはおそらく理由があるのだろう。

その正確な理由はもちろん僕には分からない。

が、僕は彼のお父さんのことが関係しているのではないかと思っている。

彼のお父さんは脳の手術で思考回路が少し不思議なことになっているらしい。

エースはそのことをある日、ぼそっと僕に呟いた。

「父さんは突然妙なことを言い出したり、話題が変わったり、感情が変化したりするんだ。面白いだろ?」

エースは軽く笑った。

僕はエースのあの表情をどう言葉にして良いのか分からない。

少し物憂げで、寂しそうで、優しげで、何かをあきらめたようでもあるし、どこか本当に面白がっているようでもあった。

真剣に考えている部分もあれば、真剣に考えることをやめてしまった、という感じもする。

それは僕には理解の範囲を超えている。

バレの従妹のシルビアについて話した時も、エースは同じように「面白いだろ?」と言って軽く笑った。

同じ表情と、同じ言葉だった。



今日、エースが実家(お母さんのところ)に帰るとき、とても嬉しそうだったので、なんだか少し安心した。

エースは最近、とみに疲れているというか、やさぐれている様子だったから。

バレの家族が来たとき、彼にとっては明らかに相当なストレスだった。

知らない人が何人も家にいるのは、結構、人を落ち着かなくさせる。

エースはイライラがかなりのレベルまで来たのか、バレの家族がいる間、ほぼ完全に引きこもってしまった。

結局、バレの家族の面倒を見たのは僕だったわけで、その結果、バレのマンマは僕に謎の好印象を抱いて帰って行ったらしい。



エースが遂に帰るとなれば、この家にいるのは僕ひとり。

寂しいけど、ちょっと嬉しかった。

何が嬉しいって、ギター弾き放題、歌い放題、エースがリビングに置いてくれたオーディオで好きな音楽を大音量でかけ放題だから。

楽しみをとっておこうと思って、研究して、それから少し眠ったら、驚くべきことにラケルとバレが帰ってきた。

僕がひとりだったのは、わずか数時間のことだった。



ラケルと久し振りに会えたのがとても嬉しかった。

ラケルは僕にとって特別な友達だ。

僕はラケルと再会のハグをしっかりして、お互いの近況を報告し合った。

と言っても、それぞれの英語は全く相変わらずで、それこそが我々の友情の限界なのであった。



バレとラケルと夕飯を共にする。

僕はバレがご飯を作るのを手伝う。僕とバレのコンビは噛み合っている。

彼女が材料をフライパンや鍋に入れたら、僕がそれをかき混ぜたり、炒めたりする。

不足していると思われる材料をバレに言って、必要だとなればそれを加える。

バレは料理に関して基本的な知識は入っているのだが、信じられないレベルでガサツなので、僕はその部分だけ補えばいい。

3人でご飯を食べるのは久しぶり。楽しい。



夕食後、ラケルが発表するペーパーの英語の発音をチェックすることに。

自慢じゃないが、僕の英語の発音はひどい。

しかし、ラケルは僕に発音のチェックをしてくれと言う。

ラケルの問題は英語をすべてスペイン語の要領で発音してしまうことなのだった。

彼女の求めに応じ、僕は1時間ほどかけて彼女のペーパーの英語の発音を片っ端から音声つきの辞書片手に直していった。

色々勉強になった。

僕の報告ペーパーもエースにネイティブチェックはしてもらったものの、発音はチェックしてもらっていない。

ちょっと、本番前にでも頼もうかなと思っている。

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