森男の活動報告綴

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第3回ごっつええ感じの銃選手権

2018年06月17日 | イラスト集
個人的に「ええなあ!」と思う銃を、誰にも頼まれないのに絵に描いて、あやふやな知識と思い込みに基づいてその魅力を無責任に紹介するこのシリーズ、今回で晴れて第3回目になります。銃の詳細については、できる限り事実を確認した上で書いていますが、前述の通り私の勝手な思い込みとか「そうであってほしい」的な、デザイナーやメーカーなど当事者の方々にとってはた迷惑以外のなにものでもない願望も少なからず入っています。なので、あくまで参考程度だとお考え下さい。

●ワルサー社試作自動小銃 Walther experimental automatic rifle
ワルサー社が、G43をベースにして突撃銃用の7.92ミリクルツ弾を使うようにした試作銃です。

G43はフルサイズのライフル弾の7.92ミリモーゼル弾(8ミリモーゼル)を使う自動小銃で、セミオートのみの仕様となってますが、この銃はフルオートでも撃てるようになってます。8ミリモーゼル弾は、このクラスのライフル弾のなかでもかなり強力なもので、自動小銃でフルオートにするのはちょっと(かなり?)厳しいみたいです。FG42はフルオートでも撃てますが、緊急時のみとされてたようで、まあそれもそうだろうな、という気がします。FGはかなり高品質の鋼材を使ってたということもあって、可能だったんでしょう。そもそも、MG34や42用の弾丸も薬量を減らしたMG用のものが支給されてましたので、自動小銃でそうするのは押して知るべし、という感じですね。でも、MkbやStgで実証されてる通り、クルツ弾なら多分問題なくフルオートで撃てるんだろうな、と思います。

ワルサー社は、突撃銃の試作をしましたが、ハーネル社のMP43とStg44(この2丁は実質的に同じもの)
に制式銃の座を取られてしまいました。なので「うちはこういうのもできますねん。どないでっか?」と軍にアピールするために作ったのかな?という感じの銃ですね。

セレクターは面白いことに、M2カービンのものと良く似ています。鹵獲されたM2カービンがワルサー社にまわってきたのかな?と思いましたが、時期的にはワルサーが先のようです(M2の採用は44年9月)。そもそも、実績豊富なワルサー社がセミフルのセレクター機構を独自に開発できないわけもなく、たまたま似たものになってしまったようです。

じゃあ、M2がワルサーを真似たのか、というとそれもないでしょうね。試作銃が敵国の手に入るわけもないですしね。こういうのって、ほんとおもしろいですね。シンクロニシティ、というんでしょうか。資料(コンバットマガジンのミリタリー入門No.19)を再読して知ったのですが、M1カービンは、前線の兵器整備部隊が兵士の要求に沿って、フルオートに改造した例もあったそうです。この場合はフルオートオンリーだった可能性が高いとか。ほんと興味深いですねー。

で、この銃は最前線で使うにはStgには負けますけど、後方部隊や国民突撃隊用などにはとてもちょうどいいような感じですね。でも、軍としては「いや、こういうのもあったらいいけど、今ちょっとそんな余裕ないし。Stgをどんどん量産したらいーんじゃね?」となって(そら、そうですわね、、)ボツになったようです。

ドイツ軍に限らず、WW2の制式兵器って「これとこれ、メチャ似てるけど、どっちもいるのか?無駄じゃね?」というものが少なからずありますけど、この銃のように、珍しく軍のまともな感性が働いて(笑)ボツになったのもあるわけです。

でも、この銃はほんといい佇まいをしています。G43は多分かなり反動もきつかったはず(コンバットマガジンの大昔のレポートでも、鋳造のレシーバーは強度的に不安な部分があったと書かれてます。実際、実射中にボルトキャリアーにひび割れが出て、射撃を中止してます)で、その辺が解消されたうえに、フルオートで撃てるというのは案外重宝されたかも、とも。へたすると、G43よりも使い勝手が良かったかも、とすら思います。

あと、木製銃床の銃は「いかにも銃!」という感じがして見栄えがいいので、SKSやM14、M1などのように、パレードなどの式典用に今でも重宝されてます。なのでドイツ軍もこういうタイプの銃を装備していても良かったんじゃないかなーという気もしますが、大きなお世話ですね。その後すぐ負けちゃってパレードどころじゃなくなりましたしね(笑)

●RSC Mle1917
フランスが第一次大戦中に開発・制式化した自動小銃です。

絵にあるように、5連クリップを使います。下部のカバーを開いてクリップを入れます。9万丁くらいが生産され、実戦に投入されました。この時期にこれだけの数の自動小銃を生産・装備したのはかなり凄いですね。自動小銃自体は20世紀初頭から各国が研究開発を進めていましたが、ここまでの数を生産装備したのは当然、世界で初めてです。デザイン的にもとてもエレガント(笑)でシュッとしてます。特にマガジンのカバーの曲線は素晴らしいと思います。さすがおフランス、といった感じです。「フランス、やるじゃん」と思いきや、黎明期の新技術の常でこの銃の性能はもう一つで、泥だらけの塹壕戦では使い物にならなかったとか。

You Tubeの「Forgotten Weapons」で実射映像が見られますが、ほとんど5連射できてなくて、イライラします(笑)銃の機構自体は滑らかで特に問題ないように見えるんですが、どうもクリップの設計に問題があったように見受けられます。弾丸がクリップを抜けるときの抵抗が大きすぎて、作動不良の原因になってるんじゃないかなーと。

なんであれ、どんな理由があろうとも、不完全な銃を持たされた兵士からするとたまらんわけです。「ええかげんにせえよ!!誰やこれ作ったんは!!」とボロカスだったんだろうなあ、という気がします。で、戦後この銃は手動式に改造されてMle1917/35となったそうです。これもこの銃の性能のいまいちさを証明しているわけですね。うーん、ほんと気の毒な銃です、、。

とはいえ、こういう先進的な試みをどんどんやってしまおう、という姿勢はきちんと評価してあげたい気がしますね。フランス軍には、歩兵に自動小銃を大量に装備させて、さらにショーシャのような軽便な機関銃(というよりは突撃銃に近いもの)と組み合わせ、歩兵の火力を増大させようというような思想があったことが伺えます。兵士の火力をとにかく向上させることで、新しい戦術を編み出そうとしてたんだろうな、と。


でも、ショーシャもそうなんですけど、肝心の銃器がいまひとつだと、絵に描いたモチなわけです(笑)詰めが甘かったんでしょうねえ、、。ただ、ショーシャはダメな銃といわれてますけど「Forgotten Weapons」では完璧に作動していてびっくりします。ジャムなどの作動不良はゼロです。多分、きちんと調整すれば問題なく撃てる銃だったんでしょうね。構造上、射撃時にボルトとバレルが動きまくるので姿勢が安定しないようで、ほんと撃ちにくそうではあります(笑)

しかし、この銃はもひとつで終わったのですが、後の世代に貢献しているようです。構造を見ててふと思ったのですが、どうもこの銃はM1ガーランドに影響をあたえてるっぽいです。クリップ式はもちろんそうなのですが、チャージングハンドルとシリンダー、トリガーとシアの関係性がなんかとてもよく似ています。特に、リコイルスプリングが、弾丸へのテンションスプリングを兼ねているところは、ガーランドが「こんな銃見たこともナイヨー」としらをきっても「ウソつけ!こら!パクッただろ!」と問い詰めてもいいんじゃないか(そんなことする義理も権利もないんですが、、)というくらい似てます。

また、弾倉カバーの感じとか、クリップ式の雰囲気は、ソビエトのシモノフ対戦車ライフル(カリ城で次元が使ったやつ)に影響を与えたんじゃないかなーという気がします。

ただ、もっと大元でいうと、Mleとショーシャはどうもブローニング設計のレミントンM8が元らしいです。で、カラシニコフはM1ガーランドとM1カービンに影響を受けてます(カラシニコフ本人がそう語ってます)。カラシニコフのボルトとボルトキャリアー、トリガーとシアの関係性はほんとM1と似ています。巷で言われているように、Stg44がカラシニコフの元になったというのはウソなんじゃないかなーと私は思ってるんですね(カラシニコフも、設計時はStgを見た事がなかった、と言ってます)。構造を比較してみると、アウトライン以外、似ているところが全くないんですよね。実は、M16の方が、構造的にStgにそっくりです。銃って、コピーしたかどうかを見極めるポイントは、アウトラインじゃなくて構造なんですよね。

こんがらがってきましたが(笑)、要するに何であれ、先達はあれこれ試行錯誤して、後進がそれを元にきちんとしたものにしていく、ということなんだろうなと。後進は先達の失敗をしなくて済むわけなので、なんかいいとこどりなんですけど、それもその時だけの話で、後進の後進はもっといいとこどりができるわけです。でも、先達のような未開拓の部分を切り開くドキドキした感じは味わえないんですね。

銃でも自動車でも飛行機でも戦車でも船でも、技術者にとっては1930-40年くらいまでが一番面白かったんだろうな、という気がします。答えがないから、あーだこーだなんだかんだと試行錯誤する余地があった、というか。それ以降はなんか「答えみたいなもの」が出てしまっちゃって、「それに答えるのが技術者の仕事」になってしまって、急につまらなくなったんじゃないかなーと、無責任に思っちゃうんですね、、、。

●MAS1938
フランスが初めて制式化したサブマシンガンです。

かなりコンパクトで、攻撃用というより将校の護身用ないしは警察用みたいな雰囲気です。弾丸も軍用としてはちょっと威力が弱かった上に、フランスが早々に降伏してしまったこともあって、いまいちぱっとせず、ひっそりとガンマニアの記憶に残っています(笑)

ダストカバーが各所にきちんと着いてたり、折りたたみ式の二段式リアサイトなど、サブマシンガンとしてとてもよく考えられてるのですが、MP40やPPsh41などに比べるとかなり華奢なスタイルで、バレルもむき出しなので、野戦でずっと使うのはなんか心もとないような印象です。根本的にサブマシンガンというものをどういう風に運用するのかということをよく考えないまま作っちゃった、という気がします。MP18が最初から完璧なスタイルと構造だったのとは対照的ですね。

でも、おフランスらしいシュッとしたスタイルで実にカッコいいですね。Mle1917やショーシャもそうですし、飛行機や戦車も含めてフランスの兵器のデザインはなんかふわっとした感じがあっていいですよね。一応、ちゃんと作るのは作るんですけど、根本的に戦争をする気があまりないような(笑)イケイケのドイツやソ連とかとは対照的な気がしますね。

●フェデロフM1916 Fedorov Avtomat
帝政ロシアの自動小銃で、9000丁ほどが作られ、実戦で使用されました。

全長が短く全自動射撃もできる、突撃銃のはしりのような銃です。マイナーな銃なんですけど、日本軍の三八式歩兵銃の実包を使用するので結構有名です。ロシアは第一次大戦時、日本から数十万丁単位で三十年式および三八式を輸入して使ってましたので、ライフルの設計時に使用する弾薬の候補となって、めでたく(?)採用されたようです。

三十年式・三八式実包は、ライフル弾の中では口径が小さいので(6・5ミリ)反動も比較的軽い、しかも弾道が低進するのでよく当たる、などなど自動小銃用の弾としては理想的なんだそうです。フェデロフがこの弾に目を付けたのはさすが、というべきでしょう。一方で、ロシア軍の基本的なライフル弾7.62ミリ×54R弾は反動が強い上に、リムド弾(薬莢の縁が飛び出ている、弾薬としては古いタイプ)なので自動銃用としてはかなり不適なんですね。

その後、シモノフやトカレフが54R弾を使う自動小銃を設計しましたが、やっぱりこのリムド弾がネックになって、最終的な信頼性を確保できず、大量配備には至らなかったようです。ドラグノフもそうですけど、セミオートなら信頼性を確保できるけど、フルオートになるとちっと厳しいようですね。シモノフはフルオートモードもありますが、トカレフでなくなってるのは「もう無理だからやめとこか、、。下手なもん作ってシベリア送りは嫌だもんね、、」みたいな流れがあったんでしょう。カラシニコフも、PK機関銃を設計する際、ここをどう処理するのかが大変だったみたいです。リムレス弾ならありえないような「一旦ベルトリンクから弾を抜き出して、再度薬室に装填する」という「なんのこっちゃ」的な機構をキッチリ設計してやり遂げたカラシニコフは凄いなあ、と。

余談ですが、私はグァムでトカレフSVTを撃ったことがあります。たった10発だけでしたが(たまたま射撃場の社長の机の引き出しに10発だけ残ってた)、ジャムもなくて全弾問題なく撃てました。作動も滑らかで、反動もマイルドで、いい銃だったような記憶があります。要するに、リムド弾もきちんと注意して装填してやれば大丈夫なんですけど、どんな兵士がどんな環境でどういう風に装填するのか想定もできないような環境でも、キッチリ役目を果たさないといけないのが「軍用の証」ということなんでしょうね。

閑話休題。で、フェデロフは先のMleと同時期に登場した自動小銃ですが、かなり先進的な発想とコンセプトがあって作られた銃だろうなという気がします。基本的に、フルオートでの射撃が前提であったことが伺えるのが凄いですね。銃身には冷却用の溝が切られ、ハンドガードは金属のプレス製です。装填数も25発と多目です。銃床にはフォアグリップまで付いてます。その後の自動小銃でも、フルオートで撃てるものは多々ありましたが、ここまで「イケイケ」な仕様はちょっと思い当たりません。例えば、M14もフルオートで撃てますが、各所の処理を見るとフルオートを前提にしたようにはちょっと思えず、セミオートが基本で、あくまでもフルオート射撃は補助的な機能だったんだろうな、ということが伺えます。

フェデロフのなかで、どういうコンセプトがあったのか、というのは今となっては推察するしかないのですが、恐らく後世の突撃銃のようなものに近いものがあったのは間違いないんじゃないかな、という気がします。機関銃だけじゃなくて、歩兵一人ひとりの火力を増大して、部隊全体の火力を圧倒的なものにする、というような。

でも、ロシアはフェデロフ登場とほぼ同時期に革命のごたごたがあって、それに巻き込まれて前述のとおり9000丁くらいの生産で終了してしまいました。そういうのがなかったら、もっと生産されて戦場で活躍して、銃器史にきちんと名を刻んでたんじゃないかなーと。そういう意味でも気の毒な銃のような気がします。

で、昔からの日本の書籍ではフェデロフと表記されてたんですが、Wikiではフェドロフとなってますね。これは英語読みみたいです。出来るだけきちんとロシア語を表記するなら、フョードロフとなるんですけど(Wikiでも設計者の表記はこれですね。ややこしいぞ!)、今さら「フョードロフM1916」といわれてもなんのこっちゃ、かもなので(笑)、フェデロフでいくことにしました。

最近、銃の書籍でモーゼルをマウザーと変える動きがありますけど、それもちょっとやだなあと思ってます。昔から日本でそう呼ばれてて、辞書に載ってたりするような外国語はもうそれでいったほうがいいんじゃないかなあ、と。とはいえ結局は「モーゼル」という語感が好きなだけなのかな、という気もします。で、三式戦の20ミリ砲はマウザーって呼ばれてるんですよね(笑)一方、準制式にしたライフルのKar98kや拳銃のC96は「モ式」なんですよ。陸軍、はっきりせいや(笑)あと、オーストリアの「Steyr」は昔からのガンマニアとしてはステアーなんですけど、AFVモデラーと話すときは自動的にシュタイアーって呼んでるし(笑)、ほんと困ったものです。

でも、タイガー戦車は、私は各雑誌にならってティーガー戦車と呼んでます。これはもうカッコいいからそう呼んでるので、無茶苦茶ですね(笑)。この辺の問題はいくら議論を重ねても終わりがないように思いますので、ブログなどでは各自が好きなように表記したらいいんじゃないか、と思ってます。ただ、先に書いたように一般的に影響力のある出版物ではできるだけ慎重にしてほしいなあ、と。昔からの経緯を知っている私たちマニアはともかく、あまり知識のない方が書籍で「マウザー」と目にした際、それが昔からの「モーゼル」と同じものだとは多分気が付かないと思うんですよね。せめて、「マウザー(モーゼル)」と書くべきじゃないかな?と。

まあ、いろいろ書きましたが、拙ブログではティーガーはティーガー、フェデロフはフェデロフ、モーゼルはモーゼル、ステアーは銃のとき、シュタイアーは車両のとき、ということで、とりあえずいきます(笑)

なんか話がずれてしまいましたね。すいませんね。

というわけで今回はお終いです。またイラストをちょこちょこ描いて、それなりに溜まったら第4回をお披露目したいと思っております。最初はすぐネタがなくなるかなー?と心配でしたけど、あれこれ考えてたら、なんぼでもありますね(笑)

参考までに、第1回と第2回のリンクを貼っておきます。よろしければご覧下さい。第1回は6丁、第2回は5丁を紹介してます。でも今回は4丁と、だんだん減ってますが、その辺についてはまあご了承下さい。今後も基本4丁くらいでいこうかな?と考えております(笑)

第1回https://blog.goo.ne.jp/morio1945/e/66fbfdaa4418d6bb6ef1b0e35d448f80

第2回https://blog.goo.ne.jp/morio1945/e/4d24930b6268bca668c2c979b82692fd

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