というわけでくろがね四起の第2回目です。今回はキットや、フィギュアの製作法などを紹介します。
キットについて紹介するといっても、特に何も書く必要はないのです。なぜならば普通に簡単に完成しちゃうので(笑)。
車体裏側やシャーシなどはこんな感じ。一見複雑そうですけどパーツは少ないです。シャーシは車体と一体ですが別パーツのように見える構成となってます。
ところでシャーシってシャシーとも呼びますね。どっちも間違いじゃないそうです。シャシ/シャーシーもあるそうで。これらも間違いじゃないとのこと。語源はフランス語の「châssis(シャシ)」 だそうで、「枠組み」みたいな意味とのこと。なるほど、、。私はずっとシャーシと呼んでて、一時期シャシーが正解と思ってシャシーと表記してたんですけど、シャーシでもいいならシャーシでいこうかな?と思ってます。
なんでシャーシって呼んでたのか考えると、タミヤはじめプラモメーカーのインストではそう表記されてたからなんじゃなかろうか、と。そこでタミヤ初期MMのを改めて確認してみました(暇な奴だな、、)。すると、シャーシなる部品名が初めて出てくるのがウィリスジープ(15番)。これはシャーシ。で、次のロシアフィールドカー(21)はなんとシャシー。しかし次のSASジープ(33)ではシャーシー。以後クォードガントラクター(45)8トンハーフ4連高射砲(50)とシャーシーが続きます(資料・「プラモインストブック」(大日本絵画))。SASジープ以降、表記が統一されたんでしょうね。
というわけで私の仮説は速攻で否定されてしまった、、(笑)。でも、当時私は他のメーカーの自動車とかもよーけ作ってたのでそれらがシャーシだったのかもですね(負けを認めない)。まあ、ほんとどーでもいい話ですね。ちなみに、このくろがね四起のインストの実車解説ではシャーシとなってます。ファインさんはシャーシなのかな?
インストを見てて思い出したので、話がずれるついでにもう一つ書くと、初期MMはパーツの一つ一つの名前をパーツリストで表記してくれてましたよね。んが、ラング(88)以降はランナー図のみとなりパーツ表記が省略されています。子供の頃は「シャーシってこういうところの名前なのか」「これはラジエーターグリル、、、らじえーたーってなに?」などと部品の名前や役割を覚えていったものです。立体を通じてのことなのでとても勉強になったように思います。なので、ちょっと残念ですね。
それはタミヤMMだけじゃなくて、例えばこのくろがね四起のインストもそうですし、他メーカーも同様ですね。まあ非常に手間が掛る割に見返り(?)がないので仕方ないです。でもプラモデルには知育玩具(私がそうだったように)という面もあるので、そういう付加価値を高める手段の一つでもあるんじゃないかと思うんですけどね、、。
おっと例によってまた長い脇道になってしまいました。すいません。思いついたら書かずにいられなくなっちゃうんですよねえ(笑)。
で、シャーシは一体でもいい感じですねえ、という話でしたね。ステアリング部も複雑そうに見えますが、これでたった3パーツです。
そもそもキットのランナーは3枚とあっさりしてます。1枚が足回り、1枚が車体上部、そしてクリアーパーツという構成。パーツ数をできるだけ抑えたことが伺えます。
くろがね四起は、以前は日本軍やレトロカー好きなど一部のマニア以外にはあまり知られていない車両でした。しかしキットの発売の少し前、実車がレストアされました(キットが17年2月、レストアが16年9月頃)。一般向けのニュースとしても取り上げられたので、それまでとは桁違いの知名度となったといっていいでしょう(一時的、なんでしょうけど)。
なのでこのキットは、ニュースで知った人が「お、あれか」と買ってすぐ作れるような、そういうコンセプトで作られたんじゃないかなあ、と。あくまで勝手な想像なんですけど。もちろん全くの未経験者だと簡単には行かないでしょうけど、それでも頑張ったら普通に完成できるだけの配慮がなされているような気がします。前回「プラモの楽しさを味わえるキット」と書きましたけど、それはそういうところからかもし出されているんじゃなかろうか、と。「興味を持った人が気軽に買って、誰でもすぐ作れるプラモ」ってほんといいですよね。
前回も描きましたが、パーツが少ないとはいえ押さえるところはきちんと押さえてますし、基本がしっかりしているのでディテールアップもやりやすいです。
例えばエンジン部は完全に再現はされてなくて、シリンダーもなぜか半分だけ。でも排気管やドライブシャフトの結合はきちんと再現。スタート地点としては十分でしょう。
ここで組み立ての裏技。インストではボディのパーツは左右、後部、ボンネット、ウィンドウ、フロントグリルの6パーツをそれぞれ工程別に、徐々に車体下部に接着していくよう指示されてます。でも、精度がいいのでこの6パーツを事前に一体化することが出来ます。
方法としては車体下部にそれぞれを仮組みの要領で乗せてボディパーツのみを接着すれば、パカッと写真のように外せます。
こうすると、車体内側の塗装や工作がとても楽になります。上部下部の接合部が見えるのはフェンダー基部だけなので、接着は結構後にしても大丈夫で、仕上げ塗装レベルまで進めてもOKです。
もちろん、歪まないように組み立てないといけませんし、上部接着時に下部に接着剤が流れたりすることもあるのでその辺は注意してください。でもほんとこのやり方楽ですよ。
塗装は、インスト通りクレオスの特色の陸軍カーキをベースに、油彩で色調に変化をつけてます。油彩はほんといいですよ。
この写真はウェザリングの直前くらいですね。
改めて見ると、このくらいの状態で小さな木製ベースに置いて、単品に仕上げると素敵かもですね。いつかやってみたいです。
こっちはベテラン車両のピグメントウェザリング前。それでも差が激しすぎる(笑)。ハゲチョロなどはちょっとやりすぎた感じですね。その辺のやりすぎ感をピグメントでのウェザリングでマイルドにしていくわけです。
油彩は、ご覧の通りテカテカしてしまいます。が、乾燥すると落ち着きますしピグメントがツヤを消してくれるのでこの程度なら特に問題はないです。逆に、先のルーキー車両のようにテカテカ感をあえて残したい場合はウェザリングを控えればよいわけです。
幌の破れた感じは、タミヤエポパテ(速硬化型)で表現してます。
破れるところを決めて、キットパーツの裏側からリューターでグリグリと穴を開けます。その穴の周囲に薄くエポパテを貼り付け、硬化状態を見計らってピンセットなどでつまんで引っ張ってやります。するとパテが「みょーん」と薄く伸びて破れたようになります。
エポパテのこういう使い方については、以前紹介してますのでよかったらどうぞ。↓
大きく破れる箇所には、プラ材で内部の骨を再現してやります。でも骨がどういう形状・構造なのかよくわからないので適当にやってます。こういうのはもう雰囲気重視でいいでしょう。
とはいえ、なんでもかんでも雰囲気重視というのは考えものです。決してこの言葉を免罪符にしてはなりません。横着怠惰性作品(おうちゃくたいだせいさくひん・造語)への片道切符です。疑問点があるならばできる限り調べるべきでしょう。
例えば、この窓ガラスの割れ方です。当時の日本の軍用車の窓ガラスがどういうガラスを使っていて、どういう風に割れるのか全くわかりませんでした。
調べられるだけ調べてみましたが、そもそもそういう情報自体がかなり少なくて、結局わかりませんでした。なので、雰囲気重視で作りました(コラー!!!)。
でもいやほんと、まったくわからなかったんです。まさかただの板ガラスではないでしょうけど、逆に現在のように割れると粉々になるような高性能な安全ガラスだったとは思えない。でも製作時点では、日本軍に限らずガラスの割れた軍用車両の写真を見つけることができませんでした。なので、フレームにちょっとだけガラスが残ってるようにしてお茶を濁したのでした。
ちなみにその後、ちょこちょこと写真を集めることができました。どうも、結構現在の安全ガラスに近いようです。例えば銃弾が当たった跡は、穴の周囲は細かく割れ白くなってます。周囲から外れると筋が入りますが板ガラスのように割れ落ちてません(落ちているのもある)。写真は日独米の車両で、どれも同じような性能に見えます。しかし製造法など国によって違ってたのか、そして現在と何がどう違うのかはもちろんわかりません。引き続き情報を集めてみたいと思うんですけど、ニッチ過ぎて難しいかもですね、、。それにしても「当時の車のガラスはどう割れるのかを知りたい」って、客観的にみておかしい(笑)
ベテラン車両のフロントグリルは、前回書いたように裏側をリューターでギリギリまで削りこんで、デザインナイフでスリットを開けています。
キットのモールドがとても精密だったので、ついやりたくなってしまったという(笑)。割れたヘッドライトのレンズは、0.2ミリの透明プラ板を丸く切って表現。
フロントグリルを薄く削るとこんな感じ。光りに当ててグフグフしてるところですね。
この後、スリットをより完全に開けようとして何箇所か折ってしまったというわけです。欲をかいたらアカンですね。でも次やるとしたらもっとうまく出来るんじゃいかなと思ったり思わなかったり。
側面のグリルのスリットも同様に加工しました。ボンネットは浮いている状態なので、内側を削り込んで薄く見えるようにしています。
被弾痕は、これまたエポパテで。銃弾であれ砲弾の破片であれ、当たった面から内側にめくれますので、こういう外側にめくれた表現はリアルではないですね。しかし、下側のようにポツンと穴が開いて凹んでるだけではダイナミックではないのです。これも雰囲気重視です!(もういい加減にしろよ、、)。
フィギュアは3体とも自作です。既製品のパーツを流用しています。ベテラン車両の運転手はゴーグル、マフラーに鉄帽と、前線帰りの印象を強めるようにしてます。
後述しますが、運転手など他の何かに手を置いたり座ったりしているポーズを作るのはほんと難しいです。
こっちはベテラン車両の護衛兵士。要するに護衛が必要なほど危険な地帯を、大事な情報なり書類なりを持って帰っている、といいたいわけですね作者は(倒置法)。
こちらはゴーグルを外して覆面をしたまま。九六式軽機(ドラゴン製)を構えて警戒態勢を崩さないプロ、という感じ。戦闘帽を後ろに回しているのはゴーグルの上げ下げを簡単にするためですが、キャラ作りのためというのもあります。小さな情景ですけどフィギュアでも車両でも、少しでも個性を出すことは大事と思います。
それにしても九六式軽機、ファインさんでパーツ化してくれんもんじゃろか、、。もう何年も何年も同じこと書いとるんじゃが、、。手持ちのドラゴンのはあと2つ、、。新キットのおまけに入れてくれたらそれ目当てに買う人続出するはず(んなわけない)。
でも、たった1パーツ目当てにキット買うって意外とあるんですよね。例えばタミヤのデザートシボレーのルイスってかなりの長期間唯一だったんですよ。しかもよくできてたし。ドイツ砲弾搭載セットの猫も貴重でした。あの猫のおかげで結構売れたんじゃないかと私はにらんでます(笑)。まあ猫はともかく、銃器ってスクラッチが非常に困難なんですね。細かすぎるんです。デジタルでできる(知識がないのでよくわかんないです。できるのかな?)としてもワンオフで作るったって、わざわざやってらんないと思います(笑)。なので今でも十分キットの魅力になりえるはず、なんですがねえ、、。
あー、また脇道にそれてしまった。すいません。これはフィギュアのポーズが大体決まったところ。ヘッド胴体ともどもファインモールドの各キットから。四一式山砲の連隊砲と山砲兵両キットのフィギュアがメインです。
この両キットのフィギュア、それぞれ動きがあって日本兵の改造ベースとしてはピカイチ(死語かな?)です。車内は狭く、どうしても右足が当たってしまうので一端切り離しています。腕、手はエポパテです。手は3体とも何かを持ったり掴んだりしてますのでこういう場合は最初から作ったほうが結局は手っ取り早いですね。
ルーキー車両の運転手です。ちょっと緊張した感じにしたつもり。今から見直すと、腕がぎこちなくて皺も少ないですし、ゴーグルももうちょっと作りこみたかったなあ、と。けど、それは後付けですねえ。その頃なりに頑張ったものですからね。今見ていまいちと思えるだけいいんじゃないかな、と(前向きだな)。次、頑張ります。
襟の階級章はこれまたファインモールドのデカール。ほんと有難いです。で、デカールだけを張るんじゃなくて、エポパテで四角い台を作ってやると立体感が出てよりそれっぽくなります。実物も結構凸ですからね。
上のフィギュアの製作途中のUP。両手で何かを持って、かつ決まった場所にきちんと座るというポーズは本当に難しいです。運転手はその最たるもののひとつ。なぜかというとハンドルがあるからです。ハンドルの位置は絶対に同じですから、ハンドルありきでポーズを決めないとアカンわけです。
コツとしては、腕のないフィギュアを車体にのせ、ハンドルが当たるお腹の辺りにパテを盛り、ハンドルを埋めるように付けます。ハンドルにはメンソレータム(離形剤)を塗っておき、パテ硬化後に外れるようにしておきます。そしてハンドルを付けたまま、腕の位置を決めてしまうわけです。その後、ハンドルを外して造型していきます。
って、うーん、文章ではちとわかりづらいですね。でもまあこんな感じです。そのうちそういうフィギュア製作のあれこれを単独エントリーで紹介してみたいですね。けど、私レベルのモデラーがやっても仕方ない気もしますが(笑)。
護衛兵士のポーズも、運転手の応用です。パテ硬化前に車体に密着させて、硬化後剥がして成型するという。もちろん密着部だけは削らないようにします。そうすると当然ながらフィットするわけです。
簡単そうに書いてますけど、ほんとなかなかうまくいかんですね。割と長いことやってますけど、いまだにフウフウいってますね。でもまあ、どんなことでも同じなんですが、こういうのってほんとトライアンドエラーしかないですね。
ジオラマでは、車両の配置も大事ですが当然フィギュアの配置も気が抜けません。ちょっと置き場所がずれるだけで変になったりします。車両フィギュアのバランスを考えながらちょっとづつ位置を変えつつベスト(と自分が思う)な場所を見つけます。フィギュアも、こういう風に一列になることで緊張感が生まれるんじゃないかと。ちょっとずれるとその感じが壊れるような。
とかとか偉そうに書いてますけど、まあ自己満足ですねえ(笑)。ほんと、絵でもなんでもそうですけど、自分の作ったものって人からどう受け止められるのかなんてわかりませんね。
というわけでお終いです。いやー、長かった。最後まで読んで下さった方、ほんとすいません。こないだのM1の時もそうでしたけど、なんで2回目の方が長くなるんだろう、、。製作法とかになると余談が出てきやすいのかしらん、、。
でもまあ、いいか!(笑)。それにしてもかわいくてカッコイイ車ですね。今の技術で中身だけ変えて発売したらメチャ売れそうです(今の法令にあわせるの難しいでしょうけど)。レストア車も、きびきび動いてほんと素敵でしたよね。機会があったら是非見に行ってみたいです。
あ、最後にひとつ。この情景は月刊ホビージャパン2017年8月号に作例として掲載されたものです。見開き2ページで紹介されていますのでよろしければバックナンバーをご覧になってみて下さい。
記事にも書いたんですが、この車は戦後も警察などで使われました。このキットでそういう時代の平和な情景を作ってみたいですねほんと。
それでは。