森男の活動報告綴

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九六式三号艦戦についての考察(というと偉そうですが、まあそんな感じのこと)

2017年08月26日 | 模型の話題
九六式三号艦戦について、いろいろ新しく思うところがありましたので、その辺を書いてみたいと思います。簡単に説明しますと、三号艦戦は九六式二号一型艦戦の空冷エンジンを、フランスのイスパノスイザ12Xersという液冷エンジンに換装した試作機です。液冷エンジン搭載の戦闘機の試験的な目的で2機が作られたといわれています。しかし、それほどの結果を得ることができず、2機は空冷エンジンに再換装され、前線に配備されました。三号の原図や写真は現在残っていない(どこかに死蔵・秘蔵されている可能性はあります)ため、その正確な姿は現在もよくわかっていません。でも、私はこの機体がとても好きで、ずっと気になってました。以前、1/48で製作しています。上の写真がそれです。

これは最近発売された、チェコの「AVI MODELS」の1/72のキットです。三号艦戦のインジェクションキットとしては世界初ですね。4000円弱とちょっと高いのですが、三号艦戦ファンとしては買わざるを得ませんでした(笑)

中身はこんな感じ。恐らく、簡易インジェクションと思うのですが、とてもキッチリと作られてて、メーカーの誠意のようなものが感じられます。位置合わせのダボがなかったり、キャノピーはバキュームのを切り出すなど、それなりに技量は必要なのですが、ある程度の経験のある方なら問題なく作れると思います。
三号艦戦ファン(世界中に何人いるのか、、)は「買い」ですね。はっきり言って。

箱絵の裏には、想像上のマーキングがあれこれ描かれてて、テンションが上がります。いやー、わかってらっしゃる、という感じ。防眩塗装と迷彩柄がいいですね!

気になる機首はこんな感じ。塗装図自体が「世界の傑作機 27 96式艦上戦闘機」(文林堂)掲載の図面そのままっぽいので、キットもそのままかと。
「世傑」の図面は本当に素敵で、10代のころ初めて見たときに「こ、こんな綺麗な機体があったのか!」と驚愕しました。前述のとおり、その後ずっと気になってまして、1/48で自作しました。その際、あれこれ考察してみたのですが、イスパノスイザエンジンを搭載すると、恐らくこの機首そのままの形状では残念ながらエンジンが納まらないんですね。多分、エンジンのアゴとシリンダーヘッドが、もっと出っ張ってくるんじゃないかなあと。

同じエンジンを積んだキットの胴体パーツを並べてみました。(上から)ドボワチン510(エレール)と、三号、キ12(安芸製作所)です。
こうやってみると、三号がかなり先細りになっているのがわかるかと思います。

安芸製作所のキットはほんと凄くて、レジンキットの最高峰ともいえる完成度です。エンジンも入っていて、これまたものすごい出来です。三号のキットにあてがってみると、機首はまあもうちょっとアゴを出したらいけるかな?という印象。でも、シリンダーヘッドはもっと出っ張ったツノ状にしないと収まらないでしょうね。

これが以前製作した三号艦戦です。ベースはファインモールドの二号一型艦戦です。機首のみ自作してます。
いろいろと幸運が重なって、数年前、月刊ホビージャパンで紹介してもらうことができました。先に書いたとおり、そもそもは「世傑」の側面図がすばらしく、これを立体化してみたい!という思いが最初でした。しかし、立体化にあたっていろいろ考えてみるとあれこれ「?」という箇所が出てきたわけです。

主な疑問点はこの2つです。

1・イスパノスイザエンジンの側面形と、「世傑」図面の側面形が合わない

2・腹部にラジエターを据えると、落下増漕が装着できない

「1」については、先に書いたとおりです。アゴとシリンダーヘッドが収まらないように思います。なので、自分なりに「これくらいなら収まるかなあ?」というラインを想定し、かつ大好きな「世傑」図面の印象を出来るだけ尊重したようなものを目指してみました。

<2019年8月25日追記>
後日、調査の結果、以上のエントリーに書いた機首の形状については「世傑」図面が正しいらしい、という結論に達しています。お詫びの上訂正します。詳しくはこちらをご覧下さい。
<追記終わり>

「2」については、増漕が装着できないのは艦戦としては致命的です。じゃあ、陸軍の一式戦や三式戦のように翼下に増漕を装着するように変更すればいいのかというと、これも難しいんじゃないかと。最初から腹部に増漕を装着する前提で設計していたものを変更するのは大変なはずです。燃料パイプの配管や投下装置など全て新規設計になってしまいますから。ただ、九六艦戦は二号二型から翼下に爆弾(30キロ×2)を搭載するようになりましたから、強度的な問題はなんとかなったのかな?とは思います。しかし、オリジナルの増漕は180リットルもありますので、スペックを維持すると仮定して、翼下に90リットルずつの増漕を下げても大丈夫なのかなあ、とも。

さらに、試作機2機は、エンジンを元の空冷式に戻して戦列に復帰しています。

これもよくわからない点です。腹部にラジエターがあったとすれば、ラジエター周りを下ろしたとしても、腹部自体の外板やら何やらを元に戻さなければならなくなります。換装・復元は大改造の部類に入るんじゃないかと。配管も同様です。ただ、「世傑」では二号一型に戻されたのではなく「二号二型仕様に直され」(P19)とあります。一型と二型は胴体の太さなどが違うのでこれまた「?」です。「仕様」というのは無線機の変更とか爆弾架の装着とか、細かいところを差すのかな?と思わなくもないのですが、これまたよくわかりません。

というわけで、とにかく「?」マークばかりの機体で、頭をかしげかしげしながらの製作になりました。実際に作ってみないとわからないことが多いのが模型の世界ですが、考えれば考えるほど「?」が増えていって、しかもどれも解決しないのにはほんと困りました(笑)

まあでも、実際に立体化してみると本当に格好良くて、自分なりに満足のいく仕上がりになったかな、と。なんだかんだいっても結局はよくわからないことだらけですので、出来るだけカッコよく作ることを心がけました。

九六艦戦は非常に洗練されたデザインだと思います。側面形の尾翼から機首にかけての流れるようなラインは本当に素晴らしいです。しかし、残念ながら直径の大きい空冷エンジンが機首でその美しいラインを阻害しているようにも見えます。逆に、液冷エンジンを装着した場合、そのラインが機首まで「シュッ」と通り、本当に美しくなるように感じます。
立体にすることでそれを改めて実感することができました。「ひょっとすると、堀越氏は九六式に液冷エンジンを搭載したいと思ってたんじゃないかなあ、、」とも。

作例では、試作型と実戦型の2種類を作りました。こちらが実戦型。
主翼下に、7・7ミリ機銃のガンポッドを追加した、という設定です。ラジエターの問題がなかったとしても、武装が機首の20ミリモーターカノンだけ、というのにも疑問があったからです。戦闘機の武装として、口径・威力に関わらず、機銃1丁だけ、というのはあまりにも非現実的ではないかなあと。もしそれが故障してしまえば、戦闘機としての能力がゼロになってしまうわけですから。最低でも機銃は2丁ないとダメだろうな、と。当時の機銃の信頼性を考えるとなおさらです。ノモンハン戦で、日本軍戦闘機のパイロットはトンカチを必ず携帯していたとか。機銃の調子が悪かったら、それでガンガン機銃をたたいて直してたと。モデグラの「大西学園」で、学長がそういう風に書かれてました。昔のテレビじゃあるまいし、と思いますが(笑)、案外そんなものだったんだろうなあ、と。

ただ、三号は液冷エンジン搭載戦闘機のテスト的な意味合いがあって作られたとのことですので、実戦での使用で想定されるような問題はそれほど加味されなかったという可能性もあります。これは増漕、武装ともどもに言えることです。まあ、テストだけのつもりだったなら、以上の私の疑問点はタダのヤカラ、ということになります(笑)

とはいえ、テストとはいえ実戦を全く想定することがなかった、というのもあくまでも仮定の話でありまして、結局は想像に想像を積み重ねるような、あやふやでぼんやりとした「結論」しかでないのでした。というわけで、完成はしたもののあれこれ疑問点は残ったままでした。

その後、中四国AFVの会に訪れたF社のS社長に、この三号艦戦を見ていただく機会があり、当然三号艦戦の話になりました。

その際「ほんとはこれ、ラジエターは機首にあったんじゃないかなあ」とS社長。

そのときは「ふーん」という感じで聞いていたのですが、後であれこれ考えてたら「ほんとにそうだったんじゃないか」という気がしてきました。機銃を除く、前述の疑問点が全て解決されるんですね。

三号艦戦が機首にラジエターのある「アゴつき」だったとすれば、増漕の件と、腹部の改造箇所の件はまったく問題がなくなります。通常型に戻す際も、機首を挿げ替えるだけです。ラジエターも機首につけてしまうと、重心がさらに前にいってしまうのですが、これはバラストを重くすれば解決するはずです。そもそも、液冷エンジンにした段階で、バラストを積んでいたんだろうな、と。ひょっとすると、性能がいまいちだったのはこのバラストのせいもあったのかもしれません。

また、同時期の他の液冷エンジン搭載の制式機は全てアゴつきです(九三重爆、九五戦、九八軽爆など)。後の彗星もアゴ付きです。よくよく考えると腹部にラジエターが付いているのは三式戦くらいなんですよね。設計者(堀越氏かどうかは不明ですが、流れ的に多分そうでしょう)が、発想の起点として「アゴつき」からスタートしても全くおかしくはありません。この点を考えても、「アゴつき」は十分にありうることです。元のドボアチンも、位置は少し後ろですが、アゴといえばアゴに(腹部ともいえなくはない微妙な位置です)ありますしね、、。

三号艦戦の図面は、これまで「世傑」のほかに「日本航空機総集・三菱篇」(出版共同社)や「軍用機メカシリーズ 16 九六艦戦・零観」(光人社)などに掲載されています。「日本ー」の図面はみたことがないのですが、どうも出版時期が一番古く(1960年ごろ)、これが「おおもと」となっているようです。これらの図面では腹部ラジエターとなっているのは、もちろんなにか根拠があるのだろうとは思います。しかし、「日本ー」の図面もどうも実機の原図が元になったわけではないようです(断定はできません。風評での判断です)。なので原図や写真が発見されていない今、ラジエターの位置について断定することはできない、ともいえます。※「日本ー」は現在入手手配中ですので、何かあれば追記したいと思います。

というわけで、これらの書籍の図面は図面として、「アゴつき」タイプも妄想しても面白いかなあ、と思うようになりました。模型はいきなりは無理ですので(笑)、とりあえず絵にしてみました。こんな感じかなあ、と。
同じエンジンを搭載したキ12は、機首前面を被うようにラジエターが付いています。これはこれでアグレッシブな感じがしてとてもカッコいいのですが、エレガントではないです(笑) 三号艦戦はエレガントであって欲しいので、流線型を損なわないよう、出来るだけアゴが小さくなるように考えて描いてみました。ラジエターの空気取り入れ口の面積や全体の容積が、エンジンの出力に対してどれくらい必要なのかは見当も付かないど素人ですので、ほんとこの絵は想像図としてみていただければと思います。

でも、描いてみたら案外シュッとしてて「いいじゃん」と思いました。模型でも絵でも、とりあえず形にしてみるって、大事ですね、ほんと。

で、前述のとおり三号艦戦はテストではいまいちな結果だったそうです。でも、逆に「液冷エンジン、案外いけるじゃん」となって、三号艦戦が発展していたらどうなっていたか、と考えて描いてみたのがこれです。九八式艦上戦闘機です。エンジンはイスパノスイザを発展させた馬力向上型、という設定。
逆ガル翼、密閉風防、引き込み脚、武装は機首の20ミリと、主翼に7・7ミリ機銃を2丁、といった感じでしょうか。まあ、こうやってのびのび妄想するのは楽しいですね(笑)九八艦戦は零戦の8・5掛けくらいの高性能ということにして、九七・九八・九九トリオで、1940年に真珠湾を攻めてたら、、とか(笑)
ラバウル・ガダルカナルでもこんな感じで大活躍!!(平和だなあ、、) この絵もちゃんとカラーで塗りたいですね。

でもまあ九八艦戦はとりあえずおいといて(笑)、アゴつきの三号艦戦は作ってみたいなあと思ってます。幸い、以前製作したときの機首パーツが一組残ってました。右が原型で、左が複製パーツ。複製パーツを原型にして、アゴ付きを作ってみたいと思ってます。
まあでもいつ出来ることやら、という状況なのですが、生温かく(笑)見守っていただければと思います。

こうやって中を空洞にして、左右張り合わせられるようにしてます。軽くするのと、モーターを入れるためですね。

ファインモールドの二号艦戦のキットは、ペラとエンジンがホワイトメタル製です。ホワイトメタルのペラをモーターで回すと、ほんと迫力です。飛んじゃうんじゃないか、というくらいの勢いでブンブン回ります(大げさ)。
これでもか、というくらいピカピカに磨いたので、光りが当たるとほんと素敵です。うーん、カッチョいい、、、。

でも、イスパノスイザエンジンは、実は回転方向が逆なんですね。なのでペラの形状は反転した形状でないとおかしいんです。でも、メタルのペラを回したかったので「こんなんだれも気付かんだろう」と知らんふりしてました(笑) でも、S社長に一発で見抜かれ「逆ですよー」と指摘されました。さ、さすが、、。

というわけで、キットが出たり、新たな視点が加わったりと、「三号艦戦熱」が再発しています。今後何らかの形で進めていけたらいいなあ、と思ってます。示唆をあたえてくださったS社長には、この場をお借りしてお礼申し上げます。

参考までに、三号艦戦製作時の記事がこちらです。考察については重複する箇所もあるのですが、よろしければご覧になってみてください。

(番外※ホビージャパン誌掲載時のお知らせ。)http://blog.goo.ne.jp/morio1945/e/a7a9169bd92c907155c289d4d561da2d

この2作品は、ブログでの完成披露をしてないので、製作法など模型的視点を添えて、また機会があればきちんと紹介したいと思ってます。

それでは。

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また書きたいなーと。

2017年08月13日 | 雑記
ここのところ、いろいろ忙しくてブログもきちんと書けないような感じです。あれこれ準備はしてるんですけどね、、。とはいえUPを休むのもアレなので、簡単に予定してるネタを書いてみます。手抜きですいませんね、、。

義烈空挺隊員のフィギュアは、なかなか進んではいませんが、ちょっとづつやってます。今は一〇〇式機関短銃を塗ってます。


一〇〇式については、いろいろ思うところ(もちろんポジティブな意味で)があるので、単独でもまた書きたいなーと。

最近、日本本土空襲に関係する蔵書をあれこれ再読しました。

なんかとっちらかってとりとめがないのですが(笑)どれも本当に興味深い内容なので、紹介をきちんと書きたいなーと。

シェパード・ペインの作品集を買いました。高かったですが、買ってよかったです。

上の本だけでなく、書評(というと大げさですが)もまた書きたいなーと。

久しぶりに買った模型です。九六式三号艦戦についてはまた新しい考察をしてまして、また書きたいなーと。

こちらもちょっと高かったですが、いいキットです。

これが前作ったやつです。



九九艦爆三三型も、思い出したようにちょこちょこやってます。


でも、キャノピーを開けた状態にしようとしちゃったり留式機銃をいじっちゃったりして、自分で自分の足を引っ張ってます。


ある程度進んだら、また書きたいなーと。

というわけで「予告」というよりも「書く書く詐欺」(笑)みたいな感じですが、ご容赦ください。
次回は何かまとまったテーマで書ければと思ってます。

暑い日が続きます。みなさま何卒ご自愛くださいね。


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