今回はチーフテンMk.11の紹介です。月刊ホビージャパン2016年3月号 と「Hobby Japan next(ホビージャパンネクスト) 英国特集2017」(ホビージャパンムック) に掲載されたものです。
私は基本的にWW2の兵器が好きで、現用兵器の模型は個人的にはほとんど作らないのですが、もちろん興味はあります。でも時間的にも金銭的にもそこまで手を広げちゃうとアウト(笑)なので、こういう風に依頼の形で作らせてもらうのはありがたいですね。
いやほんと、カッチョいいです。現用戦車はWW2のそれとはまたちがうカッチョよさがありますね。ジェット機もそうなんですけど「直球ストレート」的な感じといいますか。WW1・2の兵器って見る人の審美眼とか知識・経験値が問われるというか、紆余曲折を経て初めてそのカッチョよさが分かるところが少なくないのですが、現用兵器ってパッと見でカッチョいいんですよね。いぶし銀の俳優さんと、ジャ●ー●のタレントさんの違いといいますか。でもこう書くとジ●二ーズのタレントさんを低く見てるように思われるかもですが、そういうことじゃなくって、どっちがどう、じゃないんですよね。結果的にカッチョよかったらなんでもいいんですよ!、、って、なんでこんな言い訳みたいなこと一生懸命書いてるんだ俺(笑)でも、本木さんはほんとカッチョいいですよねえ、、。映画「2/26」の公開時、プロモーションでタモリさんの番組に、青年将校の衣装でゲストで出たことがあって、メチャクチャカッコよかったんですよ。チビルかと思いましたよほんと、、って、何の話だ(笑)
閑話休題。キットはストレート組みで、ディテールアップはしていません。
組み立ては特に難しいところはなくて、サクサクと作れました。今のキットって、メーカーに関係なく作るストレスはほぼ無くなりましたね。「合いが悪い」「隙間をパテで埋めて」とかいうフレーズはもう完全に過去の話だなあと。
チーフテンというと、タミヤのMk5のイメージが強いのですが、Mk11は別の戦車に見えますね。砲塔の増加装甲の形状でかなり印象が変わってるように思います。
なんつーか「やったるでぇ!」みたいな凶悪な感じがたまらんです。
WW2の戦車に比べると現用戦車は、あちこちに「謎の装置」や「謎の収納箱」が多いのもいいです。これらはただの物入れなのか、何かはいってるのかもよくわかりませんが「まあなんかいいなあ」と。砲塔左側の「謎の装置」は、熱線視察・射撃装置(TOGS)なんだそうです。しかし、「TOGS」といわれても「あー、そうなんですか、、」とかしかいいようがないくらいの知識レベルなんですね私。
MK11ですから、11回も更新してるわけです。Ⅳ号戦車でいうとK型です。結構な更新です。こういう息の長い車両ってあれ足しこれ足しでゴタゴタしてるのがいいですね。ちなみに、英軍のチーフテンは95年に退役しています。中東では現役で使われてるとか。
さっきから現用現用と書いてますが、戦後の戦車をひと括りに「現用」とはとてももう呼べないですね、、。第一次大戦の菱形戦車のMk1から第二次大戦終了まで約30年。戦後から現在までが約75年ですものね。戦後に登場して、すでに退役している戦車はたくさんありますが、それを現用とは呼べないんですけど、慣習としてついそう呼んでしまうという。なにかこの辺の世代の戦車にピッタリの呼び方がないかなあ、と思うのですがなかなかないです。「戦後戦車」「戦後世代戦車」?ちょっと違うなあ、、。区分しようとするからおかしくなるのかなあ、、飛行機は「レシプロ機」「ジェット機」で分けられるから分かりやすくていいよなあ、、とかとかいらんことを考えてます(笑)
閑話休題(2回目)。塗装は、ラッカーを基本に、油彩で色調に変化を付けて、パステル粉で泥埃を表現してます。単品での発注で、かつ締め切りまで比較的時間の余裕があったので塗装を出来るだけ頑張ってみました。
現用戦車って、例えばⅣ号戦車のようにボロボロになるまで使い込まれることがないのでそんなに汚れてないような印象なのですが、写真をみると案外そうでもなくて、各所はそれなりにヤレたり錆びたりしてます。でも、ウェザリングをやりすぎるとそれっぽくなくなってしまいます。その辺の按配がむずかしいところですね。
錆びるにしても、赤錆じゃなくて、黒い錆にして、エッジはキラッと光るくらいがいいのかな?とかとか考えながら汚していきます。
エッジの光ってる部分は鉛筆を使ってます。
ちょっと汚しすぎかなあ?という感じですが、この辺もまあ好みの問題ですね。
踏み台の滑り止めや、ハッチの端のてかりも鉛筆です。
鉛筆は、ほんといいマテリアルだと思います。そこらへんに転がってるというのがいいです(笑)
砲塔の白い線は塗装です。先に白を吹いてマスキングしてから迷彩色を吹いてます。
この塗装・マーキングは、カナダでの射撃訓練時のものです。イギリスは狭いので、カナダで長距離射撃の訓練をやってるんですね。日本と同じですね。
「10」のマークは塗装じゃなくて、訓練時のみのシール的なもののようです。なのでピッタリと貼らずに、凸凹の部分は浮かしてたりしてます。雨だれによる錆の線や、泥汚れは、どこまでやったらいいのか判断に迷うところです。あまりやりすぎるとそれっぽくなくなってしまいますからね。
ジオラマだともっと激しくやってもいいのですが、単品だとこれくらいが限界かなあ、と、いう「ちょうどいい塩梅」を探り探り進めていくわけです。まあでも、単品としてはちょっとやりすぎかもしれません。が、まあこの辺はほんと好みですね。
泥汚れは、100均の「木粉ねんど」をお湯で溶いたものを塗布して表現。それに油彩の泥色を染みこませて、Migのピグメントで細かいところを仕上げてます。
泥の跳ね飛びはアクリルシンナーで溶いたピグメントを筆につけて、爪楊枝でピッピッとはじいて付けてます。メッチャ原始的な手法ですが、とても効果的なのでお薦めです。
マフラーの汚しもピグメントです。WW2の車両だとマフラーは赤錆でそれっぽくなるのですが、現用だとちょっとやりすぎな感じになりますので難しいところです。とはいえ、そういうさじ加減もあくまで「それっぽい」というところを探る感覚的なものです。WW2の戦車でもマフラーが錆びてない(錆びる前に壊されちゃうとか)車両もあるでしょうし、現用でも赤錆でガビガビの(大きい戦闘がない上に、予算のない軍隊だと交換せずそのまま何年も使われ続けちゃうとか)車両もあるかと思います。結局のところ、実際のところはどうなのか、というよりも、モデラー共通のイメージとしての「あるある」がどの辺なのかを探るのがキモなのかな?という気がします。「リアル」と「リアルっぽい」の違いといいますか。
模型誌をみてても、年代によって「リアルっぽさ」の基準は変わってますよね。一時は「これが最適解だ」と思われてた作風が、ふと気が付くと時代遅れになっちゃってる、で、次に何か別の作風があらわれて、という繰り返しのように思います。それって、作り手、受け手双方の基準が流動的に変わっているということですよね。そういう「今の世間の最適解」を狙うのに主眼を置くのか、「自分なりの最適解」を求めていくのか、っていうのは作り手のスタンスとして大事なことだと思います。
おっと、なんか偉そうなことを書いてしまいました(笑)。まあ、なんであれ自分なりに「とにかくオレはこういうのがカッコいいんだ!」という想いをプラモにぶっこむのが、この趣味の醍醐味なんじゃないかなあ、と個人的には思ってます。
閑話休題(3回目)。単品でも、ところどころに木の枝とか葉を置いてやることで、ジオラマと同じような空気感・存在感を出せるんじゃないかと思ってます。戦車でもダンプでも、大きい車両の角にこういうのが溜まってるので、そういうのを表現するとリアルになるんじゃないかと。
燃料タンクの給油口付近の黒い染みとかも、戦車という機械の表現方法としてはとても効果的じゃないかなーと。とはいえ、燃料が漏れてもここまでこういう風に黒くなるか、というと微妙なところですけど、これも雰囲気優先ですね(笑)
タイトルプレートは、銀色のシールに文字をプリントして透明プラ版を上に置いて真鍮釘で固定したもの。シールは、パソコン用のもので普通に売ってます。模型クラブの仲間のT山氏に教えてもらいました。メチャクチャ簡単で効果的なのでほんとお薦めです。
冒頭でも書きましたが、現用戦車ってほんとカッコイイですね。最近作ったM1A1と並べてみました。こうやって比較してみると、Mk11はロシアの戦車みたいにも見えますね。
しかし、イギリスは昔から今に至るまで、自国の戦車をコツコツと作って「オリジナル」を築き上げてきました。Mk11を見ているとそういう「歴史」をとてもよく感じることができます。「自国の兵器に対する誇り」みたいなものがビンビン伝わってきます。もちろん、アメリカにもありますね。日本にもあります。そういうのが、多分なんかとても大事なことなんだろうな、と。そういうことが、なんとなくでも理解することができるのが模型のいいところだと思います。
というわけでお終いです。あれこれ書きましたが、結局何がいいたかったかというと「カッコイイものはとにかくカッコイイので、褒め称えましょう。そのプラモを作るなら、そのカッコよさを個々の出来る範囲内で再現するように頑張りましょう」ということですね(笑)
いやほんと、この戦車カッチョいいです。
というわけでまた。