当ブログでは、以前から書評もやろうやろうと思っていたのですが、なかなかできていませんでした。でもできないできないと言ってたら、いつまでもできないので、無理からにでもやっていきたいと思います。でも、自分がよかったなーと思った本だけの、超個人的で偏った書評になりますので、あらかじめご了承ください。まあ、酔っ払いが酒場で誰にも聞かれもしないのに、くどくど本を薦めてるようなものだと思っていただければ幸いです(笑)
「風立ちぬ」宮崎駿(大日本絵画)
「幽霊塔」江戸川乱歩 宮崎駿(岩波書店)
あの大傑作映画の原作漫画の単行本がついに出ました。漫画だけではなくて、関連する飛行機模型の作例紹介や宮崎氏とファインモールド社長の鈴木氏との対談、漫画に登場する実機に関するコラムなど盛りだくさん。これで2200円(税別)は安いですね!
また、宮崎氏が解説漫画を描いた江戸川乱歩の「幽霊塔」も出ました。漫画は16ページもあり、ほんと素晴らしい内容です。「幽霊塔」の魅力を解説した漫画と思いきや、実は近代の日本文化論や、欧米と日本の比較文化論、現代のサブカルチャー論にまでに言及した非常に読み応えのあるものとなってます。「私がもし映画化するなら、、、」ということで、ヒーローとヒロインが出会うシーンをシーンを絵コンテに起こしているのも見所ですね!監督、めちゃくちゃやる気やん!という(笑)
「風立ちぬ」にはおまけとして、大昔のモデルグラフィックスに掲載された1Pの「二流機こそわが生命」(1985年6月号)「シトロエン2CVは30年代フランス機の末裔なのである!!」(同10月号)が収録されているのが嬉しいですね。
「二流機」は掲載当時、同誌創刊1周年記念企画の「オリジナル戦闘機コンテスト」が告知されていて、その流れを受けて掲載されたものです(局地戦闘機「漏電」はいつか作りたいです)。「シトロエン」は次のページに松本州平氏によるKPのMB200の作例が掲載されています。前号の9月号のマキシムの広告にこのキットが出ていて、「宮崎駿先生お買い上げ」と書かれてますので、キットを見てテンションが上がってしまって描かれた漫画だということが推察できます(笑)印刷の色調がちょっと違うのもお得な感じですし、そういう文脈を知っているとより興味深く読めますので、興味のある方は初出誌を探してみてはいかがでしょう。
2CVといえば「NAVI・1989年12月号」の「駆けろ2馬力風より疾く」の漫画も傑作ですね。2CVに向ける宮崎氏への愛情が非常によく伝わってきて、さわやかな読後感の残る一作です。これも、何らかの単行本に収録されると嬉しい(切抜きだと状態が悪くなる一方なので)のですが、、、
「親父衆」 大友克洋、寺田克也ほか (集英社)
大友克洋、寺田克也、諸星大二郎、浦沢直樹、江口寿史、上條淳士などなど、もんの凄いメンバーが「オヤジ」をテーマにした作品(1回につき2P)を描いたエッセイ漫画集です。彼らが街で見かけた「イイオヤジ」レポートや、理想のオヤジなど、オヤジの魅力を全力で描いています。最初から最後まで、とにかくオヤジ。なにがあってもオヤジ。すきあらばオヤジ。読み終わったら「オヤジって素敵かも。いや、これからはオヤジの時代だ!」と思ってしまうのは間違いない、危険な本です。この全執筆陣のエネルギーの総和の凄さは、半端ではないですね。
大友氏と寺田氏が、メインの描き手で、たくさん絵が見れるのが嬉しいですね。この2人は絵がうまいだけじゃなくて、ネタのインプットとアウトプットの能力が凄いということがよくわかります。「このオヤジのどこがどう面白いのか。それをどう描くと面白がってもらえるのか」をほんとよく考えてるんだなあと。で、36人の執筆陣のおおとりが池上遼一なのがいいですね!(笑)
TRUK LAGOON トラック諸島 閉じ込められた記憶 古見きゅう (講談社)
トラック諸島で撮影活動をしている写真家の著者が、太平洋戦争中に沈められた日本の船を9年間にわたって丹念に撮影した作品をまとめた写真集です。ご存知の方も多いかと思いますが、トラック諸島は太平洋戦争中、日本海軍の根拠地の一つでした。昭和19年、米軍の空襲により徴用商船33隻、海軍の艦艇7隻が沈没、7000人もの方が犠牲となりました。これらの船は、今も現地の海底に眠っています。戦後遺骨の収集もなされたのですが、まだ多くの遺骨が船内に残されているとのことです。
沈船をくまなく撮影することは、いろいろと危険が多いことは素人の私でもわかります。古見氏は、徐々に腐食し崩壊していく沈船を記録することを「使命」として、撮影を続けられているそうです。その真摯な姿勢は、写真からとてもよく伝わってくるような気がします。
私は、廃墟や破壊・遺棄された兵器、沈没船に興味があり、トラック諸島の沈船だけでなく、戦跡に関する写真集や書籍はいくつも持っています。この本は、アップとロングの写真がバランスよく収められていて、各沈船の様子が把握しやすくなっています。また、船内の写真も鮮明で、記録的価値もかなり高いかと思います。なので、こういう本は本当にありがたいのですが、その前に多くの方の犠牲があったということをよく理解しておかないといけないなあ、と思っています。これは戦争に関係したものだけでなく、タイタニックなどの平時での事故についてもそうですね。
それを承知で書かせてもらいますと、この本はそういう趣味の範疇でも本当に貴重です。船上や船倉内にはいまだ多くの兵器が残されているのですが、ここまで鮮明に撮影された写真を見るのは初めてです。かつ、海中でどのような素材がどんな風に朽ちていくのかが本当によくわかります。タイタニックでもそうですが、やはりタイルや便器、食器などの陶器が一番最後まで(永久に?)残るんですね、、、。航空機運搬船だった富士川丸内には、九六式四号艦戦が残されているのですが(おそらく世界唯一)、その全容がわかる写真は初めて見ました。ミクロネシア連邦の法律で、戦争遺跡の引き揚げは禁じられているそうで、マニア的には惜しいなあ、と正直思ってしまうのですが(笑)、犠牲になられた方々の墓標として、このままひっそりと海の中で朽ち果てていくほうがいいのではないかと思います、、、。
「軍艦島の生活<1952/1970>:住宅学者西山夘三の端島住宅調査レポート」
「昭和の日本のすまい―西山夘三写真アーカイブズから」 (創元社)
先ほど私は「廃墟に興味がある」と書きましたが、もちろん軍艦島(端島)は外せない物件です。昔、ACのCMでガツンとやられた方は多いのではないでしょうか。私ももちろんその一人なのです(笑)。その後、軍艦島に関連する書籍を見ては、片端から目を通していました。社会人になってお金の余裕ができてからは、関連書籍が出ればほぼ必ず買っていたほどです。というとなんか大変そうですが、今みたいにメジャーになる前は、軍艦島の本が出るのはせいぜい数年に一回で、むしろ買い逃すのが無理なほどだったのです(笑)。ほんと、変われば変わるものですねえ、、、。
で、当初は「廃墟の王様」というような位置づけで軍艦島を捉えていたのですが、そのうち「ここに住んでいた人は、どういう生活をしていたのだろうか」という方向に興味がスライドしていきました。そしていろいろ本を読んでいくうちに、正直「廃墟としての軍艦島」はどうでもよくなってしまいました。世界一の人口密度となったこの島が、「採炭」というはっきりしたひとつの目的を持って24時間体制で稼動し、そのために多くの人々(最盛期で5000人)が生活を営んでいたというダイナミズムは、ちょっとほかにはない魅力があります。しかし、「軍艦島の廃墟本」は昔も今もいろいろと出続けているのですが、当時の様子を紹介する本は、それほどではありません。あったとしても、写真がモノクロで、「もしカラー写真が残ってるなら見てみたいなあ」と思っていたのでした。
そこでこの本です。驚愕しました。当時の軍艦島をカラー写真で紹介した本は、おそらくこれが唯一かと思います。カラー写真で見ると、生きているころの軍艦島は本当に魅力的で、活気にあふれる島だったことが伝わってきます。撮影・記録した京大名誉教授の西山夘三氏(故人)は建築・住宅学者で、戦後の日本の一般住宅を全国くまなく調査した方で、その成果の一端は「昭和の日本のすまい―西山夘三写真アーカイブズから」にまとめられています。この本も、ほんと素晴らしい本です。昭和10年ごろから60年ごろまでの日本の一般市民が暮らしていた住宅がどういうものだったのかを、実地調査を元に写真や手書きの俯瞰図(これがまた味があって素敵なのです)などを交えて丹念に紹介しています。戦前のスラム住宅や、終戦直後のバラックやバス住宅、引揚者のための寮までもが調査対象となっており、本土決戦モデラー必携となっております(笑)この本は、5-6年前に買ったのですが、軍艦島もカラー写真込みの2Pで紹介されており、それも大きな購入動機でした。今から考えると、この写真が「軍艦島の生活」の調査時の写真だったんですね。
で、この本が絶版かどうか調べるためにさっきア●●ンで検索したら、75000円からになってました(!!)。あー、もうそういうのはやめてほしいなあ、、、。とても素晴らしい本なので、版元さんには頑張って再販してもらって、そういうのを駆逐しちゃってほしいと思います。ほんと。でもまあ個人的には、買っといてよかった!!というのが正直なところではあります。買ったとき、決して安くはなかったので(税抜き4700円)ほんと悩んだんですよ(笑)
というわけでまた。
「風立ちぬ」宮崎駿(大日本絵画)
「幽霊塔」江戸川乱歩 宮崎駿(岩波書店)
あの大傑作映画の原作漫画の単行本がついに出ました。漫画だけではなくて、関連する飛行機模型の作例紹介や宮崎氏とファインモールド社長の鈴木氏との対談、漫画に登場する実機に関するコラムなど盛りだくさん。これで2200円(税別)は安いですね!
また、宮崎氏が解説漫画を描いた江戸川乱歩の「幽霊塔」も出ました。漫画は16ページもあり、ほんと素晴らしい内容です。「幽霊塔」の魅力を解説した漫画と思いきや、実は近代の日本文化論や、欧米と日本の比較文化論、現代のサブカルチャー論にまでに言及した非常に読み応えのあるものとなってます。「私がもし映画化するなら、、、」ということで、ヒーローとヒロインが出会うシーンをシーンを絵コンテに起こしているのも見所ですね!監督、めちゃくちゃやる気やん!という(笑)
「風立ちぬ」にはおまけとして、大昔のモデルグラフィックスに掲載された1Pの「二流機こそわが生命」(1985年6月号)「シトロエン2CVは30年代フランス機の末裔なのである!!」(同10月号)が収録されているのが嬉しいですね。
「二流機」は掲載当時、同誌創刊1周年記念企画の「オリジナル戦闘機コンテスト」が告知されていて、その流れを受けて掲載されたものです(局地戦闘機「漏電」はいつか作りたいです)。「シトロエン」は次のページに松本州平氏によるKPのMB200の作例が掲載されています。前号の9月号のマキシムの広告にこのキットが出ていて、「宮崎駿先生お買い上げ」と書かれてますので、キットを見てテンションが上がってしまって描かれた漫画だということが推察できます(笑)印刷の色調がちょっと違うのもお得な感じですし、そういう文脈を知っているとより興味深く読めますので、興味のある方は初出誌を探してみてはいかがでしょう。
2CVといえば「NAVI・1989年12月号」の「駆けろ2馬力風より疾く」の漫画も傑作ですね。2CVに向ける宮崎氏への愛情が非常によく伝わってきて、さわやかな読後感の残る一作です。これも、何らかの単行本に収録されると嬉しい(切抜きだと状態が悪くなる一方なので)のですが、、、
「親父衆」 大友克洋、寺田克也ほか (集英社)
大友克洋、寺田克也、諸星大二郎、浦沢直樹、江口寿史、上條淳士などなど、もんの凄いメンバーが「オヤジ」をテーマにした作品(1回につき2P)を描いたエッセイ漫画集です。彼らが街で見かけた「イイオヤジ」レポートや、理想のオヤジなど、オヤジの魅力を全力で描いています。最初から最後まで、とにかくオヤジ。なにがあってもオヤジ。すきあらばオヤジ。読み終わったら「オヤジって素敵かも。いや、これからはオヤジの時代だ!」と思ってしまうのは間違いない、危険な本です。この全執筆陣のエネルギーの総和の凄さは、半端ではないですね。
大友氏と寺田氏が、メインの描き手で、たくさん絵が見れるのが嬉しいですね。この2人は絵がうまいだけじゃなくて、ネタのインプットとアウトプットの能力が凄いということがよくわかります。「このオヤジのどこがどう面白いのか。それをどう描くと面白がってもらえるのか」をほんとよく考えてるんだなあと。で、36人の執筆陣のおおとりが池上遼一なのがいいですね!(笑)
TRUK LAGOON トラック諸島 閉じ込められた記憶 古見きゅう (講談社)
トラック諸島で撮影活動をしている写真家の著者が、太平洋戦争中に沈められた日本の船を9年間にわたって丹念に撮影した作品をまとめた写真集です。ご存知の方も多いかと思いますが、トラック諸島は太平洋戦争中、日本海軍の根拠地の一つでした。昭和19年、米軍の空襲により徴用商船33隻、海軍の艦艇7隻が沈没、7000人もの方が犠牲となりました。これらの船は、今も現地の海底に眠っています。戦後遺骨の収集もなされたのですが、まだ多くの遺骨が船内に残されているとのことです。
沈船をくまなく撮影することは、いろいろと危険が多いことは素人の私でもわかります。古見氏は、徐々に腐食し崩壊していく沈船を記録することを「使命」として、撮影を続けられているそうです。その真摯な姿勢は、写真からとてもよく伝わってくるような気がします。
私は、廃墟や破壊・遺棄された兵器、沈没船に興味があり、トラック諸島の沈船だけでなく、戦跡に関する写真集や書籍はいくつも持っています。この本は、アップとロングの写真がバランスよく収められていて、各沈船の様子が把握しやすくなっています。また、船内の写真も鮮明で、記録的価値もかなり高いかと思います。なので、こういう本は本当にありがたいのですが、その前に多くの方の犠牲があったということをよく理解しておかないといけないなあ、と思っています。これは戦争に関係したものだけでなく、タイタニックなどの平時での事故についてもそうですね。
それを承知で書かせてもらいますと、この本はそういう趣味の範疇でも本当に貴重です。船上や船倉内にはいまだ多くの兵器が残されているのですが、ここまで鮮明に撮影された写真を見るのは初めてです。かつ、海中でどのような素材がどんな風に朽ちていくのかが本当によくわかります。タイタニックでもそうですが、やはりタイルや便器、食器などの陶器が一番最後まで(永久に?)残るんですね、、、。航空機運搬船だった富士川丸内には、九六式四号艦戦が残されているのですが(おそらく世界唯一)、その全容がわかる写真は初めて見ました。ミクロネシア連邦の法律で、戦争遺跡の引き揚げは禁じられているそうで、マニア的には惜しいなあ、と正直思ってしまうのですが(笑)、犠牲になられた方々の墓標として、このままひっそりと海の中で朽ち果てていくほうがいいのではないかと思います、、、。
「軍艦島の生活<1952/1970>:住宅学者西山夘三の端島住宅調査レポート」
「昭和の日本のすまい―西山夘三写真アーカイブズから」 (創元社)
先ほど私は「廃墟に興味がある」と書きましたが、もちろん軍艦島(端島)は外せない物件です。昔、ACのCMでガツンとやられた方は多いのではないでしょうか。私ももちろんその一人なのです(笑)。その後、軍艦島に関連する書籍を見ては、片端から目を通していました。社会人になってお金の余裕ができてからは、関連書籍が出ればほぼ必ず買っていたほどです。というとなんか大変そうですが、今みたいにメジャーになる前は、軍艦島の本が出るのはせいぜい数年に一回で、むしろ買い逃すのが無理なほどだったのです(笑)。ほんと、変われば変わるものですねえ、、、。
で、当初は「廃墟の王様」というような位置づけで軍艦島を捉えていたのですが、そのうち「ここに住んでいた人は、どういう生活をしていたのだろうか」という方向に興味がスライドしていきました。そしていろいろ本を読んでいくうちに、正直「廃墟としての軍艦島」はどうでもよくなってしまいました。世界一の人口密度となったこの島が、「採炭」というはっきりしたひとつの目的を持って24時間体制で稼動し、そのために多くの人々(最盛期で5000人)が生活を営んでいたというダイナミズムは、ちょっとほかにはない魅力があります。しかし、「軍艦島の廃墟本」は昔も今もいろいろと出続けているのですが、当時の様子を紹介する本は、それほどではありません。あったとしても、写真がモノクロで、「もしカラー写真が残ってるなら見てみたいなあ」と思っていたのでした。
そこでこの本です。驚愕しました。当時の軍艦島をカラー写真で紹介した本は、おそらくこれが唯一かと思います。カラー写真で見ると、生きているころの軍艦島は本当に魅力的で、活気にあふれる島だったことが伝わってきます。撮影・記録した京大名誉教授の西山夘三氏(故人)は建築・住宅学者で、戦後の日本の一般住宅を全国くまなく調査した方で、その成果の一端は「昭和の日本のすまい―西山夘三写真アーカイブズから」にまとめられています。この本も、ほんと素晴らしい本です。昭和10年ごろから60年ごろまでの日本の一般市民が暮らしていた住宅がどういうものだったのかを、実地調査を元に写真や手書きの俯瞰図(これがまた味があって素敵なのです)などを交えて丹念に紹介しています。戦前のスラム住宅や、終戦直後のバラックやバス住宅、引揚者のための寮までもが調査対象となっており、本土決戦モデラー必携となっております(笑)この本は、5-6年前に買ったのですが、軍艦島もカラー写真込みの2Pで紹介されており、それも大きな購入動機でした。今から考えると、この写真が「軍艦島の生活」の調査時の写真だったんですね。
で、この本が絶版かどうか調べるためにさっきア●●ンで検索したら、75000円からになってました(!!)。あー、もうそういうのはやめてほしいなあ、、、。とても素晴らしい本なので、版元さんには頑張って再販してもらって、そういうのを駆逐しちゃってほしいと思います。ほんと。でもまあ個人的には、買っといてよかった!!というのが正直なところではあります。買ったとき、決して安くはなかったので(税抜き4700円)ほんと悩んだんですよ(笑)
というわけでまた。