東大名誉教授で小児神経学の大家、鴨下重彦先生が11月10日にご逝去されました。
その後、1週間近く過ぎて新聞で訃報記事を読んだと数人の友人が教えてくれました。
もう40年近く前になります。ぼくが現国立国際医療研究センター病院での臨床研修を終え、膠原病の研修を続けながら、将来悩みつつ、東京周辺の私立大学で勉強を続けようと決めたのちに、鴨下先生から「自治医大へ行かないか」と誘われたのでした。
つまり、自治医大に行くことになり、やがて地域医療に目を向けるようになるきっかけを与えてくれたのが鴨下先生で、今日在るは先生のおかげ、人生の岐路で的確にお声をかけていただいたのでした。
37歳で自治医大の小児科教授に就任されて先生は、ぼくに小児科を勧めてくださいました。ぼくは3年間内科を研修し、内科での課題、がん患者へのターミナルケアや心身医学を捨てがたく、小児科転向を断りましたが、自治医大がへき地医療教育を掲げていたことに共鳴し、血液疾患の内科教授であった高久史麿先生(自治医大学長)を紹介してもらったのでした。
神保町の書店で先生が編著者を務められた『矢内原忠雄』(東京大学出版会)を手にしました。東大総長を務められた矢内原先生の生涯を鴨下先生が書かれています。この本の発行は11月3日。おそらく鴨下先生の遺言と受けとめてよいでしょう。
鴨下先生のお別れの会は12月4日午後2時から国際基督教大学礼拝堂で行われます。
遺言とは「何よりも心理を愛し、正義と平和のために生涯をかけて戦った矢内原忠雄先生の信仰と思想が、若い人々に受け継がれて21世紀の難問解決に力を発揮していくことは心からなる願いである」 でしょうか。