旅芸い者放浪記

前沢政次 ブログ

それは妄想でなく 大切な想い出

2016-06-16 00:16:49 | 診療
最近カネ取られ妄想が、強くなった人の療養相談に特養へ行きました。

きちんとノートをつけていて360万円の残金が記されています。

お金が無くなったと、すごい剣幕で怒ったり、介護を拒否するようになってしまっていました。

まずはクスリの副作用を考慮し、危ない薬はきょうから中止です。

カンファレンスのあと、本人にお話を聴くことにしました。

「おじいさんと一緒に働いて貯めた大切なお金が温まれちゃったの。盗んだ人はいい思いしてるね。きっと」

「そうだねえ。もしかしたら海外旅行に行ってるかな」

「おじいさんはいい人だったよ。お酒もたばこもやらないで働いた。私も一緒に病院で働いた。」

「やああ、ふたり倖せだったねえ」

「うん。おじいさんは真面目な人でねえ。ふたりでお金貯めたんだ。今も、年金少しずつ」

何度も何度もおじいさんの話するうちに、顔もほころんできます。

なんだか盗まれたはずのお金のこと忘れて、おじいさんの想い出でこころがいっぱいに満たされて大満足。

ぼくも胸がいっぱいになった。こんなに想われて、ご主人倖せだろうな。いま天国で。