これは「ノン・フィクション」?と、思わせるほど巧みな構成になっている小説だ。
前段が、漆原医師の遺稿で、後段がその遺稿の出版社の編集部注として、矢倉俊太郎が前段遺稿の裏付け取材をしている。
何と奥付まであって、二人の共著となっていて発行所は山月館となっている。
廃用身とは、麻痺して利かなくなった身体の部分をいう医学用語。
漆原医師はその部分(手足)を切断する(Aケア)ことによって、本人は前向きに生きられ、介護関係者の負担も軽くなることに注目して、13人に実施する。
結果は見込み通り成功だったが、最初の患者(両脚と片腕切断)が数年後に自宅で妻と息子を殺して自殺を遂げる。
マスコミでAケアの賛否が沸騰することになって、医師は自殺に追い込まれ、妻子も後追い心中(息子は奇跡的に助かる)を遂げる。
著者のデビュー作だが、衝撃的な作品だ。後続の「破裂」「無痛」と共に、とても印象的な本だ。
この本、途中まではドキュメンタリーではないかと思ってしまいました。すっかり騙されたのです。
なかなか面白い趣向の本でした。