上海旅行に行った母が帰ってこないという高2の真矢、それにスオンさん、アキラ君の3人に対して、仙台から電車に乗ったクニタは「80年前に出来た理想郷の唯腕村に行き、自分たちも入れてもらって、今の嵐をじっとやり過ごす」と言った。
ここを読みながら、唯腕村とは武者小路実篤の「新しき村」(埼玉県入間郡毛呂山町)がモデル?と思いながら読み進み、巻末の原武史氏の解説で、著者は新しき村を訪れたのが本書の動機になったと言っている。因みにポリティコンとは、アリストテレスの「政治学」に出てくるゾーン・ポリティコン、つまり古代ギリシャのような小さな共同体をこの日本に築くことは出来るかという含意があるという(同解説)。
結局クニタたちは受け入れられて、生活することは出来たが多くの困難・問題に翻弄されることになる。真矢の母親やクニタは脱北者の支援活動をしていたことが分かってきたり、村自体の問題点が露わになり様々な事件も起こる。同じ著者による他の作品(「柔らかな頬」「グロテスク」「残虐記」「魂燃え」「東京島」「ナニカアル」…)同様、面白いし考えさせられる。
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