昨夜、NHKテレビで『追跡!復興予算19兆円』を見た。東日本大震災の復興に向けて、各省が提案し承認された事業である。NHKといえば報道の自由はあるとはいえ、常に政治家からクレームを受け、総務省の管轄下にある。そのNHKがよく作ったなと思った。でも逆に、官僚は報道されることを見越して、「反対意見はあるのが当然だが、私たちは皆さんのように狭い視野ではなく、10年20年、いやもっと先の国づくりを見据えているのですよ」と言っているように思った。
実際、私は国会議員の秘書をしていた時、まだ若い30代くらいの役人から法案の説明を聞いたり、私が疑問に思っていることをぶつけてみて、彼らがよく勉強しているとを感じた。いや、そればかりではなく、彼らは自分たちが国づくりをしているのだという自信と自負に溢れていた。その彼らの立案する政策を国会は承認する場なのだと言わんばかりだった。日曜日の大河ドラマ『平清盛』で、貴族の犬だった武士である清盛が、「新しい世をつくる」と何度も口にする。その前の『坂本竜馬』も全く同じで、徳川幕府に代わる「新しい世をつくる」ドラマだった。
NHKが民主党政権の誕生を期待していたのか、それとも平家が源氏に敗れて武家政治が始まることを暗示しているのか。権力が代わることはあっても、政治を実行している官僚は変わらないことを伝えているのか。歴史は表舞台に立つ、権力者によってつくられているように見えるけれど、本当は政治を支えている官僚によってつくられているのかも知れない。
さて、『追跡!復興予算19兆円』では、岐阜県関市のコンタクトレンズ会社に復興予算が使われているという。えっ?何で?と思う、こんな事例がいっぱい出てくる。外務省の事業では、海外から高校生を招いて日本の各地を見てもらう事業に予算が付いていた。国土交通省の事業では沖縄県の海岸沿いの道路工事事業が上げられていた。どうして東北3県ではないところで、復興予算が使われるのかと思うけれど、官僚は目先ではなく日本そのものの復興にあると言いたげだった。
せっかく予算を計上するのだから、普通ならば実行できないような事業に予算を付けられる絶好の機会ということなのだ。文部省は国立競技場の改修に、国家公安委員会はテロ防止に、復興予算を付けているのもその例だと思う。なんだか先に読んだ『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』の中に出てくる「臨時軍事費」に似ている。震災復興の予算となれば誰も反対しない。しかもそれで、10年20年先の日本の景気がよくなるのだ(と、思い込んでいる)。何も分からない、先の読めない政治家や国民がぶつぶつ言っても、言わせておけばいい。そんな思いで官僚たちは、この報道特集を見ていたことだろう。
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