実務家弁護士の法解釈のギモン

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判例は形式的表示説?(5)

2016-07-08 10:27:58 | 民事訴訟法
 以上のように考えて見ると、これから訴訟を進行させる上で誰を当事者とすべきかという行為規範と、一定程度訴訟が進行した後に遡って当該訴訟の真の当事者は誰だったかという評価規範を分けて考えるという規範分類説のいうことにも、意味があるようにも思うのである。
 ただ、規範分類説を唱えている学者の考え方は、例えば氏名冒用訴訟における評価規範としては冒用者を当事者と見て冒用者と相手方との間で判決主文の効力を生じさせるなど、あまりにもドラスティックに見える。そのため、なかなか実務では取り入れにくいのであろう。

 しかし、実質的表示説も、結局のところは、訴訟進行中や判決確定後に当事者確定の問題が生じた時に、これまで進行してきた訴訟状態を踏まえた上でもう一回訴状を見直して、実は真の当事者は形式的に当事者と記載されたものではなく請求の趣旨、原因も踏まえた場合には別人と理解することも可能な訴状であって、そのような人物を当初から訴訟当事者だったとみなして扱うことが、これまでの訴訟進行状態(特に手続保障の観点)からして妥当か否かということを考え、妥当であれば、当初からその別人を訴訟当事者だったと扱ってしまうという、事後評価を行うことを当然の前提にしているのではないだろうか。

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