実務家弁護士の法解釈のギモン

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訴え取り下げ合意の法的性質(3)

2016-11-24 09:45:40 | 民事訴訟法
 判例が訴訟行為説を採らない理由は、単純に任意訴訟の禁止という大命題を前提としているからだと言えるだろう。現実問題として、訴え取り下げの方式は、裁判所に対する訴訟行為として行われる。訴えの取下げは、法律上はあくまでも原告の裁判所に対する訴訟行為として規定されている以上、判例は当事者の合意のみで訴訟係属の遡及的消滅を導くことを認めないし、だからといって、訴訟行為説を採る学説からしても、合意に基づいた取り下げ行為があった場合と、取り下げ行為がなくても訴訟は終了するという場合とを合わせた理屈として、スマートな説明ができずにいるのではないかと思うのである。

 もっとも、任意訴訟の禁止という大命題があると言っても、あくまでも原理原則に過ぎず、処分権主義や弁論主義が妥当する領域では、条文に規定のある訴訟契約以外の一切の訴訟契約の効果を認めないということには決してならない。
 訴え取下げも、処分権主義から導かれる問題であるから、訴訟外での訴え取下げ合意も、処分権主義の問題である以上、訴訟契約として捉えたいという学者の気持ちも分からないではない。しかも、私法契約説で説明すると、訴えの利益という訴訟要件を介在させて説明されてきたが、このような考えが便宜的に過ぎるのもよく分かる。合意の効力が争われたけども合意の効力が認められるという時に、訴え却下ではなく訴え取り下げによる訴訟終了宣言で終わらせたいという、学者の考える論理的なスマートさもよく分かる。なにしろ、訴え取り下げに合意したのであるから。

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