Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Boo Hewerdine

2006-04-30 | Live Report
■Live at Minami-Aoyama Mandara / Boo Hewerdine■

 小雨の降る4月27日、当日券で南青山マンダラで行われた Boo Hewerdine(ブー・ヒュワディーン)のソロライブに行ってきました。 一緒に行ったのは、会社の友人(というか年齢的には先輩)の S さん。 S さんとはちょうど 10 年前に同時期に札幌に転勤になったときに知り合いまして、それ以降、音楽の趣味などで共通するところも多いので、時々、こうして飲みに行ったりしています。 
 開場が 18時30分 のところ、現地入口で待ち合わせたのが 19時15分。 僕は 5 分ほど早くついてしまったのですが、その間、誰も会場に入っていく気配がありません。 不安になりながらも中に入ると、お客さんの数は約 40 名程度だったでしょうか、無事にステージの袖近くのいい場所に陣取ることができました。

 フロントアクトとして、大木理紗さんという女性がピアノの弾き語りで 5 曲ほどを歌い、その後に、Boo Hewerdine が登場しました。 大木さんは、その昔は日本のプログレバンドで活躍したとのこと。 現在はゲーム音楽や CM 音楽などの仕事もしているようです。 ちなみに、さきほど検索してみたところ本人のページがありまして、そこを見ると、「ページェント」というプログレバンドのメンバーだった方のようです。 彼女が歌っている間、Boo Hewerdine はステージ横のほうのソファに座って、演奏をじっと聴き入っていました。 

 大木さんのステージが終わると、グランドピアノがステージ奥のほうにしまわれ、いよいよ Boo Hewerdine の登場です。 突然、ふらっとステージに入ってきたのでちょっとびっくりしましたが。
 彼は、180cm 以上ありそうな長身で、ギターが小さく見えてしまいます。 椅子に座って猫背気味に弾き語りを始めました。 正確なセットリストはどこかのページをご参照いただくとして、主だったライブの流れをお伝えしたいと思います。 前半では 2 曲目に僕の好きな「Bell , Book & Candle」を、6 曲目あたりで「Patience of Angels」を演奏してくれました。 続いて中盤 8 曲目から、椅子をどけて立ったままでの弾き語りになり、The Bible 時代のスマッシュヒット「Honey Be Good」など 3 曲程度を演奏。 再度座りなおして 2 曲ほど演奏したでしょうか。 演奏している彼とは 3m くらいの至近距離だったのですが、曲の終わりにギターをぐいぐい揺らして、ギターの残響音に深みを与えようとする彼の姿を見ると、細かいところまで表現力を高めようとする姿勢を強く感じることができました。 
 後半、再度スタンディングになった Boo Hewerdine が「リクエストは?」との問いかけると、客席から「Ontario」の声が。 この曲は初めて聴きましたが、とてもいい曲でした。 その後に名曲「Wings On My Heels」など本編は約 15 曲で終了。 すぐに始まったアンコールで 2 曲。 2 度目のアンコールで 1 曲という合計 18 曲程度のライブだったと思いますが、長さ的にもちょうどいいくらいだったと思います。 
 この日に備えて僕は、持っている 2 枚の CD「Anon」と「A Live One」を i-Podで通勤途中に聴いていましたが、僕が一番聴きなれていたアルバム「Anon」からの曲はほとんど演奏されませんでした。 この「Anon」というアルバムは録音の良さに加えシンプルな楽曲が並んでおり、部屋の空気感を一変させるような力を持ったアルバムですので、是非一聴をお勧めします。
 ちなみに、前回、Boo Hewerdine を見たのは、2002 年吉祥寺の Star Pine’s Café でした。 そのときは、元The Bibleの Boo Hewerdine 、元Deacon Blue の Ricky Ross、そして元Danny Wilson の Gary Clark の 3 人での来日でした。 この 3人を同時に見ることができて、そして競演もあったというそのライブはいま思い出しても幻のような一夜でした。 そんな話を S さんに話したところ、「 3 大テノール並みの夢の競演だね」と笑っていましたが、僕もまさにその通りだと思います。

 ライブ終了後は、会場で新作「Harmonograph」を購入し、S さんと小雨の街へ。 青山三丁目近くの昔からやっているイタリア料理屋さんで、ピザやパスタを食べながら、仕事・家庭・住宅ローン(!)などの近況話をして、外苑前の駅で別れました。

 最後になりましたが、今回のライブを招聘してくださった会社のホームページをご紹介します。 きちんとしたレポートやセットリストなどもこちらで公開されていました。

■Live at Minami-Aoyama Mandara / Boo Hewerdine■

2006年4月27日(木)
南青山マンダラ (東京)

19:30頃開演 大木理紗
20:00頃開演 Boo Hewerdine

Paul Parrish

2006-04-29 | SSW
■Paul Parrish / The Forest Of My Mind■

 無事に発見されました。 Paul Parrish のファーストアルバムです。 大手映画会社の MGM 傘下のレーベル、Music Factory Records から 1960 年代後半にリリースされています。 クレジットに制作年が書かれていないので、正確な年は不明ですが、1968 年前後ではないかと思います。
 このアルバム、各面のラストに、レノン・マッカートニーとホーランド・ドジャー・ホーランドという歴史的なソングライターチームの曲が収録されている以外は、すべて Paul Parrish の自作となっています。

 さっそく、針を落としてみました。 1 曲目の「English Sparrows」は、まるで Donovan です。 このアルバムの発売年を調べるために AMG で検索したのですが、そこのジャンル分けに「Sunshine Pop」とあったのも納得してしまいます。 続く「Suzanne」は、フルートとヴィオラの音がけだるい雰囲気を醸し出した中々の佳作。 あれ、「Tomorrow Never Knows」か? と思わせるエフェクトから始まる「Walking In The Forest (Of My Mind)」は、ちょっとサイケな出来。 いかにも 1960 年代というアレンジの「The Painter (Who Lives In The Cellar)」は、移動式遊園地のような賑やかさです。 ティンパニのようなパーカッションをバックにストリングスが緩やかに入る「Dialogue Of Wind And Lover」に続いては、The Beatles の「You’ve Got To Hide To Love Away」です。 この曲は特に冒険的なアレンジもなく、原曲に忠実です。 と、ここまでA面を通して聴いてきて思うのは、Paul Parrish の透明感のあるピアノの音がまったくフィーチャーされてないことです。 彼の 2 枚目、3 枚目とはまったく異質な音楽であることがよくわかります。
 B 面のほうは、A 面ほど派手なアレンジはありません。 「Tiny Alice」はアップな展開にストリングスが絡むのですが、個人的には一番キツイ曲でした。 シンプルなベースにのった「Morning Train」で若干救済され、「Something Of A Love Song」で持ち直します。 この曲で初めて本人のものらしきピアノの音が聴こえます。 淡々としたワルツ「The White Birds」に続いて、このアルバムで最も長い 3 分 40 秒の「Flower In The Park」が始まります。 この曲は、「おや、どこかで聴いたことのあるメロディー?」と思うと、あの Jimmy Webb 作曲で Donna Summer の大ヒット「MacArthur Park」の冒頭のメロディとそっくりです。 この曲は 1968 年には Richar Harris が歌っていますので、どちらの曲が古いかは微妙です。 ともにタイトルに「Park」という言葉が入っているのも気になります。 そして、最後はデトロイト録音ということもあってか、モータウンの代表ヒット「I Can’t Help Myself」で締めくくられます。 この曲も凝ったアレンジはないのですが、この曲を Paul Parrish のボーカルで歌われると、ちょっと失笑してしまいます。 そんな名曲もあっけなくフェードアウトして、このアルバムは余韻を残すこともなく終わっていきます。

 このアルバムは、曲紹介の冒頭のほうでも書きましたが、当時人気絶頂だった Donovan のフォロアー的に売り出そうとしたレコード会社の思惑が強かったのでしょう。 ジャケットのイラストからもそんな気配がうかがえます。 そうしたことから、後に開花する Paul Parrish のピアニストとしての繊細な個性は、ここでは封印されてしまったままで、SSW ファンがさかのぼって追いかけるほどの内容ではありません。 このアルバムが成功しなかったのは言うまでもなく、その後 Paul Parrish はデトロイトを離れ、ウェストコーストへと向かい、セカンド「Songs」をリリースしました。 その間の経緯や彼の心境はどんなものだったのでしょうか? 



■Paul Parrish / The Forest Of My Mind■

Side-1
English Sparrows
Suzanne
Walking In The Forest (Of My Mind)
The Painter (Who Lives In The Cellar)
Dialogue Of Wind And Lover
You’ve Got To Hide To Love Away

Side-2
Tiny Alice
Morning Train
Something Of A Love Song
The White Birds
Flower In The Park
I Can’t Help Myself

Produced by Clay McMurray for Sussex Productions, Inc.
Arrangements by Mike Theodore and Dennis Coffey
Recorded at Tera Shirma Studios , Detroit . Michigan

Music Factory Records MFS-12,001

Paul Parrish

2006-04-26 | SSW
■Paul Parrish / Songs■

 このジャケットを見ると、ついつい「サンタナに似ているなあ」という感想が先立ってしまいます。 隣にジョン・マクラフリンがいても不思議じゃないような感じです。
 そんな Paul Parrish のセカンドは、1971 年にリリースされました。 前回ご紹介した3 枚目のアルバムが1977 年発表ですから、ここから 6 年も間隔が空いてしまうのですね。
 「Songs」というシンプルなタイトルをつけられたこのアルバム。 Paul Parrish のなかでは最も人気が高い作品かもしれません。 3 枚目のような AOR に近いアレンジに比べると、シンプルなピアノ系 SSW の味わいが全面的に楽しめるからかもしれませんね。アルバムを久しぶりに聴いてみましたが、やはり捨てがたい好作品だと思います。
 イントロのギターのアルペジオが琴の音のように聴こえる「Many Years Ago」は、5 分もの大作です。 次第にアルペジオの音がピアノに置き換わり、後半の曲調転換のあたりでデシベルの高いストリングスが挿入される部分などはかなり劇的ですね。 この曲で大体のアルバムの雰囲気はつかめます。 続く「I Once Had A Dog」は題材を入れ替えながらテーマを掘り下げていくタイプの楽曲です。 唯一のギター系の楽曲「Jaynie」を挟んで、個人的なベストトラック「A Poem I Wrote For Your Hair (from the movie ’Fools’)」が始まります。 ゆったりしたワルツの曲調に私小説的な世界が広がり、抑え目なストリングスとともに奏でられるメロディーが味わい深い絶品です。 ちなみに、「Fools」という映画の存在は確かめられませんでした。 A面ラストの「Time」も典型的な Paul Parrish の世界が展開されます。 このレコードは秋が似合うなあと、新緑の時期に思ってしまいます。
 B面に移ると、標準的な出来の「Numbers」、タイトルどおりにチェロのイントロと伴奏が美しい「Cello」と流麗な展開が続きます。 ところが、曲名からして不安感のあった「Pink Limousine」は、ちょっと異色です。 ニルソン風のアレンジによる明るい楽曲なのですが、ちょっとこのアルバム全体の世界観からはちょっと遠い気がしてしまいます。 「Nathan」は、元に戻った感じの大作ですが、曲の長さのせいか、ボーカルの弱さが一番目立ってしまうように感じました。 Paul Parrish の高めで細く、若干震える声は嫌いではないのですが、曲調によってはマイナスに聴こえてしまう場面があります。 この曲はそんな曲だと思いました。 ラストを飾るのは「A Poem I Wrote For Your Hair」と並ぶ名曲「When They Return」です。 この短い作品の中に、Paul Parrish の良質なエッセンスが十分に盛り込まれています。 流麗なストリングスによるエンディングなど、アルバムのラストに相応しい曲といえるでしょう。

 「Songs」は、ピアノ系 SSW 好きの方であれば入手もそれほど大変でもないので、お勧めしたいと思います。 しかし、 CD 化による再発に熱心だったワーナーにあって、なぜか CD 化されていません。 CD になったら、紅葉のシーズンに車のなかでじっくり聴いてみたいなと思うのですが。
 さて、次回はここまで来たので、Paul Parrish のファーストをご紹介しようかと思います。 が、レコード棚を探しているのですがまったく整理されていないので、ちょっと行方不明になってしまいました。 発見できるかどうかによって、次回の一枚は変わるかもしれません。 

■Paul Parrish / Songs■

Side-1
Many Years Ago
I Once Had A Dog
Jaynie
A Poem I Wrote For Your Hair (from the movie ’Fools’)
Time

Side-2
Numbers
Cello
Pink Limousine
Nathan
When They Return

All Songs Written and Arranged by Paul Parrish
Produced by Dan Dalton

Musicians :
Paul Parish : piano , organ , melodica
Steve LaFever : bass
Larry Brown : drums
George Bell : drums
John Beland : guitars
Dick Rosminni :guitars
Tom Morgan : harmonica
Danny Cohen : harmonica
Bill Fritz : clarinets
Jim Snodgrass : clarinets
Verlye Mills : harp
Nathan Gershman : cello

Warner Brothers  WS1930

Paul Parrish

2006-04-23 | SSW
■Paul Parrish / Song For A Young Girl■

 タイトル「Song For A Young Girl」で、僕はすでにやられてしまいます。 こんな顔しているくせにね。 なんて言うと今日の主人公 Paul Parrish に怒られてしまいますね。
 このアルバムは、1977 年メジャーの ABC Records から発売された彼の3作目。 これ以降のアルバムは確認されていませんので、ラストアルバムと考えていいでしょう。 Paul Parrish は、ピアノ系の SSW としてそれなりに知名度もあるのですが、なぜか一枚も CD になっていません。 今日は、久しぶりにこのアルバムを通して聴きましたので、ご紹介したいと思います。

 このアルバムは、僕にとっては 1 曲目の「Rock’n Rollin’ Star」が全てでした。 過去形にしたのは訳があるのですが、それは追い追い、分かっていただけるとして、この「Rock’n Rollin’ Star」は、3 年に一度くらいは、妙に聴きたくなってレコードに針を落としてきました。 Let me be your rock’n rollin’ star と繰り返すサビの部分、そのメロディーとコーラス・アレンジメントが、僕のツボにはまっているのです。 なので、この曲だけを聴いてまたしまってしまうということが多かったのです。 その副作用のせいで、実はアルバムを通して聴くのがかなり久しぶりになってしまいました。 さきほど聴き終えたのですが、アルバム全体でのクオリティの高さは、かなりのものだということを、今さらですが実感した次第なのです。
 主な曲をピックアップしてみましょう。 2 曲目の「Stormy Days」は、仰々しいメロディーとアレンジがちょっと当時の日本の歌謡曲のようです。 絶頂期の沢田研二に歌ってもらいたいような気分です。 「Ballerina」も可愛らしいイントロにピアノの弾き語り、急にインしてくるストリングスなど、なかなか見事な完成度です。
 B面に入るとアミューズメント施設の BGM か、ミュージカル楽曲かと思ってしまうアレンジメントが見事な「Hoedown」で始まります。 このような楽曲は、他にはRandy Edelman くらいしか書かないのではと感じました。 ストリングスのほうも、Sid Sharp の熱気が伝わってくるかのようです。 ちなみに、Concert Master として彼の名前がクレジットされているアルバムは、一定のクオリティがあるといってもいいでしょう。 友情をテーマにした「That’s The way Of Friends」もミディアムな展開の好楽曲。 映画の挿入歌みたいな「White Pony」は、単調なメロディーを盛り上げるアレンジの力を感じさせます。 ラストのバラード「Song For A Young Girl」も、この手のピアノ系 SSW が好きな人にはたまらないものでしょう。 曲調は、David Pomeranz の 3 枚目と雰囲気がよく似ています。 このように Randy Edelman や David Pomeranz の名前を引き合いに出してコメントしてきましたが、このアルバムは、彼らのような 1970 年代後半のピアノ系 SSW を代表するミュージシャンと比べても、見劣りのしない内容だと思います。 アルバムを通じて聴くことのできる Paul Parrish のピアノの音色も、湧水のような透明度を保っています。



 しかし、不幸なことにこのアルバムは思うようなセールスをあげることもなく、Paul Parrish は次の作品を残すことはありませんでした。 アルバムごとにレーベルが異なっていることもあってか、CD 化もされないまま放置されてしまっています。 せめて、この作品と前作「Songs」だけでも CD 化してほしいものです。 次回は、ワーナーから発表された前作「Songs」を取り上げる予定ですので、お楽しみに。

 さて、最後に余談ですが、このアルバムには、プロモーションオンリーのピクチャー盤が存在しています。 こちらの写真も載せておきますが、僕の持っているピクチャー盤の音質は最悪でした。 



■Paul Parrish / Song For A Young Girl■

Side-1
Rock’n Rollin’ Star
Stormy Days
Matthew And Cherokee
Ballerina
America (The Lady Of The Harbor)

Side-2
Hoedown
Foggy Highway
That’s The way Of Friends
White Pony
Song For A Young Girl

Produced by Louie Sheldon
Arranged by D’Arneill Pershing
Engineer : Joseph Bogan

All Songs Written by Paul Parrish

Musicians :
Ralph Humphrey : drums
David Hungate : bass
Paul Parish : piano
Louis Sheldon : electric & acoustic guitars and bass on ‘America’
Bill Cuomo : synthesizers & Rhodes
Sneaky Pete : steel guitar on ‘Foggy Highway’
Jim Seals : fiddle on ‘Hoedown’
Gene Estes : percussions
King Errison : congas
John Smith : bass on ‘Matthew And Cherokee’ and ‘Song For A Young Girl’
Sid Sharp : concert master
Michael Boddicker :moog

Background Vocals
‘America’ : Maxine Willard , Jukia Tillman , Oren Waters , Pat Henderson and Venetta Fields
‘Rock’n Rollin’ Star’ : Shirley Matthews , Clydie King , Rebecca Louis

ABC Records AA1031


Susan Pillsbury

2006-04-19 | SSW
■Susan Pillsbury / Susan Pillsbury■

 愛おしいアルバムです。
 Sweet Fortune Records がこの世に残してくれた宝物。 それが謎の歌姫 Susan Pillsbury です。 このアルバムが在ると無いとでは、レーベルの意味合いが随分と違ったものになったでしょう。 
 このレコードとの出会いは、1990 年台初頭だったと思います。 この名前とジャケットでイギリスの SSW に違いないと思ったものでした。 クレジットもレーベル名も特に気にすることなく即買いしたものです。
 そんな Susan Pillsbury が 1973 年に発表した唯一の作品が、このアルバム。 ジャケットだけでなく、その内容もまた淡くはかないもので、聴くたびに彼女のその後の足取りを追ってみたい衝動に駆られてしまいます。
 久しぶりにアルバムに針を落としました。 オープニングを飾る「Brown Eyes」はちょっとブルージーなサウンドで、Susan Pillsbury のボーカルも線の細い Maria Muldaur みたいに聴こえます。 とはいえ、ジャケットの印象とはかけ離れたものではない、オールド・タイミーな雰囲気の楽曲です。 初めて聴いたときには、この雰囲気がこのアルバム全体を包み込むものかと思っていました。 しかし、以降は曲調も彼女のボーカルも、次第に翳りを帯びてきます。 「Never Say Goodbye」は、ギターのアルペジオ、重ためのストリングスのなかで彼女の声はあまりにもはかなすぎてカゲロウのようです。 続く、名曲「Heaven」では、さらにその世界が強調されていき、’It Must Be Heaven’ と歌われるサビの部分など、いまにも途切れてしまいそうな歌声です。 一言で「暗い」といってしまえば簡単なのですが、彼女の声に込められているものは怨念のようなものではなく、あきらめとか絶望に近いように感じます。 「Highway」も、その儚い路線が、アコギのアルペジオとパーカッションによって支えられていきます。 「Love Never Dies」も、ギターのポロロンとした爪弾きのうえに、せつないボーカルが重なる名曲。 失恋の歌なのでしょうが、Susan Pillsbury は、今にも壊れてしまいそうです。
 B 面は、幾分元気を取り戻した「I Thought I Knew The Answers」で始まります。A 面で繰り広げられた「心の翳り」がいったん回復したかのように、ボーカルにも伸びが感じられます。 続く、「It’s Hard To Be Easy」も Susan のアルトのボーカルがいつになく存在感を示し、サビもしっかりした曲となっています。 アコースティックなサウンドは、 Everything But The Girl がカバーすると似合うような気がします。 しかし、「Joe And Luther」になると Susan は次第に元気をなくしていきます。 鼓笛隊みたいなパーカッションをバックに淡々と歌われるの曲なのですが。 「You Found Me」ではアルペジオのイントロにストリングスが重なるという A 面のはかない路線に完全に戻ってきた感じです。 曲調は古い映画の挿入歌みたいで、なぜか「ニュー・シネマ・パラダイス」を思い出してしまいました。 ラストの「Goodnight」は、セピア色の景色のなかで、Susan との永遠の別れを感じる曲です。 2 分にも満たない小曲なのですが、Goodnight を 3 回ずつ、計 6 回繰り返すだけの歌詞とともに、このアルバムは終焉を迎えます。 
 アルバムを聴き終わったあとに残る、このもやもやした思いは何なのでしょうか? とても薄幸に見えてしまう裏ジャケットの本人の表情をじっと眺めながら、このアルバム以降の彼女の人生のことをひとり妄想してしまう自分がいるのです。 「Never Say Goodbye」、「Heaven」、「Love Never Dies」といった曲で表現された極限の哀しみは、決してフィクションではなく、本人の人生そのものだったのではないかと思ってしまうのです。 「今でもそこにあなたがいたら、僕は何と言うだろう」...僕はそんな歌詞の歌を中学生の頃聴いていましたが、このアルバムを聴くたびに、そんな気分にさせられ、ちょっと胸が痛くなってしまうのです。

 さて、ちょっと冷静になってクレジットを見てみましょう。 残念なことに、このアルバムには参加ミュージシャンやレコーディングスタジオなどの情報が一切ありません。 Joe や Bob のときには、曲の簡単な解説コメントが載っていたのですが、それも無くなっています。 それだけで、前 2 作の延長線にはないことが予想できます。 そんな情報の不足のなか、まず気になるのはプロデューサーである Mike Berniker です。 Joe Droukas や Bob Sanders のプロデューサーはEddie Jason でしたが彼のプロフィールはよくわからないままでした。 一方、Mike Berniker のキャリアは古く、1963 年には Barbra Streisand の、1968 年には Brenda Lee のプロデューサーとして名を残しています。 Susan Pillsbury のプロデュースをするころには、彼はもうベテラン。 しかも新人の Susan とはどのようにして知り合い、プロデュースすることになったのでしょうか? そのあたりの経緯を知る術はありません。 ちなみに、Mike Berniker のキャリアは長きに渡ったようで、1970 年代には、Miles Davis や Al Di Meola のアルバムにプロデューサーとしてクレジットされているほか、 Broadway Musical のサントラ盤などにも多くクレジットされているようです。 彼は本来は、Jazz 系のプロデューサーだったのでしょう。 こうしたことから、このアルバムのバックミュージシャンも彼の人脈から借り出されたニューヨークのスタジオセッションマンだったと推測します。 そのなかで最も重要な役割を担い、自らもギターで参加したのが、Jay Berliner です。 彼のことも調べてみましたが、1972 年に Mainstream Records からソロアルバム「Bananas Are Not Created Equal」を発表していました。 このアルバムには、Gordon Edwards とCornell Dupree という Stuff 人脈が参加していることも注目ですね。 どうやらこのアルバム、JAZZ 系の DJ には人気のディスクのようなのですが、早めに聴いてみたいと思っています。 
 Mike Berniker は ASCAP のホームページで 2002 年 11 月頃に写真入で掲載されていました。 おそらく今も健在なのではないかと思います。 どなたか連絡先を訪ねて、Susan Pillsbury の謎を解き明かしてくれないものでしょうか?



■Susan Pillsbury / Susan Pillsbury■

Side-1
Brown Eyes
Never Say Goodbye
Heaven
Highway
Love Never Dies

Side-2
I Thought I Knew The Answers
It’s Hard To Be Easy
Joe And Luther
You Found Me
Goodnight

Produced by Mike Berniker for 400 Entertainment Corp
Musical Direction : Jay Berliner
Strings and Reeds Arranged by Mike Berniker and Jay Berliner
Engineering : Frank Laico and Arthur Kendy

All selections written by Susan Pillsbury except ‘You Found Me’ by Donna Cribari
Photography : Hank Dunning
Design : Fred Marcellino
Art Direction : Bill Levy

Sweet Fortune Records SFS-804





Bob Sanders

2006-04-17 | SSW
■Bob Sanders / Scraps And Napkins■

 Sweet Fortune Records の2枚目のアルバムをご紹介します。
 このBob Sanders という無名のミュージシャンの唯一のアルバムは、Sweet Fortune Records のなかでも最も見かけないアルバムです。 淡いソフトタッチのジャケットは、構図が Parker McGee のアルバムに似ているのですが、ともにアルバム1枚で終わってしまうところまで似ていますね。
 早速、アルバムの内容に触れて見ましょう。 A面は「Mountains In The Morning」で始まりますが、この曲は軽いカントリーテイストにBob の甘めのボーカルが絡み、ストリングスやバンジョーが優しく包みあげた佳作です。 ちょっと、Steve Eaton のファーストが持っている雰囲気に近いものを感じます。 「The Road」は、30日中26日もライブでツアーに出ているという Bob がツアー先のホテルのBARで思いつき、そのBARのナプキンに書き降ろしたという曲。 「Scraps And Napkins」というアルバムタイトルの所以にもなっているエピソードですね。 しかし、アルバムで聴くことのできる彼の音楽は、ギターの弾き語りはほとんどないので、それほど毎日のようにライブをしているようには感じませんが。 続く、「Ordinary People」はアルバムの代表曲と言えるでしょう。 普通に生活している人が僕にとってのヒーローだ、と歌うこの曲は Bob Sanders の人柄が表れたハートウォーミング(古くさ!)な佳作です。 続く「Ephraim」は異色作。 ボーカルは、ほとんどトーキングスタイルでまるでラップのよう。 時折、女性のバックコーラスや鋭角なギターがパーカッシブなサウンドに入り込む感じはなかなか独特です。 アルバム全体のなかに入ると違和感を感じる人も多いかもしれませんが、出来はけっして悪くないです。 
 B面に入ると、A-1 に近い雰囲気をもった「Drop A Line From Albuquerque」以降はほんわかした私小説的なサウンドが展開されていきます。 ラストの「Sing Love」は、アップな入り出しからミディアムなサビに入るあたりに盛り上がりを見せる楽曲です。 フレンチホルンが入ってきて愛を歌うアンセムという様相を呈してくるところはアルバムラストにふさわしい曲といえるでしょう。 アルバムを通じての感想は、強烈な個性や魅力は感じられませんが、1973年という同時代性は十分に感じられる SSW 作品といったところでしょうか。 次のアルバムを残せなかったことも、肯けてしまいます。

 さて、続いてクレジットを分析してみましょう。 前回ご紹介した Joe Droukas のアルバムの参加者と Bob Sanders の場合を比較すると、まずプロデューサーであるEddie Jason とレコーディング・スタジオの Record Plant が共通です。 レーベルイメージからなんとなく中西部のような印象があるのですが、この2作ともニューヨーク録音です。 プロデューサーの Eddie Jason は、Sweet Fortune Records の成り立ちに深く関与した人物であることは間違いないと思われるのですが、残念ながら彼の経歴などはよくわかりません。 他のレーベルにプロデュース作品が残っていたらそこから想像などもできるのでしょうが。
 ミュージシャンは、Ken Ascher , Rick Marotta , Paul Prestopino , Lori Burton の4人が共通して参加。 この事から、Joe Droukas と Bob Sanders の作品は、比較的同時期に録音されたものではないかと推測します。
 さて、続く Susan Pillsbury のクレジットはどうなっているのでしょうか? そのあたりは次回の投稿をお楽しみに。



■Bob Sanders / Scraps And Napkins■

Side-1
Mountains In The Morning
Everything’s Alright
The Road
Ordinary People
Ephraim

Side-2
Drop A Line From Albuquerque
She’s One Of a kind
Dan
So High When She’s Flying
Sing Love

Sal De Troia : acoustic and electric guitar
Paul Prestopino : acoustic guitar , banjo ,and dobro
Eric Weissberg : steel guitar and fiddle
Bob Sanders : acoustic guitar
Ken Ascher : piano
Joe Mack : bass
Rick Marotta : drums
Jack Jennings : percussion
Don Corrado : french horn

The Louis Harber Strings
Background Vocalist : Lori Burton

Recorded at The Record Plant East , New York City
Produced by Eddie Jason
Arranged and Conducted by Alan Lorber

Sweet Fortune Records SFS-802


Joe Droukas And His Crazy Man Band

2006-04-16 | SSW
■Joe Droukas And His Crazy Man Band / Goodbye Joe Drake■

 このブログを開設してから温めていた企画があります。 今日は、その企画第 1 弾を 3日連続で(毎日というわけではありませんが)スタートしたいと思います。
 その企画は、「レーベル特集」です。 この Joe Droukas でレーベルが分かる人はかなりの通だと思いますが、これから紹介するレーベルは Sweet Fortune Records です。 「何か身に覚えがあるな」という方もいるかもしれません。 その方はおそらく、Sweet Fortune の歌姫 Susan Pillsbury を通じてなのではないでしょうか? もちろん、彼女のアルバムも後日取り上げますのでお楽しみに。
 Sweet Fortune Records は 1973 年に、たった3枚のアルバムしか残さなかったマイナーレーベルです。 ディスコグラフィーは以下のとおりです。
 ① SFS-801 Joe Droukas And His Crazy Man Band / Goodbye Joe Drake
 ② SFS-802 Bob Sanders / Scraps And Napkins
 ③ SFS-804 Susan Pillsbury / Susan Pillsbury
 ちなみに、SFS-803 は欠番です。 10 年以上探しましたが、見つからずに僕は欠番だと判断しました。 同レーベルでは、「Inner Space」や「Expedition」というソウル系らしきグループがシングルをリリースしているので、どちらかのグループのアルバムが予定されていたのだと推測します。 

 さて、話はこのアルバムに移りましょう。 このアルバムは、Joe Droukas のファーストアルバムです。 彼は 1975年にソロ名義で Southwind というレーベルからセカンドアルバム「Shadowboxing」を発表しています。 このアルバムもいつか取り上げるかもしれませんが、ちょっと先になるかもしれません。 そんな Joe Droukas ですが、実は、Sweet Fortune Records 出身でセカンドアルバムを残すことができたのは、彼だけなのです。 レーベル名「甘い幸せ」とは見事に対照的です。
 アルバムはファンキーなピアノが印象的なナンバー「Thyroid Eyes」で始まります。 この曲でJoe Droukas の男臭いボーカルが判明します。 ジャケットの顔から予想したとおり、スワンプ系のサウンドですが、僕にとって、あまり好みの声ではないのですが、この曲はアルバムの冒頭を飾るにはかなりいい曲で、イントロの感じは、「Faces」の名曲「Stay With Me」に雰囲気が似ているように思いました。
 以降、A 面はスワンプ調とカントリー調の曲が交互に出てくる展開です。 なかでも明るめのスワンプ「Red Roses」は Hugh McCracken と David Spinozza の控えめなサポートが光ります。 そして、レーベルタイトルにもなったと思われる注目の曲「Sweet Fortune」が続きます。 この曲からレーベル名が生まれたと推測されるので、かなり期待したいところですが、この曲は特にこれということのない普通の曲で、かなり拍子抜けしてしまいます。 
 B 面は、すべての Musician に捧げるとコメントされたナンバー「Crazy Man Band」で始まります。 これもノーマルなミディアムナンバー。 彼のような声質は、もっと R&B のようなサウンドが似合うと思うのですが。 つづいて Toots Thielman によるノスタルジックなハーモニカで始まる「With My Back To The Wind」が始まります。 この曲は早世したすべての人に捧げるという曲なのですが、さきほどの曲といいこの曲といい Joe Droukas は捧げる相手が大げさすぎですね。 

 ラストのアルバムタイトル曲「Goodbye Joe Drake」は、他の曲が全部4分未満だったのに対し、唯一 5 分ある曲です。 全編ピアノの伴奏に Joe のボーカルが味わい深く重なるラストにふさわしい楽曲です。 歌詞カードがないので何とも言えませんが、楽曲説明のショートコメントによると、この曲は自身の原点回帰を歌った曲のようです。 というのも彼の本名は、Joe Droukas なのですが 1969 年まで、Joe Drake と名乗っていたようなのです。 移民の多いアメリカでは、母国名を英語っぽい表記に名前を変える人が多いことは知っています。 Joe Droukas もおそらく、そうだったのかそれに近い事情によって、長い間 Joe Drake と名乗っていたようなのです。 それを 1969 年に本名に戻したことを歌にしたのが、この曲「Goodbye Joe Drake」だったのです。



■Joe Droukas And His Crazy Man Band / Goodbye Joe Drake■

Side-1
Thyroid Eyes
Yankee Trader
Indian Song
Sunday Song
Red Roses
Sweet Fortune

Side-2
Crazy Man Band
With My Back To The Wind
Goodbyes
Something Strange
Goodbye Joe Drake

All Songs Written by Joe Droukas
Produced by Eddie Jason

Ken Ascher : keyboards , moog
Joe Droukas : acoustic guitar
Marc ‘Sparky’ Elbaum : flute
Joe Grimm : Bari Sax
Marky Markowitz : trumpet
Rick Marotta : drums
Hugh McCracken : electric and acoustic guitar
Paul Prestopino : banjo and dobro
Alan Raph : trombone
David Spinozza : electric guitar
Toots Thielman : mouth harp
Stu Woods : bass

Singers : Lori Burton , Bob ‘Mad Dog’ Power , Dennis Ferrante
Arrangements by Eddie Jason and Joe Droukas
Horn Arrangements by Ken Ascher

Recorded at The Record Plant , New York City

Sweet Fortune Records SFS-801


Mary Saxton

2006-04-15 | Female Singer
■Mary Saxton / Mary Saxton■

 1001 品番が連続したので、もう 1 枚続けましょう。 今日ご紹介するアルバムはカナダの女性ボーカリスト Mary Saxton が 1978年に Mustard というマイナーレーベルから発売したセルフタイトルのアルバムです。 品番は Mustard の M をとって、M-1001 というわかりやすさです。 ( 3月26日に掲載した Brice MacPherson も実は GSF-S-1001でした。 これも並べておけば 4 枚連続にできたのに。)

 この女性シンガーのキャリアや経歴はまったく不明なのですが、この幽霊のようなジャケットはいただけませんね。 年齢も不詳ですが、40 歳くらいに見えてしまいます。
 そんな Mary Saxton のアルバムですが、曲のほとんどが、プロデューサーの Karl Erikson と Norman E. Rooke によるものです。 Mary 本人は 2曲で競作し、ラストの 1曲だけが自身の書き下ろしです。 サウンドのほうは、かなり安定したオーソドックスな女性 SSW ものといってもよく、アレンジも派手さがないところに好感が持てます。 曲によって、ソプラノサックス・オーボエ・マンドリン・バンジョー・ピアニカなどの楽器が魅力的なイントロや間奏を奏でるところはセンスの良さを感じます。 
 ではアルバムのなかから主な曲をピックアップしてみましょう。 1曲目「Georgia Eyes」は、ちょっとけだるい曲なので先行き不安を感じさせます。 この曲はシングルカットされているのですが、ちょっと選曲センスがわかりません。 続く「I Want you」は、ちょっとソフトロック調の好ナンバー。 途中で入るハンドクラッピングはちょっといただけない感じです。 カントリー風味のワルツ「I’m A Woman (In Love With My Man)」はアルバムの中でも味わい深いナンバーで個人的には一番好きかもしれません。 B 面のほうでは、2 曲目の「Love For A Laugh」がベストだと思います。 そもそも Mary Saxton のボーカルは、声量や伸び、声質など、どれも標準的な域にあって、捨てがたい魅力があるというものではありません。 ですから、明るめの曲よりも、「Love For A Laugh」のように、おとなしめの楽曲にアコースティックな楽器がひっそりとサポートするというような曲のほうが似合います。 そういった意味では、「Love’s Desire」もエレピのみをバックにした佳作です。 ラスト前におくのは正解ですね。 どうしてもラストにしたかったのでは、と思う唯一の自身の作品「A Little Bit Of Love」は2分にも満たない小曲でした。

 こうして聴いてみると、このアルバムは熱心な女性SSWのファンの方にはお勧めできるものですが、名盤というほどのこともないアルバムです。 ただ、マイナーレーベルの宿命でもある流通力の弱さのせいなのでしょうか、僕はこのアルバムを手にして以降、レコード店で売られているのをみかけたことがありません。 Mary Saxton についても、ネットで検索してみましたが経歴などをつかむことはできませんでした。 
 カナディアン・ロッキーの玄関口、エドモントンからリリースされた Mary Saxton。 ジャケット買いするにはちょっと勇気のいるアルバムでしたが、「品番買い」という側面からは見過ごす訳にはいかなかったのです。

■Mary Saxton / Mary Saxton■

Side-1
Georgia Eyes
I Want you
I’m A Woman (In Love With My Man)
Take A Chance
Lazy Old Soul *

Side-2
Hang Up Your Coat
Love For A Laugh
Jimmy Lee
Love’s Desire *
A Little Bit Of Love

Produced by Karl Erikson & Norman E. Rooke
Strings Arrangements by Gerry Dere
* Arranged by George Blondheim

Recorded at Damon Sound Studio , Edmonton , Alberta

Many Thanks to the Following Musicians and Singers :
Trevor Dunn , Doug Rusu , Gerry Dere , George Blondheim , Wallis Petruk , Norman Rooke , Tom Duran , P.J. Perry , Ian Berry , Moe Marshall , Susan Gilmour , Charlie Faulkner , David Sinclair , Bob Burghardt , Jim Vallance , Brandy graesser , Rob Trousdell , Marc Vasey , Rick Erikson , Nancy Nash , Barry Allen , Randy Broadhead

Mustard M-1001

Bureman and O'Rourke

2006-04-11 | SSW
■Bureman and O’Rourke / Somebody Give Me A Smile■

 前回ご紹介したアルバムの品番は GDLP-1001 でしたが、今日のは SHA-1001 です。 そんなことどうでもいいように思いますが、実は自主制作レーベルかどうかをテキストデータのみで見分けるには品番は実に重要です。 このように 1001 という場合は、そのレーベルの最初の作品となっていることがほぼ確実なのです。 今日ご紹介するアルバムはそんな1枚、カンザス州の自主レーベル Happiness Records の1枚目にして、もしかして唯一のアルバムです。

 前置きが長くなりましたが、Bureman and O’Rourke はハーモニーが美しい SSW コンビです。 このアルバムは、セカンドアルバムでファーストも存在するようです。 そちらは持っていないので機会があれば聴いてみたいものです。
 このアルバム、僕の趣味に合った SSW 的なテイストよりも、カントリー・テイストが強いのかなという心配を抱かせました。 それは、1 曲目「86 Proof」を聴いたときに過ぎる気持ちでした。 タイトルから、バーボン・ウィスキーのことを歌ったと推測されるこの曲は、そんないきのいいカントリー・チューンです。 続く 2 曲目からはいい感じで一転し、アルバムの最初の山場に入ります。 「I’m Still Around」は薄くシンセサイザーが入るバラードで中々聴かせます。 「Tomorrow There’s A New Sun」もハーモニーの美しいミディアム、「Sunday Sallon」も Bureman のプレインだが明瞭なボーカルが光る佳作です。 ここまで聴いてきて、このアルバムへの心配は一気に吹き飛びます。 そして、バンジョーが鳴り響きくアップチューンの「Like A Train」で A 面は終了。
 B面に入ると、ちょっとまったりしたリズムの上に、陽気なさびがゆったりと進む「Celebration」で始まります。 そして、タイトルだけで期待の高まる「Missouri Winter」は、シンセが描く風の音、二人のハーモニー、次いで始まるカントリー調のミディアムナンバーです。 Bureman and O’Rourke の典型的なサウンドとも言えるこの曲は、次第にバックが消え、ハーモニーだけ残り、最後に風の音だけになるというありきたりの展開で幕を閉じるのですが、その予定調和も許せてしまいます。 ピアノの音が初めて聴こえてくるところが新鮮な「Dreams Go By」に続き、ラストのアルバムタイトル曲「Somebody Give Me A Smile」が始まります。 この曲は、このアルバムの他の曲にも言えるのですが、メロディ展開がまるで、1970 年から 80 年代初頭の日本のニューミュージックのようなのです。 なんか聴いたことあるな、という感じの歌い出しからサビのリフレインに入るのですが、そのあたりの展開もいたってノーマルです。 そしてサビの繰り返しが、気持ちしつこく感じてしまうところも日本人好みなのです。
 
 そんな Bureman and O’Rourke のアルバムですが、トータルのクオリティはかなり高いものだと思います。 その要因は、息の合ったふたりのハーモニー、ツボを押さえた楽曲、安定した演奏(ちょっとリズムセクションが弱いですけど)にあるかと思います。 ちょっと薄気味悪いジャケットと字体で損をしてしまっていますが、SSW ファンの方にはオススメできるアルバムだと思います。
 しかし、この Happiness Records というレーベルの実態はどんなものだったのでしょうか? あまりにもストレートな名前にちょっと照れてしまいます。 そして、栄光の 1001 番の前に添えられた「SHA」の三文字。 何かの頭文字をとったものだと思うのですが、ジャケットのデータから確信を持って、この頭文字だと断定できる要素は見当たりませんでした。 ここだけが、このアルバムの唯一の気がかりなのです(笑)。




■Bureman and O’Rourke / Somebody Give Me A Smile■

Side-1
86 Proof
I’m Still Around
Tomorrow There’s A New Sun
Sunday Sallon
Like A Train

Side-2
Celebration
Missouri Winter
Dreams Go By
Somebody Give Me A Smile

Produced And Srranged by Allen Blasco

Bruce Bureman : Acoustic Guitar , Banjo , Lead Vocal
Tim O’Rourke : Acoustic Guitar , Lead Vocal
Mark Higbee : Drums , Percussion , Electric and Acoustic Piano
Bob Schad : Bass , Harmony Vocals
Allen Blasco : Electric And Acoustic Guitar , Harmonica , Keyboards , Bass , Percussion
Pete Jacobs : Drums on ‘Celebration’
Jim McGreevy : Banjo
Eric Bikales : Strings Synthesizer , Organ
Lynne Pillar : Steel Guitar
John Moseley : Synthesizer on ‘Missouri Winter’

Happiness Records SHA-1001


The Guys And Dolls

2006-04-09 | Soft Rock
■The Guys And Dolls / By Request■

 グループ名、ジャケット・デザイン、そして人物の服装。 どこを取っても全くイケてないアルバムをご紹介します。 この The Guys And Dolls が1970年代初頭に自主レーベルから発表した全曲カバーのアルバム「By Request」です。
 この The Guys And Dolls というのは、1955年 に「野郎どもと女たち」という映画があったそうですが、その映画と同じタイトルです。 映画を観たことが無いので今日紹介しているグループに影響があるかどうか判断できません。 

 まず語るべきは、このジャケット。 なんでこんなスタイルで砲台の周りで撮影する必然性があったのでしょうか? きっと、祝砲か何かを撃つ砲台だとは思いますが、センスの無さにはあきれてしまいます。 Larsen 姉妹もあんまり美人でもないし。 
 さて、そんなアルバムに恐々針を落としてみると、これが意外とソフトロックな仕上がりとなっており、100 円くらいで売ってしまうにはもったいないものなのです。
 「I Feel A Song Comin’ On Medley」は、1曲目にしてアルバム最大の聴きどころ。 軽快なシンバルのイントロからまるで Roger Nichols でも始まるかのような錯覚に陥ります。 この曲は、ともに有名な曲「Sound Of Music」と「Sing」との3曲のメドレーなのですが、そのつなぎのセンスや男女が入れ替わるコーラスの微妙なさじ加減など、かなりの傑作です。 この曲はソフトロックファンにも十分に評価されるでしょう。 「Happy」は男性ボーカルのバラード、「Tie A Yellow Ribbon ‘Round The Old Oak Tree」は、「幸せの黄色いリボン」ですが、これは「Happy」とは違う男性のリードボーカルです。 名曲「Killing Me Softly With His Song」は、リズムのアレンジがちょっと Fifth Dimension 風な感じでアップテンポな仕上がりになっています。
 B面に移ると、10曲もの曲をつなげたメドレー「Old Fashioned Medley」で始まります。 このメドレーを締めくくるのが、 Three Dog Night のヒットで有名なPaul Williams 作曲の「Just An Old Fashioned Love Song」です。 続く、「Boogie Woogie Bugle Boy Of Company ‘B’」は、ジャス風のアレンジがまさに Manhattan Transfer のよう。 ゴスペルタッチの「Delta Dawn」、Billy Prestonの1972年のNo.1ヒットソング「Will It Go ‘Round In Circles?」でアルバムは締めくくられます。 
 アルバム全体では、男性がリードを取る曲が4曲あるのですが、すべて別人に聴こえます。 ということは、Guys 4人の全員が機会均等にボーカルをとったのでしょう。 いっぽう Larsen 姉妹のほうは、ソロも悪くないのですが、A-1や、B-2のようなアレンジのなかに良さが出てくるタイプのように感じます。

 さきほど、The Guys And Dolls で検索してみたところ、日本の Amazon でも「The Singles」と題されたベスト CD が検索されてきました。 そこには、男女2名ずつの4 人のジャケット写真が写っています。 おそらく1970年の中盤から後半にかけての頃のようなのですが、この4 人は今日ご紹介している The Guys And Dolls と同じグループなのでしょうか? それは何とも言えません。 同じだと思える理由は、6 人組から男2 人が脱退して4 人組になったということ普通にありえること。 また、「The Singles」には、24 曲のうち、「Killing Me Softly With His Song」が収録されていること、などです。
 しかし、その一方で違うグループなのではないかと思える理由もあります。 それは、「The Singles」のほうはグループ名が Guys ‘n Dolls となっていることと、4人の顔がちょっと似ていないように感じることなどです。 できれば、違うグループであって欲しいと思うのですが、それは僕の希望的観測なのでしょうか? 
 そんな謎めいた The Guys And Dolls。 レコードには制作年度も書かれていませんが、収録曲から推測するに、1972 年から1973 年くらいに制作されたものだと思います。 このダサい感じが何とも言えない愛着を抱かせてくれて、手放せないですね。 名門ワーナーブラザーズのお膝元、カリフォルニアのバーバンクから届けられたアルバムとはとても思えません。


 
■The Guys And Dolls / By Request■

Side-1
I Feel A Song Comin’ On Medley
Happy
Tie A Yellow Ribbon ‘Round The Old Oak Tree
Solamente Una Vez
Killing Me Softly With His Song

Side-2
Old Fashioned Medley
Boogie Woogie Bugle Boy Of Company ‘B’
Behind Closed Doors
Delta Dawn
Seasons In The Sun
Will It Go ‘Round In Circles?

All Selections Arranged by The Guys And Dolls

Valerie Larsen : Leader , Guitar , Vocalist
Rhonda Larsen : Soprano Vocalist
John Stanewich : Tenor Vocalist
Mike Wilson : Keyboards , Trumpet , Vocals
Tony Esperance : Bass , Piano , Organ , Trombone , Vocals
Mike Younce : Drums , Vocals

Produced by Donnie Brooks , Tom Oliver
Engineered by Tom Oliver
Recorded at A.D. Recorders , Burbank , California

Special Thanks to
Henry Sanchez : Lead Guitar
Al Macias : Tenor Saxophone
Danny Guerrero : Piano
Bob Senescue : Trumpet

GD Records GDLP-1001

New Trolls

2006-04-08 | Live Report
■Concerto Grosso Live in Japan / New Trolls■

 今日から、ライブリポートをするカテゴリーとして「Live Report」を設けました。 このブログの本来のコンセプトからはちょっと逸脱するものかもしれませんが、たまにしか行かないライブの印象を留めておきたいという気持ちでスタートします。

 そんな最初のレポートは、PFM、Banco、Area等と並ぶイタリアン・プログレッシヴ・ロック界の巨人、New Trolls です。 今まで僕がこのブログに書いてきた音楽とはまったく異質のミュージシャン(グループ)です。
 そもそも、このライブは 1971年の名盤「コンチェルト・グロッソ」をストリングス入りで再現するという壮大なもので、気にはなっていたのですが 12,000円という高価なチケットに躊躇していました。
 そんなところ、先週、大学時代からの友人 K からメールがあり、「招待券を入手したので行かないか」というウソのような誘いを受けたのです。 「思わず、タダなら行くよ」という返事をしたのですが、その時点でも、ライブにはそれほど大きな期待はしていませんでした。 もちろん、初来日でもあり、どんなものかという興味は持っていましたが。

 そして昨日行ってきましたが、正直かなり感動しました。 ラストのスタンディング・オベーションはまるでクラシックコンサートのクライマックスのようでした。
 ライブはバンド編成の 1部と、ストリングスオーケストラを入れた 2部との構成になっていました。 1部のほうはあまり知っている曲が無かったのですが、メンバーの演奏力と歌心を知るには十分な内容。 K のほうは、実は New Trolls をまったく聴いたことがなかったので、やや退屈のようでした。 1部でよかったのは 1981年の名盤「FS」からの曲です。 このアルバム、汽車の走る音がアルバムのところどころに出てくるコンセプトアルバムだったように記憶しています。 コーラスの分厚さもすごいポップス時期の傑作です。 とはいえ、このアルバム、1980年代に荻窪に存在した幻の貸レコード店「メロディー・パーク」で借りてカセットに入れて聴いたものなので、レコードは持っていませんでした。 そのカセットもすでに紛失。 紙ジャケット仕様の国内盤が出ているので早めに買いたいと思います。
 20分の休憩を挟んで、いよいよ 2部。 ここからラストのアンコールまでは本当にすばらしかった。 Concerto Grosso の Part 1&2 の再現には、日本人の 15人ほどのストリングス・オーケストラが起用されています。 弦はほとんどが女性、Part 2の美しすぎるイントロは oboe だったでしょうか、男性でした。 この2部については、これからいろんな方がレポートを書くと思いますが、流麗な楽曲のなか、曲名は忘れましたが、Part 2 に入っているらしきアップなバロック調の曲の盛り上がりは最高。 2度目のアンコールで2度この曲を演奏してくれたときには興奮しました。 ちょうど、元旦のニューイヤーコンサートが必ず「ラデツキー行進曲」で終わる感じにちょっと似たクライマックスでした。
 Part 2のほうも CD が行方不明なのでみつからなかったら買いなおそうと思いますが、あの盛り上がって 2回演奏した曲は、僕は Picchio Dal Pozzo のものだと記憶してしまっていました。 ちょっと手元に CD がないので確認できませんが、リーダーのヴィットリオの弟がこの Picchio Dal Pozzo の元メンバーで、このライブでもストリングス・オーケストラを指揮していましたので、あながち記憶違いじゃないかも。 
 他にもアップな曲を演奏しましたが、そのときのコーラスワークのうまさには完全に脱帽。 メンバー全員が歌えるのもすごいですが、そのハーモニーとアンサンブルのすばらしさはまるで全盛期の Queen を髣髴とさせるものでした。 ライブが終わったのが 22時過ぎ。 リーダーのヴィットリオは New Trolls のデビュー、1967年から活動しているので 60歳は超えているはずなのに、衰え知らずの声、演奏力でした。 まさに尊敬に値する本物のミュージシャンです。

 K とライブに出かけたのは昨年の Hatfield And the North 以来だったのですが(あのときも Club Citta’でしたが)、その時よりも客層は上。 中年というよりは初老に近い男性や夫婦が目立ちます。 30歳台はほとんど皆無。 それより、50歳に近い女性の集団も多かったのには驚きました。 イタリア語会話の先生の引率なのか、ストリングスの日本人女性の招待なのか、と想像してみましたが真相はわかりません。

 最後に招待券をくださった K のお取引先の方にご挨拶をし、チッタを後にし、帰り道の代々木で下車。 そこで偶然みつけたロックバーで軽く串焼きを食べて解散しました。 

■Concerto Grosso Live in Japan / New Trolls■

2006年4月7日(金)
CLUB CITTA’ 川崎

19:30開演 22:20頃終演 (途中20分休憩あり)

ヴィットリオ・デ・スカルツィ VITTORIO DE SCALZI (lead vocals, keyboards, flute, guitars)
アルドー・デ・スカルツィ (元ピッキオ・ダル・ポッツォ) ALDO DE SCALZI (keyboards, guitars, vocals)
アルフィオ・ヴィタンツァ (元ラッテ・エ・ミエーレ) ALFIO VITANZA (drums, lead vocals)
アンドレーア・マッダローネ ANDREA MADDALONE (guitars, vocals)
マウロ・スポジート MAURO SPOSITO (guitars, vocals)
ロベルト・ティランティ ROBERTO TIRANTI (electric bass, vocals)
マウリツィオ・サルヴィ (元ニュー・トロルス) MAURIZIO SALVI (musical director, conductor)

*最後のマウリツィオらしき人物は見当たりませんでした。ステージ上には、初老の3人と若めの3人の6人だけでした。 ちなみに、ベースとボーカルのロベルト・ティランティですが、かなりのハイトーンボイスでスゴイなと思っていたら、イタリアン・メタルの重要バンド「ラビリンス」のボーカル、ロブ・タイラントと同一人物のようです。 この人目当てもいたのかも。

Larry Weiss

2006-04-04 | SSW
■Larry Weiss / Black & White Suite■

 先日、四谷荒木町の馴染みのバーに入ったところ、先客の中年男性が持参したCDを店内で聴いていました。 ミュージシャンはグレン・キャンベル。 あの雄々しいボーカルが店内に響き渡っていたのです。 そのCDはベストアルバムで、すでに代表曲「恋はフェニックス」は過ぎていまして、ジム・クロウチ、ニルソン、S&G などの名曲のカバーが進んでいきました。 そして最後に収録されていた曲になったとき、「あれ、この曲聴いたことあるな」と思ってクレジットを見たのが、「Rhinestone Cowboy」という曲。 そして、クレジットに書かれていたのが、Larry Weiss の文字。 「あー、そうだったのか!」ということで、今日このアルバムを紹介することになりました。 そんなことが無かったら、しばらく聴くこともなかったと思います。
 前段が長くなりましたが、このグレン・キャンベルのベストには必ず収録されている「Rhinestone Cowboy」の作詞・作曲をした人物が、今日とりあげる Larry Weiss です。
 1974年に発表されたこのアルバムは、彼の唯一の作品。 20th Century といえば、Randy Edelman やPatti Dahlstrom など SSW の名盤を多く残している名門です。 このアルバムもきっとそんな一枚だろうと思って買って以来、実は 10年以上ぶりに聴きました。 今回、その時と大きく印象が異なったかというとそうでもありません。
 A面には、その「Rhinestone Cowboy」で始まります。 こうして改めて聴くと、やはりこの曲がベストトラック。 サウンドもアコギとストリングスが丁寧で美しい仕上がりです。 Jimmie Haskell のアコーディオンが聴ける「Sheldon」、Hugh McCracken の繊細なギターが心地よい「She’s Everything She Doesn’t Want To Be」、ピアノ系 SSW 的な曲調の「Lead On Me」など、この時代を代表するミュージシャンの演奏が楽しめます。 気になるのは、Hugh McCracken のギターはいつになく饒舌なのですが、逆に Leland Sklar のベースがほとんど聴こえないことです。 これは、ミックスの問題なのでしょうか。 何か物足りなさを感じる要因のようにも思えます。
 B面に移ると、ピアノのイントロで「Lay Me Down (Roll Me Out To Sea)」が始まります。 この曲は、曲調・展開ともに、Eagles の Desperado に酷似していて、聴いているほうがビックリしてしまいます。 年代的にはあちらのほうが先なので、影響を受けていないというのはウソになるかも知れません。 ラストの「The World Was Filled With Love」もちょっと期待はずれ。 飛行機の飛ぶ音、ストリングスの急降下、爆弾の音、といった SE 的な効果の後に始まるファンキーなピアノ、というところまでは奇をてらっているだけなのですが、それ以降の展開がいただけません。 もっと愛にあふれたアンセムのような盛り上がりを期待したのですが、さほどのことはなく、しょぼい感じでアルバムが終了します。 B面は 4曲しかないのになあ。
 ということで、僕がこのレコードを買ったときと同じくらいの 500円であれば、聴いてみる価値はあるかもしれませんが、SSW ファンは「マスト・バイ」という内容ではありません。 強いて言えば、Hugh McCracken ファンの方がいたら、いつになくフィーチャーされていると思いますので、オススメします。 僕は CD 化されたとしても、ちょっと躊躇してしまうかも。
 そんな Larry Weiss はいま何をしているのだろうか、と検索してみたら色々出てきました。 そして、本人の公式サイトも発見することができました。 その名も、ズバリ!です。


■Larry Weiss / Black & White Suite■

Side-1
Rhinestone Cowboy
Sheldon
She’s Everything She Doesn’t Want To Be
Sweet Ophelia
Lead On Me

Side-2
Lay Me Down (Roll Me Out To Sea)
Evil Woman
Anytime Babe
The World Was Filled With Love

All Selections Written and Produced by Larry Weiss
Executive Producer : Ray Wetzler

Tom Hensley : piano
Leland Sklar : bass
Rick Marotta : drums , percussion
Hugh McCracken : acoustic & electric guitars , mandolin , harmonica , organ
Jimmie Haskell : accordion , moog
James Hendrix : dobro , acoustic guitar on ‘Lay Me Down’
Jim Keltner : drums on ‘Lay Me Down’
Dean Parks : electric guitar on ‘Lay Me Down’
David Parlato : bass on ‘Lay Me Down’
Larry Weiss : organ on ‘Lay Me Down’

Strings and Horn Arranged and conducted by Jimmie Haskell
Concert Master : Sid Sharp

20th Century Records T-428


Steve Ferguson

2006-04-03 | SSW
■Steve Ferguson / Steve Ferguson■

 このところ自主制作系が多かったので、ここは一気にメジャーに行きたいと思います。
今日、ご紹介するアルバムは何と Asylum レーベル。 あの、David Geffin が創立した名門レーベルです。 Asylum といえば、Jackson Browne が最初に契約したアーティストとして有名で、Eagles や Tom Waits などを輩出した名門中の名門です。
 そんな Asylum にありながら、その黎明期に 1枚だけアルバムをリリースして、その後シーンから消えていったのが Steve Ferguson です。 売れなかったことと、プレス枚数が少なめだったせいもあってか、あまり取り上げられることがありません。 それどころか、未だに CD 化すらされていないのです。 何か特別な事情でもあるのでしょうか?
 さて、そんな Steve Ferguson ですが、Asylum では異色の黒人SSW にして、ギターとキーボードも一人でこなすマルチプレイヤーです。 そんな彼が 1973 年に発表したアルバムは、取り立てて傑作ではないのですが、ちょっと埋もれてしまうには惜しい味わいと同時代性を持ち合わせているように思います。
 1曲目「Mama」はいきなり、初期の Tom Waits 風のピアノの弾き語りです。 このエコーがかかったアップライトピアノっぽい音は何と表現するのでしょうか。 ゆるやかなストリングスも加わってアルバムへの期待を持たせてくれます。 ちょっとファンキーな「Charlemagne」、しっとりしたバラード「Gypsy Hollow」、ちょっとソウルっぽい感じで、David T.Walker の控えめなギターも聴ける「Lonesome Lover」と続いていくところは、B面よりも聴き応えがある感じがします。
 B面に移ると、後半の変拍子がユニークな「Raven」で始まり、ややファンキーな曲が続きますが、曲がいまひとつ弱いのが残念。 ようやくラストの「Excuse Me」で持ち直します。 この曲はミディアムな曲調に流麗なストリングスも重なり、Steve Ferguson 節(なんてものはないですね)の真骨頂という感じの佳曲です。 この曲が静かにエンディングを迎えて、幕を閉じると思いきや、Hey Mr. Producer !  みたいな呼びかけが入り、ホンキートンク調のピアノのインストが流れてきます。 時間にして1分ちょっとくらいでしょうか。 これはまさに別曲で、今風に言えばシークレット・トラックですね。 そして、アルバムは、その曲を弾き終えた Steve が立ち去っていく足音で終わるという洒落た演出をほどこしています。
 アルバムを聴き終えて、このアルバムは Steve Ferguson のやりたい音楽の完成形ではなかったのではないかと感じます。 力まず、くだけた感じのボーカルに、ストリングスやホーンが見事に乗っかってくるところは、Asylum の名を汚すことのない出来栄えなのですが、何かもうひとつ足りないところは否めません。 僕には、Steve が何か遠慮してしまっているように聴こえてしまうのです。 多彩な楽器を演奏できることが裏目になったのか、もっとファンキーに行くべきだったのか、それとも逆だったのか、といったことを考えてしまいます。
 そういった意味で、Steve Ferguson には、もう1枚でいいからアルバムを残してもらいたかったと思います。 残念ながら、このアルバムが唯一の作品となってしまいました。
 1973年、Asylum から発売されたちょうど10番目のアルバム。 ちなみに、ひとつ前の品番 SD5059 には Ned Doheny のファースト が、後ろの SD5061 は、Tom Waits のファーストアルバム「Closing Time」となっています。 ちょっと肩身が狭い感じですね。




■Steve Ferguson / Steve Ferguson■

Side-1
Mama
Charlemagne
Gypsy Hollow
Lonesome Lover
Maybe I’m In Love With You , Baby
Chasing The Shadow Of Relief

Side-2
Raven
Over And Over
In The Middle Of The Night
Sometimes It Seems To Wear Me Down
Excuse Me

All Songs Written by Steve Ferguson

Steve Ferguson : vocal , guitars , keyboards , mandolin
Wilton Felder : fender-bass
Ed Greene : drums
Bobbye Hall : percussion
David T.Walker : electric guitar on ‘Lonesome Lover’

Background Vocals : Clydie King , Vanetta Fields , Gwen Johnson , Sherie Matthews
Violins : Janis Gower , Charles Veal , Lenny Malarsky , Al Lustgarten , Marvin limonick , Elliot Fisher , Murry Adler , Arnold Belnick , Israel Baker , Branche beinick
Violas : Rollive Date , Virginia Majewski , Al Neiman , Allan Harshman
Cellos : Marie Pera , Ron Cooper , Ray Kelly , Ann Goodman , Alexander Reisman
String Bass : Roger Nichols
Horns : Gene Goe , blue Mitchell , Buddy Childers
Trombones : Dick Hyde , Bennie Powell , George Bohanon
Saxophones : Ernie Watts , Mike Altschul
Alto Flutes : Ernie Watts , Mike Altschul
Oboe : Ernie Watts
Clarinet : Richard Goldfarb
Strings , Horns and Background Vocals Arranged and Conducted by George Bohanon

Presented by David Geffin
Produced by Chuck Plotkin

Asylum Records SD5060

Gary Dunbar

2006-04-01 | SSW
■Gary Dunbar / Lonely Song■

 今年になってから出会ったアルバムの中では、ベストともいえるアルバムをご紹介します。 そもそも、僕は現在ではそれほど熱心にレコードを探しているわけではないのですが、時折ネット通販でチェックしてレコードを買ったりはします。 そのなかに含まれていたのがこのレコードです。 海外からの通販が多い中、これはGrampa (3/11掲載)と同時に国内の通販サイトで買うことができました。
 このアルバム、「Lonely Song」というタイトルでかなり心が動かされ、このジャケットを見たときには、まず間違いないだろうと勝手に確信したものです。
 Gary Dunbar の自主制作と思われるこのレコードは、1977年に発表されました。 アルバムは二つ折りのジャケットで紙質もしっかりしています。 なのに、裏ジャケットと背中には何の印刷もありません。 内側には兄弟なのでしょう、Gary Dunbar、Debbie Dunbar、Dave Dunbar の3人の写真と全曲の歌詞が掲載されています。 
 このアルバムはそんな Dunbar 兄弟と仲間たちが集まって制作された暖かみあふれる作品。 しかし、スタジオやレコード会社の所在地などの情報が記載されていないため、どこで作られたのを知ることはできません。 North Country Records というレーベル名から、おそらく北部、カナダに近いほうだとは思いますが。 
 アルバムは、タイトル曲の「Lonely Song」で幕を開けますが、この曲がいきなり名曲。ちょっとメロウなピアノをバックに Gary がしっとりと歌うドリーミーな曲です。 Ann Lockwood の奏でる oboe の旋律がこの曲をより引き立てています。 続く「Living A Lie」は一転して Pedal Steel が鳴り響くカントリータッチの曲。 妹(?)の Debbie Dunbar がバックコーラスで参加している唯一の曲でもあります。 バイクの走り出すSEで始まる「Burger Jock」もこれまた名曲。 まるで The Beach Boys みたいなロックンロールなのですが、音はスカスカでほのぼの。 ちょっと、Jonathan Richman を思い出しました。 「On My Way」もカントリー調の曲。 「Indian Prayer」は宗教的なメッセージのこもったミディアム・ナンバーです。
 B面に移ると、カントリーロックの「Another Lonesome Highway Song」、慈愛に満ちたワルツの「Tired Cowboy」と続きます。 「Sweet Sadness」もまた名曲。 ちょっとボサノバタッチのアレンジに Ann Lockwood の oboe がかなります。 この雰囲気は、Everything But The Girl の Ben Watt のソロのような気分です。 Ben Watt ほどの陰影はありませんが。 続いて、ポップなミディアムチューンの「Don’t Walk Alone」、ラストにふさわしい「Goodbye」へと移ります。 この曲のみ、 Gary Dunbar 一人で録音されています。
 こうしてひと通り聴いてみると、多彩な Gary Dunbar の多重録音に、弟(?)のDaveの必要最低限のドラムスというのが標準セット。 曲調によって、この標準セットに楽器トッピングをしていくというスタイルであることが分かります。 カントリー調の曲には、Fiddle や Pedal Steel を、バラードには oboe や sax を、というオーソドックスな、ものではありますが。
 最初にも書きましたが、このレコードには外からみて背タイトルもないし、品番も表記されていません。 おそらくレコード店にはあまり流通せず、Dunbar 兄弟の友人や知人の間でだけ売られただけなのだと思われます。 プレス枚数も少ないのでしょう。 僕は運よく手にすることができましたが、このアルバムに収録された音楽は、Dunbar 家とその周辺のものだけにしておくには、ちょっともったいない魅力を有しています。



■Gary Dunbar / Lonely Song■

Side-1
Lonely Song
Living A Lie
Burger Jock
On My Way
Indian Prayer

Side-2
Another Lonesome Highway Song
Tired Cowboy
Sweet Sadness
Don’t Walk Alone
Goodbye

Gary Dunbar : vocals , piano , bass , synthesizer , acoustic guitar, electric guitar
Debbie Dunbar : background vocals on ‘Living A Lie
Dave Dunbar : drums except ‘Goodbye’

Ann Lockwood : oboe on `Loney Song’ and ‘Sweet Sadness’
Tom Lockwood : sax on ‘Don’s Walk Alone’
Jerry Hendrix : pedal steel guitar on ‘Livin A Lie’ , ‘Another Lonesome Highway Song’ and ‘Tired Cowboy’
Charlie Hirschfield : bass on ‘Burger Jock’
Roger Harcourt : background vocal , bass on ’On My Way’ and ‘ Tired Cowboy’
Dick Maddey : fiddle on ‘On My Way’
Rick West : background vocal , banjo and mandolin on ‘On My Way’
Jay Fortier : background vocal , bass on ‘ Tired Cowboy’

All Songs by Gary Dunbar
Produced by Gary Dunbar
Engineerd by Debbie Dunbar , Dave Dunbar
Cover Photo by Patti Taylor

North Country Records