Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Tracey Balin

2008-09-28 | Soft Rock
■Tracey Balin / Standin’ On A Mountain Top■

  先日、北海道の旭岳に初冠雪というニュースが報道されましたが、今日は立山連峰の冠雪が確認されたようです。 たしかに今朝は冷え込みという言葉が似合うほどひんやりしました。 もう 9 月も終わり。 虫の鳴く声も静かになり、あっという間に秋本番へと近づいているようです。
  
  冠雪の話題から強引に持ってきたのが、Tracey Balin が 1978 年に発表した清涼感あふれるアルバム。 ジャケットからはコロラド産かと思いますが、意外にもテキサス州・ヒューストンのローカルレーベル、その名も Crazy Cajun からリリースされた作品です。 Crazy Cajun はカントリーやソウルのレコードを多く残している歴史の古いレーベルのようですが、有名なところでは、Ronnie Milsap が所属していました。

  Tracey Balin についての詳しい経歴はネットで調べても分かりませんでしたが、同じ Crazy Cajun から「Love Me Tonight」というアルバムを残しているほか、ABC/Dot からシングルを発表しているようです。 このレコードには参加ミュージシャンのクレジットもなく、Tracey Balin の姿も載っていないので、カントリー系の男性シンガーだと思い込んでいたところ、清楚な女性の声が飛び出したのには驚きました。 しかもサウンドはソフトロックに近いアレンジ、ビートルズのカバーが3曲もあるなどジャケットからは想像できない内容なのです。
  そのビートルズカバーについて触れておきましょう。 まずは「Good Day Sunshine」から。 この曲を選択するセンスも意外ですが、クールでスィング感のあるアレンジで上品にまとまっています。 「He’s Got A Ticket To Ride」はカーペンターズの事例もあるので、予想通りの展開。 弱冠ジャジーな展開ですが、パタパタとスネアの手数の多いドラムスが欠点な以外はそつなくまとめています。 終わり方の意外性は評価できます。 「Here Comes The Sun」は、数あるビートルズのなかでもカバー率の高い名曲。 アコギの似合う曲ですが、ここではピアノをメインにアップでリリカルに仕上げています。 コーラスに男声を入れるなど、センスのあるアレンジとなっており、この曲はアルバムの代表曲のひとつでしょう。  ビートルズではなくポールのソロ作品から「Maybe I’m Amazed」も収録されています。 この曲のカバーは特筆すべき出来にはなっていません。 選曲ミスと言えるでしょう。
 さて、他の曲でハイライトなのが「What Do You Get / Rose Garden」です。 この曲は Bacharach& David のスタンダード「I’ll Never Falling In Love Again」(邦題:恋よさようなら)の間に Lynn Anderson の「Rose Garden」を挟んだメドレー構成となっているのです。 にも関わらずジャケットには Davis / Backerack とクレジット。 よく見ると Backerack ってバカラックのこと? と唖然としてしまいました。
  アルバムのオープニングを飾る「Standin’ On A Mountain Top」と「How Can I Make You Know」は、Earl & Ernest Cate による曲。 この 2 人は、Cate Brothers 名義で今も現役で活動するミュージシャンです。

  このようにアルバムを聴いてきましたが、カントリー風味とソフトロックのアレンジが見事にブレンドした内容は高く評価できると思います。 2 曲ほど弱いなあという楽曲があるものの、通しても 30 分に満たない長さなので、そんな気持ちもすぐに忘れてしまいます。 まるで、秋の夕日のつるべおとしのようです。



■Tracey Balin / Standin’ On A Mountain Top■

Side-1
Standin’ On A Mountain Top
How Can I Make You Know
What Do You Get / Rose Garden
Good Day Sunshine
He’s Got A Ticket To Ride

Side-2
Here Comes The Sun
Maybe I’m Amazed
You’ve Lost That Lovin’ Feeling
Take Your Time

Produced by Huey P.Meaux
A&R by Uncle Mickey Moody
Distributed by Music Enterprises, Inc , Houston Texas

Crazy Cajun Records CCLP-1052

Ida

2008-09-23 | Live Report
■Shibuya Duo Music Exchange / Ida■

 2年ぶりのライブレポートです。 その間に全くライブに行かなかったわけではないのですけど、なんとなく久しぶりになってしまいました。

 仕事帰りに向かったのはアメリカのインディーズ・フォーク界の重鎮グループである Ida の初来日コンサート。 当日券で入りました。 
 Ida に関しては、姉妹ブログ「Till The Sun Turns Black」で新作「Lovers Prayers」を紹介したことがありますが、日本では熱心なファン以外にはほとんど知られていない存在です。 なので、はたして会場にお客さんが入っているのか心配したのですが、座席と立席をあわせても 70% くらいは入っていたようです。 年齢層は 30 歳前後、男女比も半々という感じでしょうか。 予想通りですが、お客さんには外国人のカップルも目立ちました。

  さて、今回の来日メンバーですが、来日メンバーは 5 人編成で、左からKarla Schickele(バイオリン&ボーカル)、Elizabeth Mitchell(手こぎオルガン&ボーカル)、Daniel Littleton(ギター&ボーカル)、Jean Cook(ドラムス)、Ruth Keating(ベース、ピアノ&ボーカル)という並びでステージに立ちました。
  ライブは二部構成だったのですが、前半は Elizabeth と Daniel によるデュオを中心とした極めてシンプルな構成。 時折 Karla や Ruth なども加わりますが、リズムセクションが一切入らない、アコースティック・セットのような内容でした。 そもそも Ida のサウンドが「スロー・コア」と称されるほどのゆったりとしたものなので、さすがにこのまま 2 時間はどうかと思っていたところ、Daniel から 10分の休憩だよ、とのコメント。 
  後半は、ドラムとベースが加わりバンド編成となったのですが、曲調はいつもの「アイダ節」なので、空気を震わせるようなボーカル、精霊のようなコーラス、禁欲的な演奏、そして抑揚のないメロディー、といったサウンドが繰り広げられました。 ラストに近い時間では、お客さんに手拍子を求めるようなシーンもありましたが、ここまでストイックで冷静なライブは初めてです。 それは、Ida が 16 年もの間守り続けてきた不変の規律を目の当たりにしたかのような気分です。
  
  クラシックのコンサートのような張り詰めた空間。 お客さんのクシャミや缶ビールが転がる音が気になるほどの静寂こそが、音と音との隙間の存在を意識した Ida の目指す世界なのでしょう。 だからこそ、関係者らしき若い奥さんが連れてきた幼児が会場をかけまわったり泣き叫んだりするのは残念でした。

  来日公演は、名古屋・大阪・姫路・岡山・福岡・京都と続きます。 詳しくは招聘元と思われるこちらのサイトをご参照ください。

■Shibuya Duo Music Exchange / Ida■

2008年9月22日
渋谷 Duo Music Exchange

20:05頃開演 22:30頃閉演

Theresa Demarest

2008-09-21 | SSW
■Theresa Demarest / Ariel■

  Theresa Demarest は 1970 年代から活動しているミュージシャン。 Tom & Theresea として 2 枚、Ten Broek & Theresea で 1 枚のレコードを残していますが、このアルバムは 1980 年になって彼女がソロ名義で発表したファースト・アルバムです。 デュオ名義だった過去のアルバムでは、男性よりも存在感があった Theresa Demarest のソロということで、欲しかった 1 枚ですが、ようやく入手することができました。 
  レーベルは Ten Broek & Theresea や John Ten Broek のソロアルバムと同じ Riverbend ですので、大きく環境が変わったということはないのですが、1970 年代からにじみ出ていたアーバンでジャジーなサウンドが強まった感のある作品となっています。

 アルバムは 4 ビートのジャズ「Tell Me Everything’s Nice」で幕を開けます。 Jonathan McLaughlin の転がるようなピアノが特に印象的ですが、ここまでジャズ寄りの楽曲でスタートするとは少々意外です。 つづく「Oh, Babe」はパーカッションの雰囲気が Carole King の「Brother, Brother」を彷彿とさせるナンバー。 この曲もピアノやギターのセンスが光ります。 ギタリスト Martin Wilson の手による「Dancer」は、ラテンのリズムと羽のように軽やかな Theresa Demarest のボーカルがマッチしたグルーヴ感あふれるナンバー。 フルートなどの管楽器のソロが入れば申し分なかったと思います。つづく「Sunshine」は、驚きのナンバーでもありこのアルバムのハイライトです。 というのもピアノのイントロやメロディーの雰囲気が、Norah Jones の名曲「Don’t Know Why」にそっくりなのです。 このようなオールドタイミーな楽曲は五万とあるかもしれませんが、息を呑みました。 A 面ラストの「Ridin’ Down Highways」はライト&スムースな楽曲。 ここでもピアノの Jonathan McLaughlin による好サポートが目立ちます。

 B 面は、複雑なアレンジの「You Got Everything Babe」でスタート。 細かいリズムの刻み方やサックスのソロの入り方など、Steely Dan を意識したことは確実でしょう。 つづく「A Feeling For You」は珠玉の名曲。 久しぶりにこんなに美しいバラードに出会えて感動してしまいました。 流麗なピアノ、美しい旋律、そしてTheresa Demarest の抑制されたエモーションと、どこをとっても欠点に見当たらない名曲です。 「Wake Up」はライトなパーカッションをバックにしたメロウなナンバー。 アレンジやソロパートなどクオリティは高いです。 「Oh, How I Feel」は、珍しくコーラスに厚みを持たせたミディアム。 ラストの「Ariel」はピアノを中心とした地味なナンバー。 バラエティに富んだアルバムを締めくくるには、こうした楽曲のほうが余韻を残すということを、よく分かっている曲順だなあと感心しました。

  このようにアルバムのクオリティは見事なものです。 1970 年代はどうしても脇役の存在だった彼女がようやく主人公となったのがこの作品ですから、彼女の創作意欲が頂点となっていたことは容易に想像できます。 この勢いで活動を盛んにしていれば、彼女はもっと多くのアルバムを世に残すことができたはずです。 しかし、次のレコードが発表されたのは 1992 年。 この 10 年の間に何があったのかは分かりませんが、Theresa Demarest はその後 4 年おきにアルバムを発表しており、ここ数年が最もリリースが多いような状態です。
 
  Theresa Demarest のソロ・アルバムはこの作品しか聴いていませんが、1970 年代の女性シンガーソングライターの作品が好きな方の琴線をくすぐることは間違いないでしょう。 特にジャズや AOR など、アダルト指向の強い SSW サウンドが好みであればなおさらです。
  このアルバムには Tom & Theresea や Ten Broek & Theresa で見せた姿よりも、堂々として力強く、エモーショナルで気品の高い一人の女性の姿がありました。



■Theresa Demarest / Ariel■

Side-1
Tell Me Everything’s Nice
Oh, Babe
Dancer
Sunshine
Ridin’ Down Highways

Side-2
You Got Everything Babe
A Feeling For You
Wake Up
Oh, How I Feel
Ariel

Producer : Theresa Demarest
Arranger : Martin Wilson
Words and Music : Theresa Demarest
except ‘Dancer’ and ‘A Feeling For You’ by Martin Wilson

Theresa Demarest : vocals
Mike LaRue : drums
Tommy Russo : backing vocals
Lezlie Botkin : backing vocals
Jim Solberg : bass
Martin Wilson : lead guitar
Jonathan McLaughlin : piano
Gary Clinton : sax

Riverbend Records RBR97701-2

Bob Kamm

2008-09-15 | SSW
■Bob Kamm / Sandbox Kingdom■

  秋に似合う弾き語りの作品をピックアップしました。 1979 年に Bob Kamm が発表したソロ・アルバムです。 1980年になろうかという時代背景とは全く無縁の音楽がここには閉じ込められています。 しかもレコーディングはカリフォルニアということで、世の中とか隔絶していたかのような内容に驚きすら覚えます。
 そのサウンドは Bob Kamm のギター1本による弾き語りなのですが、そのギターにはブルース感もなく、カントリー風味もなく、どちらかというとクラシックギターに近い奏法です。 繊細なアルペジオを主体としたシンプルなサウンドが全編を貫き、新聞でも読みながら BGM として聴きたいような内容です。

  SSW ファンにとって、やや残念なのは彼の声質とボーカルスタイルかもしれません。 この手のサウンドであれば、もう少し線の細い声のほうが似合ったと思うのですが、あまり個性的な声ではありません。 ボーカル・スタイルもリーディングに近いもので、際立ったこの手のサウンドには適していないようにも思えます。 さらには、親しみやすいメロディーが散りばめられているわけでもないので、収録時間より長く感じてしまうタイプのアルバムかもしれません。 と、ここまで辛口な表現が並びましたが、かといって全くの駄作ということではなく、統一されたモノクロの風景、抑制されたエモーション、そして徹底的に方法論を変えない楽曲群などは一定の評価をすることができると思います。

  アルバムの中では、「First Love」、「Road Ode To An Autumn Poppy」、「Epitaph For The Sons Of Shem」といった曲が個人的にはお薦めの曲になります。 どの曲もテンポを含めて似た曲が多いなか、「Education : Four Stories Tall And Short」という曲は4つのテーマに分かれた短編集のような味わい。 唯一のアップテンポとなる「The Mariner」はパーカッションなどいれば、もっと高揚感を演出できると思います。 ラストの「Sunday Dreamer」もさりげない小曲で後味を良くしています。

  Bob Kamm の音楽に接するときに感じる独特の違和感はどこにあるのかを調べてみたところ、その要因ともいえるものがわかりました。 実は(というよりやはり)彼の本業は音楽ではなかったのです。
  ネットで検索すると彼は Kamm Consulting という会社を興し、コンサルティング業を営んでいることがわかりました。 Amazon によると「The Superman Syndrome」や「Real Fatherhood」というリーダーシップや教育論と思われる著書を残しているほか、「Real Fatherhood」に関しては同名の CD を発表していることもわかりました。

  このブログで紹介したシンガーソングライターの多くが、ビジネスの世界に転進し成功を収めていますが、Bob Kamm もその一人だったのです。 このアルバムで聴かれる知性的な香りは、彼の多様な才能の一片だったということなのでしょう。 多くのミュージシャンが音楽の世界を断念し、新たな道を選んでいったのとは異なり、Bob Kamm はそもそも詩人としての創作活動から始まり、著述業・音楽そしてコンサルティングへと活動領域を広げていったようです。 その一方で、彼の創作の原点に近いものを封じ込めたはずのこのアルバムは、見向きもされないままに風化しそうな気配です。



■Bob Kamm / Sandbox Kingdom■

Side-1
First Love
Maya
Fall
Love Song Of A Local Stranger
Danny

Side-2
Education : Four Stories Tall And Short
Road Ode To An Autumn Poppy
Epitagh For The Sons Of Shem
The Mariner
Sunday Dreamer

Produced by Swoobah
Recorded at Sutton Sound Studio , Atascadero , California
All Songs by Robert H. Kamm 1979

Swoobah KM4210

Dave Rudolf

2008-09-11 | SSW
■Dave Rudolf / Folks■

  朝晩の空気が乾いてきて過ごしやすくなってきました。 秋といえば、シンガーソングライターが良く似合う季節。 できれば秋らしくしっとりとしたアルバムを取り上げていきたいと思っています。 そこで、登場したのが地味なジャケットに「Folks」「Album」と書かれたセピア色のレコードです。 このジャケットからは、翳りのある弾き語りを予想してしまいますが、内容は意外にも明るくバラエティに富んだカントリー・ロックとなっています。 

 Dave Rudolf が 1976 年に発表したこのレコードは、アメリカのどこで録音されたかもわかりません。 いや、もっと言うとアメリカである確証すらありません。 丁寧な歌詞カードやメンバーの写真が載った 14 ページものブックレットが封入されているにも関わらず、そうした基本的な情報が抜け落ちているのです。

 そんなアルバムを振り返って見ましょう。 A 面はのどかな「Folks」でスタート。 アレンジはカントリー風で初めて聴く人は途惑うかもしれません。 つづく「The Night」ではボーカルにエフェクトをかけていて更に驚くことになります。 ジャケットの印象だけで決めつけてはいけないことを改めて痛感しつつ、バンジョーのイントロで「Jodie」へ。 この曲もオーソドックスなカントリーで特にコメントする点はないのですが、つづく「Nightclub Dancer」は個人的なお気に入りです。 リズムセクションを排除したこのバラードは、ピアノやギターの音色だけで物悲しい気分にさせられます。 一転してアップに転じる「Hindsight」はトロピカルなテイストすら感じさせる陽気な曲。 「Postscript」は、しみじみと思い出をなぞるかのような名曲。 ブックレットにこの曲の歌詞だけが漏れているのは意図的なのかミスなのかはわかりませんが、何か特別な思いを感じさせる曲となっています。

 お皿をひっくり返すと、「The Gambler」は軽快なロックンロール。 もうB面なので、「いったいどこが Folks なの?」と思うほうが野暮というものでしょう。 つづく「Number Blues」も大らかなカントリー・ロック。 その手の王道路線なので粗探しなどはできません。 歌い出しが静かな「Turning Pages」はスロー・バラードかと思いきや、メリハリの利いた展開となり、派手な B 面という印象を決定的にします。 しかし、次の「Who Takes Them Dancing?」で、ようやく渋みのあるスローを迎えます。 急に枯れた空気を運んでくるこの楽曲で流れが変わってくるのですが、次の「Friends」でラストとなります。 この曲も同じテイストとなるもの、より郷愁漂う感じがするのはハーモニカのせいでしょうか。 この 2 曲で日が沈むかのようにレコードは幕を閉じます。

 こうしてこのレコードを聴いてきましたが、両面ともに前半は盛り上がって後半は落ち着きを取り戻すという構成になっています。 逆よりはいいですが、曲順にはもうひと工夫あっても良かったかなという印象です。

 さて、Dave Rudolf ですが、きっとこのアルバムだけで消息を絶っているものと思っていましたが、どうやらそれは間違いでした。 彼の名前で検索すると一番上に出てくるページがあり、ここが彼の公式ページだったのです。 「The Wacky World of Dave Rudolf」という名のサイトには、クリスマス・ハロウィーンなどキッズ向けのアルバムが多く掲載されており、彼がそうしたジャンルに特化した音楽活動を続けていることがわかりました。 そうした理由からか、この「Folks」はここには載っていなかったのですが、サイトに写っている Dave Rudolf の顔写真とブックレットを見比べて同一人物と確信しました。 
  どのようなジャンルであれ、元気に音楽活動を続けていることはうれしいことです。 



■Dave Rudolf / Folks■

Side-1
Folks
The Night
Jodie
Nightclub Dancer
Hindsight
Postscript

Side-2
The Gambler
Number Blues
Turning Pages
Who Takes Them Dancing?
Friends

Produced by Dave Rudolf
Lyrics and Music (All Songs) : Dave Rudolf
Recorded at Pumpkin Studio
Album Design and Published : Dave Schaefer

Dave Rudolf : vocals, acoustic guitar
Greg Bigler : bass
Rich Benoit : drums, percussion
Marty Giardina : acoustic guitar, electric guitar
Fred Kane : acoustic guitar
Steve Small : pedal steel
Tom Caraher : piano
Gary Loizzo : backup vocals, electric guitar
John Burchfield : banjo
Ed Tossing : piano, string synthesizer
Pat Rzonca: piano

Tunesmythe Records


Lyle Swedeen

2008-09-07 | SSW
■Lyle Swedeen / Sunshine Inside■

  マイナーレーベルのレコードが多かったので、今日は隠れた SSW の名門 Fantasy Records からリリースされた Lyle Swedeen のアルバムを取り上げてみました。
  彼の唯一と思われるこのアルバムは、日本では SSW 好きの間では有名なものです。 しかし、海外ではほとんど語られることがなく、検索しても作品をレビューするようなサイトを発見することすらできませんでした。 その理由がどこにあるかの見当はまったくつかないのですが。

  レーベルが名門ということもあって、参加しているミュージシャンの豪華さが目を引きます。 Lee Sklar や Joe Osborn などリズムセクションを中心に名手が名を連ねていますが、最も影響を及ぼしているのは、アレンジを担っている Larry Knechtel でしょう。 オープニングの「Can’t Dance Without Music」で聴かれる鍵盤のイントロは間違いなく彼の発行する証明書に同意するようなものです。 ファンキーなオープニングにつづく「Meadowbird」は浮遊感のあるメロウなバラード。 そして、ブルージーなオルガンの音色に導かれて始まる「It’s All Over Now」はエモーショナルな曲調とサビでのコーラスが魅力の珠玉の名曲。 アルバムのハイライトとも言える楽曲だと思いますが、ここまで盛り上げきる展開は、まさに日本人好みといえます。 つづく「I’m Never Gonna Be Lonely Again」はライトなタッチが乾いた大陸性高気圧の天候に良く似合う曲。 そしてアルバムタイトルの「Sunshine Inside」は転調の激しいユニークな楽曲。 サビの部分でワルツになるところが奇妙な感じです。

  カラッとした青空のような「Of Your Precious Time」でB面はスタート。 この曲もハイトーンの Lyle Swedeen の魅力満載の佳作となっています。 ラストのコーラス部分の聴き応えも十分。 つづく「Easily」には、ギターの名手 Dennis Budimir が参加したしっとりした小曲。 一転して「If I Were A Rainbow」はハードで歌い上げるアップ・ナンバー。 スワンプ色の濃い「Horace Greely」に続いては、Bob Dylan の「It Takes A Lot To Laugh, It Takes A Train To Cry」です。 アルバムのラストにこの曲を持ってくる意図は読めませんが、無難にこのルーズな曲を料理しています。 
  こうしてこのアルバムのクオリティを再確認しながらも、欠点があるとしたら、その一つは David Kemper にあると思います。 ドラムスはすべて彼が叩いているのですが、全体に音に締まりが無く、僕の耳にはノイジーで雑に聴こえてしまうのです。 これは彼のテクニックの問題ではなくレコーディング機材やアレンジに依存するものかもしれまんが、Jim Keltner のような老獪かつシュアなタイプの人の方が断然似合っているように思いました。

  さて、冒頭にも Lyle Swedeen について語る英語のサイトがないことを書きましたが、ミュージシャンとしての彼らしき名前を見つけることができました。 それは Lazy Ike Band というバンドのメンバーとして、です。 このサイトでは、Lyle Swedeen はギターやスティールギターなど複数の楽器の使い手として Lazy Ike のバックバンドである Daredevils に参加していることがわかります。 残念ながらそこには写真が載っていないために、推測の域を出ませんが、NY や LA でセッションしていたとか、Joni Mitchell と共演したこともある、といった紹介のされ方から見ると、かなりの確率で本人に違いないと思います。 Lyle Swedeen がこのアルバムを発表した時に 25 歳だとしたら、今年で 59 歳… 、可能性はありうると思います。




■Lyle Swedeen / Sunshine Inside■

Side-1
Can’t Dance Without Music
Meadowbird
It’s All Over Now
I’m Never Gonna Be Lonely Again
Sunshine Inside

Side-2
Of Your Precious Time
Easily
If I Were A Rainbow
Horace Greely
It Takes A Lot To Laugh, It Takes A Train To Cry

Produced by Jackie Mills for Wednesday Child Productions
Arranged and conducted by Larry Knechtel
Recorded at Larrabee Sound , Holywood , California

Lyle Swedeen : acoustic guitar, keyboards, background vocal
Jefferson Kewley : acoustic guitar
Mike Stewart : acoustic guitar
Tony Peruso : electric guitar
Dennis Budimir : acoustic guitar
Larry Knechtel : keyboards
Lee Sklar : bass
Dave Kemper : drums
Bad Henry Davis : bass
Joe Osborn : bass
Ronnie Blakeley : background vocal
Tom Elkes : background vocal
Larrabirds (Carolyn Willis, Julia Tillman, Lorna Willard) : background vocals

Fantasy Records F-9471