■Downpour / Flyaway■
「土砂降り」というバンド名にしてはタイトルが Fly Away。 ジャケットは満月に向かって羽ばたく渡り鳥のようなイラストということで、およそ名盤とはほど遠いたたずまいを見せるこのアルバムは、そんな予想を見事に裏切る名盤。 Philo 傘下の Fretless からリリースされているのですが、このジャケットのせいもあって埋もれつつあるのが惜しいアルバムです。
裏ジャケットには腕利きのような 4 人のメンバーが写っているものの、リードボーカルやコーラスといった表示が一切無いために、インストゥルメンタル・グループと誤解されてもおかしくありません。 そんな不親切なクレジットやインパクト先行型のジャケットとは裏腹に、このバンドの生み出すサウンドは、メロウにして繊細、クールながらも温もりのあるもので、同年代のメジャーなアルバムと肩を並べても遜色の無い内容です。
アルバムは全 11 曲ですが、Bob Recupero が 6 曲、George Erwin が 4 曲、そして Charlie Rice が 1 曲を書いており、共作やカバーはありません。 作曲者別にコメントしてみることにします。
まずは George Erwinの曲から。 彼はタイトル曲「Fly Away」を書き、ジャケットでも左上に位置していることからこのバンドのリーダーだと思われます。 そのタイトル曲「Fly Away」はアカペラ風コーラスから始まるナンバー。 ちょっとジャズ風なリズムアレンジに繰り返しサビが歌われるキャッチーな曲ではありますが、他の優れた楽曲に比べると見劣りする気がします。 このようにポップさを意識した曲がもうひとつあって、それが「Can You Hear Me」です。 この曲は、ボーカルがユニゾンで歌われるところがグループサウンズのような味わい。 メロディーだけとると、1970 年代初期の The Moody Blues を思い出させます。 アルバムのなかではやや異色とも言えるでしょう。 そんな彼の楽曲のなかで優れているのは「The Rain , The Sun And Me」と「Sister」です。 B 面のオープニングを飾る前者は、CSN&Y 張りのコーラスが美しいミディアム。 曲の半ばから徐々にクールに展開するところが聴きどころ。 個々のメンバーのさりげない演奏力も見逃せません。 「Sister」はギターの弾き語りからスムースに展開してくバラード。 この曲もハーモニーが見事でこの手のサウンドが好きな人にはたまらないでしょう。
Charlie Rice が唯一書き下ろした「After Hours Lady」は、フロリダとかハワイにいるようなリゾート風の陽気なナンバー。 スティールドラムが入ってくれば言うことなしというアレンジです。
さて、最後に Bob Recupero の曲です。 まずピックアップしたのが、アルバムのオープニングを飾る「Come Along With You」です。 この曲は「メロウ・グルーヴかくあるべし」という楽曲で センスのある演奏とボーカル&コーラスが見事に溶け合った名曲です。 このようなサウンドは、演奏やコーラスなどサウンドを構成する要素が微妙にかみ合わずに、惜しい結果となることが多いのですが、この曲のバランス感は非の打ち所のない最高のものです。 他にもミディアムでコーラスの引き立った楽曲「You’re Leavin’」も素晴らしく、脇を固めるアコギやピアノのソロなども表情豊かでセンス抜群です。 ライトなテイストの「Long Run」 は誰ひとりとして自己主張しないコーラスに続いてアコギのギターソロに入るあたりのセンスがたまりません。 そして、アルバムラストの「So Good To See You」は、うすくアコギとバイオリンが聴こえる以外は、メンバー全員と思われるコーラスが主体となったバラード。 アルバムのラストらしい歌詞とサウンドにうっとりするうちに、見事なストリングスで見事なエンディングとなります。 このアルバムを締めくくるにふさわしい終わり方です。 このように Bob Recupero はこのアルバムの核となる楽曲を書いていることを再確認しました。 例外的に遊び心が入っているのは「Mostly You」と「Join Me For Dinner」です。 ともに 4 ビートのジャズなのですが、リードやコーラスのほうもリズム感を失わずにカッコよく決めています。
このように Downpour のアルバムを紹介してきましたが、このアルバムが彼らの唯一の作品となってしまったようです。 ネットで検索しても、このアルバムについて多くを語っているサイトは見当たりませんでした。 残念ながら個々のメンバーのソロ活動も確認できず、このアルバムからたどり着く金脈はどうやら無さそうです。 いったい彼らはいまどこで何をしているのでしょうか。 きっと、それぞれの人生を着実に歩んでいることでしょう。 彼らの人生もおそらくは終盤に差し掛かっているはずです。 しかし、Downpour のコーラスワークは 30 年近く経った今でも色あせることなくレコード盤に刻み込まれているのです。
■Downpour / Flyaway■
Side-1
Come Along With You
After Hours Lady
Mostly You
You’re Leavin’
Fly Away
Side-2
The Rain , The Sun And Me
Join Me For Dinner
Can You Hear Me
Sister
Long Run
So Good To See You
Produced by Downpour , Michael Couture and Lane Gibson
Arranged by Downpour and Lane Gibson
Recorded At Earth Audio Techniques in North Ferrisburg , Vermont , May through August 1978
Downpour is
George Erwin : bass guitar
Tim Rice : drums
Charlie Rice : rhythm guitar
Bob Recupero : lead guitar
Lane Gibson : keyboards
John Cassel : piano on ’Mostly You’
Tom Fraioli : violin on ‘Sister’ and ‘So Good To See You’
Fretless FR137
「土砂降り」というバンド名にしてはタイトルが Fly Away。 ジャケットは満月に向かって羽ばたく渡り鳥のようなイラストということで、およそ名盤とはほど遠いたたずまいを見せるこのアルバムは、そんな予想を見事に裏切る名盤。 Philo 傘下の Fretless からリリースされているのですが、このジャケットのせいもあって埋もれつつあるのが惜しいアルバムです。
裏ジャケットには腕利きのような 4 人のメンバーが写っているものの、リードボーカルやコーラスといった表示が一切無いために、インストゥルメンタル・グループと誤解されてもおかしくありません。 そんな不親切なクレジットやインパクト先行型のジャケットとは裏腹に、このバンドの生み出すサウンドは、メロウにして繊細、クールながらも温もりのあるもので、同年代のメジャーなアルバムと肩を並べても遜色の無い内容です。
アルバムは全 11 曲ですが、Bob Recupero が 6 曲、George Erwin が 4 曲、そして Charlie Rice が 1 曲を書いており、共作やカバーはありません。 作曲者別にコメントしてみることにします。
まずは George Erwinの曲から。 彼はタイトル曲「Fly Away」を書き、ジャケットでも左上に位置していることからこのバンドのリーダーだと思われます。 そのタイトル曲「Fly Away」はアカペラ風コーラスから始まるナンバー。 ちょっとジャズ風なリズムアレンジに繰り返しサビが歌われるキャッチーな曲ではありますが、他の優れた楽曲に比べると見劣りする気がします。 このようにポップさを意識した曲がもうひとつあって、それが「Can You Hear Me」です。 この曲は、ボーカルがユニゾンで歌われるところがグループサウンズのような味わい。 メロディーだけとると、1970 年代初期の The Moody Blues を思い出させます。 アルバムのなかではやや異色とも言えるでしょう。 そんな彼の楽曲のなかで優れているのは「The Rain , The Sun And Me」と「Sister」です。 B 面のオープニングを飾る前者は、CSN&Y 張りのコーラスが美しいミディアム。 曲の半ばから徐々にクールに展開するところが聴きどころ。 個々のメンバーのさりげない演奏力も見逃せません。 「Sister」はギターの弾き語りからスムースに展開してくバラード。 この曲もハーモニーが見事でこの手のサウンドが好きな人にはたまらないでしょう。
Charlie Rice が唯一書き下ろした「After Hours Lady」は、フロリダとかハワイにいるようなリゾート風の陽気なナンバー。 スティールドラムが入ってくれば言うことなしというアレンジです。
さて、最後に Bob Recupero の曲です。 まずピックアップしたのが、アルバムのオープニングを飾る「Come Along With You」です。 この曲は「メロウ・グルーヴかくあるべし」という楽曲で センスのある演奏とボーカル&コーラスが見事に溶け合った名曲です。 このようなサウンドは、演奏やコーラスなどサウンドを構成する要素が微妙にかみ合わずに、惜しい結果となることが多いのですが、この曲のバランス感は非の打ち所のない最高のものです。 他にもミディアムでコーラスの引き立った楽曲「You’re Leavin’」も素晴らしく、脇を固めるアコギやピアノのソロなども表情豊かでセンス抜群です。 ライトなテイストの「Long Run」 は誰ひとりとして自己主張しないコーラスに続いてアコギのギターソロに入るあたりのセンスがたまりません。 そして、アルバムラストの「So Good To See You」は、うすくアコギとバイオリンが聴こえる以外は、メンバー全員と思われるコーラスが主体となったバラード。 アルバムのラストらしい歌詞とサウンドにうっとりするうちに、見事なストリングスで見事なエンディングとなります。 このアルバムを締めくくるにふさわしい終わり方です。 このように Bob Recupero はこのアルバムの核となる楽曲を書いていることを再確認しました。 例外的に遊び心が入っているのは「Mostly You」と「Join Me For Dinner」です。 ともに 4 ビートのジャズなのですが、リードやコーラスのほうもリズム感を失わずにカッコよく決めています。
このように Downpour のアルバムを紹介してきましたが、このアルバムが彼らの唯一の作品となってしまったようです。 ネットで検索しても、このアルバムについて多くを語っているサイトは見当たりませんでした。 残念ながら個々のメンバーのソロ活動も確認できず、このアルバムからたどり着く金脈はどうやら無さそうです。 いったい彼らはいまどこで何をしているのでしょうか。 きっと、それぞれの人生を着実に歩んでいることでしょう。 彼らの人生もおそらくは終盤に差し掛かっているはずです。 しかし、Downpour のコーラスワークは 30 年近く経った今でも色あせることなくレコード盤に刻み込まれているのです。
■Downpour / Flyaway■
Side-1
Come Along With You
After Hours Lady
Mostly You
You’re Leavin’
Fly Away
Side-2
The Rain , The Sun And Me
Join Me For Dinner
Can You Hear Me
Sister
Long Run
So Good To See You
Produced by Downpour , Michael Couture and Lane Gibson
Arranged by Downpour and Lane Gibson
Recorded At Earth Audio Techniques in North Ferrisburg , Vermont , May through August 1978
Downpour is
George Erwin : bass guitar
Tim Rice : drums
Charlie Rice : rhythm guitar
Bob Recupero : lead guitar
Lane Gibson : keyboards
John Cassel : piano on ’Mostly You’
Tom Fraioli : violin on ‘Sister’ and ‘So Good To See You’
Fretless FR137