Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

The Pied Pumkin String Ensemble

2009-07-26 | Folk
■The Pied Pumkin String Ensemble■

  今日、この記事を書くまで、このバンドのことを The Pied Pumpkin String Ensemble だと思い込んでいました。 日本語で言うと「かぼちゃパイ・弦楽団」というわけです。 しかし、よくよく見ると Pumpkin ではなく Pumkin となっていたのです。 そんな単語があるのかと、ネットの辞書で調べてみましたが、出てきませんでした。 ということで、p があろうと無かろうと、意味は変わらず、ということなのだろうと勝手に決め付けることにしました。

  The Pied Pumkin String Ensemble はカナダのバンクーバー出身の 3 人組。 このアルバムはデビュー・アルバムにして、ライブ録音盤です。 聴いている限りは、ライン録音したのでしょうか、会場の臨場感や熱気はほとんど伝わってきません。 曲の終わりに拍手が入ることで、ライブだったということに気付くのです。
  そんな彼らのサウンドは、リーダー的な存在の Rick Scott のボーカル、Joe Mock のギター、Shari Ulrich のヴァイオリンというシンプルな編成で奏でられます。 曲によって、フルートやダルシマーが入りますが、基本編成に大きく変わりはありません。 曲を最も多く書いているのは Rick Scott ですが、彼のボーカルはこれといった特徴はありません。 その一方で、Joe Mock のボーカルは鼻にかかった声で、ふと Elvis Costello の若い頃を思い出してしまいました。 曲としても Joe の手がけた「Kootenay Bark」は、アルバムのなかでも出来のいいものとなっています。

  クレジットでは A 面が Side of Fries、B 面が Side Salad と名付けられていますが、特に大きな変化が感じられるわけではありません。 彼ら独特のユーモアなのでしょう。 Side of Fries では、先に触れた「Kootenay Bark」以外ではShari Ulrich が歌い出しでボーカルを務める「I Believe」がお勧めです。 途中でボーカルが交代するなど曲調を変化させながら進むこの曲は彼らのレパートリーのなかでも、最もアーティスティックなものに聴こえます。
  Side Salad のお勧めは、やはり Joe の楽曲「You Can Change The World」です。 オバマ大統領のメッセージみたいなタイトルですが、楽曲はまったりとした緩めのものです。 こんなムードでは世界は変えられないと思ってしまいますが、どこか皮肉めいた歌詞なのかもしれません。 ラストの「People I Love You」は、乗りのよさと憂いを帯びたメロディーに好感が持てる楽曲。 おそらくこうしたタイプの楽曲がライブでは受けるのでしょう。

  こうして The Pied Pumkin String Ensemble のアルバムを聴いてみると、ジャケットほどふざけていないという感想を持ちました。 何しろジャケットでは Rick Scott が紅一点の Shari Ulrich の頬を舐めていたりして、仲が良いとかいうよりは、大学のサークルのような乗りみたいだからです。 そんな彼らは本当に気のあう仲間なのでしょう。 現在もこの 3 人のままで活動を続けていました。 公式サイトの写真を見ると、その仲の良さは、羨ましくさえ思うほどです。

■The Pied Pumkin String Ensemble■

Side of Fries
Orville Goes To The Country
Kootenay Bark
I Believe
Medley – Over the Waterfall , The Wind That Shakes The Barley, Bonaparte’s Retreat

Side Salad
Long & Lonely
Ming 14
You Can Change The World
People I Love You

Produced by Pumkins
Recorded live at S.F.U. by Kelly-Deyong mobile unit
Joe Mock : guitar, vocals
Shari Ulrich : violin, mandolin, flute, vocals
Rick Scott : dulcimer, vocals

Squash

Wild Blue Yonder

2009-07-12 | AOR
■Wild Blue Yonder / Blue Print■

  カリフォルニア出身のローカル AOR グループ、Wild Blue Yonder が 1978 年に発表したファースト・アルバム。 にじんだ水彩画のようなイラストからは、アコースティック寄りのサウンドを想像しがちですが、そうではありません。 西海岸出身ながらも、サウンドは Steely Dan の影響が強く感じられ、アダルトでアーバンな指向性が強いサウンドが楽しめるアルバムとなっています。

  Wild Blue Yonder は、Jim と Bill の Bixler 兄弟そして Jim の奥さんのJudy を中心に結成された 7 人編成。 個々の操る楽器を見てもわかるように、ありとあらゆる楽器を駆使して、当時の流行であった AOR サウンドを奏でています。 個人的には派手なシンセの音がしないところが気に入っており、洗練されたサウンドを指向していながら、自分たちのローカルなサウンド・プロデュースの枠を突き抜けられていないもどかしさも伝わってきます。 メジャーレーベルから声がかかり、優秀なプロデューサーが擁立されていたならば、もしかすると大きく化けていたかもしれません。

  彼らのサウンドは、4 人で交代するリードボーカルがひとつの特徴です。 女性の Judy Bixler はメロウで爽快、Jim Bixler は乾いた感じでスムース、Bill Bixler は Jim に比べてやや粘っこい印象。 Phil Wimber(メインはギタリスト)はエモーショナルでソウルフル、といった具合です。 歌の上手さと個性は、Bixler 兄弟よりも Phil Wimber に軍配が上がります。 とくに、彼がリードボーカルを務めた唯一の曲「Last Thing In The World」はアレンジが Steely Dan そっくりなこともあり、アルバムを代表する 1 曲に仕上がっています。 Phil Wimber にもっと歌わせたかったところですが、Wild Blue Yonder は Bixler 兄弟に主導権があるので、仕方ないところでしょう。
  Judy とJim のボーカルは単独での存在感は薄いのですが、ほとんどの場合、2 人がハーモニーで絡んでくるので、そのあたりが聴き所となっています。 「This Is For You」や「Begonia Snow」がそういった類の曲に該当するのですが、どちらも水準以上の出来栄えとなっています。 Bill Bixler の本業はサックスなので、彼は「Spoon Charisma」と「Tragic Emblem」の2曲しかボーカルをとっていません。 前者はスティールドラムが起用されていますが、その必然性が伝わってこないところが残念。 「Tragic Emblem」のほうが後半のいい流れのなかにうまく納まっている印象です。

  ここまで断片的に曲に触れてきましたが、個人的に好みな曲は何かと言えば、B 面の「Paradise」です。 この曲はクラブの DJ あたりが探していそうなライト&スムース感があり、奥行きや味わい深さはないのですがクセのない心地よい楽曲です。 前奏曲まで用意していることから、この曲は彼らにとっても重視していた曲なのでしょう。 

  さて、この Wild Blue Yonder ですが、もう 1 枚「Enthusiasm」というアルバムを発表していますが、こちらは未聴です。 彼らのサイトによると、現在もほぼ同じメンバーで活動を続けている様子が伺えました。 しかし、残念なことに Judy Bixler は自転車事故ですでに亡くなっていました。

■Wild Blue Yonder / Blue Print■

Side-1
Ridin’ Next To You
Instant Gratification
This Is For You
Spoon Charisma
Under The Weather

Side-2
Prelude To Paradise
Paradise
Last Thing In The World
Tragic Emblem
Begonia Snow

Produced by Wild Blue Yonder in association with John Schnell

Wild Blue Yonder
Judy Bixler : vocals, electric piano
Jim Bixler : vocals, acoustic & electric guitar, alto & soprano saxophone, cowbell
Phil Wimber : vocals, acoustic & electric guitar, piano
Bill Bixler : vocals, electric piano, clavinet, piano, soprano tenor & alto saxophone
Tad Wadhams : vocals, electric fretless bass
Jeff Bowman : vibes, steel drum, congas, bongos, misc, percussion, vocals
Alan Carlson : drums, piano, vocals

Strings arrangements by Bill Bixler
Strings : Jerald Keith Barnett, Irene Ikeda Bowman, Jasmine June Murphy

Totallyoutofcontrol Records K-2504

David Maloney

2009-07-05 | SSW
■David Maloney / Listen To The Pipes■

  ブログ更新にだいぶ間が空いてしまいましたが、前回につづいて David Maloney のアルバムを取り上げてみました。 「Listen To The Pipes」はソロ名義としては 2 枚目となる 1985 年の作品です。

  このアルバムも David Maloney 自身の楽曲がほとんどを占めますが、スコットランドのシンガーソングライター Dougie Maclean、大御所 Eric Bogle そして前回に続いて Tom Dundee のカバーが各々 1 曲づつ収録されています。 Dougie Maclean はアルバム・ジャケットが素晴らしいことでも有名な SSW です。

  さて、このアルバムの特徴は前作よりもシンプルで素朴な味わいとなっていることでしょう。 楽器の基本編成もシンプルで、大人びたビターな味わいが広がっています。 もうひとつの特徴としては、ゲスト・ミュージシャンが奏でる英国的なサウンドです。 バグパイプ・ペニーホイッスル・リコーダー・バロックフルートといったトラディショナルな楽器が随所に参加しており、このアルバムの趣を支える重要なエッセンスとなっています。 David Maloney はおそらくスコットランド系移民の子孫なのでしょう。 彼のその故郷への思いがこのアルバムの根底に横たわっているようです。 海辺から遠くを眺めるしぐさ、「Listen To The Pipes」というタイトルからも、そのことが窺えます。 話は微妙にずれますが、レコーディングが地元のサンフランシスコなのに、なぜかマスタリングとプレス製造がカナダのトロントとなっているところも不思議な点です。

  アルバムを簡単におさらいしておきましょう。 オープニングの「Brand New Light」は凪の海を漂うようなミディアム。 Rosie Gaines がゲスト・ボーカルで参加しています。 つづく「Caledonia」は Dougie Maclean の手によるワルツ。 この曲は彼のファーストアルバムのラストに収録されているナンバー。 どうやら彼の代表作のようです。 カントリー調の「Bailey’s Barn」を挟んで、しっとり系バラードの「Dark Eyed Lady」へ。 この曲にはパートナーの Ginny Reilly がデュエットで参加しています。「I Can Hardly Believe My Eyes」と「Emily’s Back」はともに小気味よいアップナンバーでした。

  B 面はアルバムタイトルの「Listen To The Pipes」から。 今まで述べているようにスコットランドへの想いが詰まった楽曲です。 Eric Bogle の「If Wishes Were Fishes」はトラッド的な味わい、つづくTom Dundee の「Right Lane Man」もカントリー風味でした。 「The Fight」は自身でもソロ活動をしているDavid Rea のサポートが強く貢献している楽曲。 管楽器が賑やかな「I Never Thought I’d Go」、いかにもラストっぽい作りの「Waiting For The Dove」で引き潮のようにアルバムは幕を閉じます。

  このようにアルバムは特に大きな欠点もなく淡々と進んでいくのですが、それほど印象が強く残らないのもまた事実です。 圧倒的な存在感で突出している曲がないことから、メリハリが効いていないようにも思えるのです。 とはいえ、例えば海辺の別荘で夕日が沈みそうになる頃合に聴くレコードとしては、お似合いのようにも思います。 つまりは、このレコードを聴く最適なシチュエーションが残念ながら我が家ではなかったということなのでしょう。 そう納得してレコードを棚に戻すことにしました。

■David Maloney / Listen To The Pipes■

Side-1
Brand New Light
Caledonia
Bailey’s Barn
Dark Eyed Lady
I Can Hardly Believe My Eyes
Emily’s Back

Side-2
Listen To The Pipes
If Wishes Were Fishes
Right Lane Man
The Fight
I Never Thought I’d Go
Waiting For The Dove

Produced by Neil Jay Young and David Maloney
Engineering and production assistance by Wilson Dyer

David Maloney : vocals , acoustic guitar
David Rea : acoustic and electric guitar, banjo
Robin Sylvester : bass
Bill Hendrickson : drums and percussion

Rosie Gaines : vocals
Phil Aaberg : piano, synthesizer
Wilson Dyer : electric guitar
Chris Caswell : baroque flute, highland bagpipes, pennywhistle
James Jacobs : recorder
Joe Goldmark : pedal steel
Steve Gurr : harmonica
Ginny reilly : duet vocals, harmony vocals
Ron Wilson : congas
Bob Stohl : flute
Kat Epple : flute
Danny Carnahan : violin
Kathleen Ortiz : clarinet
Larry Batiste : trombone
Dean Boysen : trumpet

Heartwood Records OHWD-100