Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

The Newborn

2008-12-30 | Soft Rock
■The Newborn / The Newborn■
 
  2008 年は、The Who、Jackson Browne、Carole King など超がつくベテラン・アーティストのライブを見ました。 どのライブも素晴らしかったのですが、同時にチケットも高いこと…  それらのなかで、ベストは何かと言われたら悩みますが、やはり Carole King でしょう。 新鮮さと感慨深さでは 1990 年の初来日(NHK ホール)には遠く及びませんが、今回のオーチャード・ホールでのライブは温かみあふれる素晴らしいものでした。 職業作家としては The Beatles 以前から活動してきた彼女の 50 年近い歴史はまさに生きる伝説です。

  さて、今年最後のレコードは、そんな Carole King にまつわるアルバムです。 本人は直接関係していないのですが、この「The Newborn」のアルバムは、全 10 曲中 9 曲が Carole King のカバーなのです。 残る 1 曲も Barry Mann 等の「On Broadway」ですので、選曲の狙いが良く見えてきます。
  では、どのような内容かというと、ユニゾン主体の女性ハーモニーによるソフトロック調にアレンジされたカバー集なのです。 もっと上手い表現をしたいところですが、頭に浮かびません。 女性ボーカルは曲によって編成が変わっているようですが、トータルで 5 名くらいと想像します。 バックは、ピアノ&エレピ・ドラムス・ベースの 3 人と思われ、ギターやホーンは参加していません。 いずれも、メンバーの名前や構成すらクレジットされておらず詳しいことが全くわからないのが、このアルバムのもどかしいところです。 

  アルバムはどの曲も素晴らしいのですが、このアルバムを買った 10 年ほど前にはじめて聴いた「So Far Away」のインパクトが忘れられません。 そういうコンセプトなのかという驚きと、アルバムとの出会いに対する興奮が一気に交錯したのです。 次点は、「You Got A Friend」(アルバム表記では You’ve の’ve が抜けています)で、その次は「Up On The Roof」、「It’s Too Late」などです。 それ以外の曲も、アルバムの統一感を損なうことなく、洗練されたコーラスアレンジでカバーされており、あっという間に聴き終えてしまう 30 数分です。 今回、アルバムを 2 回聴きましたが、単なる Carole King カバーに終わらず、ひとつの世界観を追求している姿勢を強く感じることができました。 1977 年に人知れずマイナー・レーベルから発売された作品ですが、30 年以上過ぎた今でも、その音楽の鮮度は全く落ちていません。 もちろん、オリジナルの楽曲のクオリティに支えられているのは間違いないのですが、それだけでこの作品の輝きは生まれないでしょう。

  最後に補足的なコメントをふたつほど。 耳なじみのないタイトルの「Toy Balloon」とある曲は、アルバム「Writer」に収録されている「No Easy Way Down」です。 「Toy Balloon」という言葉は歌詞に登場するのですが、勝手に改名した意図は不明ですし、そもそも改名など認められないのではないかと思います。 もうひとつは「On Broadway」です。 この曲にだけ、コーラスに男声が参加しています。 よく聴かないと気づかないほどの自然な入り方は巧妙です。

  このアルバムの謎を解く数少いのヒントは、プロデューサーの Nino Caruso ですが、彼もまた謎の人物。 イタリア人の陶芸家に同姓同名の人物がいることを知りましたが、おそらく別人だと思われます。 色彩がにじみ出るようなジャケットを描いた Sonja Eisenberg は公式サイトもある画家で、現在も活動している様子です。 クレジットから解き明かすとすれば、彼女だけがこのアルバムの制作背景を知る唯一の手がかりとなっているのです。

  さて、今年もあと 1 日です。 あまりに急激な経済の悪化に、人々がついていけなくなるという年末になってしまいましたが、少しでも明るい兆しが見えてくるような来年になることを願いつつ、今年のブログを締めたいと思います。 よいお年をお過ごしください。



■The Newborn / The Newborn■

Side-1
So Far Away
It’s Too Late
You Got A Friend
Toy Balloon
On Broadway

Side-2
Up On The Roof
Smackwater Jack
Natural Woman
Where You Lead
Beautiful

Produced by Nino Caruso
Cover painting by Sonja Eisenberg
Album design : D.T. Graphic Associates

Tomorrow Records TVI-132

Abner Burnett

2008-12-28 | SSW
■Abner Burnett / Old McDonald■
 
  テキサス出身の Abner Burnett は 1953 年生まれの現役シンガーソングライター。 1968 年に 15 歳でシングル・デビューしているという早熟な経歴を持っているわりには、アルバムの数も少なく、いまだに地元テキサスで地味な音楽活動を続けているようです。 Abner Burnett の詳しいキャリアについては、myspace のオフィシャルサイトに書かれていますが、比較されるミュージシャンとして、John Hiatt や Randy Newman をあげています。 これが自薦なのか他人によるものなのかは不明ですが、John Hiatt の持つだらりとした気だるさは共通のテイストを感じます。

  今日取り上げたのは、彼が 1979 年にリリースしたセカンド・アルバム。 テキサス州のお隣のニューメキシコ州でレコーディングされました。 オリジナルは少なく、トラディショナルやカバーで大半を占めているのですが、選曲やアレンジにAbner Burnett の意志が濃く反映されているようで、聴き応えのある内容になっています。 1979 年というディスコと AOR の時代に、このような作品が生み出されたのは自主レーベルならではでしょう。
 
  アルバムのなかで、まず目に付くのが今は亡き Townes Van Zandt の代表曲「Pancho & Lefty」と Bob Dylan の「Girl From The North Country」です。 特に前者は同じテキサス出身の 10 年くらい先輩にあたる Townes Van Zandt のカバーということで、敬意と愛情が感じられるカバーとなっています。 地元愛ということでは、トラディショナルの「Texas River Song」も素晴らしい出来です。 実はこの曲のことを知らなかったのですが、Lyle Lovett もしばしば取り上げるナンバーのようでした。 A 面の「In My Time Of Dying」もトラディショナルですが、こちらもお薦めです。
  他にもカントリー&ウェスタンの映画の BGM のような気分にさせられる曲が多いのですが、「High Noon」はまさに「真昼の決闘」のタイトルそのもの。 映画のオリジナルかどうかは確認できませんでした。 「Bed Of Roses」は Abner Burnett の音楽的な師でもある Buck Ramsey による曲。 彼のことは良く知りませんが、このアルバムを制作するには、Buck Ramsey の貢献なくしては無かったとのことです。
  Abner Burnett のオリジナル「Horses Grow Old」と「Ivory Thighs」はともに素朴で枯れた味わい。 ギターやハーモニカの演奏など、すっかり円熟しきっており、彼が 24 歳から 26 歳までにレコーディングされたとは思えません。 唯一のインスト「Hindu Pickin’ Cowboy」はかなりの異色です。 タイトルどおりヒンドゥー教の影響を受けたアシッドアシッドな雰囲気は素晴らしく、とくに Carl Erdman によるシタールの熱演は見事です。

  このアルバムはテキサス州のおとなりのニューメキシコ州ロズウェルでレコーディングされました。 ここは UFO 墜落で有名な「ロズウェル事件」の町。 1947 年に起きたこの事件が、クローズアップされたのは 1978 年のことなので、ちょうどこのアルバムのレコーディング時期と重なります。 Abner Burnett とは何の関係も無いことですが…



■Abner Burnett / Old McDonald■

Side-1
High Noon
Bluebird
Bed Of Roses
In My Time Of Dying
Honkytonkin’

Side-2
Horses Grow Old
Ivory Thighs
Texas River Song
Pancho & Lefty
Hindu Pickin’ Cowboy
Girl From The North Country

Produced by Abner Burnett and Benignly Bent
Recorded at Erdman Studios, Carlsbad, N.M, Roswell, N.M

Abner Burnett : acoustic guitars, harmonica, vocals
Paul Burnett : electric guitar on ‘Hindu Pickin’ Cowboy’
Carl Erdman : sitar on ‘Hindu Pickin’ Cowboy’
Kent Quereau : acoustic guitar on ‘Girl From The North Country’

Worpt Records CP-2

Phil McHugh

2008-12-22 | Christian Music
■Phil McHugh / All Glory To You■

  歳を重ねてもクリスマスは楽しく過ごしたいものです。 若い頃は「別にクリスチャンでもないのに」という冷めた気持ちを抱いたこともありますが、それも昔のこと。 クリスマスを迎える時期に、不思議と心を癒してくれる気分になれるのは、人々の暮らしと密接に関係してきた歴史があるからでしょう。 
  そんな前置きはさておき、「別にクリスチャンでもないのに」と自分が言われてしまいそうなレコードを取り上げてみました。 レーベル名が Jesus Folk Records という直球具合には驚かされますが、ミズーリ州から届けられた Phil McHugh のファースト・アルバム(1976年)です。 彼のセカンド「Canvas For The Sun」はすでに取り上げましたが、先日入手できたこのアルバムも素晴らしい内容でした。 
  
  アルバムのほとんどの楽曲が、Phil のギターと Greg(フルネーム不詳)のベースを中心に組み立てられ、時折、鍵盤やパーカッションが脇を固めていきます。 クリスチャン・フォーク特有の癒し感に包まれたミディアム「Jesus Stood By The Water」でアルバムは始まり、ややカントリー色のする「The Prince」、聡明で奥行きのあるバラード「Morning For The Whole World」と気品のある佇まいで進んでいきます。 つづく「The Last Generation」はポップなアレンジで彩られるため、雰囲気がやや変化した印象ですが、つづく「Saviour」はピアノのみの内省的な世界へと向かいます。 A 面ラストの「Backslider Blues」は唯一のブルース。 内容は悪くないのですが、他の曲との整合性は残念ながらとれていません。 

  B 面は A 面をさらに深化させた内容になっています。 「There’s A River」はめくるめくメロディーが高原のそよ風のように美しい楽曲。 間違いなくアルバムを代表する 1 曲です。 つづく「Children Of The Promise」はピアノ、ベース、パーカッションそしてストリングスが柔らかにボーカルを包み込み、リスナーに綿毛のような浮遊感を与えます。 そして、タイトル曲の「All Glory To You」は、メランコリックなマイナー調のミディアム。 後半みせる Phil McHugh の裏声を含んだボーカルが聴き所です。 優しく爪弾かれたギターを背景にした「Sometimes」は、しっとりとしたバラード。 ラストの「We Are Free」では、CCM ならではの禁欲的で且つポジティブな女性コーラスが心を解放し、希望に満ちた楽園へと向かうような気分にさせられます。 

  こうしてアルバムを聴き終えて、思い出したのが Phil Keaggy のソロ・デビュー作「What A Day」です。 こちらは 1973 年の作品なので、「All Glory To You」よりも 3 年前になりますが、同じ CCM のミュージシャンとして共通点は多く見出せるような気がします。 サウンド面では、Phil McHugh がウェスト・コーストに近い音で、Phil Keaggy がギター中心という違いはありますが、Phil Keaggy も Phil McHugh も共に、ポジティブで俗世界との接点を大切にしていると思うのです。 同じ CCM でも聖書や聖典の影響を強く受けた作品がありますが、そこまで宗教色が濃く表れているわけではなく、むしろ日常の暮らしと信仰との関わりの強さを表現していると思います。 

  一般的に CCM の特徴としては、予定調和な展開、シンプルなメロディー、まろやかなアレンジなどを挙げる人が多いでしょう。 それは、間違いではありません。 しかし、言葉でうまく形容できないのもこのジャンルです。 ひとたび、そこに包含された独特の安らぎに心魅かれてしまえば、もうあなたも CCM の虜。 新しい扉を見つけてはそこを開けて、その奥にある優しい光を求めて歩み出してしまうのです。  メリー・クリスマス!



■Phil McHugh / All Glory To You■

Side-1
Jesus Stood By The Water
The Prince
Morning For The Whole World
The Last Generation
Saviour
Backslider Blues

Side-2
There’s A River
Children Of The Promise
All Glory To You
Sometimes
We Are Free

Produced by Tri-Art Productions
All Word and Music by Phil McHugh
Arranged by Greg Nelson

Thanks to
Keith for drums
Jeff for guitar on ‘Jesus Stood By The Water’ and ‘All Glory To You’
Glenn for steel guitar on ‘the Prince’
Greta and Curtis for strings on ‘Children Of The Promise’
Greg for bass on everything except ‘There’s A River’ and for electric piano on ‘The Last Generation’, ‘There’s A river’ and ‘All Glory To You’ , for piano on ‘We Are Free In Him’ , for percussion on ‘The Last Generation’ and ‘All Glory To You’

Jesus Folk Records JFR-4001

Buz Sencenbaugh

2008-12-20 | SSW
■Buz Sencenbaugh / Take The Time■

  今年もあと 10 日を残すのみとなりました。 月曜日を休んで雪遊びにでも出かけようとホテルの予約をしていたものの、肝心の雪が全くない状況なので、仕方なくキャンセル。 多忙な年末に何の予定もない週末を迎えました。 

  そんな夜に雪山を描いたジャケットをセレクトしてみました。 雄大な風景から予想できるとおりコロラド州デンバー産のローカルなレコードです。 Buz Sencenbaugh という珍しい名前とジャケットに魅かれて入手した作品ですが、素朴で大らかなサウンドは予想通りでした。 カントリー色がもっと強いと思っていたのですが、ペダル・スティールやフィドルが参加していないこともあって、「ド」がつくようなカントリー・ナンバーはありません。 それは 1985 年という時代のせいかもしれませんが、ギターよりもピアノがメインを張る場面が多いこともあって、心地よい清涼感あふれるサウンドが全体を貫いている印象です。

  両面合わせて 31 分弱なのに 11 曲収録ということからわかるように、ほとんどの曲が 3 分未満で、あっさりした仕上がりです。 そんななか、聴き応えのある曲としては「Take The Time」、「Three Wishes」、「Ships」そして「Ballad Of A Lonely Man」が挙げられます。 この曲すべてに共通しているのは John Russel によるピアノです。 彼の洗練されたピアノがこのアルバムを価値あるものにしているのですが、特にこの 4 曲でのサポートは脇役を超えた存在となっています。 雄大な「Take The Time」では中盤から登場して絶妙に絡み、「Three Wishes」では女性コーラスとのハーモニーに彩を添え、「Ships」のような華麗なワルツでは果敢に楽曲をリードする、といった具合です。
  B 面の「Ballad Of A Lonely Man」も「Ships」と並ぶ代表曲。 ピアノとベース主体のシンプルな楽曲ですが、アルバム最長の 4:25 という長さからも思い入れの強さが伝わってくる名バラードに仕上がっています。  John Russel はバック・ミュージシャンのクレジットにも筆頭に名前があることから、バンドのリーダー的な存在だったのでしょう。

  肝心の Buz Sencenbaugh は何をしているかというと、ボーカル、バンジョーとギターです。 楽器の方では活躍の場面は少ないのですが、朴訥とした味わいのボーカルは個性的ではないものの、サウンドにマッチしています。 バンジョーが聴けるのは各面の終わりの 2 曲だけなのですが、これらの曲を聴くと、彼は本当はもっと自身のバンジョーをフィーチャーしたかったように感じます。 アルバムは全曲が Buz Sencenbaugh による作曲なので、それは勝手な憶測に過ぎないかもしれませんが、曲順とボーカルの表情から、僕にはそのような気持ちが伝わってくるのです。

  さて、この Buz Sencenbaugh ですが、ネットで調べてもこのアルバム以外の情報は何もつかむことができませんでした。 おそらく、レコードはこの 1 枚だけなのでしょう。 「バズ・センセンボウ」...彼はいまもバンジョーを鳴らしているのでしょうか。



■Buz Sencenbaugh / Take The Time■

Side-1
Take The Time
Three Wishes
The Roommate’s Lament
Ships
The Sunrise
The Back Porch Pickin’ Blues

Side-2
Ballad Of A Lonely Man
Home To Me
Things That You Remember
It’s Always Sunrise Somewhere
The Banjo Pickers’ Song

All Songs by Buz Sencenbaugh
Produced and mixed by Mark Thompson of Never Summer Records and buz Sencenbaugh with JS Productions
Recorded at Reel Art recording , Denver, Colorado

John Russel: piano
Terry M. Patryas : harmony and lead vocals
Duane Gabel : bass, electric bass, digital keyboards
Jim Hilburn : mandolin and harmony vocals
David Goodrich : solo guitar
Mark Thompson : digital keyboards, guitar, drums
Buz Sencenbaugh : banjo, guitar, lead vocals

Chorus on ‘Take The Time’ : Bob Simmons , Duane Gabel , David Goodrich , Jim Hilburn , Terry M. Patryas and Janita Bennett-Williams

JS Productions JSP 1001

Brownie Macintosh

2008-12-14 | SSW
■Brownie Macintosh / Coastline Brownie■

  Brownie Macintosh は Bill Staines と交流のあったミュージシャン。 詳しい交流歴はわからないのですが、今日取り上げたこのアルバムにも、Bill Staines が参加し、彼の曲が 2 曲収録されています。 そうしたことから想像できるように、このアルバムはナチュラルで素朴な味わいに包まれた内容となっています。 発表年度や録音場所などもわからないアルバムですが、1970 年代前半から中頃の作品だと思われます。

  アルバムの全 11 曲中、Brownie Macintosh 自身の曲は、「Lonely Old Blues」1 曲しかありません。 しかし、作曲家としてクレジットされている名前のなかで知っているのは Bill Staines のみで、他の人はまったく見覚えのない名前ばかりでした。 そこで、クレジットされている作曲者の名前で検索・調査してみたところ、「Canadian Pacific」が 1969 年の George Hamilton Ⅳ のシングル曲、「Fire Hydrant #79」が Jack Blanchard & Misty Morgan による 1971 年のスマッシュ・ヒットのカバーということが判明しました。 ともにオリジナルは聴いたことはありませんが、前者の作曲者 Ray Griff はカナダのバンクーバー出身の SSW、Jack Blanchard & Misty Morgan はフロリダ出身のカントリー・デュオということで、アメリカ大陸を横断した選曲となっています。

  さて、このアルバムを語るには、やはり Bill Staines の曲「Rye Whiskey Joe」と「Railroad Blues」から始めなくてはいけません。 とくに前者は曲の良さもあって、アルバムを代表する楽曲となっています。 個人的に学生時代にはライ・ウィスキーにはまっていた時期があり、頻繁に Old Overholt や Jim Beam Rye を飲んでいたこともあって、このタイトルには気持ちが入りやすいのですが、その分を差し引いてもこの曲の和みテイストはストライク・ゾーンです。 (本題に関係ありませんが、Wild Turkey Rye は高くて手が出ませんでした) この「Rye Whiskey Joe」は Bill Staines が Evolution Records から 1971 年に発表したサード・アルバムに収録されていますが、僕はこのアルバムを持っていないので、聴き比べができないのが残念です。

  印象に残る曲をいくつかセレクトしましょう。 まずは B-1 の「Louisiana Young」から。 この曲は、キャッチーなサビが耳に残る軽やかなカントリー。 ペダル・スティールやコーラスも効果的に挿入されています。 B-4 の「Stranger In My Place」も典型的なカントリーですが、広大な大地や風がイメージされるスケール感が魅力です。 唯一のオリジナル「Lonely Old Blues」は、路地裏に響く足音が演出として収録されており、ハーモニカとボーカルが中心の渋すぎる仕上がりです。 唯一のオリジナルとしては意外な曲調ですが、そこに Brownie Macintosh の本質を垣間見たような気分にさせられます。

  さて、この Brownie Macintosh ですが、1991 年に演劇で知り合ったことがきっかけとなって Julie Thompson とチームを組み、Julie & Brownie として活動しています。 二人が夫婦かどうかはわかりませんが、年齢はかなり離れていそうです。 その二人は、1996 年には「A Pirate's Life For Me!」という絵本を出版するなど、その音楽以外に幅を広げた活動をしてるようですが、その軸となるテーマは、エデュケーショナルなもののようです。 二人の公式ページには、そのような情報が詳しく掲載されているのですが、残念ながら、このアルバムについては一切触れられていませんでした。




■Brownie Macintosh / Coastline Brownie■

Side-1
Canadian Pacific
Here In My Room
Cecelia Ann
Country And City Life
Rye Whiskey Joe

Side-2
Louisiana Young
Fire Hydrant #79
Lonely Old Blues
Stranger In My Place
Railroad Blues
Coastline Brownie

Producer : Robert E.Rose
Arrangements : Ron Cooley , Robert E.Rose , Ronnie Austin , Brownie Macintosh
Vocal and Strings Arrangements : Robert E.Rose

Brownie Macintosh : vocals, dobro, six and twelve string guitars, five string banjo

Ron Cooley : bass, acoustic and electric guitars
Rocky Stone : electric guitar
Steve Staines : piano, drums, harmonica
Bill Staines : guitar
Jerry Fox : bass
Steve Cahill : drums
Hal Higgins : pedal steel
Dave Bailey : electric guitar
Charlie Evans : drums
Russ Golub : electric guitar
Igg Mooter : bass
Chuck Howard : guitar
Buddy MacLellan : drums
Ronnie Austin : guitar

Strings : Jon Kass, Larry Shiller, Janet Packer, Joanna Taylor, John Wall
Harmony : Beverly Rondeau, John Barton, Jane Peterman, John Wall, Harry Gronki

Continental Recordings, Inc. CS 31017

Richard Dobson

2008-12-06 | SSW
■Richard Dobson / In Texas Last December■

  今年もついに 12 月に入りました。 冬らしいアルバムを、と思って取り出したのが、Richard Dobson のアルバム。 タイトルに December とあるだけで、音的には特別に 12 月らしさはありません。 Richard Dobson はテキサス出身でスイスに在住のシンガーソングライター。 1980 年代からヨーロッパでツアーを始め、スイスの Brambus Records と契約したのを契機にスイスに移り住んだようです。 テキサスからスイスでは、言語も気候も大きく違うのに、彼がその決断をしたのは、やはり現役のミュージシャンへのこだわりなのでしょう。

  さて、このアルバムは 1977 年に発表された彼のファースト・アルバム。 Butter Milk Records の最初期の作品だと思われます。 サウンド的には同時代のシンガーソングライター風味というよりはカントリーの部類に入るもので、けっして洗練されたものではありません。 個人的にも頻繁に針を落とすような作品ではありませんが、土埃の匂いのするカントリー好きな方には好まれる内容だと思います。

  個人的なベストトラックはオープニングでタイトル曲の「In Texas Last December」です。 この曲は他の曲とは異なり憂いを帯びた曇り空のようなテイストです。 ミディアムな曲調のなかに、このアルバム唯一のピアノが薄くからむあたりの演奏も好みです。 
  アルバムは、ほのぼのした陽気な楽曲が多くを占めています。 典型的なカントリー・ワルツの「Learning To Forget You」、「Baby Ride Easy」、午後の休日のようなリラックスした「It’s Not Long」、「Bus Stop Coffee」、「In The Name Of Love」などがアルバムの輪郭を作り上げています。 そんななか、一人きりでの弾き語りのスワンプ「Close But No Cigar」や男臭い「Piece Of Wood And Steel」などが全体を引き締める役割を担っている感じです。 A 面ラストの「I’ve Got Twenty Dollar」は最もブルース色の強い楽曲で、後半に聴かれるエレキギターのソロは中々の熱演です。 こうした演奏を支えているバックミュージシャンの数も多いことから、Richard Dobson は Butter Milk Records の中心的な存在だったのではないかと思います。 Townes Van Zandt からのコメントをジャケット裏面に載せるあたりからも、ミュージシャン仲間での絆も深かったことが想像できます。 

  冒頭にも書きましたが、Richard Dobson は現役で活動を続けています。 公式ページを見ると、1995 年以降、スイスの Brambus Records から 8 枚ものアルバムをリリースしています。 その多作ぶりにも驚きますが、それは彼がヨーロッパでは一定の人気を維持している表れなのでしょう。

  最語にこのアルバムがリリースされた Butter Milk Records というマイナー・レーベルについ少々。 このレーベルの作品としては、以前このブログで取り上げた Bruce D. McElheny の「For The Record」があります。 この作品も独特の佇まいと、彼の唯一のレコードであることも手伝って、なかなか捨てがたい魅力を持ったレコードになっています。 Butter Milk Records の作品は、この 2 枚しか持っていませんが、まだまだ埋もれた作品が眠っていそうな気配です。



■Richard Dobson / In Texas Last December■

Side-1
In Texas Last December
Learning To Forget You
It’s Not Long
Close But No Cigar
I’ve Got Twenty Dollar

Side-2
Baby Ride Easy
Piece Of Wood And Steel
Bus Stop Coffee
In The Name Of Love

Recorded at Rampart Recording Studio, Houston, Texas

`Bus Stop Coffe’ written by Dennis Sanchez
All Other Songs by Richard Dobson

Richard Dobson : acoustic guitar, vocals
Mickey White : acoustic guitar
Mike Sumler : acoustic guitar, background vocals
Tucker Bradley : background vocals
Rock Romane : background vocals, bass
Rey Bell : bass
Charlie Bickley : bass
Paul Hamilton : bass, electric guitar
Heck Doolin : electric guitar
Joe Lynch : alto saxophone
Joe Dugan : piano
R.D. Crabb : piano, pedal steel
Jerry Barnett : drums
Carson Graham : drums

Buttermilk Records