Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Randy Edelman

2011-02-06 | SSW
■Randy Edelman / On Time■

  ピアノ系 SSW のなかで最も敬愛するミュージシャンの一人である Randy Edelman を久しぶりに取り上げます。 以前、彼のファーストセカンドは未 CD 化作品という理由で取り上げたことがありますが、本作は CD 化された 20th Centry Records の 2 枚、Arista の 2 枚を挟んだ 7 枚目のオリジナル・アルバムとなります。 Randy Edelman を唐突に取り出した理由は後述することにして、現在は映画音楽家として活躍している彼の SSW 時代の後期にリリースされた 2 枚を今回と次回とで紹介したいと思います。 ともに 1980 年代の作品でありながら、未だに CD 化される気配すらありません。

  Arista からの意欲作「You’re The One」(1979)が不発に終わった Randy Edelman には契約してくれるレコード会社が無かったのでしょうか。 この「On Time」は、1982 年ロンドン録音の作品。 Elton John が設立したレーベル Rocket Records からリリースされました。 しかも Train という二軍扱いのような品番でのリリースとなっており、また参加ミュージシャンの少なさからも、かなりの低予算で制作されたものと推測されます。 目撃事例のないことから北米では発売されなかった可能性が高いと見ていますが、なぜか国内盤は「ロンドン/ L.A.」という邦題で発売されていました。 そのライナーによると Randy Edelman の国内盤が発売されたのは、「Fairwell Fairbanks」以来だったそうです。ちなみに国内盤は曲順がかなり入れ替わっていますので、要注意です。 今日はオリジナル盤の曲順に沿って、アルバムをレビューして見ることにしましょう。

  アルバムは、奥方 Jackie De Shannon との共作「Nobody Made Me」でスタート。 往年のエデルマン節全開と言えるメロウなメロディにはメランコリックな装いすら感じます。 ちなみに、この曲には Elton John とのデュエットで有名な Kiki Dee もコーラスで参加しています。 つづく「Please Don’t Stop Remembering」はミディアムで緩やかな曲調を継続するも、やや鮮度に欠ける印象。 80 年代風のシンセの音色にハッとさせられる「Dinner For Two At Su Sing Wu」は映画音楽風のインストゥルメンタル。 タイトル通りの東洋風のメロディーが華麗な印象を残しますが、やや冗長なのが残念。 14 ラウンドで大逆転するボクサーのことを歌った「Round Fourteen」は拍手の SE などの過剰な創作感が耳についてしまいます。 「Turn Around」も彼の真骨頂という曲調なのですが、過去の名曲を凌ぐレベルには達していません。 ミディアムな流れは A 面通して続き、「Half Heaven Half Heartache」で最大の盛り上がりを見せます。 多少、仰々しすぎるきらいはあるものの、それが Randy Edelman の持ち味であり魅力でもあるのです。
  B 面も基本的には同じ流れで進行します。 「Tried And True」、「A Thanksgiving Prayer (Express To Poland)」と壮大なバラードで満腹感をあおります。 とくに後者はピアノ自慢をしたくなる彼の性癖が表れています。 つづく「Katie Go」はサビの部分が最も印象に残る曲で、個人的にはこのアルバムのベストトラック。 「Pretty Girls」は国内盤では A-1 に配置されたポップソング。 唯一のアップテンポ・ナンバーでもあるこの曲を頭に持ってくる意図は十分理解できますが、もっとツボにはまるサビが来るかと思ったら来ない分、期待外れでもあります。 ラストの「Wings」は、「ロンドン/ L.A.」の由来ともなった楽曲。 ラストには必ずしっとりとした楽曲を用意する Randy Edelman なので、安心して聴くことができます。 さりげなくピアノのテクニックも披露しながら、流麗でノスタルジックな味わいあふれる仕上がりが見事です。

  こうしてアルバムをフルで聴いたのは、このアルバムを初めて手にした時以来かもしれません。 B 面の後半にようやく本領を発揮してくる感じですが、全体としては Randy Edelman の魅力が十分に伝わってこないという印象です。 個々の楽曲の質に物足りなさを感じるのも事実ですし、アレンジも工夫が足りないと思います。 Randy Edelman が好きなだけに辛口なコメントになってしまいますが、このアルバムは彼のキャリアのなかでも不本意な出来と言わざるを得ないでしょう。 アルバムは必然的に好成績を残すことはなく、彼は Rocket Records を離れることとなります。
  次回は、1985 年にリリースされた「Switch Of The Seasons」をご紹介します。

■Randy Edelman / On Time■

Side 1
Nobody Made Me
Please Don’t Stop Remembering
Dinner For Two At Su Sing Wu
Round Fourteen
Turn Around
Half Heaven Half Heartache

Side 2
Tried And True
A Thanksgiving Prayer (Express To Poland)
Katie Go
Pretty Girls
Wings

Produced by Randy Edelman and Steve Brown

Randy Edelman : keyboards and vocals
Herbie Flowers : bass
Barry Morgan : drums

Phil Palmer : guitar
Mitch Dalton : guitar
Chris Hunter : sax, woodwind
Guy Barker : trumpets
Frank Ricotti : vibes
Steve Brown : tambourine

The angels on’ Nobody Made Me’ and ‘ Tried And True’ are Jackie De Shannon and Kiki Dee
The boys on ‘A Thanksgiving Prayer’,’ Tried And True’ and ‘ Please Don’t Stop Remembering’ are Tony Rivers, Allan Carvell and Stu Calver
Synthesizer programms by Derek Austin and Chris Payne
Strings arrangements on ‘Su Sing Wu’ and ‘Wings’ by Randy Edelman
All other strings and conducted by Richard Niles
Musical arrangements by Randy Edelman
Recorded at Town House Studios, London, England

Rocket Records / Train 20




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1 コメント

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エデルマンのアルバム (ひろ)
2022-10-30 21:08:08
このコメントが届くのかどうかは分りませんが、一応ひと言。彼の熱心なファンではありますが、日本では今一つですね。FBのいいねの数からみても誠に残念な感じです。久しぶりにOn Time聞いています。「A Thanksgiving Prayer」いい曲だと思いますが、バンドの演奏のレベルにはガッカリですね。
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