Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Mickey Carroll

2010-07-25 | AOR
■Mickey Carroll / Love Life■

  暑すぎる毎日で、気力も体力も減退気味。 週間天気予報を見ると、いっこうに改善の兆しがないので、さらにダウンします。 夏ならではのリゾートに行きたい気分もおきません。 
  そこで取り出したのが 1977 年フロリダ産のアルバム。 レーベル名も「ココナツ・グルーヴ・レコード」というトロピカルな一枚です。 ジャケットはモノクロでわかりにくいかもしれませんが、リゾート風のビーチレストランで祝杯をあげるカップルの姿と、いい子にしている犬が映りこんでいます。 これはカラー写真で夕暮れの景色であれば、AOR 風味も増したことでしょう。

  そんな Mickey Carroll のアルバムは、多くの人が事前に予想するであろうメロウでアコースティックなサウンドで満たされています。 派手なギターソロや、ラテン風のパーカッションはここでは排除され、あくまでもミディアムな曲調を軸にしたスムースでマイルドなサウンドが展開されています。 アレンジはジャズのエッセンスも取り入れており、あまり語られたことがない隠れた AOR の名盤と呼べるアルバムです。 Stephen Bishop とMichael Franks を足して 2 で割ったというと褒めすぎかもしれませんが。 収録曲はすべて Mickey Carroll のオリジナルということで、彼のセンスの良さをにも感服します。

  アルバムは全 9 曲ですが、どれも統一感のあるアレンジでまとめられており、目立とうとする存在はありません。 どれもラブソングということも影響しているのでしょうが、海辺の黄昏時にお似合いなバラードで占められており、最近ようやく DVD 化された映画『波の数だけ抱きしめて』で使われていてもおかしくありません。 映画を知っている人しかわからないと思いますが、あの映画での「I’d Chase A Rainbow / Kalapana」のシーンをこのアルバムの「Riding On The Wings Of Love」や「Never In All My Life」に差し替えてもいいと思うほどです。 もちろん、カラパナの名曲を否定する意味ではないのですが、あの映画のシーン、海辺のイメージにぴったりはまる楽曲が数多く含まれているのです。
  こうしてブログを書きながら、アルバムを 2 回聴き通しましたが、散りばめられたフェンダー・ローズの音色、さりげないコーラスワーク、大人びた演奏を聴くにつれて、体感温度が下がっていくような気になりました。 おそらくまだ外は 26 度はあると思いますが、エアコンは止めて部屋の窓を開けたほうがお似合いです。

  さて、この Mickey Carroll ですが、彼の消息をたずねようとネット検索してみました。 すると、『オズの魔法使い』で有名な俳優に同姓同名の人物がいましたが、彼は 1919 年生まれで 2009 年没ということですので、このアルバムの Mickey Carroll とは無関係でしょう。  それよりも大発見がありました。 この「Love Life」は未 CD 化なのですが、iTunes で配信されていたのです!  しかも配信開始が今年の 7 月 1 日ということですので、始まったばかり。 これは奇遇でしたが、さっそくダウンロード。 アルバム全部で 1,350 円。 ジャケットが加工されていてダサいのが残念でしたが、いったい全世界で何人がダウンロードしたのか気になるところです。

■Mickey Carroll / Love Life■

Side 1
Home Cooked Love
Que Se Da
The Time Is Right
Riding On The Wings Of Love

Side 2
People Love Life
Nothing Matters But Love
Never In All My Life
Sweet Pie
Let Your young Heart Fly Away

Produced by Robert Earl Smith
Recording at Bayshore Recording Studio, Coconut Grove, Florida
All songs written by Mickey Carroll

Mickey Carroll : electric guitar, acoustic guitar and vocals
Eddie Oleck : bass
Paul Lee : drums, timbales
Bob smith : acoustic guitar
Doug Bryn : acoustic piano, Rhodes piano, clavinet
Mike Gerner : Rhodes piano
Rufus Mapp : conga drums, afuche
Jeff Kirk : flute, alto and soprano sax
Keith Morrison : trumpet, flugel horn
Barbara Russell : background vocals

Horn arrangement by Jeff Kirk
String arrangement by Burt Dovo

Coconuts Grove Records AW-14033

Johnson & Drake

2010-07-17 | SSW
■Johnson & Drake / Carry It On■

  ようやく梅雨明け。 うだるような一日の終わりには、急激に流行したハイボールのような爽快感を求めたくなります。 そこで取り出したのが、Johnson & Drake が 1973 年に発表した唯一の作品。 そもそも、マイルドでメロウなピアノ系サウンドは僕の嗜好のど真ん中なのですが、今日取り上げる Johnson & Drake もその部類に入る作品です。 特に、A-1 の「Hello New Day」は非の打ちどころのないミディアムで、この曲だけで聴く価値十分とも言える出色の出来栄えなのです。 アップテンポのアレンジにホーンを加えたことでアグレッシブな印象の「Slow Boat」を挟んで「Isn’t There Someone」では、本来の繊細な味わいに戻ります。 ここで展開される美しいハーモニーとリコーダー・ソロの気品の高さは彼らの魅力の源泉と言えるでしょう。 つづくのは、The Beatles のカバー「Fixin’ A Hole」ですが、これはオリジナルよりもカラフルなアレンジで、入りとエンディングに工夫が見られます。 タイトル曲の「Carry It On」はサビのメロを左右で交錯したり重なったりしながら舞いあがるようなイメージ。 滑空感を感じる曲となっています。

  B 面はファンキーでソウルフルな「Goldie」で始まります。 不思議なことに違和感を覚えないのは、ボーカル・スタイルに拠る部分も強いと思いますが、つづく「I Am Loved」がスケール感のあるミディアムですので、その流れで一気に聴けるという点もあるような気がします。 そしてCarole King の「So Far Away」で一気にピアノによる流麗な展開に持ち込んでいきます。 誘うようなフルートの音色ではじまる「I’ll Be Better」も、Johnson & Drake 節と言える楽曲。 多彩な楽器の絡み、厚みのあるコーラス、そして緩急自在な展開力、といった Johnson & Drak eの魅力が詰まっています。 つづく「Fade Away」はさらにシンプルになり、朝露の雫のような空気感すら漂わせます。 そしてラストの「Party Song」はタイトル通りの陽気な楽曲。 ニルソンのようなヴォードヴィル調なアレンジですが、1 分 30 秒程度であっさり終わってしまうところも、彼らのセンスの良さを表わしています。
  
  Tom Johnson と Guy Drake による唯一のアルバムは、ミネアポリスの Sound 80 でレコーディングされた作品としても知られていますが、その後の二人の足取りに関しては全くといっていいほど情報がありません。 とくにピアノを弾いていた Tom Johnson がこのまま音楽シーンから消えていたとしたら残念でなりません。 ちなみに、プロデューサーのHerb Pilhofer はミネアポリスのジャズ・ピアニストでCM音楽職人としても活躍したミュージシャンのようです。 彼の作品に Johnson & Drake の痕跡が残っているかは微妙ですが…
  それにしても、それなりの規模のレーベルだった Ovation Records が当時流行ったクアドラフォニックで録音したということで、それなりに力が入っていたと思われるのですが、やはりほとんど売れなかったのでしょう。 残念なことですが、どの時代にも良くあることです。

■Johnson & Drake / Carry It On■

Side 1
Hello New Day
Slow Boat
Isn’t There Someone
Fixin’ A Hole
Carry It On

Side 2
Goldie
I Am Loved
So Far Away
I’ll Be Better
Fade Away
Party Song

Produced by Herb Pilhofer
Engineer : Tom Jung
Recprded at Sound 80 Studios, Minneapolis, Minn.
All Songs by Tom Johnson and Guy Drake except ‘Fixin’ A Hole’ and ‘So Far Away’

Piano : Tom Johnson
Electric piano : Herb Pilhofer
Bass : Boll Peterson
Drums : Bill Berg
Guitar : Ron Steele
Steel guitar : Cal Hand
Percussion : Bill Buchen, Toman Gomez
Trumpets : Steve Wright, Nelson Carr
Trombone : Jim Ten Bentzel. Bruce Hultgren
Saxophone and flutes : Dave Keer, Dave Hawley
Recorder : Steve Rydberg
Violins : Romuald Tecco, Bruce Allard, Eli barnett, Jim Ricardo, Hanley Dawes, Carolyn Dawes
Viola : Salvatore Venittelli, John Gaska
Cello : Daryl Skobba, Eduald Blitz
Bass : Susan Matthew

Ovation Records OVQD 1434

John Shine

2010-07-04 | SSW
■John Shine / Songs For A Rainy Day■

  梅雨の季節にぴったりなタイトルのアルバム。 メジャーの Columbia Records から 1975 年にリリースされたにも関わらず、ほとんど紹介されたことがなく、CD 化されたこともない作品です。 参加メンバーを見ると、Area Code 615 の元メンバーである Mac Gayden や Kenneth Buttrey がいたり、当時人気が出始めていた The Pointer Sisters がコーラスで参加している点が目につきます。 こうなると、むしろ主役の John Shine の正体のほうが気になってくるのですが、検索してみると意外にも本人の公式サイトがありました。 しかし、そのデザインやレイアウトは 1990 年代末期によく見られたネット黎明期風のダサいもので、正直あまり深入りする気分にはなりませんでした。 肝心のバイオグラフィーもないのが残念ですが、アルバムがこの「Songs For A Rainy Day」1 枚という事実を知ったことが唯一の収穫でした。

  前置きが長くなりましたが、さっそくアルバムのレビューに入りましょう。 メンバーからどの程度カントリー色が強いかがアルバムを聴く前の最大の関心事だったのですが、結論としてはほとんど感じないくらいのものでした。 マイルドでメロウなサウンドはプレ AOR 的なものとして捉えても問題ないレベルです。 アップテンポのナンバーは皆無で、ソフトな仕上がりを見せるこのアルバムはどうしてここまで埋もれてしまったのか理解しがたいのです。 なかでもイントロのエレピの音色が素晴らしい AOR 風バラードの「Anyway You Want Me」やストリングスの音色に導かれて始まる落ち着いたバラード「New York Again」が秀逸です。 ともにメロディー、コーラスそしてストリングスアレンジの完成度の高さを感じます。 この 2 曲を筆頭に、軽やかなポップソング「Songs For A Rainy Day」、心地よいミディアム「It’s All Over Now」、縁側と薄日が似合うような和み系サウンドの「Nobody Knows Me Like You Do」、そしてすこし陰りを見せながらラストを締めくくる「When Does The Party End ?」といった楽曲がお薦めです。 
   これ以外の曲はやや平凡な出来のものもありますが、派手なアレンジやギターソロなどがないので、アルバムの全体感を損なうことなく、脇を固めているという印象です。 このようなハイレベルなアルバムが、どうして CD 化もされずに忘れられてしまったのでしょうか。

   このアルバムを聴いて思い出したのが、Jon Mark の「Song For A Friend」です。ちょうど Columbia Records から 1974 年にリリースされたこのアルバムは CD 化されていますが、淡いたたずまいとマイルドさはかなり近いものを感じます。 友に捧げる歌を歌った Jon Mark、雨の日に捧げる歌を歌った John Shine …  偶然にも双子のように語られても不思議ではなかった 2 枚のアルバムですが、その後に残された運命は大きく枝分かれしてしまったままなのです。

■John Shine / Songs For A Rainy Day■

Side 1
Songs For A Rainy Day
It’s All Over Now
Movin’ In By Myself
Anyway You Want Me
Me & My Band

Side 2
New York Again
Nobody Knows Me Like You Do
It’s About Time
It Wasn’t Enough
When Does The Party End ?

Produced for David Robinson & Friends, Inc. by Jeffrey Cohen and Bruce Good

Drums : Kenneth Buttrey , Glenn Walters, Jon Opat
Bass : Bing Nathan
Pianos : David Briggs, John Shine, Joe Crane
Guitars : John Shine, Pete Wade, Mac Gayden, Vic Smith
Pedal Steel Guitar : Weldon Myrick
Violin : Brian Price
String Arrangements : Weldon Myrick
Saxophone : Skip Mesquite
Vocals : John Shine, Terry Garthwaite, Willow Wray, Skip Mesquite, The Pointer Sisters, Don Kerr
Tambourine : Fred Catero
Steel Drum : Andy Narell

Columbia Records PC 33518