Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Taffy McElroy

2008-11-04 | Female Singer
■Taffy McElroy / The Heartbreak Kid■

  1982 年に開催されたヤマハ主催の世界歌謡祭に来日した記録が残っているTaffy McElroy の唯一のアルバムをピックアップしてみました。 当時は「タフィー」名義で「さよならにキッス」という邦題の国内盤も出ましたが、さっぱり話題になりませんでした。 内容とは裏腹にアイドル路線の売り方をされてしまったのも要因のひとつかも知れません。 
  たしかにジャケットからは洗練された AOR サウンドを想像するのは難しいかもしれませんが、カントリー風味を極力抑えたアレンジと Taffy McElroy の清楚なボーカルの組み合わせは今聴いても新鮮に響きます。 
  このアルバムを取り上げた理由は Rob Galbraith つながりです。 この作品には彼がプロデューサーとして深く関わっており、先に取り上げた名盤「Throw Me A Bone」とも多くのミュージシャンが重なっています。 それだけでも触手が伸びそうですが、作曲陣には、Robert Byrne, Randy Goodrum, Kerry Chater といった渋めの名前が連っています。 この選曲も Rob Galbraith によるものなのでしょう。

 さて、アルバムは総じてミディアムなバラードで締められており、1981 年という時代を反映して、セッション・マンの安定した演奏もあって、安心して聴くことのできる流れとなっています。 ややもすると予定調和で退屈とも言えますが、業界のベテラン達が Taffy McElroyのイメージを確立させようとした気配が十分に伝わってくるのです。

  主な曲についてコメントしていましょう。 まずは Tom Brasfield / Robert Byrne によるバラード「Who’s That Look In Your Eye」と「That Didn’t Hurt Too Bad」です。 前者は Michael Johnson や Rick Bowles による歌唱でも知られていますが、ここで聴かれる気品あるまろやかさも格別です。 後者も引けを取らない名バラード。 Dr.Hook のバージョンが有名のようですが、未聴です。 「最初の彼女になりたいの」とささやく「I Want You To Be The First」は Rob Galbraith が作曲に関わった唯一の曲。 この曲や失った恋の切なさを歌い上げる「When It’s Gone」、Randy Goodrum の「If I Hadn’t Me You」などA面は切ないバラードが並びます。 唯一のアップナンバーがタイトル曲の「The Heartbreak Kid」というのも意外。

  B 面では、「You Can Always Count Me」や「Out Of My Mind」といったバラードも悪くないのですが、さすがにここまでバラードだと消化不良気味になります。 そういった意味では、アップナンバーの「What’s On Your Mind」で聴ける後半のギターソロはかなり新鮮ですし、ノスタルジックな「Then You Can Tell Me Good-bye」で終わるラストも並びとしては最高です。 ちなみにこの曲が邦題の「さよならにキッス」の元となったのでしょう。 

  さて、冒頭で彼女が世界歌謡祭で来日したと書きましたが、公式な記録を残しているサイトによると、そこで歌われた曲「Just One Chance To Be Free」という曲です。 このアルバムには未収録で、作詞・作曲もアメリカ音楽界の裏重鎮とも言える Fred Mollin となっていることから、このアルバム制作後に用意されたシングル候補曲なのでしょう。 しかし、ネットで検索してもこの曲がシングルとなった痕跡は見当たりません。 この曲は世界歌謡祭で入賞すらできなかったことから、もしかすると彼女の音楽活動にピリオドを打つきっかけとなってしまった曲なのかもしれません。




■Taffy McElroy / The Heartbreak Kid■

Side-1
Who’s That Look In Your Eye
The Heartbreak Kid
When It’s Gone
I Want You To Be The First
If I Hadn’t Me You

Side-2
You Can Always Count Me
That Didn’t Hurt Too Bad
What’s On Your Mind
Out Of My Mind
Then You Can Tell Me Good-bye

Produced by Rob Galbraith

Acoustic piano : Bobby Ogdin
Electric piano : Ron Galbraith, Bobby Ogdin
Electric guitar : Bruce Dees, Reggie Young, Larry Byrom
Acoustic guitar : Don Roth, Bruce Dees
Bass : Warren Gowers, Steve Brantley
Drums : David Accorso, Kenny Malone, Larrie Londin, Steve Brantley
Trombone : Wayne Harrison
Trumpet : George Tidwell
Saxophone : Denis Solee
Percussion : Farrell Morris
Recorder : Billy Puett
Steel : Sonny Garrish
Background Vocals : Bruce Dees, Steve Brantley, Lea Jane Berinati, Donna McElroy, Marcia Routh, Rob Galbraith
Strings : Shelly Kurland, Concertmaster
Harmony : Taffy

Strings Arrangements : Bergen White
Horn Arrangements : Wayne Harrison
Rhythm Arrangements : Rob Galbraith
Background Vocal Arrangements : Bruce Dees

MCA -5191

Priscilla Herdman

2007-09-17 | Female Singer
■Priscilla Herdman / Forgotten Dreams■

  すっかり秋めいてきたと思ったら、ここ数日は真夏に逆戻りしたかのような暑さ。 しかも、ここ数日続くということで、精神的にも参ってしまいます。 日中はそんな暑さでも、夜ともなれば虫の声を聴きながら、清涼感ある歌声でも聴きたいところ。 そこで、取り出したのが、Flying Fish の歌姫と僕が呼んでいるPriscilla Herdman のアルバムです。

 このアルバムをはじめ、彼女のオリジナル・アルバムはいずれも CD 化されているようで、このブログのコンセプトからは逸脱してしまいますが、僕の持っているのはアナログ盤しかありませんので、そのあたりは大目に見てください。

 取り上げたのは 1980 年にリリースされた彼女のセカンドアルバム「Forgotten Dreams」です。 彼女のファーストは 1977 年に Philo からリリースされており、このセカンド以降は Flying Fish で 4 枚つづけてアルバムを残しています。

 さて、このアルバムはクレジットを見れば一目瞭然ですが、多くのミュージシャンの名曲がカバーされています。 まずは、メジャーどころの 3 曲から紹介してみましょう。 Randy Newman の「Dayton, Ohio – 1903」は独特のほんわかした雰囲気はそのまま。 オリジナルに忠実なアレンジですね。 女性が Randy Newman をカバーするといえば、オランダの Mathilda Santing の「Texas Girl & Pretty Boy」が大推薦盤です。 つづく「Millworker」は、James Taylor の名作「Flag」のなかでも、とりわけフォーキーな味わいで人気の名曲です。 Priscilla Herdman のバージョンはオリジナルよりもさらに素朴な味わいです。 そして、Tom Waits の「I Hope That I Don't Fall in Love With You」です。 この曲はカバーされる曲の多い Tom Waits のなかでも、とりわけ多く取り上げられる曲ですね。 このアルバムでは、ベースとピアノ、サックスという編成で、オリジナルよりもクールなアレンジがなされており、クオリティの高い仕上がりです。

 メジャーどころに続いて注目したいのが、Keith Sykes による「The Coast of Marseilles」です。 ネットで調べたところ、この曲は Keith Sykes よりも Jimmy Buffett のカバーで有名のようです。 この曲は知られざる名曲で、このアルバムのなかでも際立っています。 Keith Sykes の最高傑作「The Way That I Feel」に収録されていますが、こちらのアルバムも早めにこのブログで取り上げたいと思います。

 他の曲もおさらいしておきましょう。 もはやトラディショナルの領域に入っている Eric Bogle の「No Man's Land」や、カナダのフォーク界の Stan Rogers の「Forty-Five Years」、「Turnaround」もトラッド風の仕上がりです。 ラスト 2 曲の作曲者は聞いたことがありませんでしたが、「January Thaw」の Lui Collins は、ニューイングランドを拠点に今も活動をしている女性 SSW でした。 ラストの「Dreams」を書いた Jeff Jones という人物は同姓も多いため、よくわかりませんでした。 ラストを飾るこの曲は、ピアノのみをバックにした素晴らしい内容です。

 このように彼女のセカンドを 2 回まわしで聴きながら夜を過ごしましたが、曲のクオリティ、アレンジのセンス、サウンドの安定感など、どれをとっても欠点のない名盤であることを再確認しました。 せっかくなら、CD も買ってしまおうかと思うほどです。 クルマのなかで聴くにも最適な、大人のための精神安定剤のような音楽がここにあります。



■Priscilla Herdman / Forgotten Dreams■

Side-1
Forty-Five Years (Stan Rogers)
Dayton, Ohio -- 1903 (Randy Newman)
Millworker (James Taylor)
Brother Can You Spare A Dime (E.Y. Harburg/Jay Gorney)
No Man's Land (Eric Bogle)

Side-2
The Coast of Marseilles (Keith Sykes)
I Hope That I Don't Fall in Love With You (Tom Waits)
Turnaround (Stan Rogers)
January Thaw (Lui Collins)
Dreams (Jeff Jones)

Produced and Arranged by Bill Novick and Guy Van Duser
Recorded at Earth Audio Techniques in North Ferrisburg , Vermont

Guy Van Duser : steel strings guitars ,tenor guitar , acoustic bass , nylon strings guitar , arch top guitar
Brian Torff : acoustic bass
Bob Weiner : drums
Jeff Gutcheon : piano
Ken Pearson : piano
Jun Tullio : acoustic bass
Bill Kinzle :drums
Billy Novick : bass clarinet

Flying Fish FF 230

Nancy Nevins

2006-08-14 | Female Singer
■Nancy Nevins / Nancy Nevins■

 1969 年の Woodstock に出演し、数十万人とも言われている聴衆を前に演奏したこともある幻のグループ「Sweetwater」のリード・ボーカルだった Nancy Nevins の唯一のソロアルバム。 Sweetwater がすでに解散した 1975 年に、Tom Cat からリリースされました。 Sweetwater に関してはあまり興味も無く、Woodstock の映像も見たことが無いのですが、このアルバムを聴くための予備知識として、Nancy Nevins がそれまで歩んできた経緯を調べてみました。 すると、かなり切ないストーリーがあったことがわかりました。
 Sweetwater は、名門 Reprise から 3枚のアルバムを発表していますが、Nancy Nevins がフルで参加しているのは 1968 年のファーストのみのようです。 というのも Woodstock の後に Nancy Nevins は重大な自動車事故に遭い、瀕死の重傷となってしまったのです。 かなり重たい後遺症を抱えてしまった Nancy を失ったバンドは空中分解するように 1972 年に解散したということです。 
 そんな Nancy Nevins が再起をかけて 1975 年に発表した唯一のアルバムが、今日ご紹介するアルバムです。 このアルバムを入手したときは彼女のそんなエピソードなどは全く知らず、単にジャケット買いだったのですが。

 アルバムの内容の方はお世辞にも傑作とはいえないもので、おそらくはもっとハスキーでパワフルだったであろう Nancy のボーカルも表現力に乏しく、何か中途半端な作品となってしまいました。 結果的に、全く売れなかったことも十分納得できます。
 アルバムのなかでは、シングルカットされた「We Could Always Say It Was Rainin’」が同時代の女性シンガーを意識したような作品となっています。 この曲のように、SSW 指向の強い作品は、「Lately」や「Joie」、「Just Like A Little Boy」などがあります。 一方、かつての(あくまでも想像ですけど)Sweetwater を髣髴とさせようとするファンキーな曲もあり、全体のバランスを崩してしまっています。 しかも、ソングライティングに秀でたものがないため、魅力的な音楽が醸し出すある種のミラクルのようなエッセンスが全く感じられません。 このアルバムの不調のせいか、Nancy Nevins はその後しばらくの間、音楽シーンから身を引いてしまうことになります。

 しかし、1999 年にアメリカで Sweetwater を題材としたテレビ映画が放映されたのを機に、Sweetwater も再結成し、Nancy Nevins もそのメンバーに加わっているようです。 Nancy 本人の公式ページも発見しました。 けっして順風満帆な人生ではなかったと思いますが、こうして元気そうな姿を見ると、彼女のファンではない自分でも応援したくなります。



■Nancy Nevins / Nancy Nevins■

Side-1
Sunny Face
We Could Always Say It Was Rainin’
Lately
Feel So Good
Don’t Hold Back

Side-2
Barquen Heart
Let Me
Joie
Just Like A Little Boy
Ten Cents A Dance

Produced by Tom Catalano
Arranged and Conducted by Artie Butler

All Compositions by Nancy Nevins
Except ‘Ten Cents A Dance’ by Rogers & Hart

Musicians
Dennis Budimir / Al Casey / Victor Feldman / John Guerin / Dean Parks /
Reinie Press / Sid Sharp (Concert Master) その他省略

Tom Cat Records BYL 1-1063

Lyn Christopher

2006-05-20 | Female Singer
■Lyn Christopher / Lyn Christopher■

 この夏、UDO Music Festival というイベント開催されますが、2 日目のメインがKISS ですね。 たしか、以前最後の来日という名目でライブをしていたような気がしますが、どうなんでしょう。
 さて、そんな KISS のコアファンが追い求めているのが、1973 年に Paramount Records からリリースされた、Lyn Christopher の唯一のアルバムです。 というのも、KISS の Gene Simmons と Paul Stanley の名前がクレジットされている最古のレコードだからなのです。 KISS のデビュー前でもあり、そんな理由からこのアルバムは KISS のファンサイトで検索されることが多いですね。

 ところが、アルバムを通して聴いても、女性バックコーラスはよく聴こえてくるのですが、Gene と Paul の声がよくわからないのです。 裏声で薄くハモっているのだと思いますが、はっきりとこの曲に参加しているとは僕には断定できませんでした。

 アルバムはまったりしたアレンジの古臭いポップソング「She Used To Wanna Be A Ballerina」で始まります。 サビの部分は、1973 年にしては時代遅れという感じのいなたさで、フェードアウトも遅いのでちょっとしつこい印象を覚えます。 つづく「I Don’t Want To Hear It Anymore」は、Randy Newman の曲。 Dusty Springfield のバージョンがオリジナルのようです。 A 面でのベストトラックですが、こちらはフェードアウトのタイミングが変てこです。 Neil Diamond 作曲の「Canta Libre」は聴いたことがあるようなないような、です。 続く「Weddin」は売れないわりに 4 枚もアルバムを残した女性 SSW の Patti Dahlstrom の曲ですが、元気の良さばかりが目立っていまひとつの出来。 チェンバロみたいな音で始まる「Celebrate Ⅰ」は、B面の「Celebrate Ⅱ」へのつなぎとなる役割を持っている曲でした。
 B 面に入りましょう。 つなぎの「Celebrate Ⅱ」に続いて、最も SSW 的な趣きをもった曲「All My Choices」が始まります。 Spencer Michlin と Jon Stroll という人が曲を書いていますが、詳しい経歴などは不明です。 ミュージカルの曲みたいな雰囲気で可愛らしい「Is Everybody Happy」、オルガンの音のみをバックにしたささやくようなバラード「Unrequited」と続く、この 3 曲の流れがアルバムのハイライトでしょう。 ちなみにこの「Unrequited」は、Al Kooper の曲。 彼の最高傑作とも言える「Naked Songs」(邦題:赤心の歌)にオリジナルが収録されています。 「Take Me With You」は単調でつまらない曲、ラストの、「Billy Come Down」も Roger Greenaway ということで期待しましたが、いまひとつでした。

 Lyn Christopher は 1 曲も曲を書いていないので、このアルバムのカテゴリーは、Female Singer としました。 内容的にも SSW とは言い難いですし、Soft Rock でもありません。 冒頭に書いた KISS のメンバー関連の希少価値を除いては、それほど価値のあるアルバムとは言えないと思います。 今後、CD 化されたとしても買うことはないでしょう。 強いて言えば、このジャケットのデザインや表情とくにメイクは魅力的です。 このツケまつ毛の広げ方は、流行の循環サイクルによっては、受けるのではないでしょうか?

 さて、最後に気になることがひとつ。 あの「つのだ☆ひろ」が歌った「メリージェーン」という曲をご存知の方が多いと思います。 あの曲は英語詞なのですが、その作詞者名がなんと Lyn Christopher なのです。 時代の整合性からみてもこの Lyn Christopher と同一人物である確率が高いと思われますが、誰がどんなツテで、作詞を依頼したのでしょうか? 肝心の自身のアルバムにも作詞しなかった彼女なので、余計に不思議ですね。

■Lyn Christopher / Lyn Christopher■

Side-1
She Used To Wanna Be A Ballerina
I Don’t Want To Hear It Anymore
Canta Libre
Weddin
Celebrate Ⅰ

Side-2
Celebrate Ⅱ
All My Choices
Is Everybody Happy
Unrequited
Take Me With You
Billy Come Down

Produced by Ron Johnsen for Lynchris Productions

Horn & Strings Arrangements : Al Gorgoni
Accordion : Ron Frangipane
Background Vocals : Maragaret Dorn , Lynda Lawley , Sharon Redd, Gene Simmons , Paul Stanley
Banjo & Pedal Steel : Eric Weissberg
Bass : Kirk Hamilton , Terry Wilson
Bongos , Congas : Jimmy Maeulen
Calliope , Harmonium , Marimbas : Ron Johnsen
Drums : Tony Braunagel , Alan Schwartzberg
Electric Keyboards : Mike Montgomery , Pat Rebillot
Guitars : Bob Mann , Hugh McCracken , Jimmy Smith , Terry Wilson
Moog : Mike Montgomery , Jimmy Robinson
Organs : Ron Johnsen , Mike Montgomery
Percussion : Tony Braunagel , Jimmy Maeulen
Piano : Ron Frangipane , Mike Montgomery , Pat Rebillot
Solo Flutes : Lou Marini Jr.
Solo Sax : George Marge

Studio : Electric Lady Studios , New York , New York

Paramount Records PAS 6051


Rhoda Curtis

2006-05-03 | Female Singer
■Rhoda Curtis / Rhoda Curtis■

 かなり迫力のあるモノクロのジャケット写真。 対照的に真っ赤なリンゴがおかれ、想像力を掻き立てられます。 かなりジャジーなサウンドなのかな、彼女の声は太めのアルトなのだろうな、という感じです。 ところが、Rhoda Curtis のボーカルは意外なことに、そんなことはなく繊細でやさしいソプラノボイスなのです。 
 このアルバムは、1977 年にリリースされた彼女の唯一のアルバム。 クレジットには楽器名が出ていないので、純粋なシンガーなのだと思います。 アルバムでは 2 曲を除いてすべての作詞・作曲を手がけていますが、カテゴリーは Female Singer としました。

 アルバムは先行きが不安になるような地味な曲「Jordan」から始まります。 この曲はジョーダンという人名のことではなく、中東のヨルダンのことを歌った曲でした。 続く、「For All Seasons」は、ギターをバックに優しく歌われる三拍子のバラードです。 徐々にストリングスが入るアレンジも良く、Rhoda のボーカルを引き立てる佳作と言えるでしょう。 続く「Baby As You Turn Away」も名曲で、このあたりの流れはアルバム最大の聴きどころです。 この曲は、Bee Gees の1975 年の名盤「Main Course」のラストに収められている名作です。 このアルバムは Bee Gees 中期の最高傑作と言われているようなのですが、きちんと聴いていなかったので改めて初期からディスコ直前までの Bee Gees を聴いてみようという気にさせられました。 楽器なしの独唱となるアクセント「Questions」に続いては、曲間がほとんどないまま「Rocketship」に突入。 この曲はややハードな曲調で凡庸なこともあり、Rhoda のボーカルの魅力を引き出せていません。 A 面ラストの「The Candles」は、アップライトピアノのようなこもった響きにのせて、Rhoda が切ない心情をキャンドルにたとえて表現するなかなかの名曲です。
 B 面に移ると、カントリータッチの「Mama Oh Mama」から始まります。 タイトルからして陽気な感じは想像できますが、彼女のボーカルには似合いません。 憂いのある「Jamie」も淡々としすぎて印象に残らない曲。 続く、「Day’s End」と「Where Do You Go?」も平凡な出来で後半息切れという展開になってきます。 ラストの「Daydream Sunday」は、B.Neary という人物の曲。 この人については詳細不明ですが、1973 年の曲ですので誰かがすでに歌ったものなのでしょう。 この曲はクオリティの落ちる B 面においては、唯一典型的な SSW らしいポップテイストのある楽曲です。 

 最後にクレジットを見てみましょう。 Producer の Don Shain という人物はよくわかりません。 Director としてクレジットされている John Hobbs と Bill Fletcher はこのアルバムのサウンドには大きく関与しています。 特に John Hobbs はピアノやアレンジとしてバックバンドの中心人物だったのでしょう。 彼は、1970 年代中盤から活躍してるミュージシャンで、1977 年には、Bruce Johnston の名盤「Going Public」にもクレジット されています。 このRhoda Curtis と同時期にレコーディングだったのでしょうか、Special Thanks ということで、Bruce Johnston の名前がクレジットされています。
 ほかには、AOR シーンでは有名な Joe Chemay がベースとして参加。 彼が The Joe Chemay Band として唯一のソロアルバムをリリースしたのが、1981 年ですのでそれよりも 4 年前のクレジットとなります。 しかし、Joe Chemay の名前で買う人はいないでしょうね。 もちろん、僕もその理由で買ったのではありません。 知らない名前とジャケットで興味を引かれたのが最大の理由ですが、後押ししてくれたのやはり Bruce Johnston という文字だったりするのです。 

■Rhoda Curtis / Rhoda Curtis■

Side-1
Jordan
For All Seasons
Baby As You Turn Away
Questions
Rocketship
The Candles

Side-2
Mama Oh Mama
Jamie
Day’s End
Where Do You Go?
Daydream Sunday

Produced by Don Shain
Directed by John Hobbs and Bill Fletcher
Recorded at Sounds Good Studios in Los Angeles
Arranged by John Hobbs

All Selections Written by Rhoda Curtis
Except ‘Baby As You Turn Away’ written by B.Gibb ,R.Gibb ,M.Gibb
‘Daydream Sunday’ written by B.Neary

John Hobbs : keyboards
Billy Walker : guitars
Gary Mallaber : drums
Joe Chemay : bass
J.D. Maness : steel guitar
Dennis Dreith : woodwinds
Went Garvey : strings
A Special Thanks to Bruce Johnston and Nick Venet

United Artists Records UA-LA761-G

Mary Saxton

2006-04-15 | Female Singer
■Mary Saxton / Mary Saxton■

 1001 品番が連続したので、もう 1 枚続けましょう。 今日ご紹介するアルバムはカナダの女性ボーカリスト Mary Saxton が 1978年に Mustard というマイナーレーベルから発売したセルフタイトルのアルバムです。 品番は Mustard の M をとって、M-1001 というわかりやすさです。 ( 3月26日に掲載した Brice MacPherson も実は GSF-S-1001でした。 これも並べておけば 4 枚連続にできたのに。)

 この女性シンガーのキャリアや経歴はまったく不明なのですが、この幽霊のようなジャケットはいただけませんね。 年齢も不詳ですが、40 歳くらいに見えてしまいます。
 そんな Mary Saxton のアルバムですが、曲のほとんどが、プロデューサーの Karl Erikson と Norman E. Rooke によるものです。 Mary 本人は 2曲で競作し、ラストの 1曲だけが自身の書き下ろしです。 サウンドのほうは、かなり安定したオーソドックスな女性 SSW ものといってもよく、アレンジも派手さがないところに好感が持てます。 曲によって、ソプラノサックス・オーボエ・マンドリン・バンジョー・ピアニカなどの楽器が魅力的なイントロや間奏を奏でるところはセンスの良さを感じます。 
 ではアルバムのなかから主な曲をピックアップしてみましょう。 1曲目「Georgia Eyes」は、ちょっとけだるい曲なので先行き不安を感じさせます。 この曲はシングルカットされているのですが、ちょっと選曲センスがわかりません。 続く「I Want you」は、ちょっとソフトロック調の好ナンバー。 途中で入るハンドクラッピングはちょっといただけない感じです。 カントリー風味のワルツ「I’m A Woman (In Love With My Man)」はアルバムの中でも味わい深いナンバーで個人的には一番好きかもしれません。 B 面のほうでは、2 曲目の「Love For A Laugh」がベストだと思います。 そもそも Mary Saxton のボーカルは、声量や伸び、声質など、どれも標準的な域にあって、捨てがたい魅力があるというものではありません。 ですから、明るめの曲よりも、「Love For A Laugh」のように、おとなしめの楽曲にアコースティックな楽器がひっそりとサポートするというような曲のほうが似合います。 そういった意味では、「Love’s Desire」もエレピのみをバックにした佳作です。 ラスト前におくのは正解ですね。 どうしてもラストにしたかったのでは、と思う唯一の自身の作品「A Little Bit Of Love」は2分にも満たない小曲でした。

 こうして聴いてみると、このアルバムは熱心な女性SSWのファンの方にはお勧めできるものですが、名盤というほどのこともないアルバムです。 ただ、マイナーレーベルの宿命でもある流通力の弱さのせいなのでしょうか、僕はこのアルバムを手にして以降、レコード店で売られているのをみかけたことがありません。 Mary Saxton についても、ネットで検索してみましたが経歴などをつかむことはできませんでした。 
 カナディアン・ロッキーの玄関口、エドモントンからリリースされた Mary Saxton。 ジャケット買いするにはちょっと勇気のいるアルバムでしたが、「品番買い」という側面からは見過ごす訳にはいかなかったのです。

■Mary Saxton / Mary Saxton■

Side-1
Georgia Eyes
I Want you
I’m A Woman (In Love With My Man)
Take A Chance
Lazy Old Soul *

Side-2
Hang Up Your Coat
Love For A Laugh
Jimmy Lee
Love’s Desire *
A Little Bit Of Love

Produced by Karl Erikson & Norman E. Rooke
Strings Arrangements by Gerry Dere
* Arranged by George Blondheim

Recorded at Damon Sound Studio , Edmonton , Alberta

Many Thanks to the Following Musicians and Singers :
Trevor Dunn , Doug Rusu , Gerry Dere , George Blondheim , Wallis Petruk , Norman Rooke , Tom Duran , P.J. Perry , Ian Berry , Moe Marshall , Susan Gilmour , Charlie Faulkner , David Sinclair , Bob Burghardt , Jim Vallance , Brandy graesser , Rob Trousdell , Marc Vasey , Rick Erikson , Nancy Nash , Barry Allen , Randy Broadhead

Mustard M-1001

Jo Anna Burns

2006-03-25 | Female Singer
■Jo Anna Burns / Under The Lily Pad■

 水面に浮かぶ蓮の花。 清楚な SSW の音が期待できそうなジャケットです。 しかし、裏を見るとカエルのぬいぐるみにかこまれた 30代前半という感じの女性。 もしかして、子供向け音楽なのではと不安になります。
 そんな Jo Anna Burns の「Under The Lily Pad」 は 1979年に オレゴン州ポートランドからこっそりとリリースされたアルバム。 クレジットを見ると、このアルバムがセカンドでファーストアルバム「Jo Anna Sings Your Favorites」が存在しているようです。 このアルバムの品番が JRC1002 ですので、JRC1001 なのでしょう。
 クレジットを見ると、本人の自作は「The Magic Of That Moment」と「Under The Lily Pad」の2曲のみで、他は全曲カバーとなっています。 Jo Anna Burns の特徴はその清潔感あふれるボーカルにあります。 アルバムには「5000フィートの高地で降った雨の後の空気のよう」みたいに書かれていますが、クラシック音楽の教育を受けてきたと思われるような発声であることは確かです。
 A面の「Yellow Bird Medley」では、有名な「バナナボートソング」やラテンの古典「ガンタナメーラ」などが含まれており、まさにNHK 教育テレビのような気分に浸れます。裏ジャケットの写真から想像したように、彼女は歌のお姉さんみたいな存在だったのかもしれません。
 しかし、そんな場面ばかりではこのアルバム、聴きどころがないのですが、しっかりとツボを押さえた曲もあります。 とくに「You Light Up My Life」はオリジナルよりもハイトーンな声のせいで、美しいできばえなのです。
 「You Light Up My Life」でピンとこない方もいるかとは思いますが、この曲はパット・ブーンの娘であるデビー・ブーン(Debby Boone)が1977年に放ったビッグヒットです。 1977年の10月から12月まで、ビルボード1位を10週連続で獲得したこの名バラード、僕はそのころ13歳でしたが、情けない邦題「恋するデビー」とともによく覚えています。 ちなみに作詞作曲は、Joe Brooks という人です。
 B面には Janis Ian の「Jesse」のカバーがありますが、アメリカの童謡的な「Mockingbird Hill」やプッチーニ「蝶々夫人」の「ある晴れた日に」など、彼女の歌いたい曲ばかりが並んでいます。 まさにちょっとしたお金持ち女性が、私費を投じて制作してしまったかのような究極のプライベート・アルバムなのですが、僕はあと1回くらい聴くだけなのだろうなと思います。 そんな彼女の近影を、google で検索してみることができました。 地元ポートランドで音楽の仕事に従事しているという彼女は、予想通りふっくらしたおばあさんになっていました。



■Jo Anna Burns / Under The Lily Pad■

Side-1
The Magic Of That Moment
You Light Up My Life
Yellow Bird Medley
1) Yellow Bird
2) Banana Boat Song
3) Mary-Ann
4) Guantamanera
Send In The Clowns
Under The Lily Pad

Side-2
Evergreen
Ghost Riders In The Sky
Jesse
Mocking Bird Hill
Un Bel Di (From Madama Butterfly)

Produced by Jo Anna Burns and Peter Barkett
Arranged by Jo Anna Burns and Peter Barkett
Recorded At Recording Associates , Portland , OR

Jo Anna Burns : piano , vocals
Peter Barkett : piano , electric piano , organ
Paul Barkett : acoustic guitar
Jon Newton : electric guitar , synthesizer
Ron Stephens : pedal steel guitar
Gordy Pisle : drums
Brian Willis : drums
Bob Douglass : bass
Rick Cocklin : bass
Rod Thompson : bass
Rick Tippets : trombone and tuba
Jim Sours : clarinet , flute and recorder
Mark Gaukle : trumpet
Jo Anna Burns, Peter Barkett , Paul Barkett : background vocals
Strings Arranged by Peter Barkett

Jo Anna / Jeremiah Records JRC 1002

Lorri Zimmerman

2006-03-07 | Female Singer
■Lorri Zimmerman / Lorri Zimmerman■

 今日、ご紹介するのはカナダの美人女性シンガー、Lorri Zimmerman です。 彼女のソロとしては唯一と思われるこのアルバムは 1971年に発表されました。 内容は60年から70年にかけての Soft Rock や Pops のテイストあふれるボーカルアルバムです。 ジャケット写真がかなりサイケデリック、アシッドな感じなので、かなり不安になりますが、同時代のポップアルバムとしてはやや古い感じはしますが、普通に聴くことのできる作品です。 裏面を見ると、Lorri Zimmerman は、1966年にテレビのタレントオーディションでファイナルにまで残った人のようです。 唯一の手がかりとなる写真も美人ですので、本当のこのジャケットは悔やまれます。 Peggy Lipton のように顔のアップにしていれば同じような評価がされたかもしれません。
 彼女のプロフィールは、1968年に The Munks というバンドに参加し、その後モントリオールの Life というバンドに加わったもののすぐに解散、その後このソロアルバムを発表したようです。 その後は、1977年に Heather Gauthier, Judi Richards というメンバーと3人で Toulouse というグループでアルバム「Export」を発表しています。 内容はディスコっぽいサウンドのようなのですが、バックバンドは Roger Hawkins や David Hood といった Muscle Shoals の面々が支えているようです。 このアルバムは持っていませんので、何か情報をお持ちの方がいらしたら、教えてください。
 内容的には、ソフトロック調の「Don't Twist My Mind」、「Just To Say Goodbye」、「Paint Me A Picture」などが代表曲になると思います。 シンプルで軽快なロック調の楽曲もありますが、たいしたことはありません。 ちなみに、Ken Briscoe という人物が5曲の作曲に関わっていますが、彼のプロフィールも不明です。 発売はカナダオンリーで、Crescend Street Recordsというマイナーレーベルからリリースです。


■Lorri Zimmerman / Lorri Zimmerman■

Side-1
Don't Twist My Mind
You're The One
Contemplation
Bidin' My Time
Just To Say Goodbye

Side-2
Theme For An Imaginary Western
Cause The World Is Mine
Paint Me A Picture
Love Me , Love My Children
Children Of The Universe

Excective Producer : Ken Ayoub
Producer : Harry Marks
Engineer : James Kay
Recorded at Andre'Perry Studios Montreal

Crescend Street Records CS-1863