Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Paul Parrish

2006-04-29 | SSW
■Paul Parrish / The Forest Of My Mind■

 無事に発見されました。 Paul Parrish のファーストアルバムです。 大手映画会社の MGM 傘下のレーベル、Music Factory Records から 1960 年代後半にリリースされています。 クレジットに制作年が書かれていないので、正確な年は不明ですが、1968 年前後ではないかと思います。
 このアルバム、各面のラストに、レノン・マッカートニーとホーランド・ドジャー・ホーランドという歴史的なソングライターチームの曲が収録されている以外は、すべて Paul Parrish の自作となっています。

 さっそく、針を落としてみました。 1 曲目の「English Sparrows」は、まるで Donovan です。 このアルバムの発売年を調べるために AMG で検索したのですが、そこのジャンル分けに「Sunshine Pop」とあったのも納得してしまいます。 続く「Suzanne」は、フルートとヴィオラの音がけだるい雰囲気を醸し出した中々の佳作。 あれ、「Tomorrow Never Knows」か? と思わせるエフェクトから始まる「Walking In The Forest (Of My Mind)」は、ちょっとサイケな出来。 いかにも 1960 年代というアレンジの「The Painter (Who Lives In The Cellar)」は、移動式遊園地のような賑やかさです。 ティンパニのようなパーカッションをバックにストリングスが緩やかに入る「Dialogue Of Wind And Lover」に続いては、The Beatles の「You’ve Got To Hide To Love Away」です。 この曲は特に冒険的なアレンジもなく、原曲に忠実です。 と、ここまでA面を通して聴いてきて思うのは、Paul Parrish の透明感のあるピアノの音がまったくフィーチャーされてないことです。 彼の 2 枚目、3 枚目とはまったく異質な音楽であることがよくわかります。
 B 面のほうは、A 面ほど派手なアレンジはありません。 「Tiny Alice」はアップな展開にストリングスが絡むのですが、個人的には一番キツイ曲でした。 シンプルなベースにのった「Morning Train」で若干救済され、「Something Of A Love Song」で持ち直します。 この曲で初めて本人のものらしきピアノの音が聴こえます。 淡々としたワルツ「The White Birds」に続いて、このアルバムで最も長い 3 分 40 秒の「Flower In The Park」が始まります。 この曲は、「おや、どこかで聴いたことのあるメロディー?」と思うと、あの Jimmy Webb 作曲で Donna Summer の大ヒット「MacArthur Park」の冒頭のメロディとそっくりです。 この曲は 1968 年には Richar Harris が歌っていますので、どちらの曲が古いかは微妙です。 ともにタイトルに「Park」という言葉が入っているのも気になります。 そして、最後はデトロイト録音ということもあってか、モータウンの代表ヒット「I Can’t Help Myself」で締めくくられます。 この曲も凝ったアレンジはないのですが、この曲を Paul Parrish のボーカルで歌われると、ちょっと失笑してしまいます。 そんな名曲もあっけなくフェードアウトして、このアルバムは余韻を残すこともなく終わっていきます。

 このアルバムは、曲紹介の冒頭のほうでも書きましたが、当時人気絶頂だった Donovan のフォロアー的に売り出そうとしたレコード会社の思惑が強かったのでしょう。 ジャケットのイラストからもそんな気配がうかがえます。 そうしたことから、後に開花する Paul Parrish のピアニストとしての繊細な個性は、ここでは封印されてしまったままで、SSW ファンがさかのぼって追いかけるほどの内容ではありません。 このアルバムが成功しなかったのは言うまでもなく、その後 Paul Parrish はデトロイトを離れ、ウェストコーストへと向かい、セカンド「Songs」をリリースしました。 その間の経緯や彼の心境はどんなものだったのでしょうか? 



■Paul Parrish / The Forest Of My Mind■

Side-1
English Sparrows
Suzanne
Walking In The Forest (Of My Mind)
The Painter (Who Lives In The Cellar)
Dialogue Of Wind And Lover
You’ve Got To Hide To Love Away

Side-2
Tiny Alice
Morning Train
Something Of A Love Song
The White Birds
Flower In The Park
I Can’t Help Myself

Produced by Clay McMurray for Sussex Productions, Inc.
Arrangements by Mike Theodore and Dennis Coffey
Recorded at Tera Shirma Studios , Detroit . Michigan

Music Factory Records MFS-12,001


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