Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Henry Gaffney

2011-03-27 | AOR
■Henry Gaffney / On Again Off Again■

  今回の大震災で被災された方、いまだに避難を余儀なくされている方へは、深くお見舞いを申し上げます。 僕自身もこの震災を受けて、今までの価値観に捉われず、行き方そのものの見直しを迫られているような気がします。 具体的に何から始めればいいのか、少しづつ考えて行きたいと思っています。 

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  男前にさらに磨きがかかった Henry Gaffney のセカンドアルバムは、レコード会社を移籍して 1978 年に発表されました。 キザすぎるジャケットに田中康夫も嫉妬したであろう本作は、前作よりもさらにアダルトに深化したサウンドが堪能できます。 自身のプロデュースとなったことが影響しているのかは判りませんが、前作同様のジャジーな感覚は維持しながらも、より洗練されクールで老獪になっているように感じます。 Steely Dan が Royal Scam (1976) から Aja (1977) へと1年半足らずで急激に熟成したことに比べれば大した変容ではありませんが、そうした時代考証をしながら聴き比べてみるのも楽しみの一つだと思います。

  オープニングは Kurt Weill によるスタンダード「Mack The Knife」で幕開け。 口笛で始まるメランコリックな雰囲気のなかで、Eric Weissberg のバンジョーが気分を和らげてくれます。 そういえばこの曲は Franklin Micare も 1978 年のアルバムでカバーしていました。おそらく偶然だと思いますが、時代も参加ミュージシャンも近いこの 2 人に共通したセンスを感じとることができます。 「City Lights」や「Breakout」はともにサビを繰り返すところが印象的で耳に残る楽曲なのですが、特にこの 2 曲には Franklin Micare のサウンドと近いものを感じました。 これは、改めてレコードを聴き直して初めて気がついた発見でした。 

  この曲に続くのが個人的なベストの 1 曲「There’s A Train」です。 巨匠 Ron Carter のウッドベースとともに Henry Gaffney のボーカルが心に染み入る大人のバラードは、艶やかなストリングスにも包まれて、完ぺきに近い仕上がりとなりました。 前述の「City Lights」はシングル・カットできそうな曲。 少しトロピカルなムードの「Mannequin」、映画のサントラのような「Happy End」と A 面は続いていきます。

   B 面はフェンダーの音色でしっとりと始まる「This Is It」から始まります。メロウな中盤までの展開から、急にテンポアップしてMichael Brecker の炸裂するようなソロで突然終わるというアイディアは斬新です。 Frankilin Micare 調の「Breakout」でも Michael Brecker は活躍していました。 その後は、重たいピアノ・バラードの「There’s No Sound」、ライトタッチな「Lady」と続いてラストの「On Again Off Again」へとスムースに続くものの、あっけなく終わってしまう感じです。 「On Again Off Again」はビターな味わいのなかで大人の心象が綴られているのですが、エンディングがクールすぎて物足りなく感じてしまいました。

  こうして 2 回にわたって Henry Gaffney のレコードを取り上げてきましたが、2 枚とも時代の最先端を行くハイセンスなサウンドに満たされていることを再認識しました。 にも関わらず、ともに CD 化されていないとは何とも皮肉なものです。 Henry Gafffney は 1995 年からバークレー音楽学校で作曲の講師を務めてましたが、せめて彼が生きている間に CD 化され再評価の対象となって欲しかった思うのです。 意外と、本人が照れ屋さんで、それを拒んできたのかもしれませんが。

■Henry Gaffney / On Again Off Again■

Side-1
Mack The Knife
There’s A Train
City Lights
Mannequin
Happy End

Side-2
This Is It
Breakout
There’s No Sound
Lady
On Again Off Again

Produced by Henry Gaffney
All Songs written by Henry Gaffney except ‘ Mack The Knife’ by Kurt Weill
Strings and woodwinds arranged and conducted by Jack Perry Cone
Concert Master : David Nadien
Woodwinds : Phil Bodnerm George Marge

Henry Gaffney : vocals, acoustic guitar
Joe Caro : acoustic guitar
John Tropea : guitar
Leon Pendarvis : fender rhodes
Pat Rebillot : fender rhodes
Michael Mandel : fender rhodes, synthesizer
Neil Jason : bass
Ron Carter : bass
Danny Trifan : bass
Will Lee : bass
Frank Gravis : bass
Dave Friedman : vibes
David Carey : marimba
Alan Schwartzberg : drums
Bernard Pershey : drums
Chris Parker : drums
Steve Jordan : drums
Eric Weissberg : banjo, steel
Jim Maelen : percussion
Michael Chimes : harmonica
Michael Brecker : tenor solo

Manhattan Records / United Artists Records MR-LA-861 H-0798

Henry Gaffney

2011-03-06 | AOR
■Henry Gaffney / Waiting For A Wind■

  昔でいう伊達男、今ならイケメン。 1970 年代の音楽シーンにおいて、その風貌のカッコよさとサウンドのお洒落さでは他の追随を許さない、と個人的には思っている存在が Henry Gaffney です。 これで売れていたらセレブの仲間入りだったのですが、そう上手く事は運ばず、レコードが売れなかったどころか、彼が残した 2 枚のアルバムがともに CD 化されていないという残念な事態となっています。
  そんな Henry Gaffney のことをふいに思い出し、ネットで調べてみたところ、昨年の 5 月にがんで亡くなっていたことを知りました。 がんとの長い闘病の果てだったそうです。 そこで、今回と次回で 1 年遅れの Henry Gaffney 追悼投稿を行うことにします。

  Henry Gaffney は生粋のニューヨーク育ちなのでしょうか。 彼の音楽のどこを切り取ってもマンハッタンの匂いがします。 世界恐慌が起こる前の 1920 年代のニューヨークはこんなに楽しかったのではないか、と思わせるような古き良き時代の残り香を漂わせるようなサウンドが、当時の名うてのセッション・ミュージシャンを従えて優雅に展開されるのです。 Kenny Rankin をよりジャズ寄りにした雰囲気というとイメージしやすいかもしれません。 いずれにしてもこのテイストは他の SSW/AOR のミュージシャンとは一線を画すところであり、Henry Gaffney の最大の個性となっています。 
  
  アルバムはどの曲も充実した仕上がりとなっているのですが、個人的には A-2 のバラード「Over My Shoulder」に尽きます。 静かでスロウな入りから、徐々に Henry Gaffney のエモーションが解き放たれていく様はあまりにも素晴らしく、形容のしようがありません。 残念なのは、フェードアウトが早く、もう少し長く味わっていたかったと思わせる点です。 それを除けば、完ぺきな楽曲となったことでしょう。 次点となる曲は、悩んだ末に「Nightmare」。 曲調は全く異なり、Anthony Jackson のベースが弾ける疾走感が心地よい楽曲ですが、当時の Steely Dan に通じるものを感じます。 Don Grolnick のエレピが夜に映えるバラード「Can I Rely On You」もビター・スウィートな味です。

  しかしながら、アルバムの大勢を締めるのは「I’m Waiting For A Wind」や「Manhattan」といったアコースティック・スウィング系の楽曲です。 同じ傾向としては「If Only The Weather Would Change」、「For Pete’s Sake (Julian Street)」そして「Happy Birthday To Ya」なども入ります。 いずれもセンスあふれる仕上がりなのですが、これらの楽曲が醸し出す絶妙に洒落たセンスを売り物に世に打って出るには、時代が 10 年早かったと思います。 西海岸を中心に音楽産業が肥大化し始める 1976 年には Henry Gaffney のサウンドは敷居が高すぎたとしか言いようがありません。 

  彼の音楽を聴くたびに、Francis Scott Fitzgerald の「The Great Gatzby」を思い出します。 彼の肖像写真が Henry Gaffney と重なって見えてしまうのです。

■Henry Gaffney / Waiting For A Wind■

Side-1
I’m Waiting For A Wind
Over My Shoulder
Manhattan
Nightmare
Can I Rely On You

Side-2
If Only The Weather Would Change
Superstar
For Pete’s Sake (Julian Street)
Seems I’m Falling
Happy Birthday To Ya

Producer : Dan Collins
Arrangements : Clark Gassman
Engineer : Jerry Barnes

Produced by Gary Klein
All songs written by Henry Gaffney
Strings and horns arranged and conducted by Charlie Calello

Henry Gaffney : acoustic guitar, piano
Anthony Jackson : bass
Elliott Randall : electric guitar
Allan Schwartzberg : drums, percussion
Gary Klein : glass harmonica
Lance Quinn : guitar
Pat Rebillot : piano, electric piano
Richard Davis : acoustic bass
John Tropea : guitar
Don Grolnick : electric piano
Dave Friedman : vibes
Joe Jorgensen : clicks
Lewis Soloff: trumpet solo
Al Dana : background voices
Lenny Roberts: background voices
Dave Buskin : background voices

RCA APL1-1548