Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Michal Hasek

2007-03-29 | SSW
■Michal Hasek / Michal Hasek■

 Tony Kosinec 周辺人脈の 1枚。 彼のクレジットがなかったら買っていなかったかもしれません。 というのも Tony Kosinec はキャリアの長さのわりに他のアーティストの作品に参加してないようで、僕が知っている限りでは、以前このブログでご紹介したRon Baumber 、紹介する予定のない Tim Curry、そしてこのMichal Hasek と Don Jewitt くらいです。 Don Jewitt もいずれご紹介ですが、今日は Michal Hasek を選びました。

 彼の自主制作に近いファースト・ソロアルバムは、1974 年に Tony Kosinec や Ron Nigrini などのカナダの重要ミュージシャンのサポートを受けた作品として、知られています。アルバムを棚から引っ張り出して、久しぶりに聴いてみました。

 オープニングを飾る「Natural Man」はパブロック風のアレンジで、おや?と思ってしまうのですが、この曲が異色なので、心配は無用です。 続く David Wiffen 作の「More Often Than Not」はギターのアルペジオのみをバックに朴訥な語り口で歌われます。バック・コーラスがさりげなく唸るような感じで効いています。 この曲 はDavid Wiffen のファーストアルバムのラストに収録されていますが、そちらよりも Eric Andersen の名盤「Blue River」に収録されているバージョンの方が有名でしょう。 「Strange Man」は、ルーズなロックンロールで、平凡な出来。 続く「You Lighten My Load」は、Ian Guenther によるバイオリンと女性コーラスとの絡みあいが絶妙なナンバー。 引き立て役に徹している Michal Hasek はなかなか懐が深いなと感心します。 レーベルの名前にもなった「Naja」は、Michal Hasek のギターとドブロの腕の見せ場ともいえるインストナンバーです。 エフェクトがかなり効いているところが好き嫌いの分かれるところかも。

 Ron Nigrini 作の「Horses」はアコギをバックにソロで歌い上げる曲。途中で入る口笛が清々しいですが、オリジナルはどんな感じなのでしょうか。 続く、「Song To The Country」は、こじんまりしたギターの弾き語りかと思えば、後半に意外にも R&B 調に展開する意外な曲。 しかし、全体のバランス崩すことはなく、B 面のハイライトとも言える内容です。 渋めの「Sweet Lady Blue Rain」は、パーカションとの二人編成。 「Nothin’ Baby Like You」は、アップテンポのフォーキーで、カッコよく決めています。アルバムを締めくくる「Kick n’ The Ass」~「Amchitka」はメドレー。 前者は女性コーラスとのユニゾンがソフトロック調ですが、後者のバイオリンが絡むアレンジはトラッド的で、Michal Hasek が意表を突く展開好きなことがわかります。

 このようにアルバム全体を通してはやや散漫でまとまりがない印象を受けるものの、B 面の構成力などは飽きが来ないように工夫されており、デビューアルバムにしては及第点の内容だと思います。 Michal Hasek は、同じレーベル Naja から 1978 年にセカンドを発表していますが、次回はそれをご紹介したいと思います。

 

■Michal Hasek / Michal Hasek■

Side-1
Natural Man
More Often Than Not
Strange Man
You Lighten My Load
Naja

Side-2
Horses
Song To The Country
Sweet Lady Blue Rain
Nothin’ Baby Like You
Kick n’ The Ass~Amchitka

Produced by Hasek
Technical direction : Tony Kosinec

Rodney St Amand : bass
Ian Guenther : violin
Steve Kennedy : sax , flute
Tony Kosinec : tablas
Mitchell Lewis : guitar , banjo
Michal Hasek : guitar , harp , dobro
Brian Browne : piano
Ron Nigrini : guitar
Christine Newland Hanson : cello
Peter Alves : synthesizer
Gairey Richardson : guitar
Michael Irvine : drums

Singers : Jessica Boraski , Ron Nigrini , Tony Kosinec , Gairey Richardson , Caryne Chapman , Nancy Simmonds

Naja 1

Phyl Sheridan

2007-03-25 | Folk
■Phyl Sheridan / Simple Things■

シアトルをベースに活動したフォークシンガー Phyl Sheridan のファーストアルバムは、Morning Glory というマイナーレーベルから 1975 年にリリースされました。
 
 Phyl Sheridan のスタイルはアコギをバックに朴訥としたボーカルが重なるというもので、曲によっては初期の Bob Dylan に似たフォーキーだったり、カントリーブルースという趣きだったりします。 特徴的なのが、ギターのアルペジオなども複雑でテクニカルなものではなく、ほとんど素人が音楽を演奏しているのに近い雰囲気です。 全曲一発録音でオーバーダビングは一切ないものと思われます。 曲はトラディショナルの「Shady Grove」と「Jack Of Diamonds」以外は全曲オリジナルとなっています。
 A 面の冒頭 3 曲は、そんな実直な Phyl Sheridan のスタイルが貫かれるシンプルな曲が並び、やや単調な印象はどうしても否定できません。続く「Vagabond’s Blue Trail」はハーモニカのイントロでサウンド的なアクセントが入るだけでなく、メロディーにも抑揚があり、古き良きフォークのなごりを感じる名曲です。この曲が彼のオリジナルというところは高く評価できます。
 B 面の「Bad Money」は珍しく完全にリズム&ブルースです。無骨で汗臭いギターをバックに Phyl Sheridan のトーキング調のボーカルが展開されます。ほとんど、ストリート・ミュージシャンのような気分ですね。 「Black Gypsy」と「Naturally Stoned」は、3 人のバックミュージシャンが加わります。 「Black Gypsy」では、Quinto Drum と Tumba らしき音は確認できますが、面白いのが中間部で聴けるベース・ハーモニカのソロです。 ウシガエルの鳴き声みたいな音なので、クレジットを見ないと何が鳴っているのかわからないかもしれません。 「Naturally Stoned」は、1970 年代のニューソウルに影響された洗練されたグルーヴ感のある曲調ですが、楽器が楽器なのであくまでもカントリーブルースの範疇かなあと。 曲の途中で聴けるソロはサックスにしか聞こえないのですが、クレジットがないので誰の演奏なのかも分りません。 ラストの「Take It Like It Comes」は、ワシントン州のモンロー刑務所で行われたライブ・レコーディングです。 歌詞のアドリブも交えた R&B 的な曲なのですが、あまり盛り上がりません。 二箇所ほどで歓声が聞こえますが、すぐに沈静化してしまうし、手拍子なども巻き起こりません。 1975 年にこのようなオールドスタイルのフォークを聴かされた収監者はどんな気持ちで彼のライブをみたのでしょうか。

 Phyl Sheridan の公式ページは見当たりませんでしたが、CD Baby のサイトで、3枚のアルバムが CD 化されていることを発見しました。 「Sand In My Last Hour Glass」「Freedom Calling Me」そして、「That’s When I Knew」の3タイトルです。 「Freedom Calling Me」のレビューを読んでいて新たな事実を知りました。 Phyl Sheridan は、2006 年 3月に亡くなっていたのです。 この「Simple Things」から亡くなるまでの 30 年もの間、おそらく彼の音楽スタイルはまったく変わらなかったのでしょう。

 

■Phyl Sheridan / Simple Things■

Side-1
Simple Things
Shady Grove
People Seem To Forget
Vagabond’s Blue Trail
Jack Of Diamonds

Side-2
Bad Money
Black Gypsy
Naturally Stoned
Take It Like It Comes

Produced by Frank H. Ferrel and Phyl Sheridan
Recording by Tom Martin , Rick Keefer and Richard Harris

Phyl Sheridan : guitar and vocals
Carolyn Brandy : Quinto Drum on ‘Black Gypsy’ and ‘Naturally Stoned’
Don Wilsun : Tumba on ‘Black Gypsy’ and ‘Naturally Stoned’
Jim Hokanatul : bass harmonica on ‘Black Gypsy’ and ‘Naturally Stoned’

Morning Glory Records No.1

Meisburg & Walters

2007-03-23 | SSW
■Meisburg & Walters / See The Morning Breaking■

 窓から外を眺める二人。 通り過ぎる優しい風が目に見えているかのような表情をしています。 ジャケットの雰囲気からして、ジェントルな SSW アルバムに違いないと想像できるこのアルバムは、Steve Meisburg とJohn Walters のユニットのファーストアルバム。 1975 年に Parchment というマイナーレーベルからリリースされました。
 ジャケットから来る印象の通り、二人の優しい声とコーラス、時折はいるペダルスティ-ルやハーモニカが郷愁を誘うような、そんな心温まるアルバムとなっています。アップな曲ではカントリー寄りの傾向が強まりますが、ミディアムやバラードに聴かせる曲が少なくありません。

 なかでも「The Drifter」が群を抜いて素晴らしい出来栄えです。 John Walters のペンによるこの曲は、父親もしくは神父が息子に語りかけるような内容で、「♪Son , life is worth living. Son , live for today♪」と優しく歌われるサビの部分には心打たれます。ラストの繰り返しでは、半音上げる転調をするなど、日本人好みのアレンジとなっています。 この曲だけで、このアルバムは十分というと言い過ぎですが、それほど気に入っています。 しかし、「The Drifter」というタイトルにハズレ曲は無いですね。 Roger Nichols の名曲(本来はシングル盤のみのリリースでした)や、キリンジの「Fine」に収録の名曲のことを思い出します。 個人的には、この 3 曲を「3大ドリフター」と命名したいと思っています。
 A 面では、トラディショナルの「See The Morning Breaking」や、Steve Meisburg のペンによる「I Need You After All」などがほんわかして気持ちのいい曲です。「Ginny Breeding」は人の死を題材にしているだけに、リコーダーなどの音が悲しげに響きます。
 B 面でお薦めなのは、Steve Meisburg 作の「If You Go」や「You’ve Got A Hold On Me」です。ともにミディアムな曲ですが、ふたりのコーラスや優しいアレンジが堪能できる曲です。 他の曲はアップでややカントリー色が強くなっています。ラストの小曲「Just Because You’re You」は、John Walters の曲。 「君は君だから」などと言う歌詞はまるで日本のニューミュージックか叙情派フォークのようです。 日本もアメリカも同じような世界観があるのですね。

 さて、この Meisburg & Walters について調べてみました。 僕の持っているレコードはこのアルバムだけなのですが、Meisburg & Waltersとしては後にメジャーの Casablanca Records から 2 枚のアルバムを発表しています。 1977 年の「Just Like A Recurring Dream」(NBLP7039)、と同年の「Love’s An Easy Song」(NBLP7067)なのですが、前者のアルバムには、この「See The Morning Breaking」に収録している曲が「The Drifter」を含め 4 曲もダブっています。 これは同じ音源なのでしょうか、それとも別なのでしょうか。 とても気になるところです。 1970 年代後半の Casablanca Records は Donna Summer や KISS が爆発的に売れていた時期です。 そんななか、ひっそりと地味なデュオである Meisburg & Walters をプッシュしている余裕などなかったのでしょう。 Meisburg & Walters の音楽は多くの人の耳に触れることもなく、彼らもやがてシーンから消えていったのです。

 

■Meisburg & Walters / See The Morning Breaking■

Side-1
See The Morning Breaking
The Drifter
She’s Still On My Mind
I Need You After All
Ginny Breeding

Side-2
High Country
If You Go
Trust
The Medicine Man
You’ve Got A Hold On Me
Just Because You’re You

All Songs composed and arranged by Steve Meisburg and John Walters
Except ‘See The Morning Breaking’ is traditional , lyrics to ‘The Medicine Man’ by Wayne Bourgeous

Vocals : Steve Meisburg and John Walters
Acoustic Guitars : Bobby Thompson , Johnny Christopher , Steve Meisburg and John Walters
Harmonica : Charlie McCoy
Pedal Steel Guitar : Russ Hicks
Bass Guitar : Henry Strezelecki and Don Smith
Electric Guitar : Jim Colvard , Dale Sellars and Steve Gibson
Drums : Kenneth Buttrey and Jim Isbell
Percussion : Farrell Morris
Dobro : Dale Sellars
Banjo : Bobby Thompson and John Walters
Fiddle : Buddy Spicher
Piano : Bill Pursell , Bobby Woods and Ron Oates
Recorder : Bill Puett
Strings : Shelton Kurland and the Members of Nashville Symphony

Parchment Records  PR1002

Charlie King with Paul Despinosa

2007-03-21 | Folk
■Charlie King with Paul Despinosa / Old Dreams And New Nightmares■

 今までこのブログで取り上げたレコードのなかでも、最も政治的なメッセージの強いアルバムです。 メッセージというよりも政治への批判や皮肉と言った方が近いかもしれません。
 1975 年に、Charlie King が Paul Despinosa のサポートを得て、制作されたアルバムです。 どこから見てもプライベート・プレスに違いないと思えるこのジャケットにも、Charlie King のこだわりとか姿勢を感じ取ることができます。
 アルバムは、この手のフォーク作品としては、曲数も長く、片面も 25 分近く収録されています。 当時は、Charlie King が関心を寄せる出来事も多く、曲がどんどん生み出されていたのでしょう。

 「Do The Continental Walk」は、1976 年にサンフランシスコからワシントン DC までの大陸横断をしながら、非武装・中立を唱えるという行進が行われる計画となっており、その計画への参加を呼びかける歌のようです。 このような曲からスタートしますが、サウンドは、淡々としたフォークです。時折トーキングスタイルにもなりながらも、決して荒げることはなく、極度に感情移入することもなく、マンハッタンの片隅で歌っているかのような気楽なイメージを感じ取ることができます。「This World Is One」は、当時 NYC に日本から原水協のメンバーが訪問したことを題材にしたもの。曲ごとに書かれているライナーには、原水協のメンバーの多くが広島と長崎の原爆を体験していることも明記されています。CIA のことを皮肉ったと思われる「The Good Ol’ C.I.A.」などは軽い曲なのですが、Charlie King の向ける矛先の相手はスケールが大きいですね。
 批判の矛先は、CIA のみならず、ウォーターゲート事件で任期途中で辞任したニクソン元大統領にまで及びます。 「I Don’t Feel sorry For You, Mr. Nixon」はタイトルの通りなのですが、税金のムダ使いなどを歌いながら、It’s hard to sorry for a guy like this とまでにコテンパンにしています。 表現の自由が認められているとはいえ、かなり痛烈ですね。 1975 年に起こったマヤグエス号事件のことを歌った「The Mayaguez Incident」は珍しくマイナー調の曲。 マヤグエス号事件のことは初めて知りましたが、この曲ではその事件に関するフォード大統領の判断を批判しているものと思われます。
 このように多くの曲が政治色の濃いものとなっていますが、なかには「Time Is A Love Thief」や「Ordinary Love Song」のようなふつうのラブソングもあったりします。 メロディとしては、「Pour Yourself Out In Line」がキャッチーでポップな味わいです。 

 このアルバムは当時の時代との関連性が希薄になってしまった今となっては、音楽的な評価というよりは史料的な意味として語られるべきものでしょう。 僕は今回で2度目でしたが、また聴こうという気にはなかなかなりません。 
 そんな Charlie King はいまもなお、現役のフォークシンガーとして活動しています。 さすがにこのアルバムのような鋭いメッセージ性は影を潜めているのではないかと想像しています。 むしろ、そう願っています。

 

■Charlie King with Paul Despinosa / Old Dreams And New Nightmares■

Side-1
Do The Continental Walk
Talking Whip Inflation Blues
America, Where Did You Go?
Time Is A Love Thief
This World Is One
He Had A Dream
The Good Ol’ C.I.A.

Side-2
I Don’t Feel sorry For You, Mr. Nixon
Ordinary Love Song
The Rats Are Winning
Pour Yourself Out In Line
The Mayaguez Incident
An Old And Simple Dream

All Songs written and sung by Charlie King
Guitar and vocal accompaniment : Paul Despinosa
Shouting Chorus : Gerry Mooney , Debby Hoey , Kathy Coughlin , Nina Rutledge
Produced by Gerry mooney
Recorded at Mastertone Studio , N.Y.C.

CW Records

Lander Ballard

2007-03-16 | SSW
■Lander Ballard / High Time■

 何度見ても配色が気持ち悪く、色合いにもなじむことができないジャケット。聴くときには、モノクロの裏面と歌詞のブックレットを手にして、この鮮烈な赤が目に入らないようにしています。そんなジャケットでかなり損をしているのが、Lander Ballard のこのアルバムです。1977 年にリリースされたこのアルバムは、おそらく彼の唯一の作品です。
 裏面の Lander の表情やたたずまいからは、神経質そうなフォークサウンドを予想してしまいますが、意外にも内容はカラフルなニッチポップといってもおかしくない内容です。まず、彼の歌声が伸びやかで美しく、低音から裏声まで広い声域を活かしたサウンド作りが意識されています。ストリングスやホーンもなく、自身のセルフコーラスが随所に効いています。

 アルバムタイトルとなった「High Time」はちょっとしたグルーヴ感すら感じる名曲です。キャッチーなサビとドライブ感のある演奏で、これはクラブ DJ などにはお薦めできるのではないでしょうか。 自らがピアノを演奏する「Previous Things」は Elton John あたりを髣髴とさせるポップソングです。 表情豊なボーカルの魅力という点では、この曲が一番かもしれません。 続く「Song For An Aging Minstrel」は、♪Mr. Piano Man♪と歌うこともあってか、何となくBilly Joelを聴いているような錯覚に陥ります。 Lander Ballard の奥さん Kathie のことを歌った「Kathie’s Love Song」はアルバムを代表するバラード。名前もBallard なのですが、関係ないですね。綴りも違うし。 しかし、1970 年代にはこのように自分の恋人や奥さんのことを歌にする人が多いですね。自由奔放なヒッピー文化から個々を大切にするライフスタイルが定着していった時代背景による影響が強いのでしょう。 「Ch’I (Natural Energy)」は一貫してファルセットに近い裏声で通す風変わりな曲。 David Forman 名曲の「If It Takes All Right」を思い出します。

 6 曲の A 面に対して、B 面は 4 曲とバランスが悪いのですが、「The May – Fly Song」は珠玉のバラードですね。 70 年代中期の David Pomeranz に通じるようなサウンドとメロディのクオリティは大したものです。ラストの「My Friends」は 7 分超の大作ですが、アッパーなフォークロックという趣きです。

 繰り返しになってしまいますが、レコードのジャケットって大切ですね。 Lander Ballard のこのアルバムの内容を伝えるのに、彼がギターを抱えている必要はないし、むしろ誤解もしくは別のイメージを与える可能性があり、メリットはひとつもありません。彼はこのレコードのことをどう思っているのでしょうか。訊いてみたくなりますね。 ネットで調べたところ、公式サイトはありませんでしたが、彼はいまも時折ライブなどを行っているようでした。


 



■Lander Ballard / High Time■

Side-1
High Time
Previous Things
Song For An Aging Minstrel
Kathie’s Love Song
It Just Can’t Come To An End
Ch’I (Natural Energy)

Side-2
Rock And Roll Man
Circles
The May – Fly Song
My Friends

Music and Lyrics by Lander Ballard
Except ‘Previous Things’ Lyrics by Lander Ballard and Jan Bulla
Produced by Billy Sherrill and Lander Ballard
Engineered by Billy Sherrill

Lander Ballard : all vocals & guitars , acoustic piano on ‘Previous Things’
Timmy Tappan : all keyboards , tuned percussions
Tommy Tow : bass
Larrie Londin : drums , percussions

Free Wind Records LB7701

Milkwood

2007-03-10 | SSW
■Milkwood / Milkwood■

 気がつけば、このブログ「Reflections Of Tomorrow」も開設してから 1周年を迎えました。 自分でもよく継続できていると思いますが、まだまだ未紹介のレコードがありますので、しばらくは続けられると思っています。 

 さて、そんなブログの ID として名前を拝借しているのが、今日取り上げる Milkwood です。 1972 年に、名門 Paramount Records から発表されています。 1970 年代には、テレビ局では ABC が、映画会社としてはこの Paramount や 20th Fox がレコード会社を保有していましたが、いずれも撤退や売却をしてしまっています。 ABC Records は MCA を経てユニバーサルに継承されていますが、Paramount と 20th Fox は公式に CD になっていないレコードが多いように思います。 おそらく再発の権利関係が複雑もしくは不明な作品が多いのではないでしょうか。 

 さてこの Milkwood は SSW ファンの間では名盤の誉れ高きアルバム。 後に Cars を結成した Ric Ocasek と Benjamin Orr が在籍したことでも知られています。 しかし、Cars の源流を想像してたどり着いた人は肩透かしを食らうことになるでしょう。 このアルバムには緑濃い針葉樹林を通り抜けてきた風のような清々しさと、散策中に丸太小屋で暖を取るときのような温もりが混ざり合ったような空気感が感じられます。 レコードに針を落とした瞬間に部屋の雰囲気が一変するということは良くありますが、このレコードはまさにそのような魔法が閉じ込められています。

 1 曲目の「With You With Me」は完璧な楽曲。 ♪And ask you one more time~♪ ではじまるコーラスの素晴らしさは何度聴いても飽きさせません。この曲は同じメロディーやサビの部分であってもハモる節とそうでない部分を微妙にずらしながら、同じ光景を二度と見せないようにする演出が施されています。この嗜好を凝らした工夫は巧みの技に近いもので、こうした曲を平然とアルバムの冒頭に起用するセンスにも感心させられます。 アルバムは名曲ぞろいですが、A面では「Bring Me Back」が Milkwood 節ともいえる味わいでお気に入りです。
 B 面のなかでは「Makeshift Pawn」と「The Light Won’t Burn」が特にお薦めです。 前者は、歌い出しの美しいメロディが耳に残る名作。 後者は「With You With Me」と並ぶ代表曲ではないかと思っています。 ♪Turn ,turn♪のサビの部分のはかなさが心の琴線に触れてきます。 灯りは燃えないだろう、という悲観的なタイトルからも想像できるとおりの淋しさに満ちあふれています。 ラストの「Winter Song」もアルバムを締めくくるにふさわしい小曲です。

 今年に入って、この Milkwood がついに CD 化されたという驚愕のニュースが飛び込んできました。 しかもアナログ盤おこしというものではなく、きちんとリマスタリングされているということで期待は高まりますが、僕はまだ買えていません。 どうやら Disk Union でしか入手できないらしいので、早くしなければ!

 Milkwood の唯一の作品となってしまったこのアルバム。 ジャケットには小さく「How’s the Weather」と書かれており、これがタイトルという説もありますが、レーベル面には記入がないことから副題みたいなものだろうと僕は判断しています。 「天気どうなの?」というこのフレーズは、ラストの「Winter Song」からの抜粋なのですが、もう冬も終わり。 Milkwood の音楽が似合う季節は遠ざかろうとしています。 季節がめぐり、いずれ彼らがこの世から消え去ったとしても(Benjamin Orr はすでに故人ですが)、彼の残した音楽は人から人へと語りつがれながら、ひそかに愛聴され続けていくことでしょう。 それこそがレコードの果たすべき役割ですし、良質な音楽にのみ与えられた特権なのです。

 

■Milkwood / Milkwood■

Side-1
With You With Me
Dream Trader
Lincoln Park
Bring Me Back
Timetrain Wonderwheel

Side-2
Makeshift Pawn
The Light Won’t Burn
Along The way
We’ve Been All Through
Winter Song

Produced by Al Schwartz
Recorded at Aengus Studios , Fayville , Mass.
All Songs written by Richard Otcasek except for L’Lincoln Park’ which was written by Benjamin Orzechowski

Milkwood is
Richard Otcasek : acoustic guitars , vocals
Jas Goodkind : lead acoustic & electric guitars . vocals
Benjamin Orzechowski : bass , percussion , vocals

Bob Henderson : drums , percussion
Jeff Lass : keyboards
David Humphries : congas
John Payne : tenor , Sprano sax
Greg Hawks : baritone , soprano sax and horn arrangements

Paramount Records PAS 6046

Philip Cody

2007-03-02 | SSW
■Philip Cody / Laughing Sandwich■

 Philip Cody はカーペンターズの「Solitaire」をニール・セダカと共作したこともある SSW として知られています。 彼のセカンドアルバムは、Phil Cody 名義となり、国内盤としても CD 化されていますが、今日ご紹介するのはあまり知られていないファーストアルバムです。 こちらは人気がなく習作的なイメージもあるために、CD 化されていません。
 1971 年に、当時の音楽界のドンとも言える Don Kirshner (図らずもダジャレに!)の興したレーベル、Kirsher Records からリリースされたこのアルバムは、当時の東海岸の敏腕ミュージシャンに支えられて制作されました。 なかでも Mike Mainieri , Hugh McCracken , Tony Levin , Donald Macdonald といった主要メンバーの構成は、Just Sunshine からリリースされた White Elephant や Nick Holmes の「Soulful Crooner」のバック・ミュージシャンと重なります。 そうした切り口から聴き比べするのも面白いかもしれません。 そういえば、Nick Holmes はまだこのブログでは取り上げていませんでしたね。 
 
 さて、そんな Philip Cody のファーストですが、ニューヨークはグリニッジ・ビレッジ出身の若き SSW による意欲作と言えるでしょう。 曲によっての魅力や完成度にはバラツキがあるものの、サウンド的にはさすがといえる安定感もあり、「都会派シンガーソングライター」にカテゴライズできるアルバムだと思います。 印象的なナンバーをピックアップしてみましょう。

 オープニングを飾る「Down To Earth」はMike Mainieri のビブラフォンが可愛らしく響きます。 ソフトロック調のこの曲はブリル・ビルディングの香りがします。 フルートのイントロに導かれ、2 本のアコギのアルペジオが美しい「Child Again」は Philip Cody の繊細な一面を覗かせる名曲。 「Companions In Remembering」はドラマチックに展開しつつも、後半のプリペアド・ピアノみたいな響きが心地よい眠りへと誘うかのような曲です。 アルバムを代表する曲といえるでしょう。 特にラストの余韻の与え方は上手いですね。

 B 面では、「If It’s Love / If It’s True」がお薦めです。 この曲は何度聴いても、Eagles の「Desperado」が始まるのかと思ってしまうほどイントロの数秒の音感が酷似しています。 どちらが先かというと、Philip Cody のほうが早いのですが、東海岸と西海岸ですので、これは偶然ということなのでしょう。 「Banjo Girl」もドラムスの手数が多すぎるのが玉に瑕なのですが、起伏に富んだアレンジとシンプルなメロディが心に残るバラードです。

 Philip Cody のセカンドのほうは、国内盤 CD も発売され、マイルドでプレ AOR 的なアルバムとしてファンも多いと思います。 特に 1曲目の「Trying To Say Good-Bye」は名バラードですね。 そんな彼もオリジナルのアルバムはこの 2枚のみで、その後はライターに専念した様子です。 オリジナルサイトも充実していますので、是非訪れてみてください。

 「笑うサンドイッチ」という意味はわかりませんが、このアルバムには 1970 年代初頭のマンハッタンの路地裏の匂いがします。 時代の空気を閉じ込めることが「レコード」の本来の目的なのではないか…そんな事をふと考えてしまいますが、その言葉こそがこのアルバムへの最大の賛辞なのかもしれません。

 

■Philip Cody / Laughing Sandwich■

Side-1
Down To Earth
Come Home , Hannah
Dusty Roads
Child Again
Companions In Remembering

Side-2
Good News
Queen Of The Night
Morning Glory
If It’s Love / If It’s True
Banjo Girl
Seagulls

Produced by Ron Frangipane
Executive Producer : Wally Gold
Music Supervision : Don Kirshner

Ron Frangipane : keyboard
Donald McDonald : drums
Hug McCracken : guitar
Dave Spinozza : guitar
Vinnie Bell : guitar
Dickie Frank : guitar
Sal Di Troia : guitar
Sam Brown : guitar
Tony Levin : bass
Russell George : bass
Steve Breck : piano
Bobby Gregg : pericussion
George Debens : percussion
Bill Storandt : percussion
Mike Mainieri : vibes and percussion
Gene Bianco : harp
Morris Micon : alto souvlaki

Singers: Helen Miles , Linda November , Eileen Gilbert , Maeretha Stewart , Albertine Robinson , Ella Winston , Arlene Martell , Marlene Verplanck

Kirshner Records KES-113