Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Orville Stoeber

2006-06-26 | SSW
■Orville Stoeber / Songs■

 ワールドカップ観戦を最優先しているので、ブログの更新が遅くなってしまいました。 決勝トーナメントの 1 回戦 4 日連続を乗り切るのが睡眠不足には、最大のヤマ場ですね。

 さて、そんななか気持ちを落ち着かせる鎮静剤のようなサウンドを選ぼうと考えて、ピックアップしたのが、Orville Stoeber が 1971 年に発表したファースト・アルバムです。  アルバムはジャケットの雰囲気からもある程度想像できるのですが、極めて内省的な世界が繰り広げられています。 サウンドは、裏ジャケットに顔が出ている Orville Sotoeber ,Harry Palmer ,Ray Barrett の 3 人で奏でられ、ドラムレスの静かな SSW の世界が堪能できることから、静寂系、あるいは音の隙間を重視するタイプの SSW ファンにとっては、お勧めしたい作品です。
 現象面から見たアルバムの特徴は、短めの楽曲が多いということです。 全12曲のうち、2 分以内の曲が 4 曲もあり、この小粒感の連続がアルバムに奥行きを与えているかのように感じます。 A 面では、Orville Stoeber の世界観が凝縮された「The King, The Queens And The Joker」がいきなりの聴き所です。中盤で展開されるギター2本とピアノによる演奏、Orville のナチュラルなボーカルの震えなど、このアルバムを構成するエッセンスがほぼ全て展開されます。 A 面では、ほかに1 分 33 秒の「Lonely Sparrow」がアクセントになっています。NHK みんなのうたに採用されてもおかしくないようなシンプルで可愛らしい楽曲です。
 B 面は A 面よりも充実した内容です。 美しさではアルバム中一番ともいえる「Like An Ocean」は、控えめな演奏に息をひそめてしまいます。 極端に内省的な「Seventh Avenue」も 2 分に満たない小曲。 ボーカルにエフェクトをかけて、ノスタルジアを表現しているかのような「Annabelle Lee」、つづく「Cincinnati」、「Morton Street Pier」も繊細な世界感が伝わってくる素晴らしい内容。 ラストの 「Takin’ A Holiday」は、「休みを取ったので行けないよ」と歌う肩の力の抜けた軽いタッチの曲ですが、この曲がまたラストにしっくりくる作品なのです。 久しぶりに聴きましたが、あまり知られていないのがもったいない名盤だということを再確認した感じです。
 もちろん、CD 化されてはいないのですが、このような音楽はちょっと日の短くなった初秋の夕暮れに紅茶でも飲みながらじっくり聴きたいですね。 そんなシチュエーションと聴き手の姿勢が大事だと思います。
 
 さて、そんな Orville Stoeber ですが、ネットで検索したところ、2005 年 4 月に自主制作で「My Fatal Flaw」という CD を発表していることが分かりました。 アメリカの amazon でタイトルを入力すると検索されてきます。 さらには、i-tunes music store で1曲 150 円で購入できることも判明。 ジャンルがジャズになっているのが気になりますが、35 年ぶりの 2 作目というのはスゴイことですよね。 さっそく、ダウンロードで購入しましたが、これからサッカー観戦なので、その内容は後日ご紹介できればと思います。



■Orville Stoeber / Songs■

Side-1
The King, The Queens And The Joker
Open His Head / Where’s Jack Was
Oh, Sweet Music
Lonely Sparrow
Joey’s Party

Side-2
No More Masterpieces
Like An Ocean
Seventh Avenue
Annabelle Lee
Cincinnati
Morton Street Pier
Takin’ A Holiday

All Lyrics by Orville Stoeber
Except ‘Open His Head’ and ‘Where’s Jack Was’ by e.e.cummings 1950
‘No More Mastrepieces’ by Ronald Tavel

Elvin Campbell : engineer
Bobby Scott and Harry Palmer : producer
Tom Morgan : Executive Producer

Orville Sotoeber : Lyrics , music, vocals , guitar
Harry Palmer : guitar
Ray Barrett : piano , organ
George Duvuvier : bass

Recorded March 1970 at MCA Studios , 57th St. N.Y.C.

Uni Records 73103

The Ship

2006-06-18 | SSW
■The Ship / Tornado■

 The Ship のセカンドの存在を知ったのは、昨日のことです。 久しぶりに海外から通販で購入したアルバムが船便(コスト削減です)で忘れたころに届いたのですが、そのなかに埋もれていました。 このアルバムを選んだのは実は The Ship 名義というよりも、品番 SNR-1001 に惹かれたからなのです。 僕は、1001 番オタクなので病気ともいえる衝動買いなのですが、これが昨日紹介した The Ship のセカンドだとは思ってもみませんでした。
 このアルバムは、1976年、イリノイ州で録音され、ナッシュビルでマスタリングされた作品。 Saturday Night Records というのも彼らの自主制作レーベルのようです。
 前作からはメンバーが 3 人交代し残っているのは、Mark Hamby と Steve Reinwandの2人だけです。 ここで不安が高まりました。 というのも「A Contemporary Folk Music Journey」の作詞・作曲は、脱退してしまった Steve Melshenker と Steve Cowan によるものだったのです。 メインのソングライターが不在でサウンドはどのように変化したのでしょうか?

 新生 The Ship は、新加入の James Barton と Mark Hamby の2人がほぼ半分ずつの曲を書いています。 まずは、Barton の「Midnight Madness」で幕開けしますが、この曲はファーストにはなかった骨太のアメリカンロックでした。 途中でMark Hamby の特色のある clavinet ソロが出てきたりと聴きどころも多い、ダサカッコイイ曲です。 ミネソタの夜明け「Minnesota Dawn」はミディアムナンバー。 ピアノのイントロで始まる「Gwin」は、女性の名前のようで、その彼女に捧げられたバラードです。 なかなかの佳作なのですが、歌詞がちょっと陳腐な感じです。 軽めのポップソング「Hold On To Love」はリフレインが多いからかかもしれませんが、アルバムのなかでも最もキャッチーな出来。 「Lost Weekend Farewell」は、ペダルスティールも入ってくる雄大なカントリー・バラードです。
 B面に入ると、ややルーズなナンバー「Three Days」に続き、地味な印象の「Balboa」へと流れます。 サビで転調し、やや悲壮感のあるボーカルが印象的です。 つづく 2 曲は、予想以上のアップ・チューン。 ライブでは盛り上がりそうな「Tornado」、フィドルやバンジョーの掛け合いが楽しい「Mile After Mile」と続くあたりは、「A Contemporary Folk Music Journey」の The Ship と同じバンドとは思えません。 一転してピアノを基調としたバラード「Over My Love」は、アルバムのハイライト。 同時代の日本のニューミュージックにも通じるメロディが聴かせてくれます。 ラストの「Your Backyard」は、サザンロック調の曲。 中盤でメロウに展開しコーラスとクラリネットのソロが入るところなど、かなり工夫した展開です。

 このアルバムを初めて聴きましたが、1972 年の「A Contemporary Folk Music Journey」とはメンバーもソングライターも異なるために、サウンドも大きく変容していました。 どちらが好みになるかは微妙ですが、一貫性ではファースト、バラエティさではセカンドという対比にはなります。 もちろん、そんな単純な言葉での比較は意味がありませんが、時代的な意味合いとしては、やはりファーストのほうが意義深い作品かもしれません。 この「Tornado」のサウンドは、どこにでもありそうなサウンドですし、ファーストのようなコーラスワークもあまり聴かれなくなっています。 
 1976 年春に実際にトルネードの被害にあった現場で撮影されたというアルバム・ジャケットに写る 5 人の男たち。 彼らの表情とたたずまいからは、B 級作品ならではの哀愁を感じてしまいます。



■The Ship / Tornado■

Side-1
Midnight Madness *
Minnesota Dawn
Gwin *
Hold On To Love *
Lost Weekend Farewell

Side-2
Three Days *
Balboa
Tornado
Mile After Mile
Over My Love *
Your Backyard

All Songs written by James Barton
Except * written by Mark Hamby

Produced by The Ship

The Ship are
James Barton : 6&12 strings guitars , lead and harmony vocals
Rick Frank : bass, harmony vocals
Mark Hamby : piano, clavinet , flute , mandlin , string synthesizer , lead and harmony vocals
Jeff James : drums , percussion
Steve Reinwand : lead guitar , pedal steel , banjo , string synthesizer ,string arrangements , percussion , harmony vocals

Guest Appearances
Ron Dewar : clarinet solo on ‘Your Bancyard’
Randy Sabien : fiddle on ‘Mile After Mile’ , violin and cell on ‘Lost Weekend Farewell’

Recorded at Sunday Studios , Urbana, Ill.
Mixed by The Ship
Mastered an Nashville Records Productions , Nashville , Tenn.

Saturday Night Records SNR-1001

The Ship

2006-06-17 | Folk
■The Ship / A Contemporary Folk Music Journey■

 ソフトロックの名グループ Sagittarius で有名な Gary Usher がプロデュースということで、その筋のファンには有名な The Ship のアルバムをご紹介します。 1972 年に Elektra から発表されたこのアルバムは、大仰なタイトルとシンプルなジャケットデザインもあって、初めて手にしたときに即買いしてしまいました。 たしか、10 年ほど前に僕が札幌に転勤していたときに、行きつけだった中古レコード店で買ったものだと記憶しています。 あの狸小路の端っこのほうにあったレコード店はまだやっているのかな。

 さて、アルバムは曲のタイトルを見ても想像できるようなコンセプト・アルバムとなっています。 アルバム全体を通じて、曲間がほとんどなく、メドレーかのように連続していくところが特徴となっています。 The Ship のメンバーは 5 人なのですが、そのうち 3 人がギターで、残りがピアノとベースという編成。 その構成が良くも悪くもサウンドの特徴として表れています。 ギターのアルペジオとフルートに導かれて始まる「The Ship」、アップテンポのピアノが中心となる「The Order」、静寂感のあるミディアム「Innocence」と続きますが、タイトル名で大よその雰囲気が分かってしまうところが、逆にリスナーとしては面白くないような気もします。 ドブロ・ギターも入ったカントリー調の「The Man」につづく、「The Calm」は曲名どおりのゆったりしたミディアム・ナンバー。 中盤から後半のコーラスも美しく、時折表れるフルートもアクセントとなっています。 そして、一転して激しいタッチのピアノで始まる「The Storm」で A 面は終了。
 B 面は単調で曲の長さにちょっといらいらする「Lost」で始まります。 曲調が少し変わったかなと思ったら次の「The Island」です。 この曲は、「The Calm」と並ぶ名曲で、ピアノを基調にしたバラードですが、ハーモニカのソロなどが哀愁を感じさせます。アップな「The Reason」、動と静のサンドイッチ構造の「The Return」は中盤のハーモニーが美しい曲。 ラストの「The Ship」はアルバムの締めとなる雄大な曲です。

 アルバムを聴き終えて感じるこの物足りなさは何なのだろうと考えてみました。 アレンジやコーラスに欠点があるわけでもないので、やはりメロディー、とくにサビの部分がわかりにくい曲作りにやや難があるように感じます。 そして、曲の緩急はあるものの、アルバム全体を引き締めるような曲にも恵まれなかったため、やや冗長な印象を与えてしまっています。 そして最大の欠点は、個人的にはドラムとパーカッションの不在だと思います。 メンバー編成に良くも悪くも、と書いたのはそこでして、やはり全曲を通してドラムレスにする必然性が感じられません。むしろ、曲を似通ったふうに聴こえてしまうのです。

 そんな、The Ship のこのアルバム。 ワーナー傘下の Elektra からのリリースなのですが、未だに CD 化されていません。 Gary Usher の神通力だけでも何とかなりそうなのですが。 
 さて、次回は、つい最近までその存在すら知らなかった The Ship のセカンド・アルバムをご紹介したいと思いますので、お楽しみに。



■The Ship / A Contemporary Folk Music Journey■

Side-1
The Ship
The Order
Innocence
The Man
The Calm
The Storm

Side-2
Lost
The Island
The Reason
The Return
The Ship

Music by Steve Melshenker & Steve Cowan
Performed by The Ship

Steve Melshenker : 6 strings guitar , vocals
Steve Cowan : 12 strings guitar , vocals
Steve Reinwand : lead guitar , dobro , mouth harp , vocals
Mark Hamby : piano , flute , vocals
Todd Bradshaw : 4&8 string bass

Tim Scott : cello

Produced by Gary Usher

Elektra EKS-75036

Frank Turba

2006-06-13 | SSW
■Frank Turba / Frank Turba■

 FIFA ワールドカップ ドイツ大会が開幕して熱戦が始まりました。 一日最低 2 試合目標で観戦しているので、早くも寝不足ですし、このブログのアップも遅れがちになりそうです。 そんななか迎えた初戦オーストラリア戦は残念な結果になってしまいました。 ちょっと尾を引きそうな負け方ですね。
 ドイツ大会ということで、強引に持ってきたのがこの Frank Turba が 1974 年に発表した唯一のアルバム。 その理由は、アメリカの SSW なのに、ミュンヘンとベルリンでレコーディングされたという不思議なアルバムだからです。 レーベルは、Jazz や Soul で有名な Mainstream records です。 Sweet Soul の至宝 Terry Huff を生んだレーベルでもあります。

 そんな Frank Turba ですが、結論から言うと、何をしたいのか固まらないままに制作してしまった中途半端な作品ということになるでしょう。 特筆すべきアレンジやメロディも無いので、同時代の SSW 作品と比較しても平均点以下の出来とも言えます。
 A 面の 1 曲目「Stony Silence」は、ピアノの弾き語りによるマイナー調の曲。 参加ミュージシャンも少なくシンプルな曲ですが、胸騒ぎを表現しているかのようなギターのピッキングが印象に残ります。 つづく、「Bini」はシングルカットされた曲。 ビートルズ風のキャッチーなポップソングで、ストリングスは Paul Buckmaster 系のアレンジです。 カリプソ風もしくはスカみたいな「Telephone Love」、またポップな小曲「Funny Song」とアルバムはすでに取り散らかり始めます。 A 面ラストの「Duett」は、ギターに乗せたマイナー調の曲。 愛をささやくわりには弱気なボーカルと、クレジットが無いので名前すらわからない女性ボーカルとのからみが聴かせどころ。
 B 面は、ハードなギターのリフに困惑する「Blue Jeans」でスタート。 この曲の時点で Frank Turba は何をしたいの? という疑問が噴出します。 凡庸なミディアム「Alice Brown」、アップテンポでファンキーだけどグルーヴ感ゼロの「Manhattan」、ブルース調の「Tempest Strom」に至っては、ルーズなサックスソロが終わると、ハードロック調のギターソロに移行したりして、アイディア盛り沢山というよりは、ごった煮状態。 ラストの「End Song」は、多少の哀愁感が漂う曲です。

 1974 年に発表されたこのアルバム。 この頃は、ハードロック・プログレ・スワンプ・パブロック・SSW 等等、ポピュラー音楽のジャンルの枝分かれが明確化した時代だと思います。 そのような市場を全く意識しないで、Frank Turba の興味本位的な音楽嗜好がごちゃまぜになってしまったアルバム。 これでは、売れるわけがありませんね。
 そんなことで、このアルバムには特別な愛情もなく、CD 化してほしいとも思わないのですが、だからといってコレクションから外してしまうこともできないのです。 名作も大事ですが、このようなダメな作品もダメなりにレビューしていきたいと思います。 おつきあいくださってありがとうございます。



■Frank Turba / Frank Turba■

Side-1
Stony Silence
Bini
Telephone Love
Funny Song
Duett

Side-2
Blue Jeans
Alice Brown
Manhattan
Tempest Strom
End Song

Produced by Andy Budde for Junior-Music at Musicland-Studios , Munich , Rolf Budde Studios, Berlin

All Selections by Frank Turba & Richard Jeffries
except ‘Duett’ by Frank Diez & Richard Jeffries

Frank Diez : guitars
Martin Harrison : drums
Gary Unwin : bass
Jackie Diez : vocals

Keyboards , Vocals and arrangements by Frank Turba

Mainstream Records MHL 411

Jeff Harrington

2006-06-11 | AOR
■Jeff Harrington / Jeff Harrington■

 ミネソタ・ミネアポリス出身、Michael Johnson とも親交のあることで知られている Jeff Harrington のセカンドアルバムをご紹介します。 このアルバムとファーストアルバム「Quiet Corner」が、めでたく Vivid Sound から CD 化されることになったので、取り上げることにしました。 ファーストの「Quiet Corner」はついに入手することができなかったので、この初 CD 化はうれしいですね。 7月19日に紙ジャケでの発売だそうです。

 さて、このセカンド「Jeff Harrington」は 1977 年に発売されたもので、ファーストよりは見かける機会が多かった作品。 なかなかつかみどころのない独特のワールドが繰り広げられており、大事に聴いてきたアルバムなのです。

 アルバムは全 8 曲。 曲数的には物足りなく感じますが、7 分を越える大作もあったりしてバラエティに富んだ内容です。 1 曲目「Smilin’ Again」は、チャッチーなメロディーに、Jeff Harrington のほんわかしたボーカルが重なり、まったりしたグルーヴ感を醸し出しています。 この曲にしか参加していないコーラスの Penny Birdsong という女性の名前はすごいですね。 つづく「Older Men」はアルバム中最もシンプルな編成によるミディアム・ナンバー。 Terry のギターとJeff のピアノが味わい深い名曲です。 
「Moonlight Shuffle」は、moog が二人もクレジットされている曲。 途中からファンキーなサウンドになったい戻ったりと、動と静のコントラストが特徴的な曲。 サックス・ソロのあたりは、ほとんど同時代のフュージョンです。 メロウな浮遊感が独特の「Caught You (with the ocean in your eye)」は、アルバムの代表曲。 アルバムを聴くたびに新鮮な気持ちにさせられます。 中盤の Rick Petersen の moog ソロや Tommy O’Donnell の fender rhodes ソロといったインストパートがボーカルパートよりも重要な役割を果たしています。 そういった曲の作り方に、卓越したセンスを感じざるを得ません。
 B面は、アルバムの中でも歌を一番じっくり聴かせるメディアム・ナンバー「How Many Lovers」でスタート。 この曲には、ギターとコーラスで Michael Johnson が参加しています。 ほぼ 4ビートのジャズのような「Kiss-A-Me-Ooo」は小洒落たセンスがアルバム全体のアクセントとなる曲。 Mike Elliott によるギターソロも上出来です。 ピアノの弾き語り風から始まる「Drunks And Fools」は 7分 48秒の大作。 曲の展開などはやや難解で、中期の Steely Dan の持つエッセンスに似たものを感じます。 中盤から後半のインストも盛り上がりますが、ここでは、Terry Grant とGlen Swanson のリズム・セクションの力量に支えられていることが分かります。 ラストの「You Will Repair」は可愛らしいフルートのメロディが印象的なメロウな曲。 次第にアップテンポになったり緩急自在な Jeff Harrington ワールドが展開します。

 久しぶりにアルバムを聴きましたが、このアルバムの屋台骨を支えているのが、全曲に参加している Terry Grant と Glen Swanson であることを再認識しました。 ユニークなアレンジメントもこの二人の貢献が大きいものだと思います。 そして、ミネアポリスにそんなにミュージシャンが多いのかと思ってしまうほど、ギターやキーボードなどは曲によってゲストを厳選しているあたりも、Jeff Harrington のこだわりを感じます。

 一部の熱心なファンの支持を集めていたこの名盤も、ついに CD 化されることになりました。 こんなアルバムを通勤途中に i-POD で聴くことのできる日も近いのです。



■Jeff Harrington / Jeff Harrington■

Side-1
Smilin’ Again
Older Men
Moonlight Shuffle
Caught You (with the ocean in your eye)

Side-2
How Many Lovers
Kiss-A-Me-Ooo
Drunks And Fools
You Will Repair

All Songs by Jeff Harrington except ` Kiss-A-Me-Ooo` and `Caught You` which were co-composed by Jeff Harrington and Terry Grant

Produced by Steve Wiese , Terry Grant , Jeff Harrington
Recorded And Mixed At Creation Audio Recordings , Minneapolis , Minnesota
Engineered by Steve Wiese

Thanks to Glen Swanson for his help with rhythm arrangements

Jeff Harrington : vocals , piano , fender rhodes , electric guitar , moog
Robert Rockwell : sax ,on ‘Smlin’ Again’ , ‘Moonlight Shuffle’ and ‘Drunks And Fools’ flute ,piccollo and horn arrangement on ‘Kiss-A-Me-Ooo’
Terry Grant : bass , electric guitar , vocals
Glen Swanson : drums

Larry McDonald : percussion on ‘Smilin’ Again’
Bruce Kurnow : harmonica on ‘Older Man’
Kinky Schnitzer : electric guitar on ‘Moonlight Shuffle’
Tommy O’Donnell : clavinet , Rhodes ,and ARP strings on ‘Moonlight Shuffle’ ,’Caught You’ and ‘Drunks And Fools’
Steve Wiese : vocals , moog on ‘Moonlight Shuffle’ , tambourine on ‘How Many Lovers’
Jerry Steckling : moog on ‘Moonlight Shuffle’
Rick Peterson : moog on ‘Caught You’
Michael Johnson : high stung guitar , vocals on ‘How Many Lovers’
Roger Dumas : ARP strings on ‘How Many Lovers’
Tom Bung : rhodes piano on ‘Kiss-A-Me-Ooo’
Billy Shiell : flugelhorn , trumpet on ‘Kiss-A-Me-Ooo’
Tony Novak : trombone on ‘Kiss-A-Me-Ooo’
Mike Elliott : electric guitar on ‘Kiss-A-Me-Ooo’
Lorin Walstad : electric guitar on ‘Drunks And Fools’
Mike Blaisus : flute on ‘You Will Repair’
Loring Johnson : electric guitar , vocal on ‘You Will Repair’

Patti Wickland : vocals on ‘Smilin’ Again’ and ‘Moonlight Shuffle’
Penny Birdsong : vocal on ‘Smilin’ Again’

Centerpiece Records 2601

The Group

2006-06-10 | Soft Rock
■The Group featuring Vangie Carmichael / The Warm & Groovy Sound■

 正式なタイトルで表記すると、「The Warm & Groovy Sound by The Group featuring Vangie Carmichael」となるこの作品。 そのおしゃれなセンスから、この作品が 1960 年代に発表されたとはとても思えません。 今から 40 年近く前に、featuring という表記が堂々と使用されているのには驚きますね。 ジャケットのセンスも抜群です。
 このグループは、正式名称は「The Group」としたほうがいいと思いますので、ブログタイトルのほうは、単に「The Group」だけにしておきました。 これだけでは、正体不明ですよね。 でも「The Band」もいるわけですしね。 あ、関係ないか。
 で、どうして「The Group」だけにしたかというと、全曲に渡って Vangie Carmichael が featuring されているわけではないからなのです。 半分くらいの曲が男性ボーカル、残りの半分くらいが女性もしくは混声ということで、この「The Group」は固定したメンバーがいたものではなく、アレンジャーの Clark Gassman 主導によるプロジェクト的な集まりだったようです。

A面は Jimmy Webb 作曲の「The Worst That Could Happen」から始まります。 この曲は「Brooklyn Bridge」のバージョンが有名なようですが、僕は「Fifth Dimension」バージョンしか聴いたことがありません。 ゆったりしたメロウ・バラードなのですが、ここでは男性コーラスのリードに女性コーラスがかぶってくるアレンジで、「Association」に近いサウンドとなっています。 つづくは Joni Mitchell の「Both Side Now」。 邦題「青春の光と影」としても有名なこの曲、女性ボーカルがリードをとる予想通りの展開ですが、後半の展開とコーラスワークには脱帽。 素晴らしいカバーとなっています。 女性ボーカルによる「If You Don’t Love Me」もソフトロックのエッセンスがつまりまくった名曲。 男性ボーカルによるアップな「For Once In My Life」はハーモニカ・ソロなどが入り、ソフトロック色は薄めです。 つづく「If’s A Mighty Big Word」は、これぞソフトロックの王道というべきスローナンバー。 メインは男性ボーカルですが、中盤から女性コーラスやビブラフォンが薄く彩りを添えてきます。 このビブラフォンは、おそらく名手 Victor Feldman によるものでしょう。 A 面ラストの「Son Of Preacher Man」は、女性ボーカルがメインですが、アップな曲調とホーンセクションのせいでブラスロック的なサウンドとなっています。
 B面に入ると、このアルバムのハイライトともいえる「Hey Jude」で幕を開けます。 アルバムにも「contains the hit single」とステッカーが貼られているとおり、この曲が押し曲だったのでしょう。 おそらく、シングルカットでもされていたのでしょう。 さて、この超名曲のカバーですが、この声がきっと Vangie Carmichael だと思われる女性のリードに見事なアレンジが施されて、まさにため息の出るような完成度となっています。 つづく、「I Met Her In Church」は、Dan Penn と Spooner Oldham による共作。 初めて聴きましたが、ハンドクラッピングや「ハレルヤ」の繰り返しなど、男性ボーカルによるゴスペル調の曲です。 Alex Chilton が在籍した「The Box Tops」というグループがオリジナルのようです。 「Love Child」は、テンション高めの女性ボーカルの曲。 おおげさなイントロから一転しメロウに流れる「Falling In Love」、Fifth Dimensionに近いサウンドの「Shake Loose」でドラムスを叩いているのは、Hal Braine かも知れません。 ラストの「Don’t Mention My Name」は、やや憂いを帯びたミディアム・ナンバー。 大げさなティンパニの音色がほどよい余韻を残してくれます。

 さて、そんな感じでアルバムを振り返ってみましたが、このアルバムはソフトロックとしての完成度が高い名盤ですね。 是非とも CD 化してほしいものです。 できれば、このジャケットのデザインや字体などを忠実に再現した紙ジャケで。
 最後にこのアルバムの鍵を握る重要人物、Clark Gassman について調べてみました。彼は、Lee Hazelwood や Nancy Sinatra などのプロデューサーとして活躍し、その後はクリスチャン音楽(CCM)の世界に入っていったようです。 彼のアレンジ才能は、かなりのものだと思いますので、もっと知名度があがってもよさそうなものなのですが、本人がスピリチャルな方向に行ってしまったために、ポピュラー作品を多く残さないままになってしまいました。 もし、見知らぬレコードに、Clark Gassman のクレジットを見つけたら、要注意ですね。



■The Group featuring Vangie Carmichael / The Warm & Groovy Sound■

Side-1
The Worst That Could Happen
Both Side Now
If You Don’t Love Me
For Once In My Life
If’s A Mighty Big Word
Son Of Preacher Man

Side-2
Hey Jude
I Met Her In Church
Love Child
Falling In Love
Shake Loose
Don’t Mention My Name

Produced by Joseph Walter for Pomegrante
Arranged and Conducted by Clark Gassman

We Wish To Express Our Deepest Appreciation To The Following :

Clark Gassman
Victor Feldman
John Guerin
Hal Braine
Sid Sharp
Vangie Carmichael
以下省略

Pete Records S1108


Andy Pratt

2006-06-04 | SSW
■Andy Pratt / Records Are Like Life■

 レコードは人生のようなもの。
 いいタイトルですね。 このアルバムは、1970 年代、ピアノ系 SSW として風変わりな曲調やアレンジで異彩を放っていた Andy Pratt のファーストです。 今のところ、オフィシャルに CD 化されているオリジナルアルバムは、セカンドの「Andy Pratt」のみのようですが、これは国内盤も出ていますので興味のある方はどうぞ。

 セカンドアルバムのほうは、「Bee Gees と Yes が合体したようなサウンド」と形容されたこともあるほどの作品ですが、個人的にはあまり好きではありません。 代表曲の Avenging Annie もちょっと忙しすぎて疲れてしまいます。 セカンド以降に残した「Resolutions」、「Shiver In The Night」、「Motives」のなかでは、「Motives」が最も好きな作品なのですが、このファーストがもしかして最高傑作なのではないかと思ったりもします。

 話は本題のファーストに戻ります。 このアルバムを聴くたびに思うのですが、このアルバムはとても 1970 年に発表されたとは思えないほど、時代性を感じさません。 アレンジやメロディーから感じ取ることのできる卓越したインテリジェンスには、異才とか奇才という言葉はぴったりです。

 アルバム「Resolutions」のジャケットでピアノを弾いていることもあり、Andy Pratt はピアノしか演奏しないものと思っていましたが、1曲目の「Wet Daddy」はアコースティックギターとドラムスが独特のグルーヴ感を創出するシンプルでクールな楽曲です。 誰かから「実験的な SSW による最近の作品ですよ」と言われたら信じてしまうでしょう。続く「Oliver」は、ピアノやオルガンによるジャズっぽいアレンジの曲です。 アヴァングアルドな SSW、プログレ風 SSW と評される浮遊感まさに固有のものです。 アルバムのなかで最もチャッチーな作品だと思える「Shiny Susie」は名曲です。 アップのメロからスローなサビに転換するあたりは何度聴いてもいいですね。 奥のほうで遠慮がちに聴こえるピアノのセンスも最高です。 「Little Boy Hound Dog」は、ギターの弾き語りによる小曲ですが、曲が始まったかと思ったら途中で急にフェードアウト。 こうした楽曲の破壊行為みたいなところも潔いですね。
 B面は男女の会話風の「Bella Bella」、つかみどころのない偏屈な曲「Mindy」、浮遊感のあるギター系のサウンドにストリングスが乗ってくる後半が印象的な「Low Tide Island」と続きます。 そして、ラストの「Records + Records (Records Are Like Life)」ですが、予想とは裏腹にアップな曲調に驚きます。 レコードを買いに行こう、という歌詞が繰り返され、Records Are Like Life というメッセージがあまり哲学的なものではないことが判明してしまいます。 そして、リフレインの果てにはノイジーなギターのインプロヴィゼイションが短めに挿入されて、ジ・エンド。 アルバムの余韻をあえて払拭するかのような効果をもたらしています。

 しかし、このアルバムに閉じ込められた独特の世界観をどう表現すればいいのでしょう。ふと、思うのが、Andy Pratt がこのアルバムだけしか残さなかったら、どのような評価を得たのだろうかということです。 
 さて、そんなAndy Pratt の近況を調べようとして見つけたのがこのページです。

 ここには、今まで知らなかった彼のアルバムのダウンロード販売や CD 通販などがありました。 この「Records Are Like Life」もどうやら CD で買えるようです。 また、驚いたのが 2003 年にニューヨークで行われたライブの映像です。 かなり老いたものの、Andy Pratt がキーボードを弾きながら熱唱している動画をみることができました。 インターネットの恩恵を感じざるを得ませんね。



■Andy Pratt / Records Are Like Life■

Side-1
Wet Daddy
Oliver
Shiny Susie
Little Boy Hound Dog

Side-2
Bella Bella
Mindy
Low Tide Island
Records + Records (Records Are Like Life)

Produced by Andy Pratt
All Songs by Andy Pratt

Rick Shlosser : drums and percussion

Bill Elliott : bass and vocal on ‘Mindy’
Steve Crump : guitar on ‘Bella Bella’
Bill Elliott : strings arrangement on ‘Low Tide Island’

Polydor 24-4015