Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Marty Cooper

2009-11-22 | SSW
■Marty Cooper / A Minute Of Your Time■

  ここ数日は急激に冷え込んで、東京でも最高気温が 10 度に届かない日があったりしました。 季節は秋から急ぎ足で冬に突き進んでいます。
  毎年のことですが、この季節には「暖炉系」と勝手に呼びたくなる心温まる作品に触れたくなります。 今日取り上げた Marty Cooper のアルバムもそんな 1 枚です。ジャケットのセピア色の写真には額のシワから 40 歳過ぎと思われる Marty Cooper が映りこみ、ジーンズの青とブーツの茶色が生気を与えています。 よく見ると足元には真っ黒の犬が寝そべっているのですが、恥ずかしながら最近まで気付きませんでした。

  1972 年に MGM 傘下の Barnaby から発売されたこのアルバムは、カントリー傾向の強い SSW 作品として紹介されることが多いのですが、それはタイトルのなかに Cowboy や Cowgirlという言葉が入っていることに影響されているのでしょう。 実際はフィドルやバンジョーが派手に鳴り響く曲ばかりではなく、Larry Carlton や Joe Osborne といった一流のセッションマンにサポートされた枯れた大人の味わいがする SSW 作品だと思います。 

  オープニングの「To Say Goodbye To Anne」は淡々と始まるミディアムな曲調。 この 1 曲の雰囲気だけで、アルバムの全体像をつかむことができるような仕上がりです。 つづく「Cowboys And Daddies」もストリングスが美しく挿入されるムーディーな楽曲。 エレピの音色が特徴的な「Tell The Singer I’m Sorry」はこの手のサウンドの王道的なもの。 骨太のリズムセクションと Marty Cooper のボーカルが見事にはまっています。 「Oh, Country」は一転して、しっとりしたバラード。 故郷への憧憬なのか単なる旅情感なのかは定かでありませんが、そんな雰囲気に包まれた名曲です。 A 面ラストの「The Indiana Girl」になって、ようやくカントリー風味が加わってきます。

  B 面に移りましょう。 「I Wrote A Song」は旧友と昔を懐かしむような雰囲気の曲。 こういった曲調とジャケットがマッチしているところがこのアルバムの評価を高くする要素だと個人的には思っています。 つづく「The First Band I Played With」バンジョーがテケテケするカントリー風。 この曲が最もカントリー色が濃いものです。 「Another Day, Another Year」メランコリックなムード満点のバラード。 悲哀を感じるボーカルが絶妙な味わいをかもし出しており、これまた名曲です。 つづく「Mama Was A Cowgirl」 ニルソンを聴いているのかと勘違いしそうな小曲。 ラストの「The View From Ward Three (A Minute Of Your Time)」ギターのみの弾き語り。 アルバムを締めくくるに相応しい美しいこの曲も過去を引きずっている心象を描いているようで、ラストのストリングスの微妙な和音がそれを象徴しているかのようです。 お気に入りのエンディングです。

  Marty Cooper が残したアルバムをこれしか知りませんが、そのクオリティーはかなりのレベルで完成されており、このような作品が CD 化されていないのは不思議でなりません。 時代に左右されない作品であるのは間違いないのですが、僕はこのアルバムに接するたびに琥珀色のバーボンのオンザロックをイメージしてしまいます。 そのなかでも特にメーカーズ・マークのまろやかさがピッタリなのです。

■Marty Cooper / A Minute Of Your Time■

Side 1
To Say Goodbye To Anne
Cowboys And Daddies
Tell The Singer I’m Sorry
Oh, Country
The Indiana Girl

Side 2
I Wrote A Song
The First Band I Played With
Another Day, Another Year
Mama Was A Cowgirl
The View From Ward Three (A Minute Of Your Time)


Music & Lyrics : Adina Alpert
Producer : Glen Frendel
Engineer : Phil Crescenzo
Recorded at John Altmann Studios, San Francisco, CA

Producer : Marty Cooper, Ken Mansfield
Arranger : Larry Muhoberac
Engineer : Ed Abner

All songs written by Marty Cooper

Larry Carlton, John Guerin, Joe Osborne, Richard Bennett, James Burton, John McKuen, Al Casey, Bill Perry, Gene Cipriano, Bobby Bruce, Brooks Hunnicut, Larry Muhoberac, Ken Mansfield, Ed Abner

Barnaby Records BR-15004

Bob Morley

2009-11-07 | Folk
■Bob Morley / Reflections■

  George Harrison に似た風貌の持ち主、Bob Morley が当時のヒット曲や名曲を躊躇なくカバーしたフォーク・アルバムを取り上げてみました。 アルバムの発表年代は不明なのですが、1970 年代のかなり前半と思われ、James Taylor や Carole King が一世を風靡していた頃の作品だと思われます。
  それにしても、これほど大胆においしいところを持っていく狙いはどこにあったのでしょうか。 デビューアルバムにして個性を出すまもなく、曲に負けてしまっているとしか表現しようがありません。
  Simon & Garfunkel の「April, Come She Will」(四月になれば彼女は)、「Bridge Over Troubled Water」(明日に架ける橋)、James Taylor では 「Fire And Rain」と「Sweet Baby James」、Carole King の「You’ve Got A Friend」、そして極めつけは The Beatles の「Let It Be」にまで手を出して、聴衆に聴いてくださいとは Bob Morley はかなりの度胸の持ち主なのでしょう。 曲だけを眺めると、「1972年版カラオケで歌いたい歌ランキング」かと思えるほどです。 もちろん、当時のアメリカにはカラオケはありませんが。

  しかし、これだけの有名曲をピックアップしながら、ジャケットに作曲者のクレジットが入っていないのは感心しません。 せめて出所を明記するのはカバーする人の敬意ではないかと思うのですが。 ちなみに、「Suzanne」はLeonard Cohenの代表曲。 その他では、「Pretty Smart On My Part」が Phil Ochs、「Broomstick Cowboy」が Bobby Goldsboro、「Friends With You」が John Denver の楽曲だということです。 「Sunshine」に関してもおそらくカバー曲だと思われるのですが、聴いたことがない上にネットで調べてもはっきりとは分かりませんでした。
  
  そんなこの作品ですが、Bob Morley の薄く繊細なボーカルが頼りなさを漂わせながらも、オーソドックスなアレンジに卒なく仕上げている印象です。 原曲に忠実なのはいいのですが、冒険はありません。 そうなると、曲本来の持つパワーが Bob Morley の個性を上回ってしまうのです。 オハイオ州シンシナチでレコーディングされたこの作品の存在意義とはどこにあったのかという疑問すら浮かんできます。 影響力のある政治家の息子、新興宗教家、単なる金持ちといった想定もできるのですが、彼の雰囲気からはそれは無さそうです。

  そんな Bob Morley で最も驚くべき事は、彼がこの Jewel Records から合計 5 枚ものアルバムを発表していたという事実です。 Jewel Records のディスコグラフィーをまとめたサイトによると、この「Reflections」は 1972 年頃の作品。 以降「Through a Glass, Darkly」(1973)、「Life I Love You」(1974)、「At Home In The World」(1975)そして、「Songman」(1976)と毎年のようにアルバムをリリースしているのです。 少なくともこの「Reflections」を聴く限りでは、それほどの実力と才能を備えたミュージシャンとは思えません。 言い換えれば、彼が毎年のようにレコードを発表できた理由が判らないのです。 その答えを解明するには、やはり 1 枚づつでもアルバムを入手して聴くべきなのでしょうか。 深追いはしたくないけど、チャンスがあれば…というのが現在の心境です。

■Bob Morley / Reflections■

Side-1
April, Come She Will
Fire And Rain
Sunshine
Broomstick Cowboy
Bridge Over Troubled Water
Friends With You

Side-2
Suzanne
Pretty Smart On My Part
Sweet Baby James
You’ve Got A Friend
Amazing Grace – Let It Be

Recorded at Jewel Recording Studios, Cincinnati, Ohio
Engineer : Rusty York

Jewel records LPS 299