Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Ragnarok

2011-11-26 | Sweden
■Ragnarok / Ragnarok■

   長い間、ひそかに愛聴しつづけてきたアルバムが紙ジャケットで CD 化されたことを知りました。 北欧の秘宝ともよべるスウェーデンのフォークロックバンド Ragnarok が 1976 年に発表したファースト・アルバムです。 このブログではイギリス・ヨーロッパのレコードは取り上げていませんので特別な扱いとなりますが、このアルバムの素晴らしさを多くの人に知ってもらいたい思いで取り上げてみました。
   このレコードとの出会いは 1980 年前後だったと思います。 当時プログレにも興味を持っていたので、自然とスウェーデンの Silence レーベルの存在を知るようになりました。 そのなかでもジャケットの素晴らしさから手に取ったのがこの Ragnarok だったのです。 フォーク調ということは、何かしらの情報で知っていたのですが、このアルバムがまさか全編インストゥルメンタルで幻想的かつ叙情的なサウンドだったとは思いも知りませんでした。 しかし、その内容の素晴らしさはブリティッシュ・フォークのファンをも唸らせるもので、ほぼ完ぺきな楽曲と構成からして、まさに名盤と呼べるものだったのです。

   アルバムは 2 本のアコースティック・ギターによる変奏曲のような「Farvel Kopenhamn」で幕を開けます。シンプルな響きはまさにアルバムのプロローグです。つづく「Promenader」はエレピとギターのユニゾンが幻影的な名曲。 中盤から後半にかけてのエレクトリック・ギターのソロの官能的な音色、そして変化を重ねるアレンジなど彼らのサウンドを象徴する代表曲といえるでしょう。 2 本のギターを軸にした「Nybakat Brod」は主旋律をフルートに委ねながら、急ぎ足で家路につく人のようなテンポで進んでいきます。途中で入ってくる人の嗚咽のような SE も素晴らしい効果をあげています。 「Dagarnas Skum」は、即興的な入り方から徐々に主題が明確になってくる入り方が素晴らしく、ツインのエレキギターが登場するあたりの抑制的で且つエモーショナルな盛り上がりは見事としか言いようがありません。 フルートによるクールダウンなど、ジャズ寄りな展開を演じながらも、Ragnarok の作曲能力の高さを痛感する出来栄えです。 この曲も何度聴いても飽きることのない名曲中の名曲です。

   遠くからの呼び声のようなフルートだけのイントロ楽曲「Polska Fran Kalmar」につづく「Fabriksfunky」は、最もジャスっぽい展開をみせる楽曲。 叫ぶかのようなフルートを効果的に交えつつ、叙情派のプログレに似た味わいが魅力となっています。 アコースティック・ギターとフルートによるアンサンブル「Tatanga Mani」、印象的なイントロで目が覚めた感じの「Fjottot」は遊園地で遊んでいるような気分になるユニークな存在。 この 2 曲の流れは静と動のコントラストがはまっています。 透き通ったピアノの音色から始まる「Stittje-Uppbront」は徐々にギターやフルートに主導権を渡しながらも、次第にドラマティックに展開していきます。 アルバムを締めくくる「Vattenpussar」は心のひだのようなエレピから徐々に感情が揺さぶられるように盛り上がりをみせ、ソプラノサックスが交差するあたりでの恍惚とした雰囲気はオーロラを見ているような気分です。 そして徐々に音数が減り、楽器たちも退いて、見事なクロージングを迎えます。 

   こうして数年ぶりにアルバムを聴きましたが、すべての楽曲や展開が頭に入っていました。 そういえば、レコードを買った当時はカセットにダビングして何度も聴いていたような気が。 このように唯一無比の出来栄えを見せた、奇跡的なアルバムですが、かなり強引に似たアルバムを一つ上げるとするならば、アメリカの CCM 界の巨匠 Phil Keaggy がリリースした「Beyond Nature」ではないかと思います。サウンドの空気感や叙情感はまったく異なりますが、アコースティックな楽器によるアンサンブル重視の展開という点では類似点があるように思います。 どちらも NHK スペシャルのようなドキュメンタリーの BGM に使われてもおかしくないということも共通点でしょう。

   北欧の Silence レーベルを代表する名盤を生み出した Ragnarok ですが、合計 4 枚のアルバムをリリースしています。 セカンドもアナログで持っているのですが大幅にメンバーチェンジをしており、いきなり後期のクリムゾンのようなメタリックなサウンドに変化しているのには驚きました。 ですから、ここにお越しの方は、このファーストだけを気にかけていただければと思います。 秋から冬への季節がお似合いな名盤です。

■Ragnarok / Ragnarok■

Sid-1
Farvel Kopenhamn
Promenader
Nybakat Brod
Dagarnas Skum

Sid-2
Polska Fran Kalmar
Fabriksfunky
Tatanga Mani
Fjottot
Stittje-Uppbront
Vattenpussar

Lars Peter Sorensson : trumoor
Stefan Ohlsson : trummor, git
Pedek Nabo : tvarflojt, piano, git
Staffan Strindberg : elbas
Peter Bryngelsson : gitarrer
Henrik Strindberg : elgitarr, tvarflojt, sopraninoblockflojt, sopranosax

Musik inospelad hosten 75

Silence SRS 4633