Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Ray Repp

2008-05-26 | Christian Music
■Ray Repp / By Love Are We All Bound■

 Ray Repp のアルバムをもう 1 枚取り上げます。 これは、1981 年発表の 8 枚目のアルバム。 前回とりあげた「Benedicamus」とは同じレーベルからのリリースで、レコーディングスタジオも同じですが、バック・ミュージシャンはドラムス以外が入れ替わっています。 それがどのように影響しているのかも興味のひとつです。

 結論からいうと「Benedicamus」よりも親しみやすさ、覚えやすさ、全体の統一感などあらゆる面で「By Love Are We All Bound」のほうが上です。 シンプルな演奏にサポートされた質素なサウンドが全体を包んでいるのですが、特徴的なのは K&R chorus とクレジットされたコーラス隊の存在です。 曲によって男女混声だったり男声のみだったりするのですが、この K&R chorus が個々の楽曲をさりげなく引き立てています。 元々 Ray Repp のマイルドなボーカルはソロでも光るのですが、ややもすると単調になってしまうのが難点です。 そこを上手く調整しているのが K&R chorus といえるでしょう。
 
 個々の楽曲もリラックスしたムードのものが多く、オープニングを飾る「Happy Are The People」はシングルカットできそうです。 この曲はカレッジフォークのような柔和な楽曲。 親しみやすい雰囲気に好感が持てます。 オススメの曲はゆったりした落ち着きのあるバラードの「Follow Me」やラストの「Lord, Hear Our Prayer」です。 とくに後者は美しいギターをバックに、おごそかに歌唱される気品漂う作品。 アルバムを締めくくり、深い余韻を残します。
 「Canon Of The Seed」や「The Kingdom Of The Lord」、「Sisters And Brothers」といった曲は宗教色が強いのですが、「Benedicamus」に見られる楽曲のような重々しさはありません。 それには 1981 年という時代背景も影響しているのでしょう。

 さて、改めてクレジットを見てひとつ発見したことがあります。 それは、このジャケットを書いた人物なのですがそこには、Sadao Watanabe と書かれているのです。 まさかサックス奏者の渡辺貞夫のことかと思ってネットで調べてみました。 すると、同姓同名の芸術家で渡辺禎雄という画家・版画家がいることがわかりました。 いくつかのサイトをチェックしましたが、まさしくこの絵はこの渡辺禎雄によるものだと確認できました。 彼の略歴の載ったサイトによると、海外のキリスト教会で展示会が開催されており、Ray Repp も何かのきっかけで彼のことを知ったのでしょう。
 このブログを書くところから、全く知らなかった日本人芸術家のことを知ることになり、驚いています。 残念なことに渡辺禎雄は 1996 年にすでに他界していますが、彼の残した独特のタッチの作品は世界中の美術館に収蔵され、永遠の命を与えられていました。



■Ray Repp / By Love Are We All Bound■

Side-1
Happy Are The People
Canon Of The Seed
By Love (Colored Like A Ranbow)
Come, Let’s Build
May We Grow

Side-2
The Kingdom Of The Lord
Follow Me
Lord, Have Mercy
Sisters And Brothers
Lord, Hear Our Prayer

Guitars : Chad Mcloughlin , Ray Repp
Keyboards : CRJ Szabo
Bass : Al Hartland
Percussion : Lex O’Brien

Arranger : Ray Repp
Producer : Rev. William , M.Kelly , Ph. D.

All songs written by Ray Repp
Except ‘Lord, Have Mercy’ by Bea Verdi
‘Sisters And Brothers’ based on a 17th century French song
‘By Love’ based on Gregorian Chant

K&R records KRS-1091

Ray Repp

2008-05-19 | Christian Music
■Ray Repp / Benedicamus■

 Ray Repp は 1960 年代半ばから活動しているクリスチャン・ミュージックのベテランです。 今日取り上げた「Benedicamus」は、1978 年に発表された 6 枚目のアルバム。 どことなく和風なイラストが印象的です。 
  Ray Repp に関しては本人のホームページはありませんでしたが、カトリック系のミュージシャンだそうです。 いままで取り扱ってきたクリスチャン・ミュージックのアーティストのなかで、明確にカトリックだとかプロテスタントと知って語った人はいませんが、アメリカはプロテスタントがほとんどですので、Ray Repp は少数派になるのでしょう。

  アルバムタイトルの「Benedicamus」は修道院で有名なベネディクトと関係があることは想像できますが、辞書を引いても意味は分かりませんでした。 この曲は2つのパートに分かれているものの、ほとんど朗詠のようなサウンドで、音楽的な魅力はありません。  このような楽曲はラストの「Alleluia (The Lord Of Love Has Come)」も同様です。 大方の予想通り、ハレルヤの繰り返しです。 このように宗教色が色濃く、厳かな雰囲気でオープンとエンドを構成するのはオーソドックスな構成なのでしょう。
  アルバムのなかで親しみやすさが目立つのは「Till You」、「Share A Little Bit Of Your Love」、「We Are Grateful」、「Lilies & Sparrows」でしょう。 個々の曲調は異なりますが、淡さやマイルドさは共通のもの。 とくに「Share A Little Bit Of Your Love」は、ソフトロックの趣のある楽曲。 瑞々しい男声コーラスによる親しみやすいメロディーがまるでアソシエイションのようです。  「We Are Grateful」はピアノのリリカルな響きから、初期の Jimmy Webb が手がけた小品のようなイメージです。  ほかにもアルバムは全体としてマイルドな印象なのですが、それは、ほとんどの CCM がそうであるように、ボーカルの声質のせいでしょう。 CCM でいながらハスキーだったり、甲高い声というのはあまり耳にしたことがありません。

  The Song Of The Earth というサブタイトルがついているこの作品は、ニューヨーク州のイサカでレコーディングされました。 イサカといえば、Swallowtail Records の拠点でもあった美しい土地です。 あの名盤「September Sky」を生み出した Bill Destler と場所が重なってきますが、とくにミュージシャンとして交流があったような形跡は見当たりません。 制作年度が 5 年も違うことや、音楽の性格がゆえ、当然のことでしょう。

  Ray Repp の音楽は日常のなかで息づく信仰というよりも、もっと濃密で深いものを感じさせます。 その彼が 20 年以上にわたって音楽活動を行い、確認できているだけで 9 枚以上のオリジナル作品を発表することが出来たのには、それなりの経済的なバックグラウンドがあったからでしょう。  その背景が何だったのかは分かりませんが、そこには人種・宗教・思想といったものの多様性から成り立つアメリカ社会の奥深さが横たわっているようにも思えます。



■Ray Repp / Benedicamus■

Side-1
Benedicamus
Part 1 – The Song Of The Earth
Part 2 – The Dance Of The Seasons
Till You
Children Of The Morning
With Every Step
Share A Little Bit Of Your Love

Side-2
We Are Grateful
Lilies & Sparrows
Garment Of Gold
Brand New Day
Alpha & Omega
Alleluia (The Lord Of Love Has Come)

Produced by William M. Kelly
Recorded at Pyramid Studio , Ithaca , New York

All Music written by Ray Repp
Arrangements : Ray Repp , Chip Smith

Chip Smith : keyboards
Rat Repp : guitars
Paul Johnson : guitars
David Verdery : bass
Clint Swank : bass
Al Hartland : drums
Stuart ‘Kraz’ Krasnoff : percussion
Kevin Miles : trumpet
Jeanne Vernon : recorder

K&R records KRS1011

Jim Grady

2008-05-12 | SSW
■Jim Grady / Everything Is As It Should Be■

  Jim Grady のセカンドは同時代のプリ AOR 的なサウンドで特にマイルドでメロウなテイストが好みの方は必聴のアルバムです。 ハリウッド録音だった前作から一転し、ニューヨークでレコーディングされ、レーベルも RCA へ移籍しています。 詳しいクレジットは無いのですが、1975 年当時のセッション・ミュージシャンの洗練された演奏をバックにしたと思われるこのアルバムのもつ優雅で気品あるたたずまいは、純白のスーツを身にまとった Jim Grady の姿とシンクロします。 裏ジャケットの顔は Freddie Mercury そっくりなのですが。

  このアルバムを聴きたかった目的は A-4 の「As Far As We Can Go」です。 この曲は Donny Gerrard の 1976 年の名盤のラストを飾る名バラードなのですが、僕が Jim Grady の名を初めて知ったのは、このアルバムでの作曲者クレジットだったのです。 あまりに切なく胸が締め付けられるような名曲の作曲者ということで、彼を探求する旅が始まったのです。 Donny Gerrard はソウル色の強いシンガーなのですが、ここで聴くことのできるオリジナルも遜色のない出来でした。 Jim Grady のボーカルも表現力豊かで高揚感がたまりません。 この曲は僕の琴線に触れまくりなのです。
  アルバムは他にも名曲が目白押しです。 冒頭の「Yesterday Today」はシルクのようなストリングスに包まれたノスタルジックな名曲。 Teddy Randazzo のアレンジセンスが遺憾なく発揮されています。 曲間がわからないようにメドレー的に始まる「Forward All My Letters」も可愛らしいメロディーとキャッチーなサビが耳に残る完成度の高い傑作。 そして、親しみやすさと個性では「Do It All Again」が郡を抜いているでしょう。言葉では表現できない愛情と優しさにあふれたナンバーです。 B 面では、アルバムタイトル曲の「Everything Is As It Should Be」がお薦め。 エレクトリック・シタールのイントロだけで 100 点をつけたくなります。 この曲はうねるようなメロディーとボーカルの力量によって盛り上がっていくバラードですが、中盤でのひねりのある展開には驚かされます。 個々に取り上げなかった曲もアルバムの統一感のなかに順応した仕上がりを見せていますので、特別に印象を悪くすることはありません。

  このアルバムに大きく貢献しているのは、やはりプロデュースとアレンジでクレジットされている Teddy Randazzo でしょう。 彼は 1950 年代からボーカリストとして活躍し、次第に職業作家・アレンジャーへと転進していった経歴の持ち主ですが、このアルバムで聴かれる洗練された大人の音楽は、彼の影響が強く感じられます。
  その Teddy Randazzo と Jim Grady を引き合わせたのは誰なのでしょうか。 僕はひそかに共同プロデューサーとしてクレジットされている Mike Berniker ではないかと推測しています。 Mike Berniker の名前でピンと来る人はほとんどいないと思うのですが、僕は彼のプロデュースしたレコードをもう 1 枚だけ持っていました。 それは、Susan Pillsbury です。 あの謎の歌姫と Jim Grady に意外な接点があったとは驚きです。 時代としては 2 年ほどのギャップがあるものの、もしかするとセッションで参加したミュージシャンがダブっている可能性がありますね。 レコードのクレジットは目を凝らして見てみるとこんな発見があり、その楽しさはちょっとした探検気分を味わせてくれます。
 
  最後に Jim Grady の話を少しだけ。 彼のアルバムはこの 2 枚だけだと思っていたのですが、実は 1979 年に 3 枚目のアルバムがあることが判明しました。 同じ RCA からリリースされたそのアルバムは「Touch Dancin’」というタイトルなのですが、どうやらタイトルから来る予感のとおりディスコ・サウンドへと変容してしまったようなのです。 とあるサイトで見つけたジャケット写真を見て衝撃を受けました。 時代に流されたとはいえ、直視できません



■Jim Grady / Everything Is As It Should Be■

Side-1
Yesterday Today
Forward All My Letters
Do It All Again
As Far As We Can Go
Post Card From Spain

Side-2
Right Or Wrong
A Man’s Kind Of Woman
It’s All Gone Wrong
Everything Is As It Should Be

Produced by Mike Berniker and Teddy Randazzo
Arranged by Teddy Randazzo
Vocal Arranged by Jim Grady
Recorded in RCA’s Studio D , New York City

RCA Victor APL1-1112

Jim Grady

2008-05-11 | SSW
■Jim Grady / Jim Grady■

  ソングライティングのセンスに非凡なものを感じさせたシンガーソングライター Jim Grady のファースト・ソロ・アルバムを取り上げてみました。 ピアノ系の SSW である彼は他のミュージシャンにも多くの曲を提供しているものの、顕著なヒット曲や代表作といえる曲に恵まれなかったことから、あまり語られる機会の少ない SSW です。 
  陰影の強調されたグリーンを基調としたジャケット写真はノーマン・シーフの手によるもの。 バック・ミュージシャンは泣く子も黙る鉄壁の布陣ということで、サウンドのクオリティは保証されたも同然です。 あとはサウンド・プロダクションとアレンジ、そして楽曲の質が高ければ評価の高いアルバムとなるはずです。 プロデューサーがフィラデルフィア・サウンドで有名な John Madara ですが、レコーディングはハリウッドで行われています。そのようなこのアルバムは分厚いダブルジャケットを装って 1973 年に発表されました。 

  アルバムは Larry Carton の甘いギターの響きからスタートする「A Foolish Thing To Say」で幕を開けます。 Gino Cunico のソロ作品に通じるソフトでメロウな楽曲ですが、ハープシコードのような響きのピアノにリコーダーやストリングスなどが一体となるさまは、玉手箱のよう。 クレジットを見れば、Michael Omartian や Tom Sellers がアレンジで参加しており納得です。  つづく「Don’t Want It No Other Way」は甘さ控えめで軽快なポップチューン。 キャッチーなサビとタイトな演奏が光ります。 曲作りのユニークさを感じさせるミディアム「Sometimes People Let You Down」、ひと息いれてティータイムになったかのようなバラード「The Reason We Live」、恋人に別れを告げる曲の割にはアップで陽気なナンバー「I Won’t Stay With You This Winter」など佳作がならんだ後はJim Grady が最も得意とするミディアム「Who’s For Complainin’?」へ。 この曲は1曲目の「A Foolish Thing To Say」と並ぶメロウな楽曲ですが、Jim Grady の典型的なスタイルと言えるでしょう。

  B 面は A 面に比べて、やや落ちる印象です。 子ども向けミュージカルのような「Broken」、Dean Parks と Larry Carton のギターが目立つミディアム「People In Love」と平凡な曲が続きます。 Jim Grady 自らが手がけたオーケストレーションが荘厳なバラード「I’m Nothing Without You」は意欲的な作品なのですが、味つけが濃すぎで失敗といえるでしょう。 つづく「Desiree」はアップなプリ AOR 的楽曲。 メロディも親しみやすくキャッチーです。 そして、ラストの「A Beautiful Thing」ですが、この曲は 1977 年にライザ・ミネリのアルバムに収録された曲。 弾き語りにストリングスが絡むこのようなバラードは、ライザのように歌唱力があるボーカルが似合うように思います。 これはアルバムを通して言えることですが。

  Jim Grady がこのデビューアルバムを制作することになったきっかけは分かりませんが、この豪華なメンバーやジャケットの仕様からも期待の高いミュージシャンだったのではないでしょうか。 しかし、21st Century から発売されたアルバムは本作のみでした。 Randy Edelman や Patti Dahlstrom などの SSW をリリースした同レーベルですが、1 枚のみのリリースとなったのは異例だと思います。  けして高値がついているわけでもないのにあまり見かけないレコードですので、初回プレスしかされなかったのかもしれません。 
  デビュー作はセールス的にも失敗に終わった Jim Grady ですが、2年後にニューヨークから再登場することになります。 そして、そのセカンドこそが彼の最高傑作となるのです。



■Jim Grady / Jim Grady■

Side-1
A Foolish Thing To Say
Don’t Want It No Other Way
Sometimes People Let You Down
The Reason We Live
I Won’t Stay With You This Winter
Who’s For Complainin’?

Side-2
Broken
People In Love
I’m Nothing Without You
Desiree
A Beautiful Thing

Produced and Directed by John Madara
All tunes composed by Jim Grady

Jim Grady : piano
Hal Blaine : drums and percussions
Joe Osborne : bass
Dean Parks : guitar
Larry Carlton : guitar
Richard Bennett : guitar
Sid Sharp : concert master

Photography : Norman Seeff

20th century records T-418

Jade And Sarsaparilla

2008-05-05 | SSW
■Jade And Sarsaparilla / Jade And Sarsaparilla■

  Jade And Sarsaparilla が残したアルバムは、レズビアン・デュオの作品としては比較的知られている人気の作品です。 Jade そして Sarsaparilla という名前は架空のカップルのことを指しているのか、それともお互いが呼び合っていたニックネームなのかは分かりませんが、いずれにしても本名ではありません。 では誰かというと、ボーカルとピアノの Janet Hood とボーカルのみを担当する Linda Langford のふたり。 サウンドは Linda Langford がリードボーカルをとり、Janet Hood がハーモニーを付けるというスタイルが多いのですが、アルバムは 1975 年という時代にふさわしく、オーソドックスな SSW サウンドというよりは、モダン・ジャズのフィーリングやグルーヴ感が色濃く打ち出された内容となっています。 
  
  アルバムのハイライトは何と言っても「It’s Gonna Take A Miracle」です。 ピンと来た方はその通り、Laura Nyro で有名なあの楽曲を取り上げているのです。 しかも、この出来が素晴らしく、Jade Hood のしっとりしたピアノをバックに、二人のボーカルが自由奔放に舞う様は、Laura Nyro にも引けを取りません。 CD 化されていれば、プレイリストに並べておきたくなるナンバーです。
  とはいえ、この1曲だけにアルバムを集約してしまうことはさすがにできません。 アルバムには、優れた曲がまだまだあります。 なかでも柔軟に跳ねるリズムセクションをバックにした「She’s That Kind Of Woman」や、ふたりの息のあったミディアム 「I Need A Drink Of Water In My Mind」は親しみやすい仕上がりとなっています。 また、Janet Hood のピアノの弾き語り主体のミディアム「I Can’t Stay, I Can’t Go」は、じわじわと盛り上がりを見せ展開が光る名演です。  他には、ラグタイム風の「Gimme A Pigfoot」やブロードウェイ・ミュージカルの要素を感じさせる「Talkin’」など個性的な楽曲が並んでいます。 まとまりという点で難があるといえば、あるかもしれませんし、荒削りな感も否めません。 また、全 8 曲という点で物足りなさは残るのも事実です。 ですが、このアルバムを繰り返し聴くと、ニューヨークの裏通りや街に暮らす人々の息使いが感じられ、当時のアンダーグラウンド・ミュージックシーンの懐の深さが伝わってくるようです。 

  二人のなかで、ピアノの演奏力などで卓越した才能を感じさせた Janet Hood は何らかの形で音楽活動をしているのではないかと思い、ネットで調べてみました。 すると、予想通りミュージカル系の作曲家として活動していることが分かりました。 さすがに、オフ・ブロードウェイですが、「Elegies For Angels, Punks and Raging Queens」といった作品のコンポーザーとしてクレジットされています。 このミュージカルのプロデューサーは Bill Russell という人物なのですが、実はこの Jade And Sarsaparilla のアルバムでは、マネージャーとしてクレジットされています。 Bill Russell と Janet Hood は、他のサイトでも「長年のパートナー」という表現をされているので、二人の音楽的なつながりは 30 年以上ということになります。 
  一方の、Linda Langford は残念ながら行方をつかむことができませんでした。 ですが、少しうれしかったのも事実です。 というのも、このレコードに残された永遠の空気感を共有するには、すべてが解明されてしまってはいけないような気がするからです。



■Jade And Sarsaparilla / Jade And Sarsaparilla■

Side-1
She’s That Kind Of Woman
Gimme A Pigfoot
Daytime
Talkin’

Side-2
I Can’t Stay, I Can’t Go
It’s Gonna Take A Miracle
I Need A Drink Of Water In My Mind
I’d Like To Be

Executive Producer : Maureen Boyce
Musical Producer : Steve Tarshis

Recorded and Mixed at intermedia studios , boston

Linda Langford : vocals
Janet Hood : vocals , all piano
Richard Appleman : double bass , electric bass
Gene Roma : drums (I Can’t Stay, I Can’t Go), congas
Bob Gullotti : drums

Submaureen Records JS 723


Tom & Theresa

2008-05-03 | SSW
■Tom & Theresa / Carry Me Back■

 Theresa Demarest が、Jon Ten Broek とコンビを組む以前に結成していたのが、この Tom & Theresa です。 Ten Broek & Theresa が 1978 年、今日取り上げるアルバムが 1975 年ですから、3 年の間にパートナーが変わったことになります。 Theresa Demarest は 1970 年代の女性らしく自由奔放で快活な女性だったのでしょう。 Tom と Theresa が離婚した時期ははっきりしませんが、現在も二人ともDemarest を名乗っています。 Tom Demarest を紹介するページを見ると、ギターのレッスンで生計を立てているようです。 前回取り上げた Jon Ten Broek もそうでしたので、この二人の人生は同じような道程をたどっていることになります。
 
 さて、話は長くなりましたが、Tom & Theresa が残したアルバムは 2 枚あり、今日取り上げる「Carry Me Back」はセカンドとなります。 未聴のファーストは弾き語り中心のようですが、こちらはオーソドックスな 4 人編成のバンドスタイル。 とはいえ、バック陣はあくまでも二人のサポートに専念しており、イヤミなキーボードや派手なギターソロはありません。

  アルバムの個々の楽曲はみなレベルが高く、どの曲も充実した出来なのですが、やはりタイトル曲「Carry Me Back」が抜きん出ています。 メロディーは、空を駆け抜けるかのように舞い、アレンジは Jimmy Webb が手がけているかのように秀逸で、ソフトロックや Fifth Dimension に近い心地よい響きに心が洗われます。 1975 年 12 月 13 日号の Billboard 誌では、西海岸地区のピックアップ曲として紹介されたこともあったようですが、チャートにインしたという記録はありません。  「Give Me Wings (Oregon)」はTheresa 主導のバラード。 Daniel Moore の作曲です。 オリジナルは未聴ですが、1998 年の彼のアルバムに収録されているので聴き比べをしてみたいです。  B 面の「Poverty Hill」 も見逃せません。 この曲は貧困の丘というタイトルからも気配を予期できる寂しげなワルツ。 Theresa の伸びのあるボーカルが天高く響き、スタンダードのような品格が漂う名曲です。 ラストの「Consider It Done」は、二人の息のあったハーモニーが魅力のバラード。 このような曲に酔っていると、Theresa の声質と歌い方が、自分の最も好きなタイプであることを認めざるを得ません。 
   これ以外にもバラエティに富んだ曲が並びます。 カレッジ・フォークの匂いのする「A Matter Of Degree」はなぜか道路工事現場の SE で遮断されてしいます。  「Nobody Knows You」は Eric Clapton が Unplugged で演奏したことで有名な Jimmy Cox の曲ナンバー。 ここでも R&B テイストです。  「In The Meantime」は、ファーストアルバムのタイトル曲。 再録なのかもしれません。 「Our Song」は明るいミディアム。 ナチュラルなサウンドが 5 月の週末にぴったりです。

  このアルバムや Ten Broek & Theresa を聴くと、ふたりの男性を虜にした Theresa Demarest の魅力について考えてしまいます。 彼女のボーカルからは、女性らしい優しさだけではなく、たくましさや意志の強さを感じ取ることはできるのですが、魔性の女と呼べるほどのオーラが出ているわけでもありません。 恋多き女 Joni Mitchell のように捕捉されたら逃げられない感じもないのです。 ですが、やはり音楽の才能としては常にパートナーを凌駕していたことは間違いないので、ダメな男をほっておけないタイプだったのではないでしょうか。 どうでもいいことですが(笑)



■Tom & Theresa / Carry Me Back■

Side-1
Carry Me Back
Fly Me
Homegrown Grass
Give Me Wings (Oregon)
Nobody Knows You
A Matter Of Degree

Side-2
In The Meantime
Who Are You
Haven Off The Road
Poverty Hill
Our Song
Consider It Done

Producers : Tom & Theresa Demarest , Rob Perkins
Executive Producers : Donna Nelson , Bill & June Daley
Mastering : Bob MacCleod

Recorded and Mixed September 1975 Raspberry Recording Sudio , Eugene , Oregon

Tom & Theresa Demarest : vocals , guitar ,synthesizer
Tom Demarest : banjo , mandolin
Gary Sanders : bass
Gary Nolde : percussion , drums , mandolin
Gary Wilkes : dobro

Orygun Records TTM 97330-2