Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Robert Edwin

2009-01-31 | SSW
■Robert Edwin / With Joy■

  名盤の予感を感じて購入したアルバムが期待はずれだった…ということはレコード収集にはつきもの。 失敗と成功を重ねて、精度が高くなるだけで満たされた気分になっていくものです。 以前、これは!と思って買ったものが朗読のレコードだったりした時には、さすがにくじけましたが。
  
  さて、この Robert Edwin のアルバムもどちらかというとそんな部類に入る作品です。 ジャケットのイメージを膨らませすぎた反動で、初めて針を落としたときには残念な思いを抱いたものです。 しかし、アルバムを最後まで聴くに連れて、その独特の雰囲気に捨てがたい個性を感じるようになってきました。 おそらくは 1970 年代の前半と思われるこのレコードは、同時代の SSW の影響はなく、むしろ 1960 年代後半のソフトロックに近いサイケな浮遊感と Harry Nilsson のような小粋さが同居したような印象です。 時折、ジャジーになったり、ノイジーなギターが唸ったりすると、このアルバムがクリスチャン・ミュージックであることを忘れてしまいます。 楽曲もバラエティに富んでおり、全部を好きになるのは難しいかもしれませんが、何曲かは自分好みの楽曲がみつかるはずです。 そういったアルバムって意外と多いような気がしますね。
  ただ、Robert Edwin の低音とボーカルスタイルが、やや仰々しく感じられ、好き嫌いが明確に分かれるところが、このアルバムの印象を悪くする結果となっているように思います。 彼のボーカルが Harry Nilsson のように変幻自在だったら、Randy Newman のようにアクが強かったら、違う世界が開けていたかもしれません。

  アルバム冒頭の「With Joy」は、まろやかなボーカルとファズの効いたギターが混在する異色なサウンドで意表をつかれますが、以降はミディアムで和める曲が続きます。  特に A 面ラストの「Gentle, Peaceful Notions」はアルバムを代表するバラードと言えるでしょう。 B 面では重々しいファズギターで幕を閉じる「And They Killed Him」やサイケな展開の「Questions And Answers」、チープなロックンロール「Hell Of A Heaven」
など、個性的な楽曲が目立ちます。 そんななかで、ミディアムで希望に満ちた楽曲「Act」が個人的なベストトラックです。 

  このアルバムで気になるのは風変わりなタイトルが多いことです。 「Military Industrial Complex」(総合軍事産業)や「Postmortem Presents」(検死は提供する)といった曲は意図がよくわかりませんし、「And They Killed Him」、「Hell Of A Heaven」といったタイトルもクリスチャン・ミュージックらしくないよう感じます。 歌詞カードもなくヒアリングもままならないので真意はわかりませんが、ここにも Robert Edwin の謎めいた世界観があるように思えます。 そういえば、ジャケットも表と裏で、モノクロと新緑と対照的な風景となっています。  特に何か秀でた才能やセンスがあるわけでもなく、珠玉のメロディーにあふれているわけでもないこのアルバムが、特異な存在に思えてしまうのは、こうした特徴が頭にこびりついてしまったからなのでしょう。



 彼の公式プロフィールサイトを発見しました。 そこによると、1967年の「Keep The Rumor Going」と1970年の「With Joy」の 2 枚を発表しているようです。 (2009/02/11 追記)

■Robert Edwin / With Joy■

Side-1
With Joy
Keep America Beautiful
Lonely Little Lady
Military Industrial Complex
Postmortem Presents
Gentle, Peaceful Notions

Side-2
What Is Christmas All About?
And They Killed Him
Questions And Answers
Act
Hell Of A Heaven
Peace, Jesus, Peace

Produced by Richard N. Clapper and Robert Edwin
All songs by Robert Edwin
Arranged and directed by Robert Edwin

Robert Edwin : guitar and vocals
Bob Water : electric guitar
Fred Shimmin : piano and organ
Bob Cerulli : electric bass
Carl Mottola : drums

Fortress Records

Debbie Friedman

2009-01-25 | SSW
■Debbie Friedman / Sing Unto God■

  前回とりあげた、Debbie Friedman のファーストアルバムです。 制作年の表記はないのですが、’72 Choir というクレジットから、1972 年の作品だと思われます。 レコーディングは前作同様ミネソタの Sound 80 ということもあり、エンジニアも同じ Dean Klinefelter なのですが、参加ミュージシャンはセカンドとは全員違う面々です。 
 
  このアルバムは Debbie Friedman 名義での作品なのですが、実態はミネソタ州都セントポールの Highland Park Senior High School のコーラスが主役と言ってもいいでしょう。 ほとんどの曲をこのコーラスがメインで歌唱し、Debbie Friedman がリードをとる楽曲は「Sh’ma」「Let Us Adore」そして「The Kaddish」の 3 曲しかないのです。 コーラスがメインとなる楽曲は、高校生の合唱コンクールのようなアマチュア感あふれる仕上がりですが、曲の題材やアルバムのコンセプトの影響もあり、清楚で神聖なベールに包まれたようなイメージです。  「Si Shalom」や「May The Words」のように伴奏がギターだけの曲は、その印象はさらに強まります。
  一方、リズムセクションの入った曲はアップテンポなものが多く、Fifth Dimension に近い高揚感が感じられます。  曲ごとに入れ替わるその静と動の対比もアルバムの特徴となっています。  「Yismechu」や「Mi Chamocha」などがそういった「動」の部類に入る楽曲です。 
 
  Debbie Friedman がボーカルをとる 3 曲のなかで、もっとも 70 年代の SSW 的な味わいなのが「Sh’ma」です。 「The Kaddish」は、ややルーズな佇まいがローラ・ニーロに近いものを感じます。 しかし、いずれも 2 分足らずで終わってしまい、フェードアウトも雑なので、じっくりと聴いている余裕などありません。 
  アルバムはタイトル曲「Sing Unto God」を A 面 1 曲目と B面ラストをサンドイッチ状態で配置しており、リプライズ的に幕を閉じます。 この構造はセカンドでも同様でしたので、これには明確な意図があったのでしょう。 起承転結とか輪廻転生といった意味合いかもしれません。

  30 分にも満たないこのアルバムを振り返ってみましたが、このアルバムはDebbie Friedman の習作として位置づけるべきだと思います。 ボーカルが 3 曲しかないこともあるのですが、それ以上に彼女の存在感が希薄なのです。 全曲を彼女が書いているにしては、遠慮がちで前面に出てこない感じが気になります。 彼女と Highland Park Senior High School との関係は、卒業生と母校の関係なのでしょうか。 それとも、単にコーラスの上手な学校にお願いしたのかはわかりませんが、彼女一人では大勢の高校生に立ち向かうのはあまりにも荷が重すぎたという印象です。 Debbie Friedman は当時 21 歳ですので、無理もないというところです。
  ですから、彼女のアルバムを聴くのであれば、1974 年の「Not By Might Not By Power」から順を追っていくのが理想かもしれません。 1976 年発表の「Ani Ma-Amin」などは年代的にも期待できそうなので、見つけたら聴いてみたいと思っています。



■Debbie Friedman / Sing Unto God■

Side-1
Sing Unto God
L’cha Dodi
Barechu
Sh’ma
V’havtah
Mi Chamocha

Side-2
Si Shalom
May The Words
Yismechu
Let Us Adore
Ba Yom Ha-Hu
The Kaddish
Sing Unto God

Soloist and Lead Guitar : Debbie Friedman
Bass Guitar : Mark Leonard
Drums : Bob Cohen
Piano : Brad Momsen
Choir : 72’ CAMERATA of Highland Park Senior High School St.Paul, Minnesota

Sound Engineer : Dean Klinefelter of Sound 80 Studios

321-S-80321

Debbie Friedman

2009-01-18 | SSW
■Debbie Friedman / Not By Might Not By Power■
 
  このブログでは、Christian Music のアルバムを何枚か取り上げていますが、今日取り上げる Debbie Friedman は Jewish Music です。 すなわちユダヤ教の影響下にある音楽ですが、このジャンルにあるミュージシャンは、Debbie Friedman しか知りません。Contemporary Christian Music を略して CCM という呼び名は一般化していますが、CJM というのは聞いたことがありません。 
 
  Debbie Friedman は Wikipedia によると 1971 年のデビュー以来 19 枚ものアルバムを発表している女性 SSW です。 公式サイトも充実しており、すべてのアルバムが CD でネット販売されていました。 このアルバムは 1974 年に発表されたセカンドですが、このアルバムも CD で買うことができるのです。

  このアルバムは時代や宗教色もあり、厳かでスピリチャルなサウンドを想像しがちですが、パーカッシブなアレンジに加えアップテンポな曲調が多く、事前の予想はあっさりと裏切られます。 とくにパタパタしたドラムスは、Hal Braine の影響なのでしょう。 特にオープニングを飾るタイトル曲「Not By Mighty Not By Power」のパワフルな仕上がりには驚きました。 この強力なリズムセクションは、デビッド・テラオとケニー・タカオカという日系人によって支えられています。 彼らのクレジットを他のアルバムで見た覚えはありませんが、ミネアポリス周辺のセッションマンなのでしょうか。 

  もうひとつ特徴的なのは、Debbie Friedman のボーカルの多重録音です。 この時代に複雑なコーラスをオーバーダビングしながらも、不整合な感じがしないのはレコーディングの技量もあるとは思いますが、Debbie Friedman のリズム感の賜物でしょう。 A 面で唯一のバラード「L’Dor Va Dor」は American Springの「Thinking About You Baby」を思わせるようなメロディーとアレンジで、アルバムの代表する曲です。 つづく「Seu Shearim」と「L’cha Adonai」は、ソフトロック風な仕上がりです。

  B 面はソフトロック傾向がさらに強まります。 とくに「Maoz Tzur」や「Mi Y’maleyl」のフォーク調のメロディーは爽やかで清々しく、70 年代の女性 SSW らしさが最も強く表れています。 また、ラララだけで歌われる「Joy Cometh In The Morining」は透明感と温もりが共存した独特のたたずまいを見せています。 この雰囲気は、このブログで取り上げたことのある Anne Mortifee の世界の響きに共通するものです。 しっとりとした曲が続いた B 面ですが、最後は「Not By Mighty Not By Power」のリプライズで締めくくられ、あわただしく幕を閉じたような後味を残します。

  いい忘れていましたが、このアルバムは曲名からもわかるように「Not By Might Not By Power」以外はユダヤ語で歌われています。 どれだけの人が歌詞の意味を理解して、レコードを聴いたのかは謎ですが、おそらく北米の各地にユダヤ教の共同体が存在し、そこでの活動を通じて、Debbie Friedman の音楽が伝わっていったのでしょう。
  ユダヤに関してはほとんど知識がないないのですが、一昨年に衝動買いした「私家版・ユダヤ文化論」(内田樹:著)は、内容も初心者向けであっという間に読んでしまいました。 新書ですので安く買えますし、お勧めの一冊です。



■Debbie Friedman / Not By Might Not By Power■

Side-1
Not By Might Not By Power
Al Ha-Nissim
Nes Gadol
L’Dor Va Dor
Seu Shearim
L’cha Adonai

Side-2
Hodo Al Eretz
Eytz Chayim
Maoz Tzur
Mi Y’maleyl
Joy Cometh In The Morining
Not By Might Not By Power

Composed and sung by Debbie Friedman

Soloist Y lead guitar : Debbie Friedman
Bass guitar : David Terao
Piano : Judy Director
Drums : Kenny Takaoka
Sound Engineer : Dean Klinefelter
Recorded and Mastered by Sound 80

S80-741

Carl Brouse

2009-01-10 | SSW
■Carl Brouse / American Hotel■
 
  AOR 全盛の時代がこうしたジャケットにさせてしまったのでしょうか。  靴のウラまで見せなくてもいいのにと思うのは、Carl Brouse が 1983 年に発表した唯一のアルバム。 サンフランシスコのマイナーレーベル DTI からリリースされています。
  このレコードを買った当時は、気分的に優先順位が低く、しばらく聴かずに放置してしまったのですが、一度聴いてからはその内容の充実ぶりを知り、反省したものです。 クレジットを良く見ると、興味深い面々が参加している点も、このアルバムの魅力となっています。 

  サウンド面で最も重要な役割を果たしているのは、アソシエイト・プロデューサーでもある Amos Garrett です。 Amos Garrett は 12 曲中 7 曲に参加しており、得意のギターやハーモニーを聴かせてくれます。 とくに A-6 の「Baton Rouge」でのギターソロはすぐに彼と分かるクセのあるプレイに、思わずにんまり。 この曲だけでも Amos Garrett ファンは注目です。 この他にも「American Hotel」での繊細なギター、ロカビリー風の「Honky Tonk Heart」での暖かいコーラスなど、アルバムの随所で存在感を示しています。
  曲作りに関しては、Carl Brouse が全曲に関与しているのですが、Tom Russell との共作が 4 曲あり、ここも注目のポイントです。 Tom Russell は、老人ジャケットで SSW ファンの間では密かに有名な Hardin & Russell の片割れ。 コンビ解散後、現在も活動を続けているミュージシャンです。 彼と Carl Brouse の関係は不明ですが、演奏には一切参加していないところが不思議です。 共作のなかには、「Heart To Heart」、アコースティックな名バラード「The Dance」などアルバムの核となる楽曲が存在します。

  さらに注目されるのが、デビュー前の Shawn Colvin の参加です。 彼女のデビュー作は 1989 年ですから、彼女のレコーディングとしてはかなり初期のものになるはずで、もしかすると、ファースト・レコーディングの可能性もあります。 参加しているのは「Heart To Heart」と「Taking Chances」の 2 曲。 カントリー調の前者では、Gram Parsons と Emmylou Harris のような息のあったデュエットを、情緒豊かなフォークロックの後者では、メランコリックな味わいのハーモニーを聴かせてくれます。

  こうして、Amos Garett、Tom Russell そして Shawn Colvin という現役ミュージシャンを軸に、このアルバムをなぞってみましたが、やはりインパクトの強さはオープニングの 2 曲だと思います。 最初に聴いたときには意表をつかれた感のあった「Angelina」は、Jackson Browne がポップに指向したときに書き下ろしたかのような楽曲で、シングルカットしても不思議ではない出来栄え。 つづく「Slow Burnin’ Memory」はメロディーが際立って美しい見事なバラード。  アルバムのクオリティの高さは、すでにこの 2 曲で証明されてしまうのです。 

  しかし、この傑作を残しながらも、Carl Brouse はこのアルバムした残すことができませんでした。 彼がシーンから消えてしまった理由は知る由もありません。 おそらくは、レーベルが倒産したとか、ビジネスの世界に転進した、といったことなのでしょう。 ラスト の「American Hotel」では、フォスターの「なつかしきケンタッキーのわが家」が引用されているのですが、その郷愁あふれるメロディーを聴く度に、そんなことを考えてしまい、もどかしさだけが残されるのです。



■Carl Brouse / American Hotel■

Side-1
Angelina
Slow Burnin’ Memory
These Bars
Heart To Heart
Angel Blue
Baton Rouge

Side-2
Wise Blood
Honky Tonk Heart
Taking Chances
The Dance
The Lady And Me
American Hotel

Produced by Craig Luckin and Carl Brouse
Executive Producer : Derek Tracy
Associate Producer : Amos Garett

Carl Brouse : acoustic guitars
Paul Davis : acoustic guitar, electric guitars
Cam King : acoustic guitar
Mac Cridlin : bass guitar
Walter Collie : bass guitar
Michael Weinstein : bass guitar
John Reed : high-strung guitar
Phil Aaberg : piano
Amos Garrett : electric guitars, harmony vocals
Larry Black : electric guitars
Bobby Black : steel guitar
Chojo Jacques : fiddles
Link Davis Jr. : saxophone
Shawn Colvin : duet vocal, harmony vocals
Fred Krc : drums
Scott Matthews : drums
Kenney Johnson : drums
Linda Diamond : harmony vocals
Mary Garner : harmony vocals
Doug Corrigan : harmony vocals
Charlie Owen : harmony vocals
Bonnie Hayes : harmony vocals

DTI Records DT-3214

Randy Palmer

2009-01-02 | SSW
■Randy Palmer / Calling Me Home■
 
  2009 年最初に取り上げるレコードは、Randy Palmer が 1979 年にリリースした名盤「Calling Me Home」です。 青くコーディングされた雪景色のジャケットだけを頼りに買ってしまったアルバムですが、その淡い期待を上回る内容だったので、そっと大切にしている作品です。 新年の「ブログ初め」としては、もってこいのアルバムでしょう。

  雪景色から反射的にコロラドやオレゴンあたりの産物かと思いがちですが、意外にもテキサスのマイナーレーベルからのリリースで、レコーディングは音楽の都ナッシュビルです。 Randy Palmer の魅力は、優れたソングライティングと温もりのある声質が、まろやかに溶け合って、いつ聴いても懐かしい気持ちにさせられるところにあります。 どこかで聴いたことがありそうなメロディーであったり声であったりするのですが、うまく思い出せない… そんな気分を毎回味わうことになるのです。 しかし、それがストレスになるのではなく、リラックスにつながっていくから不思議です。

  その和みの極みは A 面 1 曲目の「Calling Me Home」に尽きます。 Charles McCoy の咽ぶようなハーモニカに導かれて始まるスロウなワルツなのですが、円熟した演奏をバックに、故郷であるニューメキシコに帰りたいという想いが、しみじみと歌われる様は何度聴いても感動的。 この曲だけで、疲れた体が芯からほぐれてしまうようです。 つづく「My Own Man」と「Roam The Hills」は、ともにミディアムな楽曲ですが、Randy Palmer の声が James Taylor に酷似していて驚きます。 特に「My Own Man」の歌い出しは、別人と知っているのに毎回騙されそうになります。 「Like A Fire」は、もっとも地味な部類に入る楽曲ですが、Beegie Adair による端麗なピアノの音色が聴きどころになっています。 A 面ラストの「Fire On The Mountain Tonight」はアップテンポのカントリー・ナンバー。 ちょっと元気が良すぎて、A-1 から A-4 までのしっとりした流れが損なわれるところは勿体ない気がします。

  B 面は快活な楽曲が多く、A 面に比べて劣勢です。 「I’m So Blind」や「Wax Banana」は、カントリー色が濃く現れすぎで個性が乏しい感は否めません。 Randy Palmer の持ち味はメロウなスロウバラードにあるので、アクセントとしてこうしたアップな楽曲も必要だったのでしょう。 いっぽう、「Wasted Time And Wasted Points Of View」と「Eye Of The Storm」は Randy Palmer の得意とするミディアムな楽曲です。 特に後者は素朴な味わいがにじみ出たワルツで、透明感あふれる Beegie Adair のピアノと泣いているかのような Charles McCoy のハーモニカが印象的です。 アルバムのラスト「Family Gathering」は、のどかでオールドタイミーなフォーク・ソング。 何気ない毎日の暮らしの愛おしさに気づかせてくれるようなメロディーです。

  こうして一つひとつの曲をじっくり聴きなおすと、ナッシュビルのセッション・ミュージシャンの腕に支えられた部分が意外と多いことを発見しました。 とくに Charles McCoy のハーモニカは、その音色が入ってくるだけで、心が惹かれていくのです。 しかし、彼らの貢献は作品の完成度を高める要素として欠かせないものの、作品の魅力を貫く本質ではありません。  冒頭にも書きましたが、このアルバムの魅力は、Randy Palmer 自身の才能と人間性に拠るところが大きいと思うのです。 
  Randy Palmer のプロフィールや作品については、ネットで検索してみましたが、まったく判りませんでした。  おそらくはこのレコードが彼の唯一の作品なのでしょう。  こうした消息不明のミュージシャンと出会うたびに思うことは、そのレコードの制作に関わった人々のことです。  広大なアメリカの、どこかで誰かが、このレコードの思い出をそっと胸にしまっているはず…  そんなことを考えながら、もう一度「Calling Me Home」を聴くことにしましょう。



■Randy Palmer / Calling Me Home■

Side-1
Calling Me Home
My Own Man
Roam The Hills
Like A Fire
Fire On The Mountain Tonight

Side-2
I’m So Blind
Wasted Time And Wasted Points Of View
Wax Banana
Eye Of The Storm
Family Gathering

Produced by Charles F. Brown
All words and music by Randy Palmer except ‘Roam The Hills’ by Ginger Brown

Acoustic guitars : Dave Kirby, Charlie McCoy, Randy Palmer, Billy Sanford
Electric guitar : Billy Sanford
Keyboards : Beegie Adair, Tony Migliori
Bass : Ernie Chapman
Drums-percusson : Larrie Londin
Harmonica : Charlie McCoy
Banjo : Bobbt Thompson
Fiddle : Carroll Hubbard
Background vocals : Ginger Brown

Strings Arranged by Charles F. Brown

Strings : Eliot Chapo, William Hybel, Norma Davidson, Gloria Stroud, Peggy Zimmers, Lois Vornholt, George Papich, Mitta Angell, Monte Lnutson, Pam Washburn

Heartland Productions HRLP-100