Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Dave Lafary

2010-04-29 | Christian Music
■Dave Lafary / I Love You, Lord■

   マイルドな歌声が春の陽気にぴったりな Dave Lafary のアルバムを取り出してみました。 この作品は、インディアナ州を拠点とするクリスチャン・ミュージック・レーベルPinebrook Recording から 1979 年に発表されたものです。  Dave Lafary については何も情報がないので早速検索してみたところ、Wikipedia に掲載されていたので有名なミュージシャンかと思いきや、その人は同名のアメリカンフットボール選手でした。 このブログで取りあげた Jon Keyworth や元巨人軍の柳田のように、スポーツ選手がレコードを発表する事例は稀にありますが、今回はそうではないでしょう。

   このアルバムは Dave Lafary のおそらくファーストアルバム。 オーソドックスなアレンジと優しいストリングスといった 1980 年前後の典型的な CCM サウンドが展開されています。 それを退屈に感じてしまうか、心地よく思えるかが、このジャンルと向き合えるかどうかの分かれ目です。 おそらく若い人には退屈以外の何物でもないでしょうが、中年を迎えた僕のような人間にとっては、こうした音楽も悪くないのです。
   収録楽曲のなかで目を引くのは、Carole Kingの「You’ve Got A Friend」です。 この曲の歌詞はたしかに永遠の友情をテーマにしたものですが、こうしたマイナーな CCM アルバムに収録されているとは意外でした。 それだけなら話題にするほどではないのですが、Dave Lafary はこの名曲に対して勝手に編曲と加筆を施しているのです。 それはあの「おふくろさん」事件と類似した現象で、Dave Lafary が冒頭と終わりにオリジナルのメロディーと歌詞を追加するという事態。 その歌詞には Jesus や Lord が含まれ、「You’ve Got A Friend」を CCM で再梱包したみたいな作品となっていました。 ただ、違和感や嫌悪感を感じさせることはないので、その自然なくるみ方に感心させられてしまいます。 そういった所も含めて、このアルバムの最大の聴きどころと言えるでしょう。

   アルバムのほとんどが自作の楽曲ですが、それらの中にも素晴らしいクオリティの作品が多く含まれています。 オープニングの「I Love You, Lord」は甘いエレピと流麗なストリングスに紡がれた名バラード。 素直に幸福感を表現した「I’m So Happy」も優しい歌声に癒されます。 B 面の「He Is」もストリングスに包まれた美しいバラード。 これぞCCMの極めつけというタイトルの「I Want To Be Like Jesus」もその流れを汲む歌いあげ系のバラード。 「Great, Great Joy」そしてラストの「Jesus Love Me / I Wish You Jesus」と B 面は文句のつけどころが無い予定調和なサウンドが展開されています。  この流れを演出した Roger Byrd のストリングスアレンジのセンスはたいしたものだと感服しました。 今後、彼の名前をクレジットで見つけたときは要チェックですね。

  さて、今日からゴールデン・ウィークです。 昨晩は新橋のロックバーをはしごしてしまって快晴の休日を無駄に過ごしてしまいました。 毎年のことですが、連休中は遠出の予定もないので、夜はゆっくりとレコードを聴こうと思っています。

■Dave Lafary / I Love You, Lord■

Side-1
I Love You, Lord
Daniel
Ah-la-la-la
I’m So Happy
You’ve Got A Friend

Side-2
Brand New Song
He Is
I Want To Be Like Jesus
Great, Great Joy
Jesus Love Me / I Wish You Jesus

Produced and arranged by Roger Byrd
Recording and mixing by Bob Whyley

Dave Lafary : all vocals except ‘Ah-la-la-la’, guitar
Rex Thomas : guitar
Rodney Powers : piano, keyboards
Brian Hendrickson : bass guitar
Roger Byrd : percussion

Pinebrook Recording Studio PB1440

Stan Rogers

2010-04-20 | SSW
■Stan Rogers / Fogarty’s Cove■

  先月(3月10日)の投稿で Garnet Rogers をとりあげましたが、読者の方から彼が Stan Rogers の弟にあたるという旨のコメントをいただきました。 僕はそのことを知りませんでしたので、貴重な情報をいただきまして有り難く思っております。 今日の記事を書くにあたり、いつものようにアルバム・クレジットを書き写していたところ、しっかりと Garnet Rogers の名前があることを確認しました。

  そういう経緯で取り出したのが Stan Rogers が 1976 年にレコーディングしたファーストアルバム。 オリジナルは 1977 年に Barn Swallow Records からリリースされた作品ですが、僕が持っているのは自身のレーベル Fogarty’s Cove から 1979 年に再発されたレコードです。 一般的に出回っているのはこちらの盤が多いようです。

  さて、Stan Rogers ですが、トラッド寄りの SSW ということで、僕は勝手にカナダの Richard Thompson と呼んでいます。 ギターのテクニックでは Richard Thompson に分がありますが、鼻にかかった歌声と容姿・風貌はかなり似ていると思います。 このデビューアルバムでは、Stan Rogers の男らしさとストイックさが前面に押し出されており、内容的には通好みの作品に仕上がっています。 言い換えると渋すぎ、というところでしょうか。 ギターを中心にしたシンプルなサウンドなのですが、トラッド風のメロディーと低音ボーカルの連続攻撃には、ややもすると陰鬱な気分に包まれます。  「Fogarty’s Cove」、「Plenty Of Hornpipe」や「The Wreck Of The Athens Queens」といったアップテンポのダンスチューンも要所に配置されいるものの、全体の印象を覆すほどのウェイトはありません。 
  むしろ Stan Rogers の持ち味は「Forty-Five Years」や「The Rawdon Hills」そして「Make And Break Harbour」といったマイルドなバラードに表れていると思います。 この手のジャンルでバラードとなると三拍子のワルツが多いのですが、その予定調和で正攻法なサウンドが最も彼に似合っていると思いました。 とくに「Make And Break Harbour」が最もお気に入りです。
  異色な曲にも触れておきましょう。 漁船員による大漁祈願といった趣のアカペラ「Barret’s Privateers」や朗読のみの「Finch’s Complaint」は各面のラスト前に配置され、意図的なものを感じます。 ラストの「Giant : Reprise」はリコーダーのみの短い曲なので、B 面ラストは朗読から笛という風変わりなエンディングとなっています。
 
  こうして彼のデビューアルバムを振り返ってみましたが、Stan Rogers の音楽活動は 1983 年の飛行機事故で途絶えてしまうことになります。 彼は不幸にもツアー先のアメリカから戻る国際線空路の途中で発生した機内火災により命を落としてしまったのです。 この事故の詳細はについてはこちらをご覧ください。
  以前紹介した Garnet Rogers のファーストアルバムは 1984 年の作品ですので、兄の突然の死が少なからず彼のソロ活動の契機となったのでしょう。 そんな背景を感じながら Garnet Roger sのレコードに接すると違った響きが聴こえてくるのかもしれません。

■Stan Rogers / Fogarty’s Cove■

Side 1
Watching The Apples Grow
Forty-Five Years
Fogarty’s Cove
The Maid On The Shore
Barret’s Privateers
Fisherman’s Wharf

Side 2
Giant
The Rawdon Hills
Plenty Of Hornpipe
The Wreck Of The Athens Queens
Make And Break Harbour
Finch’s Complaint
Giant : Reprise

Produced by Paul Mills
All songs by Stan Rogers except traditional ‘The Maid On The Shore’
Recorded September 23rd and 24th ,1976 at Springfield Sound, Ontario

Stan Rogers : acoustic guitar, vocals
Garnet Rogers : violin, flute, vocals
David Woodhead : electric bass, acoustic guitar, lap steel, vocals
Jerome Jarvis : drums, percussion, effects, stepdancing
Ken whitely : piano, mandolin, vocals
The Masked Luthier of Dupont Street : dulcimer, banjo, concertina and long^necked tenor mandolin built by Grit Laskin
Bernie Jaffe : violin
Curly Boy Stubbs : acoustic guitar
John Allan Cameron : twelve-string acoustic guitar and violin

Originally released on Barn Swallow Records, 1977, as BS1001

Fogarty’s Cove Music FCM / P 1001

Carole King & James Taylor

2010-04-17 | Live Report
■Troubadour Reunion / Carole King & James Taylor■

  このブログのマイナーなカテゴリーに「Live Report」というものがあります。 今日は久しぶりの投稿です。 前回から 1 年以上、間があいてしまいましたが、その間全くライブに行かなかったわけではありません。 近いところでは、3 月も Bob Dylan に行ったのですが、ブログに投稿するまでに至らなかったのです。 (けしてライブが良くなかったということではないのですが)

  さて、本題です。
  昨日、4 月中旬で桜も散ったのに雪になろうかという冷たい雨のなか、Carole King と James Taylor のジョイントコンサートに出かけてきました。 コンサートには、誰もができるだけ薄着で行きたいところですが、ダウンジャケットなどで完全防備した人が多く、客席も真冬並みの雰囲気でした。
  コンサートは休憩をはさんだ 2 部構成ということで、お互いのソロを行った後に共演という風なイメージをしていたのですが、完全なジョイントコンサートでした。 お互いうまく歳をとった Carole King と James Taylor の温かみあふれる歌唱には参加した誰もが心打たれたに違いありません。 セットリストは他のブログなどで紹介されていると思いますので省略しますが、お客さんのノリは、曲の知名度から Carole King の優勢と言う印象でした。

  Carole King を観るのは、1990 年の初来日、2008 年の来日に続いて今回が 3 回目。 一方の James Taylor は初めてでしたが、James Taylor のマイルドな歌声がまったく衰えていないことには驚きました。 「Sweet Baby James」、「Fire and Rain」といった代表曲は大きな会場には不似合なはずなのですが、日本武道館がまるで小さなライブハウスになったかのように感じるほどでした。

  今回の来日の通好みの話題としては、バック・ミュージシャンが往年の名プレイヤーだということもあります。 実際に、Danny Korchmar の粘っこいギター、Russ Kunkel の乾いたドラムス、Lee Sklar の弾けるベースををこの目で見ることができたのには興奮しました。 とくに、白く長いあご髭がキャラクター化している Lee Sklar のプレイは最高でした。  このジャンルを弾かせたら右に出るものはいないと言える名手でしょう。

  Carole King はいつものように「Tapestry」を中心とした選曲。 ふたりを結びつけた永遠の名曲「You’ve Got A Friend」では、James Taylor が先行し、Carole King が追いかける展開。 この曲をふたりのハーモニーで聴くこと……それを求めて音楽ファンが武道館に詰め掛けたといっても過言ではないでしょう。
  アンコールのラストの「Locomotion」では元気いっぱいの Carole King と対照的にもの静かな James Taylor がいたのですが、その彼がほんの少しですがこの曲を歌うシーンがありました。 個人的にはその微妙な不具合には苦笑してしまいましたが、そんなことも懐かしい思い出として胸に刻まれるであろう、素晴らしいコンサートでした。

■Troubadour Reunion / Carole King & James Taylor■

2010年4月16日
東京 日本武道館

19:05頃開演 21:20頃閉演 (途中20分休憩)



Gary Netherland

2010-04-07 | SSW
■Gary Netherland / Return To The Sea■

  「海へ帰る」というタイトルに惹かれて購入したアルバムは、予想を裏切る平凡な MOR アルバムでした。 もう少し AOR テイストがあればとか、むしろシンプルなアコースティック路線であればと思いますが、それは後の祭りというものです。 しかし、何度か聴くたびにそのメロウなぬるま湯感覚が妙に気持ち良く感じられてきました。 この感覚は、40 歳を過ぎて初めて『Barry Manilowは実はいいんだ!』と告白する時のような恥ずかしさを伴います。 

  本作の主人公 Gary Netherland がオランダ人かどうかは知りませんが、無邪気に砂浜を駆ける姿とタイトルで勢い余って手にとってしまいました。 1981 年のカリフォルニアから生み出されたレコードです。 カリフォルニアの変人としては、古くは Eric Relph から Jon Tabakin といった一定の評価を得ている名盤から、Joseph NicolettiMichael Gillotti といった珍盤まで紹介してきましたが、それらの作品と比較すると見劣りするのは仕方ありません。 しかし、どんなアルバムにも捨てがたい曲があるもので、これがレコード愛好家を悩ませる種ともなっていると思います。

  たとえばオープニングの「We’re Both Still Young」はそのひとつ。 落ち着いたピアノのイントロからミディアムな展開、抑揚の効いたメロディーとボーカルはまさに MOR の典型と言えるバラードです。 このような曲を悪く言えるほど人に厳しくないのは自分の性格かもしれません。 つづく「My Darling」もスタンダードのような楽曲。 本当に Gary Netherland のオリジナルなのかと疑いたくなるこの曲は、薄く入るシンセの音色がドラマティックな広がりを演出します。 ジョンデンバーのカントリーロードを思わせる「Fervent Eyes」を挟んでタイトル曲の「Return To The Sea」は波の音から始まります。 スロウで洗練されたアレンジのこの曲も MOR 的な魅力満載のサウンド。 こうした音楽を肯定できる歳になったことを実感してしまいます。 つづく「Right Now」も深みのあるバラードで、こうして聴くとA面はさほど悪くないということを再確認しました。

  しかし B 面はその調子が続きません。 唯一、素晴らしいのがゲストボーカルの Kathy Berry とのデュエットソング「Pick Me Up Tonite」です。 この曲は、Kathy Berry の美しい歌い出しから、他の曲と一線を画す予感がするのですが、実際に頭一つ抜きんでている印象です。 それは前後の「You’re Not The One To Talk」、「Hot Blooded Woman」そして「Chart Fever」といった曲の出来が悪いために余計に引き立っているのからかもしれません。 いずれにしても、この「Pick Me Up Tonite」が終わり次第レコードの針をあげてもまったく問題がないと断言してもいいでしょう。

  それにしてもカリフォルニアの人は海が好きですね。 テンション高めのジャケットからは全くその内容を予見できませんでした。 後世に残る名盤ではないけれど、けして手放すことはできない不思議な愛着を覚えるアルバムです。

■Gary Netherland / Return To The Sea■

Side 1
We’re Both Still Young
My Darling
Fervent Eyes
Return To The sea
Right Now

Side 2
I Need All Your Love
You’re Not The One To Talk
Pick Me Up Tonite
Hot Blooded Woman
Chart Fever

Produced by Ellen Burton and Gary Netherland
Arranged by Bob Berry
Recorded at Tiki Sound (San Jose, CA) and Music Annex (MenloPark, CA)

All songs written by Gary Netherland

Gary Netrherland : lead vocals, guitar
Bob Berry : drums, keyboards, guitars
Gene Perrault : bass guitar
Kathy Berry : backing vocals
Ellen Burton : vocals om ‘Pick Me Up Tonite’

Arkey Enterprises AR-1066

Willy Claflin

2010-04-04 | SSW
■Willy Claflin / Bones Of Love■

  前回に続いて Willy Claflin を取り上げます。 今日取り出したのは、1987 年に発表したセカンド・アルバム。 ファーストは CD 化されましたが、こちらは現時点では CD にはなっていません。 レーベルも同じ Old Coyote なのにこちらが CD 化されなかったのは謎ですが...
  全編がギターの弾き語りだった「Stones Along The Shore」に比べると、この「Bones Of Love」はピアノとシンセが使われたり、リズムセクションの出番も増えるなど、前作よりも幅が広がったという印象です。 リラックスした曲調がさらに深まり、くつろげる大人の SSW といった内容に仕上がっています。  すでに CD も登場している時代ということもあって、レコーディングもデジタルで行われていました。
 
  このアルバムで最も素晴らしいのは、ピアノをバックにしたシンプルな「The King Is Dead」です。 よく例えに出しますが Ian Tamblyn に通じるサウンドはスケールが壮大で見事な仕上がりです。 盛り上がるサビの部分でうっすらと拍手の S Eが挿入されるあたりの演出も憎いところ。 この曲がオープニングに収録されていることから、前作との変化は一目瞭然です。 つづく「Don’t Sit In That Chair」は、この曲にのみ参加した Mardell Mardeaux によるバイオリン・ソロが聴きどころ。 イントロの静かな音色から、ラストの高揚感あふれるソロに至るまで、その存在感が光ります。  Dan Fogelberg のような優しさに包まれた「Hushabye」、ほのぼのしたカントリー「One Went To California」と A 面は佳曲がつづきます。 「Out Of The Darkness」は、バンド編成で疾走感あふれる作風ですが、もうすこし和みの流れを維持してほしかったところです。

  B 面は素朴な弾き語りの「Sleepy John」ではじまり、アルバムタイトルの「Bones Of Love」へ。 この曲は地味ながらも味わい深いバラード。 胸に染み入るような切ないボーカルが印象に残る名曲です。 ハワイアンの雰囲気がまるでしない「Down On Old Waikiki」はカントリー風ワルツから、「Non Duality」、「Hey Ok」とペダル・スティールやバンジョーが全面に出たカントリーが続き、緩さが増していきます。 このあたりでピリ辛な名曲を配置していないために、アルバムの後味があいまいになってくるのは残念なところです。 もしかして、このアルバムが CD 化されていない理由は、本人が気に入っていないという可能性もあるのではないかと勘ぐってしまいます。  まさか、それはないと思いますが、もう少しバラードやミディアムな楽曲の比率を高めていれば、高い評価を受ける作品になっていたとは思います。 A 面の調子のままで、B 面も続けていれば、違った味わいになったかもしれません。

  早いものでもう新しい年度が始まり、このブログもついに 5 年目に突入していました。 更新ペースは落ちていますが、できるだけ長く続けていきたいと思っています。

■Willy Claflin / Bones Of Love■

Side 1
The King Is Dead
Don’t Sit In That Chair
Hushabye
One Went To California
Out Of The Darkness

Side 2
Sleepy John
Bones Of Love
Down On Old Waikiki
Non Duality
Hey Ok

Produced by Tom Carr and Willy Claflin
All songs by Willy Claflin except ‘Out Of The Darkness’ by Willy Claflin and Tom Carr
Recorded and mixed by Tom Carr at Banquet Studios, Santa Rosa CA, May – July 1987

Willy Claflin : acoustic guitar and vocals
Tom Carr : bass, additional vocals
Brian Claflin : backup vocals
Bruce Kaphan : pedal steel and lead guitars
Tom Lweis : drums
Greg Pordon : piano and synthesizer
Mardell Mardeaux : violin on ‘Don’t Sit In that Chair’

Old Coyote records OCR 9681