■Rick Lane / Then Came A Wind■
前回に続いて詳細が不明な SSW を取り上げます。 アルバム発表当時はミネソタ州 Wayzara に住んでいた Rick Lane の唯一と思われるアルバムです。 レコーディングはメイン州で行われ、レーベル名も存在しないという自主制作盤です。 レーベル名が存在しないというのは自主制作盤のなかでも珍しいことですが、なぜか品番らしき 10 桁の数字だけが不思議に堂々とクレジットされています。 アルバムの発表年のクレジットが無いので、この数字に何かヒントや暗号が隠されているか思いましたが、とくに何もなさそうです。
買った当初は 1970 年代のかなり前半のものだと推測したこのアルバムですが、ある 1 曲の存在で 1976 年以降の作品だということが判明しました。 それは、Paul McCartney の「Silly Love Songs」(邦題は「心のラブソング」)のカバーが収録されているからです。 この曲は 1976 年の 4 月にシングルカットされていますので、Rick Lane が耳にしてカバーしたのは、それ以降ということになります。 ミネソタの自主制作盤にしては、意外にもメジャーなヒット曲のカバーですが、仕上がりはとても素晴らしいもので、Paul McCartney のコアファンの蒐集アイテムになってもおかしくありません。
このアルバムは Rick Lane のアコースティック・ギター&ボーカルと、Doug Russell のベースによって構成されており、Rick Lane の瑞々しく心洗われるような美しいボーカルが全編にわたって堪能できる作品です。 多くの SSW ファンが理想的なサウンドと考えている領域の中に確実にタッチしており、躊躇せずに名盤と呼ぶことができます。
クレジットによると Rick Lane は結婚してからメキシコに移住していたのですが、不幸なことに癌に冒されたことを契機に、ミネソタに戻ってきたようです。 その闘病生活のなかで制作されたのがこのアルバム。 そうした背景を想像しながら聴くと、Rick Lane の震える声からは生への欲望、未来への希望、そして神への祈りといったものを感じ取ることができます。 そうした歌詞からはクリスチャン・ミュージック的な要素も強く感じ取れますが、ここにはあくまでも自然体な Rick Lane の姿が投影されており、それがメイン州の冷えた空気感とともに封じ込めらているのです。
オープニングの「Then Came A Wind」は重苦しい楽曲なので、アルバムの今後の展開を考えると、息がつまりそうになります。 しかし、Lee Sklar を思わせる Doug Russell のベースがリズムを刻む「Twenty-third Paslm」や「Blessed」から、落ち着きを見せてきます。 そして「Silly Love Song」では、オリジナルに登場するメロディーはすべて網羅するなど、多重録音やコーラスのないカバーとしては申し分ない仕上がりです。 自然への畏敬を感じさせる「Tree Song」や「Flyin’ Like A Eagle」とアルバムは充実した流れで A 面を終えます。
B 面はやや軽くなった感じがするのですが、それは 1曲 1曲が短いからかもしれません。 アルペジオの音色が清々しい「Lost Horizon」、激しい曲調が生へのパワーを感じさせる「You’ve Heard My Voice」、Doug Russell のベースが歌うような「The Lord’s Prayer」、トラディショナルのような「Weave Me The Sunshine」とスムースに進んでいきます。 ラストの「Thank You For The Day」は今日一日、無事に過ごせたことへの感謝の気持ちを表した曲。 病気からの回復を期しているRick Lane の気持ちが痛いほど伝わってきます。 ♪Thank You For The Day♪ を執拗に繰り返すさまは、彼の偽らざる心境なのでしょう。
秋の夜長に SSW は良く似合いますが、季節的にもぴったりなこのアルバム。 日が短くなった淋しさを感じる夜、人の心にそっとしのびこみ、魂を震わせる力を持っています。
■Rick Lane / Then Came A Wind■
Side-1
Then Came A Wind
Twenty-third Psalm
Blessed
Silly Love Songs
Tree Song
Flyin’ Like A Eagle
Side-2
Lost Horizon
You’ve Heard My Voice
The Lord’s Prayer
Weave Me The Sunshine
Thank You For The Day
Thank you Doug Russel gor the fine bass.
Thank you Syu Davis for producing and engineering
Recorded and mastered at Eight Track Recording Studio, South Blue Hill, Maine
No Label 911068-1877
前回に続いて詳細が不明な SSW を取り上げます。 アルバム発表当時はミネソタ州 Wayzara に住んでいた Rick Lane の唯一と思われるアルバムです。 レコーディングはメイン州で行われ、レーベル名も存在しないという自主制作盤です。 レーベル名が存在しないというのは自主制作盤のなかでも珍しいことですが、なぜか品番らしき 10 桁の数字だけが不思議に堂々とクレジットされています。 アルバムの発表年のクレジットが無いので、この数字に何かヒントや暗号が隠されているか思いましたが、とくに何もなさそうです。
買った当初は 1970 年代のかなり前半のものだと推測したこのアルバムですが、ある 1 曲の存在で 1976 年以降の作品だということが判明しました。 それは、Paul McCartney の「Silly Love Songs」(邦題は「心のラブソング」)のカバーが収録されているからです。 この曲は 1976 年の 4 月にシングルカットされていますので、Rick Lane が耳にしてカバーしたのは、それ以降ということになります。 ミネソタの自主制作盤にしては、意外にもメジャーなヒット曲のカバーですが、仕上がりはとても素晴らしいもので、Paul McCartney のコアファンの蒐集アイテムになってもおかしくありません。
このアルバムは Rick Lane のアコースティック・ギター&ボーカルと、Doug Russell のベースによって構成されており、Rick Lane の瑞々しく心洗われるような美しいボーカルが全編にわたって堪能できる作品です。 多くの SSW ファンが理想的なサウンドと考えている領域の中に確実にタッチしており、躊躇せずに名盤と呼ぶことができます。
クレジットによると Rick Lane は結婚してからメキシコに移住していたのですが、不幸なことに癌に冒されたことを契機に、ミネソタに戻ってきたようです。 その闘病生活のなかで制作されたのがこのアルバム。 そうした背景を想像しながら聴くと、Rick Lane の震える声からは生への欲望、未来への希望、そして神への祈りといったものを感じ取ることができます。 そうした歌詞からはクリスチャン・ミュージック的な要素も強く感じ取れますが、ここにはあくまでも自然体な Rick Lane の姿が投影されており、それがメイン州の冷えた空気感とともに封じ込めらているのです。
オープニングの「Then Came A Wind」は重苦しい楽曲なので、アルバムの今後の展開を考えると、息がつまりそうになります。 しかし、Lee Sklar を思わせる Doug Russell のベースがリズムを刻む「Twenty-third Paslm」や「Blessed」から、落ち着きを見せてきます。 そして「Silly Love Song」では、オリジナルに登場するメロディーはすべて網羅するなど、多重録音やコーラスのないカバーとしては申し分ない仕上がりです。 自然への畏敬を感じさせる「Tree Song」や「Flyin’ Like A Eagle」とアルバムは充実した流れで A 面を終えます。
B 面はやや軽くなった感じがするのですが、それは 1曲 1曲が短いからかもしれません。 アルペジオの音色が清々しい「Lost Horizon」、激しい曲調が生へのパワーを感じさせる「You’ve Heard My Voice」、Doug Russell のベースが歌うような「The Lord’s Prayer」、トラディショナルのような「Weave Me The Sunshine」とスムースに進んでいきます。 ラストの「Thank You For The Day」は今日一日、無事に過ごせたことへの感謝の気持ちを表した曲。 病気からの回復を期しているRick Lane の気持ちが痛いほど伝わってきます。 ♪Thank You For The Day♪ を執拗に繰り返すさまは、彼の偽らざる心境なのでしょう。
秋の夜長に SSW は良く似合いますが、季節的にもぴったりなこのアルバム。 日が短くなった淋しさを感じる夜、人の心にそっとしのびこみ、魂を震わせる力を持っています。
■Rick Lane / Then Came A Wind■
Side-1
Then Came A Wind
Twenty-third Psalm
Blessed
Silly Love Songs
Tree Song
Flyin’ Like A Eagle
Side-2
Lost Horizon
You’ve Heard My Voice
The Lord’s Prayer
Weave Me The Sunshine
Thank You For The Day
Thank you Doug Russel gor the fine bass.
Thank you Syu Davis for producing and engineering
Recorded and mastered at Eight Track Recording Studio, South Blue Hill, Maine
No Label 911068-1877
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