Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Richard and Miche

2009-09-28 | SSW
■Richard And Miche / Take A Chance■

  初秋のおだやかな風が吹く昼下がりにお似合いの音楽を奏でるのは、Richard Colombo と Miche Evans が結成した Richard And Miche のアルバム。 1983 年に発表された彼らの唯一の作品です。 ジャケット写真のように息の合ったボーカル&ハーモニーと、アコースティックで洗練されたアレンジで綴られたこのアルバムは、自主制作とは思えないほどの充実した内容となっています。 作曲も全てふたりで手がけ、バック・ミュージシャンもゲストを除いては不動のメンバーで固めたこのアルバムについて、さっそくコメントしてみましょう。

  アルバムは陽だまりのようなゆとりを感じる「Better All The Time」で幕開け。 デビュー作とはいえ、二人のキャリアが長いことがこの曲だけで窺い知れます。 つづく「Woman Of Rainbows」はアルバム最大のサプライズ。 聞き覚えのあるイントロの感じ、スネアの音色、そして骨太なリズムセクションとリリカルなピアノに耳が釘付けになるのです。  1970 年後半のヒット曲に精通している人であればすぐにその曲が Al Stewart の「Year Of The Cat」に酷似していることが判るでしょう。 Richard And Miche が「Year Of The Cat」を意識していないはずは無いと断言できるのですが、メロディーラインの模倣はありません。 そのあたりはさすがと言うべきなのか迷うところですが、曲の出来は悪くありません。 ジャジーで大人びたナンバー「Just Getting’ By」、Doug Harman のチェロが重々しく響く物悲しげなバラード「Memories Of You」と続きますが。 後者では Richard の娘(あるいは妹?)と思われる Joleen Colombo の透明感のあるハーモニーが効果的です。  The Beatles の同名ナンバーではない「Don’t Pass Me By」は標準的なフォークロック。 A 面ラストの「In Silence Of Snow」はタイトルどおり冬を連想させる曲。 シチューの CM 曲のような仕上がりです。

  B 面はアルバムタイトルの「Take A Chance」から。 アルバム中で最もアップテンポな曲ですが、Richard And Miche のボーカルの絡み方が、The Fifth Dimension を彷彿とさせます。 つづく「Shadows Of Gray」は牧歌的な味わいの名曲。 どことなく英国的な気品も漂わせており、カリフォルニア州から届けられたこと作品であることをすっかり忘れてしまいます。 憂いのあるミディアム「I Won’t Ever Let You Go」は Miche Evans のボーカルの力量が遺憾なく発揮された曲。 「Moment In Time (Song For Joleen)」、「A World From Which To Run」はともにミドルテンポで重厚なナンバー。 アルバムのなかでは地味な部類に入りますが、懐の深いアレンジは何度も聞き込んで味わいが出てくる類のものでしょう。

  こうして聴いてみると、そのクオリティに驚かされるのですが、残念なことに Richard And Miche のアルバムはおそらくはこの 1 枚だけのようです。 クルマのなかで見つめあい微笑む二人はこのアルバムをリリースしてからどのような人生を歩んだのでしょうか。 その足跡はまったく掴めませんでしたが、少なくともこのアルバムで Take A Chance することは無かったようです。

■Richard And Miche / Take A Chance■

Side 1
Better All The Time
Woman Of Rainbows
Just Getting’ By
Memories Of You
Don’t Pass Me By
In Silence Of Snow

Side 2
Take A Chance
Shadows Of Gray
I Won’t Ever Let You Go
Moment In Time (Song For Joleen)
A World From Which To Run

Produced by Richard Colombo and Miche Evans
All composition by Richard and Miche
Recorded and mixed at Harbour Sound, Sausalito, Valifornia

Miche Evans : lead vocals, acoustic guitar, vocal harmonies
Richard Colombo : lead vocals, acoustic guitar, vocal harmonies
Keith Allen : acoustic guitar, electric guitar
Scoop McGuire : bass
Tommy Kesecker : bongos, vibes, drums, tambourine, sandblocks, claves
Chris James : piano, synthesizer
Ian Tangen : acoustic guitar
Doug Harman : cello
Jim Rothermel :flute, tenor saxophone, harmonica
Joleen Colombo : vocal harmonies
Jeff Wyman : vocal harmonies
Cindy Frey : vocal harmonies

Daphne Records DA001

Beth Scalet

2009-09-23 | SSW
■Beth Scalet / It’s A Living…■

  時にはリリカルに、時にはブルージーに…と表現される女性シンガーソングライター、Beth Scalet が 1981 年に発表したデビューアルバム。 公式サイトによると、彼女はこの「It’s A Living…」を含めて計 6 枚のオリジナル・アルバムをリリースしています。 20 数年で 6 枚とは寡作なミュージシャンですが、そのなかには、「Beth Loves Bob」という Bob Dylan のカバー集もあったりするので、自作自演のアルバムはかなり貴重なものかもしれません。
  Beth Scalet の活動拠点はミズーリ州カンザス・シティ。 デビュー以来、この地を離れずに地道な音楽活動を続けているようです。 このデビュー作は 1 曲を除いて全曲が彼女のオリジナル。 それまで書きためてきた楽曲から選ばれたものだけに、クオリティの高い曲が並んでいます。 「Another Love Song」はややかすれたBeth Scaletのボーカルが力強いフォークロック。 透明感がありながら、ハスキーさを感じる彼女の独特のボーカルは、つづく「Does It Always Come Down」のようなバラードでも存在感あふれるもの。 ハイな気分のアップ・ナンバー「Lose Your Money」は正直、彼女のボーカルには似合わず残念ですが、「In The Daylight」では哀愁あふれるバラードに戻り、安心させられます。 この曲は素朴なメロディーが繰り返されるだけなのですが、そこにエモーショナルな歌唱が加わり、何ともいえない深みを感じさせる名演です。 つづく「(Have You Seen) Phillipa」も流れを汲んだバラード。 秋の夜長にフィットした優雅な時間が過ぎてゆきます。

  B 面に入りましょう。 「Dance To You Blues」はシングルカットするならばこの曲という親しみやすい曲。 そのカップリングにはさらにキャッチーな「Get Me Out Of Love」がお似合いですが、おそらくシングル盤は存在しないでしょう。 海の見える土地への憧れはないのかと疑問に思う「(Don’t Want To Live In) California」は、彼女の真骨頂ともいえるミディアム・バラード。 ライブでもないのに、アルバムの終盤に近づくに連れてハスキー度が増すように感じるのは不思議です。 きっと彼女の声に慣れてきて、自然と好みの成分を聞き分けるようになるからなのでしょう。 「Missing You」はジャジーなテイストが強く、Norah Jones の「Don’t Know Why」を聴いてるような錯覚に陥ります。 ラストは唯一の非オリジナル。 その曲はProcol Harumの「蒼い影」でした。 現代はもちろん「A Whiter Shade Of Pale」ですが、ここで聴けるアレンジは有名なオルガンのメロディーがイントロでは封印され、間奏部だけとなっています。 しかもアコースティック・ギターの音色が主体となっていて、かなり落ち着いた出来となっています。ここにも彼女の持つジャジーな側面が存分に表れており、けして歌い上げないボーカルにも好感が持てます。 ただ、惜しいのは中途半端なフェードアウトです。 これはアルバムのラストなだけに丁寧に作って欲しかったところでしょう。

  こうして Beth Scalet のアルバムをおさらいしてみましたが、ジャケットで余裕の笑顔を浮かべる女性の写真を見れば、ある程度予想できる範囲のボーカルとサウンドだということに気付きました。 レーベル名も「わかるさレコード(Wakarusa Records)」という名前ですので、もっと早く気付けよ、ということでしょうか。 オチになっていませんね。

■Beth Scalet / It’s A Living…■

Side 1
Another Love Song
Does It Always Come Down
Lose Your Money
In The Daylight
(Have You Seen) Phillipa

Side 2
Dance To You Blues
Get Me Out Of Love
(Don’t Want To Live In) California
Missing You
A Whiter Shade Of Pale

Produced by Beth Scalet
Assisted by Chris Bauer and Caren Prideaux
Words and music by Beth Scalet except ‘A Whiter Shade Of Pale’ by Keith Reid and Gary Brooker

Beth Scalet : lead vocals, acoustic guitars, harmonica
Kathy Buehler : harmony vocals
Stuart Doores : drums
Jim Paschetto : electric guitars, banjo, bass
Randy Pratt : organ
Caren Prideaux : synthesizer, harmony vocals
Pete Wyman : bass

Special thanks to Carol Comer

Wakarusa Records WR5181

Redeker

2009-09-20 | SSW
■Redeker / Hide And Seek■

  ワシントン州シアトル周辺を活動エリアとしていた兄妹グループ Redeker が 1982 年に発表したアルバム。 クレジットによるとこのアルバムをリリースする 10 年前から計 4 枚の自主制作アルバムを発表しているとのことで、彼らのキャリアは予想以上に長いようです。 その実績はたしかにサウンドにも表れており、歌心あふれたポップ・ソングの数々からは余裕すら伝わってきます。 それは、地道なライブ活動の積み重ねから来たものなのでしょう。
  しかし、このアルバムのジャケットはいただけません。 デザインが悪いのではなく問題は手抜き仕様にあります。 このレコードを包み込むものは 30cm×60cm の薄紙を二つ折りしたもの。  レコード盤をプレイヤーに乗せていると、単なるブックレットなのです。 ですから、このレコードは棚に入れたとたんに存在が判らなくなってしまうのです。 折り目がレコードの下側にあるために、12 インチシングルよりも性質が悪いのが残念です。

  そのようなチープな装いからは、クリスチャン系フォークを想像してしまいましたが、サウンドは先ほども述べたとおりバラエティあふれる良質なポップ集となっていました。 すべての楽曲を Redeker 兄妹が担い、リードボーカルは曲によって使い分けているのですが、どちらかというと妹の Renne Redeker がリードを務める曲のほうがしっとりとして自分の好みにあっています。   アルバムのなかから特に優れた曲をいくつかピックアップしてみましょう。
  二人の息のあったハーモニーとライトなアレンジセンスが光る「Be Someone」、ピアノを中心に添えたバラード「Hand To Lend Me」、秋の夕暮れのようにセンチメンタルな「Wise Love」でしょう。 とくに「Hand To Lend Me」では、Renee の歌唱力が遺憾なく発揮されており、アルバムのベスト・トラックでしょう。
  カーラ・ボノフの曲かと間違えそうな「Free Ride」、ブリルビルディング・ポップスのようなメロディーが光る「Night And Day」はスタンダードにも成り得る名曲。 「Love Will Come Shining」と「Love Keeps Coming」は同じテーマの曲。 メロウな前者はまたもやウッドストックの歌姫ニコル・ウィリスをほうふつとさせ、素朴なフォーキーの後者ではふたりの息のあったボーカルと繊細なギターサウンドが堪能できます。 こうしてアルバムを二度聴きとおしましたが、同年代のメジャー作品に比べて遜色のないサウンドにはあらためて驚かされます。 もしこの作品がこのクオリティのまま1978年頃にリリースされていれば、もう少し違った展開になっていた可能性もあるのではないかと思います。 例えば、Brownsmith のアルバムが自主制作でヒットし、それに着目したキャピトル・レコードが再発した例があるように、そうした広がりも期待できたかもしれないのです。
 
   このレコードは 1982 年の発売ですので、同時代の AOR や産業ロックからすると時代遅れの感は否めません。 だからこそ、彼らはマイペースで自主制作の道を選んだのでしょうか。 Redeker は 1985 年にも同じレーベル Angular からアルバムを発表しているようですので、その姿勢は一貫して不変なのかもしれません。 彼らは、音楽の本当の価値はその売上枚数と別のところにあること知っているのでしょう。

■Redeker / Hide And Seek■

Side 1
Tonight’s The Night
Be Someone
Hand To Lend Me
Give Me A Call
Walk Right In
Wise Love

Side 2
Free Ride
Hide And Seek
Night And Day
I See What You’re Doing
Love Will Come Shining
Love Keeps Coming

Produced by Paul Speer
Executive Producer : William angle
All songs composed by Daryl and Renee Redeker

Daryl Redeker : vocals, electric and acoustic guitar
Renee Redeker : vocals, acoustic guitar

Neal Spear : drums
Paul Speer : bass guitar, electric guitar
Gary Shelton : bass guitar
David Lanz : piano, prophet 5
Steve Reid : percussion
Jon Goforth : alto and tenor saxophone
Ray Bonneville : harmonica

Angular Productions ANGL-2001

Sandy Darlington

2009-09-13 | SSW
■Sandy Darlington / Natural Grit■

  正体不明の Sandy Darlington が 1976 年から 1979 年にかけて作りためた曲を、1979 年に一気に吐き出したのがこのアルバムです。 ひと言でいうと、1970 年代初頭のヒッピー感覚を受けつぎながら、気心の知れた仲間とホームメイドで作り上げた作品と言えるでしょう。 カリフォルニアからは、Jon TabakinJoseph NicolettiMichael Gillotti など捉えどころが難しいシンガーソングライターが突然出現しますが、Sandy Darlington もその一人です。 ネットで調べてもこのアルバムについて述べられているサイトを見つけることは出来ませんでした。

  このアルバムに収録されているサウンドは、アコースティックでシンプルなもの。 このブログで取り上げた作品のなかでは、Sparky Grisntead に最も近い雰囲気です。 ほぼ全曲に透明感のある女性コーラスが挿入されており、その爽やかさもアルバムの特徴です。 ただ、やや粘っこい Sandy Darlington のボーカルが爽快感を減少させており、そこが好き嫌いの分かれるポイントかもしれません。

  アルバムは群を抜いた名曲「Juicy」からスタート。 有名ミュージシャンによるデモ・録音みたいな仕上がりですが、この曲の陽気で能天気さには一気に引き込まれてしまいます。 つづく「Why Do Boys Have To Be Noisy?」はチェロが効果的に使用され、ややサイケな雰囲気も漂わせます。 「You Lost Your Touch With Me」はウェストコースト風味のコーラスが印象的。 フォークロック調の「Crazy Money」、メロウなミディアム「River Of Dreams」とアルバムは進行し、ラテンのリズム感とトーキングヘッズのような違和感がブレンドした「Spots In The Sky」で A 面は終了。

  B 面に移ると、陽気なロックンロール「Where Did You Get Your Dirty Mind?」、The Feelies のファーストに入っていそうな「We Come From Outer Space」、「ラストダンスを私に」のコード進行に酷似した「Turn Your Love My Way」と淡々とレコードは進んでいきます。 つづく「Sweet Darkness」は 1976 年に作られたバラード。 ピアノとギター、そしてコーラスだけの素朴な編成で一発録りされたと思われるこの曲はアルバムのなかでも重要なアクセントとなっています。 虚弱なパンク・ナンバーのような「Wind Me Up」は、カリフォルニアの SSW サウンドとは思えません。 ラストはさすがに考えて選曲されたようで「Baby She’s This And That」はかすかなメロウ&グルーヴ感が心地よく、アルバムを聴きえる名残惜しさすら感じさせるセンチメンタルさも兼ね備えた名曲となっています。 極端に言えば、「Juicy」と「Baby She’s This And That」の2曲だけでアルバムを語ってしまってもいいように思いました。

  Gato Naranjo (ガトーナランホウ、と読むそうです)という彼のプライベートレーベルから産み落とされたマイナープレスですが、人懐っこいたたずまいと幅広い音楽性が伝わってくる佳作と言えるでしょう。 このまま忘却されるのは惜しいアルバムです。

■Sandy Darlington / Natural Grit■

Side 1
Juicy
Why Do Boys Have To Be Noisy?
You Lost Your Touch With Me
Crazy Money
River Of Dreams
Spots In The Sky

Side 2
Where Did You Get Your Dirty Mind?
We Come From Outer Space
Turn Your Love My Way
Sweet Darkness
Wind Me Up
Baby She’s This And That

Recorded at Bay Records, Alameda Ca. and Tewksbury, Richmond, Ca
Engineered by Michael Cogan
Produced by Sandy Darlington

Sandy Darlington : vocals, guitar, backup vocals

Backed by Natural Grit
Rick Purcell : bass
Robin Chotzinoff : piano and backup vocal on ‘Sweet Darkness’
Patrick Riley : backup vocals and most vocal arrangements
Steve Hayton : lead guitar on most songs
Vic Trigger : lead guitar on ‘Juicy’
Chrstopher Sisson : lead and rhythm guitar on ‘River Of Dreams’
Rick Thomas : rhythm guitar
Jack Bei : drums
Sandy Spencer : cell and backup vocals
Norma Hibtsch : backup vocals

Gato Naranjo Records GT 404

Dennis Michael O’Rourke

2009-09-01 | SSW
■Dennis Michael O’Rourke / Broken Crystal■

  喧嘩を売られているような酷いジャケットで現れたのは無名のシンガーソングライター Dennis Michael O’Rourke です。 この態度は何かの洒落だったのでしょう、裏面にはメンバーとにこやかに談笑する姿が収められています。
  Dennis Michael O’Rourke の唯一と思われるこの作品は 1981 年にマサチューセッツでレコーディングされたローカル・アルバム。 このジャケットでは買う気もうせてしまいますが、内容はカントリーロックを基調としながらも、切ないバラードや深みのあるミディアムも随所に散りばめられており、それらの楽曲が捨てがたい魅力を醸し出しています。 

  アルバムは典型的なカントリーロックの「On A Hot Summer Afternoon」でスタート。 バックミュージシャンの骨太で堅実なところは、Fairport Convention 周辺のリズムセクションに通じるものを感じます。 つづく「She's A Teaser」は早くもスロウなバラード。 ハーモニカと女性コーラスが、女性に翻弄される男の寂しい心情を描き出しています。 「Flowers Fools And Dreams」、「Rosie」と王道のカントリーロックが並びますが、コテコテの濃度ではないので、心地よく聴きながすことができます。 A 面ラストの「Eight Days Gone」は Tom Whiteside と二人で弾き語るバラード。 かなりビターな仕上がりですが、出来は悪くありません。

  B 面はより SSW テイストが強まります。 1 曲目の「High School Heartbreaker」は典型的なカントリーロックですが、つづく 4 曲は素晴らしい流れとなっています。 アルバムタイトルともなっているバラード「Broken Crystal」はうっすらと流れる美しいストリングスが見事で、繊細なバラードを見事に彩っています。 つづく「Fall Song」は爽快で雄大な景色を思い起こさせるミディアム。 「One Small Story」と「Ardee」はともにプライベート感あふれるこじんまりした味わいのフォーキー。 ニューイングランド周辺の良質な SSW 作品に通じるサウンドがここにはあります。
  ラストの「Love Will Do The Rest」は想像していたとおりの楽曲で、愉快な仲間たちと打ち上げをしているような気分の二拍子。 クラリネットなどの管楽器と次第に数を増していくコーラスが気持ちを昂ぶらせます。 比較的ありがちな演出ではありますが、これが過剰にならないところにセンスを感じますし、フェードアウトのなかでベースだけ残すところにも豊富なアイディアを感じさせます。

  このアルバム、実は買ってからすぐに聴かずにしばらく放置してしまっていたのですが、こうしてきちんと聴きなおしてみると、その充実した内容に改めて感心しました。 ほぼ自主制作に近い作品だと思いますが、これだけ数多くのミュージシャンが参加しているのも注目です。 このなかではっきりと記憶している名前は一つもないのですが、堅実でステディーな演奏もこのアルバムの魅力を支えており、マサチューセッツのミュージシャンの懐の深さを強く感じます。 ジャケットがこんな写真でなかったら、もっと注目され高い評価を受けていたかもしれません。 そう思うと残念ですが、このジャケットも Dennis Michael O’Rourke 本人の意志ですから仕方ないのでしょう。 運命は受け入れるしかないのです。

■Dennis Michael O’Rourke / Broken Crystal■

Side 1
On A Hot Summer Afternoon
She's A Teaser
Flowers Fools And Dreams
Rosie
Eight Days Gone

Side 2
High School Heartbreaker
Broken Crystal
Fall Song
One Small Story
Ardee
Love Will Do The Rest

Produced by Tom Phillips
Engineered by Larry Minnis
Recorded at Ivy Lane Studios, Hopkinton, Mass.

Dennis Michael O’Rourke : acoustic guitar, vocals
Tom O'Carroll : banjo
Scott Robinson : harmonica
Leo Egan : pedal steel
Larry Minnis : electric guitar
Buddy MacLellan : drums
Dean Groves : bass
Robbie O'Connell : mandolin
Pam Nickerson : backing vocals
Toni Ballard : backing vocals
Judy Glatky : backing vocals
Tom Phillips : keyboards, harmony vocals
Randy Sabien : fiddle, violin
Susan Gottschalk : fiddles, violin
Bob Stoloff : drums
Tim Wells : bass
Tom Whiteside : lead acoustic guitar
Jim Anderson : electric and acoustic guitar
Barbara Engleberg : violin
James Phineas Martin : hammer dulcimer
Peter Murray : clarinet, soprano sax
Rock Ciccarni : trombone
Peter Golden : backing vocals
Lisa Taylor : backing vocals
Orie Fontaine : backing vocals
Dennis McKinley : backing vocals
Roxanne O'Connell : backing vocals
Seamus Kennedy : backing vocals
Bob O'Keefe : backing vocals

Rhodes Records SR33