Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Barbara Meislin

2006-03-31 | Folk
■Barbara Meislin / Carvings In The Canyon■

 赤紫に染まったアメリカ中西部らしき風景、このタイトル。 まさに1970年代初頭のフォークミュージックとしか思えないのですが、このアルバムが発表されたのは1982年、しかもニューヨークから。 この意外なところがこのアルバムを広く知らしめない要因のひとつなのでしょうか?
 これは Barbara Meislin のファーストにして、おそらく唯一のアルバムなのですが、その内容から、Female Vocals ではなく、Folk にカテゴライズしました。 というのも、彼女の声質と発声が、いかにも古典的なフォークという感じで、背筋を伸ばして歌う姿が目に映るかのようなのです。 若かりし頃の森山良子や僕の好きなカナダ人女性 SSW のAnn Mortifee に似ている声ですね。
 さて、僕にとってこのアルバムは極端に言えば、ラストの「It’s In Everyone Of Us」だけで十分です。 この曲は David Pomeranz の3枚目のアルバムタイトルにもなっている曲、当然アルバムに収録されている名曲です。 David のバージョンは雄大で歌い上げる感じで、いかにも1976年の Arista Records が好きそうなアレンジでしたが、Barbara のバージョンは、ちょっとテンポアップして、3拍子であることを強調したアレンジになっています。 しかし、それはそれでアルバムラストを飾るに相応しい、いいカバーに仕上がっていると思います。
 その他の、主だった曲に触れてみたいと思います。 1曲目の「Brave Heart」でこの人の個性やアルバム全体の雰囲気は掌握できます。 ただ、この曲に限っては、ARPシンセサイザーの音がちょっと邪魔な感じです。 「The Portrait」は歌詞の内容も悲壮感あふれるバラード、「Song Of The Soul」は軽やかなワルツですが、やや冗長です。 B面に移って、タイトル曲の「Carvings In The Canyon」は風のSEから始まり Fender Rhodes の音と控えめな演奏でボーカルを引き立てる佳作。 「The Rose」はどこかで聴いたことのある曲かと思って調べてみたら、Bette Midler が 1979年に放ったヒット曲だったのです。 この曲を書いたことで作者の Amanda McBroom は一躍脚光を浴びたようですね。
 クレジットを見ると、 Co-Producer でもある Michael Lobel とGary Pozner の二人がほとんどの楽器をこなしていることが分かります。 ここまで詳細に書いて自慢しなくてもいいのにと思うほどの楽器の羅列です。 この二人がアルバム制作にあたってのキーパーソンだとは思うのですが、プロフィールや他の参加作品などまったくの不明。 コーラスで参加している Tom Intondi は自身でもソロアルバムを発表しているSSW です。
 さて、最後にBarbara Meislin の近況ですが、検索したところ、拠点をカリフォルニアに移し、Purple Lady Productions という自身の出版社から、2005年に素敵なタイトルのCD 付き絵本「No One Can Ever Steal Your Rainbow」を発表しています。 ちなみに、絵を描いているのは別の人で、Barbara はストーリーの方を書いています。 日本語訳が出版される可能性はほぼ無いんでしょうね。

■Barbara Meislin / Carvings In The Canyon■

Side-1
Brave Heart # (Amanda McBroom)
Snowflake (Barbara Meislin and Nathan Segal)
The Portrait # (Amanda McBroom)
Marigolds (Barbara Meislin and Nathan Segal)
Song Of The Soul * (Chris Williamson)

Side-2
Carvings In The Canyon # (Barbara Meislin and Amanda McBroom )
Where Do Butterflies Go In The Rain (Barbara Meislin)
Eli Eli (David Zahavi)
The Rose (Amanda McBroom)
It’s In Everyone Of Us * (David Pomeranz)

Michael Lobel:
Frenchi Horn , flute , celeste , violin , cello , double bass , guitar , vibes , ARP synthesizer , tabla , dulcimer , trumpet , recorder , harmonica
Gary Pozner :
Drum kit , percussion set , Steinway piano , Fender Rhodes , harpsichord , bass , vibes , recorder , guitar , violin , viola , cello , double bass , wind chimes , ARP synthesizer
Ariel Powers : electric bass on # , background vocals on * , glockenspiel on ‘Carving In The Canyon’
Mike Dunn : electric bass on ‘Marigolds’ and ‘ Snowflake’
Alan Fishel : drums on ‘Brave Heart’ and ‘The Portrait’
Martha A. Hogan : background vocals on *
Tom Intondi : background vocals on *

Recorded July 1982 at Lobel Productions, West New York , N.J.
Co-produced , arranged and engineered by Michael Lobel and Gary Pozner
Executive Producer : Bernard Brightman
A&R : Natasha Brightman
Cover Design : Lynn Tesser
Liner Design : Madeline Sloan
Photo ; Bob Shamis

Stash Records   ST302

Matthew Young

2006-03-28 | SSW
■Matthew Young / Traveler’s Advisory■

 今日、取り上げるアルバムは、かなり異色というか特異なアルバムです。 カテゴリーは SSW にしていますが、全11曲中、ボーカルが入っているのはたった3曲で、他はインストです。 ジャケットや雰囲気からふつうの SSW アルバムかと思ってしまいますが、それが落とし穴なのです。 1986 年にニュージャージーの自主制作レーベル Mt.Rose Records からリリースされた Matthew Young のセカンド・アルバムは、アメリカの音楽シーンでもかなり異端な内容から、ごく一部のマニアからは注目されているようです。
 このアルバムを語るためのキーワードは「ハンマー・ダルシマー」、「宅録」の二つでしょう。 まずは、前者のほうから。 このアルバムの主役となる楽器「ハンマー・ダルシマー」は、台形の箱に張られた弦を2本のばちで叩き演奏する打弦楽器で、ピアノの原形と言われている楽器。 この楽器の音色がこのアルバム全体を包みこむ重要なファクターになっています。 ところが、この中世に起源をもつ古典楽器だけならば、特別なアルバムにはならないのですが、ここに Matthew Young が自宅で多重録音して重ねたパーカッションやカシオトーン(クレジット表記では単に CASIO となっています)、ボーカルなどが重なってくると、経験したことのない音楽世界が広がってくるのです。 なぜ、このようなアルバムを制作しようとしたのか本人の意図を訊きたくなってしまいます。 
 「Objects In Mirror」は、打ち込みのリズムの上にダルシマーの音色が重なり、そこに淡々としたボーカルが重なるちょっとニューウェーブ的なサウンド、続く「Kyrie Eleison」はダルシマーがまるで琴の音のようです。 「Werewolf」は、Michael Hurley のカバー曲。 カバーされた本人も絶賛ということのようですが、僕が Michael Hurley には疎いので、ちょっとコメントできません。 しかし、かなりアシッドな雰囲気であることには間違いありません。 アルバムタイトルの「Traveler’s Advisory」は、ダルシマーの音がおとなしめのガムランを聴いているかのよう。 チープな打ち込みに無表情なボーカルが乗ってくる「Dummy Line」は、音のすき間感が、イギリスの同時代のグループ Eyeless In Gaza に似ている感じすらします。
 B面に入ると、このアルバムの世界がさらに深まっていきます。 ミニマルミュージック的な「Schuyler’s Blues」、10分近いインプロヴィゼーション「None Born Wise」など、ラストに至るまで、すべてアンビエントなインストで展開されていきます。 
 このアルバムについて誰か語っていないかと検索してみたところ、Carlson Arnold という人物が「Matthew Young Revisited」というタイトルの記事を書いていました。 もし時間があったら覗いてみてください。

 ここには 2003年 5月31日に行われた Matthew Young 本人とのインタビュー(おそらく電話ですが)も掲載されています。 ここで分かったのが、このアルバム以前の1981年に「Reccuring Dreams」というエレクトロなアルバムをリリースしていること。 クレジットされている Don Kawalek なる人物もダルシマーで参加していることなどです。 この人はゲストで演奏参加しただけかと思っていましたが、ダルシマーの製作者でもありました。
 このインタビューのなかには、Cluster、Peter Bauman、Popol Vuh、Can といった強烈な個性を放ったジャーマンロックの面々の名前が出てきます。 なるほど、たしかに Popol Vuh の霧に包まれたような静寂感、Can のような足場のない浮遊感も感じることができます。 
 ダルシマーによるミニマルミュージックという独自の音楽世界を築きながらも、同時代の批評家に耳にさえ届かなかったこのアルバム。 1986 年といえば、レコードから CD への移行が本格化しようとしていた時期でもあり、このアルバムは意図不明のタイトル「旅行者の忠告」というメッセージとともに、静かに世間から隔離されていったのでしょう。



■Matthew Young / Traveler’s Advisory■

Side-1
Objects In Mirror
Kyrie Eleison (12th century)
Werewolf (Michael Hurley)
Traveler’s Advisory
Caitlin’ s Reile
Dummy Line (word.trad)

Side-2
Schuyler’s Blues
None Born Wise
Red Thoughts , White Teeth
Carmina Burana (variation on a theme by Carl Orff)
100 Saints for Travelers

Matthew Young : Hammerd Dulcimer , vocals , casio , percussion , banjo , tape
Composed and arranged by Matthew Young except an noted
Recorded at home

Mixed at Gabriel Farm Studio by Andy Gomory
Art by Marion Moore Costello

Hammerd Dulcimer by Don Kawalek

Mt.Rose Records MR-002

Berry And Wittig

2006-03-27 | Folk
■Berry And Wittig / Northern Serenade■

 「Northern Serenade」というタイトルがいいですね。 それだけで期待に胸が高まる感じがします。 しかも良質な音楽が生まれるミネソタからの自主制作盤ときたら、ちょっと興奮してしまいます。
 このアルバムは、David Berry と Jeff Wittig が1979年にこっそりとリリースした唯一の作品です。 あまり出回っていないものですので、おそらく紹介されたことは、ほとんどないと思います。 この二人、1975年ころにお隣のイリノイ州で出会い意気投合したようで、それから4年後の 1979年にようやくアルバムを出すに至ったとのこと。
 そんな息のあった二人のハーモニーが魅力のこのアルバム。 実際に聴くと、その内容の充実度に驚かされます。 オープニングを飾る「Mississippi」からいきなり名曲、ともに歌いギターを弾く二人の一体感がすばらしいです。 ドブロギターが入り、カントリー調の「St. Croix River」、「Golden Wheat」、ハーモニカだけでギター無しの「Knob Creek」、故郷を歌った「Minnesota」、バンジョーのチキチキした感じが印象的な「Indian Love Song」とA面は充実した流れ。
 B面に入ると、アルバムジャケットのイラストを書いた Jon Nasvik が低めのコーラスをつける「Train To Understanding」、ヘイキエイオーと歌っている意味不明の「Haikiawo」、トラッド楽曲を Jeff Wittig がパーカッションだけにアレンジしたワルツ「The Cobbler」と続きます。 そして5分を越える大作「Prairie Sunrise」はこのアルバムのハイライト。 Prairie とは北アメリカ大陸のミシシッピ川流域を中心として、カナダ南部から米国テキサス州に至る大草原のことをさす言葉なのですね。 辞書をひいて判明しました。 まさに、そんな大草原から昇ってくる朝日のことを歌ったこの曲は、凛とした空気感とさわやかなハーモニーにじわっと心打たれます。 つづく「For A Lady」でも絶妙なふたりのコーラスワークは健在。 「Thank You」はアルバムラストにふさわしい余韻を残す名曲です。
 このアルバムを通じて感じることは、とても誠実なミュージシャンなのだろうなということです。 アレンジも奇をてらうことなく、オーソドックスななかに生真面目なふたりの姿勢が感じられます。 ドラムスやストリングスがないために、アルバム全体の起伏が弱く、若干マンネリ気味だという意見や、そもそも声質や楽曲に強烈な個性が感じられないという批判はあるかとは思います。 しかし、売上から1ドルを飢餓の撲滅のための「Hunger Project」に寄付するというコメントが載せられていることからも、David Berry と Jeff Wittig の人柄が偲ばれ、そもそも批評すること自体が、このアルバムにはあまり意味をなさない事に気づくのです。
 David Berry とJeff Wittig 、ふたりのその後は不明ですが、ミネソタのどこかで今も歌い続けていているのでしょうか。

■Berry And Wittig / Northern Serenade■

Side-1
Mississippi
St. Croix River
Knob Creek
Golden Wheat
Minnesota
Indian Love Song

Side-2
Train To Understanding *
Haikiawo *
The Cobbler
Prairie Sunrise *
For A Lady
Thank You

Jeff Wittig : vocals , guitar , bass , harmonica , percussion
David Berry : vocals , guitar , bass , percussion
Pete Wittig : dobro , guitars
Jon Nasvik : vocals on ‘Train Understanding’
Brad Hinseth : banjo on ‘Indian Love Song’

All Songs written by Jeff Wittig
Except * written by David Berry , ‘The Cobbler’ traditional

Jeffrey David Records 40324

Bruce MacPherson

2006-03-26 | SSW
■Bruce MacPherson / One Of These Days■

  あまりコンディションのよくないジャケットですが、このデザインからは英国産の匂いがぷんぷんします。 しかし、この Bruce MacPherson の唯一のアルバムは、アメリカ・ボストンの録音、1972年にリリースされています。 以前ご紹介したStephen Whynott のファーストアルバム「From Philly To Tablas」と同じスタジオで録音されています。
 クレジットを見ると、あの Batteaux の兄弟、RobinとDavid の参加が注目されます。 ふたりのユニット Batteaux の発売は 1973年ですのでこのアルバムのほうが先ですね。 他には、デビューしたての Jonathan Edwards や後に映画音楽の世界で大成功を収めるMichael Kamen が参加しています。
 Bruce MacPherson は、ピアノ系 SSW なのですが、アルバムはスローな曲は少なく、ホンキートンク調の「Ungrateful」、ルーズなブルース「Municipal Blues」、軽快なロックンロール「Don’t Blame Me」などヴァラエティに富んだ内容です。 唯一のカバー「The Way You Do The things You Do」は、テンプテーションズの 1964年のヒット曲。 個人的にはピアノ系の SSW では、メローなミディアムチューンやバラードが好みなのですが、そのような曲は「Time Will」とラストの「I Believe」しかありません。しかし、両方ともなかなかの出来で、とくにMichael Kamen が参加した「I Believe」はメロトロンかと聴き違ってしまうようなストリングスアレンジが魅力的です。 このアレンジは Michael Kamen のものなのでしょうか? ストリングスはバトー兄弟だと思いますが。
 さて、このアルバムに参加している Eric Lilljequist と Dean Adrien は、やはりボストンを拠点に活動し、3枚のアルバムを発表している「Orphan」というグループのメンバーのようです。 このグループに関しては、まったく認知していませんでしたので、これからアルバムを探してみたいと思います。 Eric Lilljequist という何と発音していいかわからない人物で検索してみると、公式サイトがありました。 そこを見ると、いまだに現役でライブなどを行っているようで、2006年(今年ですね)6月9日には、Graham Parker のフロントアクトでライブが予定されています。 Graham Parker というところも驚きですが、その前座というのもさらにスゴイです。 
 いっぽう、今日の主人公 Bruce MacPherson ですが、この唯一のアルバムを残した以降の足取りは不明。 おそらく音楽活動からは退いてしまったのでしょう。

■Bruce MacPherson / One Of These Days■

Side-1
Ungrateful
One Of These Days
Sow Your Seeds
Municipal Blues
Time Will
Imagining You

Side-2
Molly Baker
Don’t Blame Me
Sweet Words
The Way You Don’t The Things You Do
I Believe

Produced by Ray Paret , Eric Lilljequist , Bob Runstein
Engineerd by Bob Runstein
Recorded At Intermedia Sounds , Boston

Bruce MacPherson : piano , organ , harpsichord , vocals
Eric Lilljequist : acoustic and electric guitar , vocals
Dean Adrien : percussion , vocals
Steve Abdu : fender bass
David Woodford : tenor and baritone sax
Kerry Blount : alto sax
Jay DeWald : trumpet
Andy Harp : trumpet
Robin Batteau : violin , viola
David Batteau : cello
Ed Cooper : clarinet on Sweet Words
Michael Kamen : oboe on I Beleive
Jonathan Edwards : harmonica on Imagining You

GSF Records GSF-S-1001

Jo Anna Burns

2006-03-25 | Female Singer
■Jo Anna Burns / Under The Lily Pad■

 水面に浮かぶ蓮の花。 清楚な SSW の音が期待できそうなジャケットです。 しかし、裏を見るとカエルのぬいぐるみにかこまれた 30代前半という感じの女性。 もしかして、子供向け音楽なのではと不安になります。
 そんな Jo Anna Burns の「Under The Lily Pad」 は 1979年に オレゴン州ポートランドからこっそりとリリースされたアルバム。 クレジットを見ると、このアルバムがセカンドでファーストアルバム「Jo Anna Sings Your Favorites」が存在しているようです。 このアルバムの品番が JRC1002 ですので、JRC1001 なのでしょう。
 クレジットを見ると、本人の自作は「The Magic Of That Moment」と「Under The Lily Pad」の2曲のみで、他は全曲カバーとなっています。 Jo Anna Burns の特徴はその清潔感あふれるボーカルにあります。 アルバムには「5000フィートの高地で降った雨の後の空気のよう」みたいに書かれていますが、クラシック音楽の教育を受けてきたと思われるような発声であることは確かです。
 A面の「Yellow Bird Medley」では、有名な「バナナボートソング」やラテンの古典「ガンタナメーラ」などが含まれており、まさにNHK 教育テレビのような気分に浸れます。裏ジャケットの写真から想像したように、彼女は歌のお姉さんみたいな存在だったのかもしれません。
 しかし、そんな場面ばかりではこのアルバム、聴きどころがないのですが、しっかりとツボを押さえた曲もあります。 とくに「You Light Up My Life」はオリジナルよりもハイトーンな声のせいで、美しいできばえなのです。
 「You Light Up My Life」でピンとこない方もいるかとは思いますが、この曲はパット・ブーンの娘であるデビー・ブーン(Debby Boone)が1977年に放ったビッグヒットです。 1977年の10月から12月まで、ビルボード1位を10週連続で獲得したこの名バラード、僕はそのころ13歳でしたが、情けない邦題「恋するデビー」とともによく覚えています。 ちなみに作詞作曲は、Joe Brooks という人です。
 B面には Janis Ian の「Jesse」のカバーがありますが、アメリカの童謡的な「Mockingbird Hill」やプッチーニ「蝶々夫人」の「ある晴れた日に」など、彼女の歌いたい曲ばかりが並んでいます。 まさにちょっとしたお金持ち女性が、私費を投じて制作してしまったかのような究極のプライベート・アルバムなのですが、僕はあと1回くらい聴くだけなのだろうなと思います。 そんな彼女の近影を、google で検索してみることができました。 地元ポートランドで音楽の仕事に従事しているという彼女は、予想通りふっくらしたおばあさんになっていました。



■Jo Anna Burns / Under The Lily Pad■

Side-1
The Magic Of That Moment
You Light Up My Life
Yellow Bird Medley
1) Yellow Bird
2) Banana Boat Song
3) Mary-Ann
4) Guantamanera
Send In The Clowns
Under The Lily Pad

Side-2
Evergreen
Ghost Riders In The Sky
Jesse
Mocking Bird Hill
Un Bel Di (From Madama Butterfly)

Produced by Jo Anna Burns and Peter Barkett
Arranged by Jo Anna Burns and Peter Barkett
Recorded At Recording Associates , Portland , OR

Jo Anna Burns : piano , vocals
Peter Barkett : piano , electric piano , organ
Paul Barkett : acoustic guitar
Jon Newton : electric guitar , synthesizer
Ron Stephens : pedal steel guitar
Gordy Pisle : drums
Brian Willis : drums
Bob Douglass : bass
Rick Cocklin : bass
Rod Thompson : bass
Rick Tippets : trombone and tuba
Jim Sours : clarinet , flute and recorder
Mark Gaukle : trumpet
Jo Anna Burns, Peter Barkett , Paul Barkett : background vocals
Strings Arranged by Peter Barkett

Jo Anna / Jeremiah Records JRC 1002

Peter Donato

2006-03-21 | SSW
■Peter Donato / Peter Donato■

 今まで紹介して来たアルバムは、かなりマイナーなレーベルが多かったのですが、今日は違います。 メジャーレーベルEMI傘下のCapitol Records からのリリース。 とはいっても、Capitol Canada ですが。
 このPeter Donatoが発表した唯一のアルバム。 買ってから20年くらい経ちますが、まだ3回くらいしか聴いていません。 というのも、どうもイマイチの作品という印象が残っていて、なかなかわざわざ棚から引っ張り出して聴く気分になれなかったのです。 そんななか、でもせっかくブログも立ち上げたわけだし、また久しぶりに棚から発見されたこともあり、10年ぶりくらいに聴いてみました。
 その結果、判定は変わらず。 何か決め手が欠け、インパクトがなく引き寄せられないアルバムなのです。 その要因は、どうしても聴きたくなる曲が1曲でも欲しかった、せっかくならコーラスとストリングスアレンジを取り入れて彩を添えて欲しかった、Peter Donato のボーカルに個性が乏しい、といったところでしょう。 1974年に発売されたこの作品、クレジットを見ると、Peter Donatoがピアノ系の SSW であることはすぐに分かります。 そして、このイラスト。 名門Capitol からの発売。 佳作となる確率は高いと思って買ったのですけどね。
 サックスのアレンジがジャズっぽい「This Old Room」、ヴォードヴィル調の「Cathhouse Serenade」、トランペットの音が初期のTom Waits を想起させる「One For My Baby」など、曲調は飽きさせない感じなのですが、やはりメロが弱いですね。 唯一の完全弾き語りの曲「Baby Grand」は、ジャケットに Wurlitzer のピアノとともにポスターとして描かれています。 最も思い入れの強い楽曲だったのでしょう。 歌詞にも Wurlitzer の名前が出てきます。 曲調としては、ミディアム・スローな「Myself Among Others」や「Say Uncle」のようなタイプをもっと集めたほうが良かったのではと思います。
 さて、そんな Peter Donato ですが、内容の出来が影響してか、あまり紹介されたことがないと思います。 以前はよく見かけましたが、最近はどうなのでしょうか。 もしかすると500円程度で買うことができるかもしれません。 僕が持っているのは 8年くらい前にカナダドルで 5ドルで買ったもの。 写真の右上にプライスシールが貼られてて、うまく剥がせないままの状態になってます。 20年くらい前に国内で買ったものはそれに伴い、売却してしまったようです。 なあんだ、ちゃっかり2回買っていたのですね。 とほほ。 

■Peter Donato / Peter Donato■

Side-1
Myself Among Others
Cathhouse Serenade
This Old Room
Just An Old Bluesman
Oh Jerome
Baby Grand

Side-2
Meet Me , Down In Bananaland
Say Uncle
Cold Christmas
The Midnight Parade
One For My Baby

All Selections Composed by Peter Donato
except One For My Baby by Harold Arlen & Johnny Mercer (1943)
Produced by Eugene Martynec
Executive Producer : Paul White
Cover Painting : Andrew Donato
Recording : Thunder Studio

Peter Donato : vocal , piano
Michael Heydon : guitar
Dennis Pendrith : bass
Barry Keane : drums
Bert Hermiston : saxophone
David McLey : synthesizer
Bruce Pennycook : saxophone
James Atkinson : guitar
Eric Robertson : organ , clavinet
Janis Cramer : vocal
Russ Little : trombone
Moe Koffman : clarinet
Bob Van Evera : trumpet

Capitol Records   ST-6423

Stephen Whynott

2006-03-20 | SSW
■Stephen Whynott / Geography■

 Music is Medicine は、1977年から1983年ころまで存続したレーベルで、MIM-9001 から MIM-9056 くらいまでの品番があることから、50枚以上のアルバムを残した中堅レーベルといっていいでしょう。 僕も、Barry Melton やTom Ranier などのアルバムを持っていますが、SSW 専門ということではなく、AOR やInstrumental の作品もあります。 のちに Windham Hill Records からリリースをしているピアニスト Scott Cossu の「Spirals」 というアルバムが MIM-9056 ですが、これはレーベルとして最後期の作品だと思われます。
 前作「From Philly To Tablas」の翌年に発表された Stephen Whynott のセカンドアルバムは、前作から一転して西海岸に移り、ワシントン州シアトル郊外の Bothell での録音です。 ということもあって、メンバーを総入替えして制作されました。 前回印象的だったメロトロンもクレジットから消えています。
 サウンドのほうも前作とは異なり、淡々とした SSW アルバムに仕上がっています。 ほとんどがギターの弾き語りにちょっと色をつけた程度のもので、時折サックス などのブラスアレンジが聴ける程度です。 リズムセクションはほとんど存在感を示しません。 A面では、ハーモニーが美しい「Things Are Looking Up」、サックスのイントロと地味な三拍子で少し宗教的な匂いのする「That’s What We’re Here For」などが印象的です。 
 しかし、このアルバムの最大の特長は、10分を越える大作「A Better Way」です。 ギターの弾き語りで単調な展開なのですが、ボーカルが出てくるのは最初の3分の1くらいまで、その後はずっと静かなアコースティックなインストが続いていきます。 そのインストのなかに主張しないギターソロが垣間見えるあたりは、まさにチルアウト・ミュージックなのです。 Stephen Whynott 、このとらえどころのないミュージシャンをひと言で例えるのなら、「早すぎたチルアウト系シンガーソングライター」といったところでしょうか? サウンドの深さを楽しむのであればファーストを、SSW 的な味わいを求めるのであれば、セカンドがお薦めです。
 Stephen Whynott が Music is Medicine に残したのは「From Philly To Tablas」と「Geography」の2枚のみでした。 以降、彼は音楽活動から遠ざかっていたようなのですが、1993年に約15年ぶりとなる3枚目「Apology To The Animals」を突然発表しています。 当然ですが、レコードではなく CD のみでの発売です。 残念ながら僕はこの CD を入手していませんが、ぜひとも入手して聴いてみたいものです。 もし、すでにお聴きの方がいらしたら、印象など教えてください。

■Stephen Whynott / Geography■

Side-1
Things Are Looking Up
Where Are You
That’s What We’re Here For
Heaven On Earth

Side-2
Honeymoon On The Mia
A Better Way
I Grew Up At Last

Words and Music written by Stephen Whynott

Produced by Stephen Whynott
Mixed by Michael Leary , Stephen Whynott
Recorded at Thunder Oak Studio , bothell , Washington

Kirk Tuttle : percussion
Mark Willett : bass
Bobby Nachtsheim : saxophones & brass
Richard Dean : keyboards
Stephen Whynott : vocals & guitars

Music is Medicine   MIM-9015

Stephen Whynott

2006-03-19 | SSW
■Stephen Whynott / From Philly To Tablas■

 「音楽は良薬」と名づけられたSSW系のインディーズ、Music is Medicineの第一弾として1977年に発売されたのが、このStephen Whynott のファーストアルバムです。 このレーベルはシアトルに本拠を置く、First American Records が流通をしてるので、このレーベルもシアトルが本拠地なのでしょうか? 僕もずっとそう思っていましたが、改めてこのアルバムのクレジットを見ると、東海岸のボストンでのレコーディングでした。 Music is Medicine および、Stephen Whynott については、セカンドアルバム「Geography」も近日中に取り上げる予定ですので、そちらに詳しく書いてみたいと思います。
 このアルバムのことを知ったのは、SSW系も充実していることで有名な高田馬場のDISC FUNだったと思います。 そのときは500円くらいだったような気がします。 まず、ジャケットから想像するにスワンプ系かと思いました。 このいなたい男性、良く見ると腰のあたりにピストルを忍ばせてます。 怪しいです。 クレジットを見て分かったのですが、この男性はStephen Whynott の親戚(おそらく祖父、もしくは父)である、Graham Whynott さんの肖像だったのです。 撮影は1939年とのことです。
 さて、そんなこのアルバムですが、何か特別な匂いがする作品なのです。 何度も聴きたいという魅力のある曲やメロディは一切含まれていないのですが、何か気になる、何度も聴かないとわからないのではないかと思ってしまうアルバムです。 SSW の作品ではあるのですが、彼のボーカルやメロディは、曲のほんのパーツに過ぎないという感じで、全体の流れはゆったりと漂う小船に乗っているかのような感じ。 印象的なのはメロトロンの多用でしょうか。 1977年の SSW 作品でメロトロンというのも意外な感じがしますが、このアルバムはたしかにプログレ系 SSW といってもおかしくはないかもしれません。 曲と曲の間が聞き手には判明しづらく、ほとんどの場合はつながっていて、パーカッション、ギター、オーボエなどの淡々としたアレンジのなかに、時折ボーカルが入るという感じです。 部分的には最近のアメリカの音響系のSSW にも似たようなたたずまいを感じたりします。 そういった意味で、すでに30年が経過しようとするこのアルバムの時代的な意味は重要なのではないかと思います。
 アルバムの構成も1曲目の「Retreat Suite」で繰り返されるメロディが実は、「Go Around」のサビの部分だったりするという小細工を施すなどのアイディアも盛り込まれています。 B面のほうがよりメロトロンが多く使われますが、最後は「Oh Boy I’ve Won The Contest At Last」という謎めいた歌で終わっていきます。
 結果的には、アルバムジャケットと内容のギャップもマイナスに作用したのでしょうか。 このアルバムは比較的入手は容易なのですが、あまり語られることのないまま、29年も経過してしまったのです。
 次回は、彼のセカンドアルバムをご紹介します。

■Stephen Whynott / From Philly To Tablas■

Side-1
Retreat Suite
What Have You Seen
Altitude
Rain Swollen Highway
Nine Day Sunflower
Without Us

Side-2
Go Around
Snows Edge
Mexican Oil
Oh Boy I’ve Won The Contest At Last

Words and Music written by Stephen Whynott
Orchestrated by Dan Frye

Produced By Stephen Whynott and Zed Mclarnon
Recordind and Remix Engineer : Zed Mclarnon
Recorded at Intermedia Sound , Boston

Stephen Whynott : vocals , guitars , piano
Zed Mclarnon : bass
Dan Frye : mellotron , electric and acoustic piano , organ
David Humphies : drums
Cleve Pozar : tablas , percussion
Micheal Kamen : oboes

Music is Medicine   MIM-9001

John Simson

2006-03-18 | SSW
■John Simson / We Can Be Everything■

 ジョン・サイモンにこんなアルバムあったっけ? と一瞬勘違いするのが、このジョン・シムソンの唯一のアルバムです。 John Simon と John Simson の一文字違いですからね。 見間違うのも無理はありません。
 その John Simson が1971年に Perception から発売したアルバム 「We Can Be Everything」 は、ジャケットがいかにも、70年代初頭という感じ。 Bill Jerpe のときにも書きましたが、フィルムを重ねたようなコラージュ系のジャケットがちょっと流行していたのではないでしょうか?
John Simson が語りかける美しい女性は、Dedicated to Leslie というクレジットがあることから、Leslieという名前なのでしょう。 きっと彼女だったのでしょうね。 ジャケットでも彼女の顔の部分だけが、影ではなく日に照らされています。 
 Jon Simson はアメリカのミュージシャンだと思いますが、このアルバムは、11曲中7曲がイギリス録音、3曲がニューヨーク録音となっています。 ラストの「Rock Me Baby」1曲はクレジットのミスでどちらの録音か明記されていませんが、おそらくニューヨーク録音だと思います。
 印象に残る曲はゴスペル調のコーラスをバックに力強く歌い上げる「God Bless The Lord」、キャッチーな「My Love, My Life」などですが、個人的にはニューヨーク録音の3曲が好みです。 アルバム冒頭を飾る「Humboldt County」は、牧歌的なアレンジにフルートやストリングスが色彩を添える感じ、「Allison」もシンプルな楽曲ですがフルートが印象的です。 少し、Duncan Browne のファーストアルバムを想起させられます。 「Goodnight Lullabye」は曇ったピアノの弾き語りにハープシコードが挿入されるあたり、むしろイギリス録音かと思ってしまうほど。 ラストの「Rock Me Baby」はタイトルとは裏腹にしっとりとピアノで歌い上げるラストにふさわしい作品です。 こうしてアルバム全体を通していえるのは、「曇り空のなかの淡い光」というようなイメージです。 アルバムを通して印象的なアレンジを施している Patrick Peter Adams の貢献が大きいといえるでしょう。 この人のストリングスアレンジは、まるでメロトロンかと思ってしまいます。

 さて、このアルバムについて、ネットで検索していたら、John Simson の近況がわかりました。 彼はこの唯一のアルバムを発表したのちに、カントリーシーンで活躍した女性 Mary Chapin Carpenter (彼女のアルバムでは「Come On Come On」がファイバリットです)など複数のミュージシャンのマネージャーとして音楽業界で活躍。 2000年には、Sound Exchange という NPO の Excective Director(理事に相当?)に就任しています。 この Sound Exchange とは、全米レコード協会(RIAA)が設立した著作権管理団体で、小規模のインターネットラジオ局から著作権使用料を徴収することを目的として活動しているようです。 このサイトに現在の彼の写真が掲載されています。 口もとあたりを見ると間違いなく、We Can Be Everything のJohn Simson だと分かります。

■John Simson / We Can Be Everything■

Side-1
Humboldt County *
Ellie Riley
God Bless The Lord
Go West , Young Man
Been So Long

Side-2
Just A Matter Of Time
My Love , My Life
Allison *
Rapid River Run
Good Night Lullabye *
Rock Me Baby

Producer : Terry Philips
Studio : Morgan Sound Ltd. Willesden ,England

Keith Ellis : bass
John Simson : piano , guitar
Adrienne Curtis : electric guitar
Mike Kellie : drums
Phil from “Wales” : organ
Paul Curtis : acoustic
Brian & Paul , Doris Troy , Barry St. John ,
Judith Powell , Elria Strike : Background Vocals
Patrick Peter Adams : string & horn arrangement

* Humboldt County , Allison , Good Night Lullabye
Producer : Jimmy Curtis
Studio : Blue Rock , New York

Danny Bloch : bass
Justin Grauer : guitar
Louise Goldberg : piano
Dawn Marr : harpsichord & cello
Valentina Charlep : viola & violin
Patrick Peter Adams : string & horn arrangement

Cover Photograph : Ed Spenser
Album Design : James Martin Stubelger

Perception Records PLP 16

He-Story

2006-03-16 | Japan
■He-Story / 上水ほたる■

 ついに初登場の日本人ミュージシャンです。 ブログを立ち上げたときには、日本人を紹介するつもりはまったくありませんでした。 しかも、掟破りともいえるシングルでの紹介です。 とはいえ、①未CD化のレコード、②ほとんど紹介されていない、という基本コンセプトには合致していますので、取り上げてみました。
 He-Storyと書いて「ヒストリー」と読むこのグループは、東芝EMIの名門Expressレーベルからデビューしたものの、数枚のシングルと、1枚のアルバムを出しただけでシーンから姿を消したグループです。おそらく、1979年から1980年ころに活動していたのだと思います。
 この「上水ほたる」は、今から26年も前に、ラジオで数回流れていたのを聴いて以来、僕の記憶のなかの深いところに潜伏し続けていた曲です。 『太宰の生まれー変わりー』というサビの部分が忘れることができずに、四半世紀もの月日が経過してしまいました。 自分も中年になるわけですね。 そんなこのレコードですが、年に1回くらい思い出すものの、アナログのシングルを中古レコード店で探すのもかなりの時間と労力がかかり断念していました。 また、googleで「上水ほたる」と「ヒストリー」で検索しても、数件しか検索されず、なかなか入手できないでいました。 ところが、先月、ヤフオクでようやく発見。 無事に500円で札幌市内の中古レコード店から落札することができたのです。 この無上の喜び。 レコードに針を落とすときは、かなり興奮しました。 なにせ四半世紀ぶりの再会ですから。
 この喜びは、大宮京子&オレンジの名曲「シーズン」を3年くらい前に20年ぶりに聴いたとき以来です。 大宮京子のほうは、ポニーキャニオンからこっそりとCD化されていたのを知らずに、これもヤフオクで廃盤となっていたCDをゲットしたのが3年くらい前でした。
 さて、話がそれましたが、このヒストリーは、菅原ジュン、小岩正幸、いけたけし からなるグループです。 いけたけしは現在もアニメソングなどの作曲家として活躍されておりますが、他のメンバーはわかりません。
 シングルが数枚リリースされており、この「上水ほたる」が何枚目にあたるのかはわかりませんが、この曲は名曲だと思います。 イントロの感じは演歌といってもいいような小笛の音、そしてギターが爪弾かれ、典型的な三拍子のストリングス・アレンジが展開されていきます。 そして、徐々に音数が多くなってきて、『だざいの~』に突入です。 4分58秒のなかで、『だざいの~』は4回も歌われるのですね。 僕の脳裏に焼きつくわけです。 曲のラストはこの曲の主人公の心境を表現したかのようなギターソロが鳴り響き、しかも不意に終わるという感じ。 悪くないです。 1980年の日本のニューミュージックのなかでは、あまりにシチュエーション設定が暗すぎたのでほとんど売れませんでしたが、いまでも誰かがカバーすればいいのに、と思います。 うちのヨメさんに聴かせたら、前川清がいいとのこと。 たしかに前川清はありですね。 
 B面のほうは、「ずんちゃっずんちゃっ」という二拍子のリズムに乗ったポップな楽曲です。 これも1980年にしては古臭いかなという印象はありますね。
 そんなこの2曲を含んだ He-Story の唯一のアルバム「80135」を僕は探しております。 このアルバム、たまたま割り当てられたレコードの品番の数字をタイトルにしてしまったという話です。 唯一のアルバムになってしまったことが、何となく納得できるようなエピソードですね。 アルバムも入手できたら、ここでご紹介したいと思います。

■He-Story / 上水ほたる■

Side-A
上水ほたる   
いけたけし:作詞・作曲
若草恵:編曲

Side-B
川の流れに寄せて
菅原ジュン:作詞
小岩正幸:作曲
青木望:編曲

東芝EMI ETP-17050
 



Richy Snyder

2006-03-15 | AOR
■Richy Snyder / Richy Snyder■

今日取り上げるのは久しぶりにAOR、1978年にRichy Snyder が発表した唯一のアルバム「Richy Snyder」です。 このアルバムでまず、注目されるのがジャケットに描かれている不思議なイラストです。 右側に、Richy 本人と思しき男性、その向かいには手をつなぐ長髪の女性。 しかし、なぜか顔は茶色に塗られていて表情がありません。 背景には、ASUKA という看板のある古びた建物。 これはホテルなのでしょうか? 真ん中には道路、奥のほうには海岸らしき風景が広がっています。 このイラスト、Richy の表情も含め、最初はちょっと気味が悪い感じだったのですが、今はアルバムの内容と不思議に絡み合ってとても好きなジャケットのひとつです。このイラストは、Ruby Mazur という人ものです。 ちょっと調べたら公式サイトがありました。 Steely Dan のファースト「Can't Buy A Thrill」もこの人の作品だったんですね。
 さてさて、アルバムの内容ですが、Richy Snyder の声がまず、日本人好みのAOR的なサウンドには合わないというか、ちょっと甲高く、かといって伸びがあるわけでもなく、かなり個性的な声なのです。 好き嫌いがはっきりと出そうなボーカルです。 参加しているミュージシャンは、クレジットを参照していただきたいのですが、かなりの有名どころですので、しっかりした East Coast のアダルトな AORサウンドが繰り広げられます。 
 アルバムは、いきなりこのアルバムを代表する名バラード「Starting All Over Again」から始まります。 こうしたバラードから始まるアルバムは、Phil Cody のアルバムにもありますが、ともに共通しているのは、声が微妙に震えていてそこが、やるせないというかせつない味わいを醸し出しているところでしょうか。
 聴き所は、ヴィブラフォンのソロがすばらしい「Don't It Feel Good」やギターのイントロがやさしいラブソングの「I Want You」といったメローな作品です。 しかし、ややアップテンポで、ちょっとエキゾチックな「King Of Siam」や、ちょっと滑稽な「Oora Oora」なども印象に残ります。 いずれにしても、バックの女性ボーカルが主張しぎずに目立っている曲がいいです。
 このアルバムは、AORガイドブックみたな本に取り上げられていないと思いますが、(間違いだったらすいません)それは何故なのでしょうか? ネット通販などでも入手もしやすいですが、CD化されそうにもありません。 時々、こんなぽつんと孤立したアルバムがあるんですよね。

■Richy Snyder / Richy Snyder■

Side-1
Starting All Over Again
King Of Siam
Coat Of Armor
Don't It Feel Good
Back On The Streets

Side-2
When You Fall In Love For The First Time
I Want You
Oora Oora
California
If She'd Take Me Back

Rhythm Section:
Andy Newmark , Willie Weeks , Hugh McCracken , Jean Roussel
Hiram Law Bullock , Tom Griffith , Emil Richards , Dwayne Smith
Horns:
Peter Christlieb , Charles Findley , Slyde Hyde , William Perkins
Background Vocals:
Polly Cutter , Cynthia Bullen , Jon Joyce , Fred Freeman
Maxine Willard Waters

Produced by Don Rubin & Caroline Rubin
Co-Produced by Richy Snyder

Horn Arrangements : Hugh MaCracken
Engineer : Neil Brody
Recorded at The Village Recorder
Cover Illustration & Photography : Ruby Mazur

Manhattan Island Records MR-LA924-H

Don Eaton

2006-03-12 | SSW
■Don Eaton / Don Eaton■

 このアルバムは、熱心なシンガーソングライター・ファンの間ではかなり有名で、一定した高い評価を得ている作品だと思います。 僕もこのブログに紹介するために数年ぶりに聴きましたが、捨て曲のないクオリティーと、Don Eaton の繊細な声に改めて心を打たれました。
 オレゴン州、ポートランドから 1976年にひっそりとリリースされたこのアルバムは、おそらく自主制作に近いもの。 レコードの背の部分にタイトル名とアーティスト名が印刷されていないのです。 こうしたレコードをかなり持っていますが、棚に入れてしまうと、どの作品かわかりにくくなって困りますね。
 さて、この名盤。 A面は、途中から挿入されてくるアコーディオンが素敵な「Blind Boy」、秋から冬へと移ろい行く農場の風景が目に浮かぶような「Country Farm」というバラードで始まります。 この2曲は歌詞カードでの曲目表示が「The Ballad of Blind Boy」、「The Ballad of Country Farm」となっています。 「I Came Back」は、コンガをバックにDon の優しいボーカルが舞う感じで、エレピも薄くかぶってくるあたりは、今風のカフェに似合う楽曲です。 「恋人をみつけるよりも友達を見つけるほうが難しいのさ」と歌う「Lover and a Friend」、ピアノとフルートが美しい「Faces of The Band」と続きます。
 B面に移りますと、唯一のアップテンポ曲ともいえる「Easy Night」で始まります。この曲は軽快なフルートやギターソロなども含め、クラブ系にも似合いそうなサウンドです。Cal Scott の奏でる Banjo で始まる「Miles of Memories」、ギターのみでしっとりとまとめる「The Fire」に続いて、僕が最も好きな曲「Aubery’s Song (for the Aitken family)」が始まります。 この曲はピアノをバックにした崇高なイメージの曲で、「Ain’t the island weather fine」というフレーズを繰り返すサビの部分が印象的な素晴らしい名曲です。 ラストは、ギターとフルートがからむ淡々とした作品「Resting in Your Life」で幕を閉じます。
 このアルバム、Don Eaton の声は、日本人好みなのかもしれませんが、SSW はかくあるべし的な繊細で誠実さあふれる表現力豊かなものです。 それに曲の良さ、アレンジの良さが加わったら名盤になるのは必然ですね。 それなりに有名なアルバムなので、中古相場は 40から 50ドル前後でしょうか。
 さて、そんな Don Eaton ですが、これ1枚で消えてしまったのかと思ったら、公式の HP がありました。 Small Changeという NPO の創始者でいろいろな活動をしてるみたいです。 また、CD を何枚かリリースしていました。

このページで見ることのできる Don Eaton の表情を見ると、この人はかなりの人格者なのだろうなと思います。 ちょっと思い込みの度が過ぎますかね?




■Don Eaton / Don Eaton■

Side-1
Blind Boy
Country Farm
I Came Back
Lover and a Friend
Faces of The Band

Side-2
Easy Night
Miles of Memories
The Fire
Aubery’s Song (for the Aitken family)
Resting in Your Life

Don Eaton : vocal , 6-string guitar
Cal Scott : lead acoustic and electric guitar , dulcimer , recorder , banjo , accordion
Dan Brandt : Acoustic and electric piano
Valerie Brown : flute
Pete Dyrhaug : drums , conga
Bob Bailey : bass

Additional Musicians
Rob Fowler : harmonica
Betty Boother : oboe

Background Vocals
Laura Eaton , Don Eaton , Valerie Brown , Cal Scott , Ann Scott

All Songs written by Don Eaton
Produced By Cal Scott
Arranged by Cal Scott and Don Eaton
Recorded at Recording Associstes , Portland , Oregon

Amaranth Records RA7876


Grampa

2006-03-11 | SSW
■Grampa / Good Helping■

 このセピア色がかったジャケット、写るのは農夫のような男たち。 こんなオールドタイミーな彼らのジャケットをみて、音を聴く前にキャッチフレーズを妄想してみました。 「カナダの田舎版センチメンタル・シティ・ロマンス」とか、「アメリカに出そびれたザ・バンドの弟分」なんて具合です。 これが現代ならば「地球にやさしいロハスなアコースティックバンド」ってな具合でしょうかね。 このグループ、最初は Grampa Good Helping がグループ名かと思っていたら、レーベル面を見てはじめて、Grampa がグループ名でアルバム名がGood Helpingであることが判明しました。 
 そんな Grampa のGood Helping は、1974年にリリースされた彼らのファーストアルバムです。ジャケットや楽器から想像されるとおり、カントリー、フォーク、ラグタイム、ジャズといったサウンドをごっちゃにしたような楽しさがあります。 聴いた後の感想で言えば、日本で言うと、「ラリーパパ&カーネギーママ」がきっと一番近いサウンドではないかと思います。 とはいいつつ、ラリーパパもそれほど詳しく聴いていませんのであまり信用しないでください。

 さて、アルバムの内容をざらっと舐めていきましょう。
A面では、ピアノ担当の Frank がリードボーカルをとる、「One Day」や「Canadian Way of Life」がオススメですね。 このピアニストは本当にいいです。 リズムを刻むときもメロを奏でるときも本当に力が抜けていて気持ちいいタッチです。 他には、ハーモニカのイントロが可愛らしいワルツの「Ole Fashioned Love」 も悪くないです。 欲を言えば、後半にバンドアレンジにしないまま、最後までギター一本でもっと短い作品に仕上げて欲しかったですが。 他のメンバーに遠慮した感じがしますね。
B面は、かなりいいです。 David の小刻みにはじけるベースが印象的な「Bread And Water」のつづき、Sax の David による Louis Armstrong の物まねボーカルが見事な「Hello Dolly」、これはスタンダード曲のカバーですね。 そしてバンジョーの響きが、高石ともやとザ・ナターシャセブンを連想させる「Ragtime Molly」と続きます。ナターシャセブンといえば、日本有数のバンジョーの名手、城田じゅんじがメンバーでしたが、残念な事件で逮捕されてしまいましたね。 そして、アルバムのハイライト、まるで The Band のような「Holy Smoke」、そして間奏のハープシコードのソロが、The Beatles の In My Life をほうふつとさせる「He Got」へ続きます。この2曲がこのアルバムの数ある佳作のなかでも、代表的な楽曲といえるでしょう。

 このように、かなり Good Time Music なこのアルバム、いままでほとんど紹介されたことのないアルバムだと思います。 そんな僕も出会って1ヶ月たっていません。そんなアルバムを僕は国内の通販サイトで購入しました。 しかも、かなりの安価で購入できましたのでとても幸運でした。 
 その名もズバリな Good Time Records が32年前に残してくれた至宝ともいえるこのアルバム、どこかで見かけられたら、是非聴いてみてください。 僕も見つけたら二枚目、勝ってしまうかもしれませんから(笑) 
 あと、どうやら同じレーベルからセカンドアルバムもあるらしいですね。 これは未聴ですので、探したいです。 お持ちの方はコメントなどよろしくお願いします。



■Grampa / Good Helping■

Side-1
Long Long Way To Go
One Day
Hold On, You Gotta Be Strong
Ole Fashioned Love
Canadian Way of Life

Side-2
Bread And Water
Hello Dolly
Ragtime Molley
Holy Smoke
He Got
That’s The Tough I Like

Frank St .Germain : piano
Stan Drozdoski : guitar , banjo
David Martin : bass
David V.McKee : Sax ,clarinet
Reid Taylor : drums

All Songs written by Drozdoski & St.Germain
Except
Bread And water by Drozdoski
Hello Dolly by Jerry Herman

Special Appearances by Graham Townsend on fiddle,rick Fallows on harmonica
Recorded at Sound Canada Recording Studios, 1974

Good Time Records GT-001


Bill Jerpe

2006-03-10 | SSW
■Bill Jerpe / Bill Jerpe■

このジャケット、いかにも1970年代初頭のアルバムという感じです。 この頃のアルバムのアートワークは、このように本人の顔をコラージュしたり写真を二重露光するようなデザインがけっこうあるような気がします。 このアルバムもそんな一枚ですね。 この人、「ビル・ジェルペ」と僕は呼んでいますが、果たして「ジェルペ」なのか「ジャープ」なのかも分からない、かなりunknown なミュージシャンです。
 このアルバムは1970年にリリース、Shortwheel Records というレーベル名はあるものの、ほぼ自主制作だと思われるます。 内容は、フォークロックなのですが、時にカントリーっぽさがあったりします。 スワンプ系やカナダのテイストは感じません。 A面の4曲目に音楽出版で、Karma Sutra のクレジットがあるので、Karma Sutra 近辺でリリースの話があったのかもしれませんね。 それが、何らかの理由でボツになって、自主制作で発売したといういきさつがあったのではないかと個人的に推測しています。 

 さて、このアルバムの最大の特長は Bill Jerpe の「ネコ声」です。しかもかなり不安定でやる気の無さそうな感じで、最初聴いたときには「なんじゃ、これ」と思ってしまいました。 とくにファルセット気味に裏返ったときのの声の危うさは例えようもありません。 そんな Bill Jerpe について語っている海外サイトを見ると、Bob Dylan の影響が強いのでは、というようなコメントがありました。 たしかにそんな気もします。 しかし、この「ネコ声」感は、もっと別の誰かに似てるなあと思っていたら、思いつきました。 The Only Ones の Peter Perett です。 Peter のほうがより金属的な感じがありますが、それはサウンドとの輪郭を出すためのエフェクトのような気もします。 そこで、個人的にこのアルバムを、「Peter Perett が The Only Ones 結成前に密かに自主制作していた、幻のフォークロックアルバム」と勝手に形容したいと思います(笑)。 というわけで、このアルバムはけっして後世に名を残す名盤ということでもないと思います。 今でも1曲目に針を落とすと、なぜか「あー、しまった」とちょっぴり後悔してしまうのです。
 そんなアルバムですが、オススメのトラックは、「Lilly Lay Down 」を筆頭に、 「Help Me Home」、「Have You Heard Any Good Jokes,Lately? 」といったところでしょうか。

最後にクレジットを紹介します。



■Bill Jerpe / Bill Jerpe■

SIDE-A
Another Day Goes Down
You'll Get To Heaven
Thanks A Lot For Coming Into My Life
Have You Heart Any Good Jokes, Lately?
Non-Stop's Blues

SIDE-B
Lily Lay Down
Lost In The Ocean,Stuck In The Sky
Sitting Here Satisfied
I Expect To See You Then
Help Me Home

Words and Music by Bill Jerpe
Produced by Bill Jerpe

Bill Jerpe : vocals, guitar , and banjo
Paul Johnson : drums
Peter Weinstock : piano , organ , recorder , autoharp
Bart Barbour : lead guitar
Russ Simon : bass

Shortwheel Records SW-100


Gil Mosard and David Hitchcock

2006-03-09 | SSW
■Gil Mosard and David Hitchcock / Singer Songwriter Sideman Session■

 このタイトル「S-S-S-S」、かなり長いタイトルですが、今日ご紹介するアルバムは、そんなストレートなタイトルで、アーティスト名よりも目立っています。
とはいえ、あまりにも直接的すぎて、もう少し工夫したタイトルは思いつかなかったのでしょうか? これじゃ、コンピレーションかと思ってしまいます。 あるいは、Mud Acres 的なアルバムとか。
 このアルバムの主人公は、Gil Mosard and David Hitchcock という無名のシンガーソングライターコンビ。 彼らが 1978年に発表したレアなアルバムです。 ちなみに、僕の持っているアルバムには、ふたりの直筆サインと 77 of 300 という手書きシリアルナンバーが書かれています。 ということは、300枚しか生産されなかったのでしょうか。
 このアルバムは、Gil Mosard が単独で、あるいは David Hitchcock との共作で1973年から1978年にかけて書き下ろした楽曲に、Gil が歌詞をつけて、David が歌うという内容です。 Gil は世界のあちこちを放浪していたようで、曲ごとに書かれた場所がコメントされています。 沖縄、フィリピン、テキサスのダラスやアーリントンという具合です。もしかすると、アメリカ軍関係の仕事をしていたのか、軍向けのライブなどを仕事にしたいたのかも知れません。
 内容は、特筆すべきアレンジやメロディーがあるわけではありませんが、B面のバラード系の曲が並ぶあたりは聴き応えがあります。 David の声は、個性的ではないものの、この手のサウンドにはぴったりで、バックコーラスも自分でかぶせたりして、ほんわかした味わいを出しています。
 このアルバム、変わったことに「Songwriter」というタイトルの33回転7inch盤がもう1枚入っているのです。 こちらは、Gil Mosard がメインの5曲が収録されており、ボーカルもGil がとってます。 Gil の声は、Bob Dylan に似たダミ声で、それはそれで悪くありません。 全作詞をしておきながら、David のバックコーラスもしなかったGil のささやかな自己主張が、このおまけ盤なのでしょうか。

 このアルバム。 レーベル名のクレジットはなし。 品番は、アルバムのほうが、SSS-1001。 おまけ盤がSR-100ということです。ディスクにのみ表示されており、ジャケットには品番は表記されていません。 最後にクレジットを。




■Gil Mosard and David Hitchcock / Singer Songwriter Sideman Session■

SIDE-A
Night Train
One More Drink
Times Are Getting Hard
Just Another Shade Of Blue
Happy Days
I Don't Want To Be Free
Get Off Your High Horse

SIDE-B
Just For You
The Bright Dream
Love Is Where It Finds You
That Lonley L.A. Street
Just Another Face
Sad Green Eyes
Not Just Yet

David Hitchcock : Lead Vocals, Acoustic Guitar, Harmony Vocals
Gil Mosard : Harmonica, Acoustic Guitar
Mike Gordon : C-recorder
Stuart Lamm : Piano,String ensemble
Jimmy Lowrance : Lead guitar
Mike Huddleston : Drums
Mike Webster : Drums
Toppy Hill : Bass Guitar
Wendall Eads : Bass Guitar

SSS-1001

■Gil Mosard / Songwriter■

SIDE-A
Alone At The Table
Faces On Face Cards

SIDE-B
Talkin' Fort Knox Mononucleosis Blues
Walk The Beach
Words You Can't Handle

SR-100

Musician のクレジットはアルバムと同じメンバーとなっています。

下のイラストは、アルバムに封入されていたものです。Gil とDavid を描いたものだと思われますが、どちらが Gil でどちらが David なのか、知りえる情報はありません。