Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

西荻窪のシェア音楽棚 tent でレコード販売を開始しました

2022-12-06 | SSW
このたび、杉並区西荻窪にあるシェア音楽棚 tent の棚をお借りして、レコードの販売を開始しました。

https://note.com/tentrecord/

https://www.instagram.com/tentrecord/

https://twitter.com/home

このブログで取り上げたレコードのなかでは、
Richy Snyder
Jon Keyworth
Kevin Odegard
Henry Gaffney
Robert John
Rohda Curtis
Rib Galbraith
を出品中です。お近くに来られた際はぜひお立ち寄りください。

Ron Cornelius

2012-01-28 | SSW
■Ron Cornelius / Tin Luck■

  年始になると、「ミュージック・マガジン」のベストアルバムや「レコード・コレクターズ」の再発ベスト 10 みたいな企画が毎年盛り上がります。 再発ものなどを見ていると、オリジナル盤の初 CD 化というものはめっきり少なくなり、発掘音源とのセット売りのようなものが増えているように思います。 さすがに CD が生まれて 30 年以上経過しているので、この期に及んで世界初 CD 化みたいなことは稀なのかもしれません。 
  そんなことを思いながら、メジャーの Polydor からリリースされたにも関わらず、さっぱり CD 化の気配がない Ron Cornelius のアルバム (1971年) を取り出してみました。 このアルバムは 7 年近く前に安価でシールドで入手できたのですが、CD 化されるのを期待して聴かずにずっと保存していたものです。 しかし、さすがに中身を聴きたい気持ちが抑えられずに、さきほど開封してしまいました。

  レコードを手にすると、参加メンバーが Ron Corneluis を含めて 3 人しかいないことに引き寄せられます。 プレイベート盤かと見間違うほどのクレジットですが、サウンドはそのとおりで 3 人編成によるきわめてシンプルで素朴なもの。 けしてスカスカという感じではなく、必要最小限の音によって音の隙間を意図的に描き出しているというようなイメージでした。 
  多くの人がこのアルバムのベストトラックとして、1 曲目の「I’ve Lost My Faith In Everything But You」をあげていますが、その論調にはまったく同意です。 このアルバムの最初の音、それは優しいピアノの音色なのですが、もしかするとそのままピアノソロのアルバムなのではないかと思ってしまうほどでした。 たまたま個人的にここ数日、Bill Evans を聴いていたからかもしれませんが、この曲は僕にとって少なからず衝撃的な出会いでした。 もっと早くシールドを破っていればと後悔です。それにしても、この曲は素晴らしいの一言。 ピアノからボーカルが入ってくるあたりの時の流れは至高のひとときでした。 ベースやドラムスが徐々に荒々しく迫ってくる中盤も見事です。
  2 曲目以降はギター主体のサウンドとなり、スワンプ色が濃いギターの弾き語り「Swim Brown Dog」、ブルージーな「Like It Used To Be」、Neil Youngみたいな「How Could You」、バーボンでも飲みながらギターを弾いているようなインスト「Left Handed Lover」と続きます。
  B 面も流れは変わらず、ゆったりとしたミディアム「Evening Is Coming」、アコースティック・スウィング「Indoor Outdoor Lovin’」と進み、大作の「I Wonder」へ。 この曲は久しぶりにピアノの音色も入り、ギターとのオーバーダビングによってアルバムの中でも最も厚みのあるサウンドに仕上がっています。 1曲目につづくハイライトはここでしょう。 ラストの「Still Gone」はギターの音色が硬めな弾き語り。 孤独感とか喪失感みたいなものが全編に漂っています。

  この名盤をリリースした後の Ron Cornelius の活動はよくわかりません。彼のソロ名義の作品はこのアルバムだけとなってしまったようですが、その謎めいた消息不明もこのアルバムの枯れた味わいとシンクロして、このアルバムの評価をゆるぎないものとしているのでしょう。 
  ところが、ネットの威力はすごいもの。 何と Ron Cornelius が 2010 年に「Like It Used To Be」を歌っている映像が YouTube に存在していました。 なんと彼は健在であるばかりでなく、しっかりと音楽と向き合っていたのです。 素晴らしいことではありませんか。

■Ron Cornelius / Tin Luck■

Side-1
I’ve Lost My Faith In Everything But You
Swim Brown Dog
Like It Used To Be
How Could You
Left Handed Lover

Side-2
Evening Is Coming
Indoor Outdoor Lovin’
I Wonder
Still Gone

Produced by Ron Cornelius for Tin Luck Ink.
Engineers : Neil Wilburn & Robin Cable
Album Cover : Henry Beer
Photography : Mr. & Mrs. Elliott Randy
All songs by Ron Cornelius except ‘I Wonder’ & ‘How Could You’

Ron Cornelius : guitar, keyboard
Joe Davis : bass
Paul Distel : drums

Polydor PD5011

Stone House

2011-10-02 | SSW
■Stone House / New Again■

  いよいよ 10 月ということで秋らしいジャケットの作品を取り上げました。 シアトル出身の男女デュオ Stone House が 1978 年に発表したアルバムです。 Stone House はすべての作曲、多彩な楽器とボーカルを手掛ける Mark Brown と Kathy Hundley によるグループ。 アコースティックなサウンドをベースに、二人の伸びやかなボーカルと息の合ったコーラスが堪能できる等身大のナチュラルさが最大の特徴です。 ちょうどジャケットのような草原に佇んでいるかのような清々しさと、心の翳りを投影するような物憂げな感覚とが絶妙に交錯しながら、アルバム全体の色彩感が保たれているという印象です。

  美しいピアノのイントロに導かれた「Those Days」は、KathyとMark が交互にボーカルを務め、次第に重なっていくという展開が見事なバラード。 Tom Sparks による天に駆け昇るようなギターも魅力です。 つづく「Tangled」はギターを軸としたカントリー・タッチの曲。 「Michigans」はピアノとヴァイオリン、そして透明感あるギターの音色が絡み合って、夕暮れのうろこ雲をみているような気分にさせられます。 Mark がひとりで歌いきることで、雄々しくも淋しげな情景を描き切っていました。 アレンジがジャズっぽい「Blue Day」につづく「But Love Me」は、Kathy の独壇場というバラード。 彼女のアルト・ボイスが全編に広がり、ちょうど「Michigans」と対の存在のように感じられました。

  B 面に移りましょう。 「Bless My Soul」は Kathy と Mark のハーモニーが緩急自在に展開される表情豊かな楽曲。 アレンジも素晴らしく、Stone House の典型的なサウンドとして紹介できる仕上がりです。 つづく「Make It New Again」は、リリカルなピアノに Kathy のアルトが重なり、美しいメロディーが奏でられる気品あふれる佇まい。 クリスチャン・ミュージックのような「Father」は Muriel Saunders のヴァイオリンとピアノの間奏部分が聴きどころ。 静寂が打ち破られギターが激しく刻まれ「Denver」へ。 この曲は個人的には今一つですが、つづく「Fallin’ Star」はラストに相応しいスケール感と美しいハーモニーに満たされた楽曲です。 これぞStone House という楽曲でしょう。 彼らが表層的な情緒指向に陥らないのは、ふたりの低音の魅力だということをここで再認識することができました。 
  このようなアコースティックなサウンドを奏でた Mark Brown と Kathy Hundley ですが、どうして Stone House というハードロック・バンドみたいな名前にしたのでしょうか。 その理由は判りませんが、ちょっと勿体ないという印象は否めません。

  さて、このアルバムには 1980 年に AOR の名盤といわれる「Rain Or Shine」を発表した Dave Raynor が参加しています。 当時のシアトル人脈だと思いますが、彼のファンであれば要チェックですね。 もちろん彼のソロ作品を期待してはいけませんが。

■Stone House / New Again■

Side-1
Those Days
Tangled
Michigans
Blue Day
But Love Me

Side-2
Bless My Soul
Make It New Again
Father
Denver
Fallin’ Star

Produced by Mark Brown and Kathy Hundley
Engineered by Jim Wolfe and Cal Wood
All Songs by Mark Brown

Kathy Hundley : vocals
Mark Brown : piano, acoustic guitar, organ, vocals
Garrett Smith : bass
Martin Lund : sax, flute, clarinet
Dave Raynor : electric guitar
Tom Sparks : electric guitar on ‘Those Days’
Muriel Saunders : violin on ‘Father’
Rob Shaw : violin on ‘Michigan’

Windmill Records WM 8447



Rick Lane

2011-09-23 | SSW
■Rick Lane / Then Came A Wind■

  前回に続いて詳細が不明な SSW を取り上げます。 アルバム発表当時はミネソタ州 Wayzara に住んでいた Rick Lane の唯一と思われるアルバムです。 レコーディングはメイン州で行われ、レーベル名も存在しないという自主制作盤です。 レーベル名が存在しないというのは自主制作盤のなかでも珍しいことですが、なぜか品番らしき 10 桁の数字だけが不思議に堂々とクレジットされています。 アルバムの発表年のクレジットが無いので、この数字に何かヒントや暗号が隠されているか思いましたが、とくに何もなさそうです。 
  買った当初は 1970 年代のかなり前半のものだと推測したこのアルバムですが、ある 1 曲の存在で 1976 年以降の作品だということが判明しました。 それは、Paul McCartney の「Silly Love Songs」(邦題は「心のラブソング」)のカバーが収録されているからです。 この曲は 1976 年の 4 月にシングルカットされていますので、Rick Lane が耳にしてカバーしたのは、それ以降ということになります。 ミネソタの自主制作盤にしては、意外にもメジャーなヒット曲のカバーですが、仕上がりはとても素晴らしいもので、Paul McCartney のコアファンの蒐集アイテムになってもおかしくありません。

  このアルバムは Rick Lane のアコースティック・ギター&ボーカルと、Doug Russell のベースによって構成されており、Rick Lane の瑞々しく心洗われるような美しいボーカルが全編にわたって堪能できる作品です。 多くの SSW ファンが理想的なサウンドと考えている領域の中に確実にタッチしており、躊躇せずに名盤と呼ぶことができます。
  クレジットによると Rick Lane は結婚してからメキシコに移住していたのですが、不幸なことに癌に冒されたことを契機に、ミネソタに戻ってきたようです。 その闘病生活のなかで制作されたのがこのアルバム。 そうした背景を想像しながら聴くと、Rick Lane の震える声からは生への欲望、未来への希望、そして神への祈りといったものを感じ取ることができます。 そうした歌詞からはクリスチャン・ミュージック的な要素も強く感じ取れますが、ここにはあくまでも自然体な Rick Lane の姿が投影されており、それがメイン州の冷えた空気感とともに封じ込めらているのです。
   オープニングの「Then Came A Wind」は重苦しい楽曲なので、アルバムの今後の展開を考えると、息がつまりそうになります。 しかし、Lee Sklar を思わせる Doug Russell のベースがリズムを刻む「Twenty-third Paslm」や「Blessed」から、落ち着きを見せてきます。 そして「Silly Love Song」では、オリジナルに登場するメロディーはすべて網羅するなど、多重録音やコーラスのないカバーとしては申し分ない仕上がりです。 自然への畏敬を感じさせる「Tree Song」や「Flyin’ Like A Eagle」とアルバムは充実した流れで A 面を終えます。

  B 面はやや軽くなった感じがするのですが、それは 1曲 1曲が短いからかもしれません。  アルペジオの音色が清々しい「Lost Horizon」、激しい曲調が生へのパワーを感じさせる「You’ve Heard My Voice」、Doug Russell のベースが歌うような「The Lord’s Prayer」、トラディショナルのような「Weave Me The Sunshine」とスムースに進んでいきます。 ラストの「Thank You For The Day」は今日一日、無事に過ごせたことへの感謝の気持ちを表した曲。 病気からの回復を期しているRick Lane の気持ちが痛いほど伝わってきます。 ♪Thank You For The Day♪ を執拗に繰り返すさまは、彼の偽らざる心境なのでしょう。

  秋の夜長に SSW は良く似合いますが、季節的にもぴったりなこのアルバム。 日が短くなった淋しさを感じる夜、人の心にそっとしのびこみ、魂を震わせる力を持っています。

■Rick Lane / Then Came A Wind■

Side-1
Then Came A Wind
Twenty-third Psalm
Blessed
Silly Love Songs
Tree Song
Flyin’ Like A Eagle

Side-2
Lost Horizon
You’ve Heard My Voice
The Lord’s Prayer
Weave Me The Sunshine
Thank You For The Day

Thank you Doug Russel gor the fine bass.
Thank you Syu Davis for producing and engineering
Recorded and mastered at Eight Track Recording Studio, South Blue Hill, Maine

No Label 911068-1877



Paul Carney

2011-09-17 | SSW
■Paul Carney / Threshold■

  詳しいプロフィールのわからない Paul Carney が 1970 年代初頭に発表した唯一のアルバムです。 「Vacation (Spring 1970)」というタイトルの曲があることから、1970 年の作品だとする向きもありますが、この情報だけでそれを結論付けることはできません。 そこで、あまりに少ないクレジット情報をたよりに、このアルバムそして Paul Carney について探ってみました。 ところが、Stanley Kahan と Billy Arnellで検索しても、ほとんど出てきません。 どうやら二人の共同プロデュース作品はほとんど存在しないようなのです。 1968 年の Billboard 誌に二人の名前を発見しましたが、その時点で Billy Arnell が 19 歳だったことが判明した程度です。 このアルバムが仮に 1970 年の作品だとしたら 21 歳ということになります。 そのことから、Paul Carney もおそらく 20 代前半の若さだったのではないかと勝手に思い込みながら、成熟しきっていない果実を食すように、レコードに針を落としてみました。

  控えめなピアノの音色に導かれて始まる「Save This Wednesday」は、落ち着いたバラード。 次第に厚みを増してきてからの女性コーラスがソフトロック的な佇まいです。 つづく「Lady Love」も似た傾向ですが、今度はホーンセクションが色づけ役として登場。 そのせいで少しファンキーなアレンジに仕上がっています。 「When I’m Not With You」はギターと軸にした音数の少ない楽曲。 リズムセクションが排除されたことで、耐えきれない淋しさや喪失感がじわりと伝わってきます。 ピアノ系の楽曲に戻った「Don’t Go Away」は広がりのあるミディアム。 曇り空の下にいるような翳りからは英国的なものを感じます。 A 面ラストの「I Need To Find Myself」はやや毛色の違うソウルフルなアレンジ。 ホーンセクションも耳障りな感じがして、ここまでの雰囲気を損ねてしまっている気がして残念です。

  B 面に入ります。 「Product Of The Past」は複雑なピアノからプログレ的な展開となり意表を突かれます。 ちょうど Andy Pratt の初期のような異彩を感じますが、ボーカルパートが始まると落ち着きを見せてスケール感のあるストリングスも登場します。 この曲のアレンジはさきほど述べた若き Billy Arnell によるものでした。 つづく「There We We’re Together」は典型的なピアノ系バラード。 のちに映画音楽界で活躍する Lee Holdridge の気品あふれるアレンジが魅力的です。 「Pawned My Soul」はその雰囲気を引き継ぎ、より浮遊感を加えたような仕上がりで、このあたりの流れがアルバムのハイライトという印象です。 つづく「Hangover」は Al Gorgoni がアレンジでクレジットされた小曲。 3 分に満たないインタリュード的な楽曲ですが、間奏部でこのアルバム唯一のギターソロが短めに挿入されてるのは Al Gorgoni の意志表示でしょう。 ラストの「Vacation (Spring 1970)」は逆に 6 分を超える大作です。 この曲ではラストに相応しくPaul Carney のエッセンスがすべて吐き出されていると言えるようなサウンドです。 けして華美なものではありませんが、ストリングスやフルートなどによる荘厳なオーケストレーションと濃淡を鮮明にしたアレンジは見事です。 この曲も Billy Arnell のアレンジということで、彼の才能の片鱗を感じ取ることができました。

  冒頭にも書きましたが、あまりに情報が少ない Paul Carney のアルバム。 おそらくはニューヨーク産だと思いますが、ここに閉じ込められたほんのりとした甘さと切なさは、当時の空気感をそのまま閉じ込めたものでした。 このアルバムは Paul Carney の謎めいた登場と失踪が生み出した、幻のような作品かもしれません。

■Paul Carney / Threshold■

Side 1
Save This Wednesday
Lady Love
When I’m Not With You
Don’t Go Away
I Need To Find Myself

Side 2
Product Of The Past
There We We’re Together
Pawned My Soul
Hangover
Vacation (Spring 1970)

Produced by Stanley Kahan & Billy Arnell
Engineer : Bob Fava

Mercury SR-61345

Gene Corbin

2011-06-19 | SSW
■Gene Corbin / Caribbean Moon Over Pittsburgh■

  ペンシルベニア州ピッツバーグ産のほぼ自主制作盤と思われる Gene Corbin のアルバムです。 タイトルからは、Nick DeCaro で有名な「Under The Jamaican Moon」を思い出しますが、多少は意識したのかもしれません。 アフロヘアでギターを抱える Gene Corbin の姿を見ると、彼が抱いていたカリブ海へのイメージは夢とか妄想に近いものだったような気がします。 レゲエのリズムを取り入れたとか、カリビアン特有の楽器が使われているという形跡はありません。 むしろ、Gene Corbin はアコースティック・ギターを軸としたオーソドックスな SSW だと思います。 ニューイングランドの独特の森の香りや冷たい空気感がまったくないのは、彼の南国指向の現れですし、それをタイトルとして伝えたかったのでしょう。

  アルバム全体はミディアムなテンポに支配され、Gene Corbin の低音ボイスがマイルドに楽曲を包み込んでいます。 SSW の声としてはかなり低いものなので、苦手な人も少なからずいるかもしれません。 弾き語りの声ではなく、むしろソウル系の声だと思います。 ただ、それを彼が自己分析して起用しているのか時おり挿入されるソプラノ・サックスの音色が好対照となっており、効果的に使われています。 そのクールな音色と鋭角な存在感は、実はこのアルバムの大きな魅力となっています。

  その影の主人公は David Kreimer という人物です。 A 面では「Hurry Home Babe」と「Please Stay」で、B 面では「New England Song」で見事なソロを決めています。 クレジットを良く見たら彼は「New England Song」では Gene Corbin を追いやってリードボーカルまで務めていました。 プロデューサーとエンジニアにも彼の名前があるので、このアルバムの主導権は David Kreimer のほうに分があったのではないかとすら思ってしまいます。 

  Gene Corbin のトロピカルな嗜好が表れた楽曲としては、「Caribbean Moon」や「Hole In My Pocket」などがあり、ジャズっぽい雰囲気が強く出た「Backpackin’ Blues」も彼の持ち味がうまく出ていました。 深みのあるバラードとしては、「Point Of View」や「Wanderer’s Waltz」などもあげられるでしょう。

  このアルバムが発表されたのは 1978 年ですが、この作品を同時代のクオリティの高い SSW や AOR 作品と比べてしまうのは酷かもしれません。 ギターの音色やアレンジ、曲の水準もそれほど悪いものではないのですが、どことなく野暮ったい雰囲気が全体を覆っているのが気になります。 それを唯一、突き破るのが前述のソプラノ・サックスだったというわけです。 Gene Corbin の唯一と思われるこのアルバムは、その後の消息不明を必然と思わせるような微妙な完成度とともに、徐々に人々の記憶から消えていくことでしょう。

■Gene Corbin / Caribbean Moon Over Pittsburgh■

Side-1
Caribbean Moon
Hurry Home Babe
Tiffany Jean
Human Bean
Please Stay
Linin’ Track

Side-2
New England Song
Hole In My Pocket
Country Dream
Backpackin’ Blues
Point Of View
Disillusiooned Gypsy
Wanderer’s Waltz

Produced by David Kreimer and Gene Corbin
Engineers : Jerry Reed, Davie Kreimer, God, Bill Thompson
Recorded, mixed and mastered at Jeree Recording Studio, New Brighton, PA

Gene Corbin : acoustic guitar, lead vocals(except track 7), hand and mouth
David Adomites : bass on tracks 10,12, vocals
David Kreimer : soprano and alto saxophone, vocals, lead vocals on track 7
Mike Evert : bass on track 1,2,4,5,7,8,9,11
Howard Bennett : drums and percussion
George Jones : congas
Carol Chew : flue on track 5
Matt Blistan : trumpet on track 11

Jeree Records 811077X-174

Georgie

2011-05-04 | SSW
■Georgie / Only Me■

  せっかくの連休なのに、腰痛になってしまいしばらくパソコンに向かうこともままならないほどでした。 自宅で静養しながら、何気ない普段の生活のありがたみを切に感じているところです。

  さて、今日取り出したのは、5 月の陽気に相応しいメロウなブリーズ感覚あふれる Georgie の唯一の作品です。 彼の本名は George Rizzo といい何と 14 人兄弟の末っ子。 6 歳の頃から働きはじめたという経歴は、今では児童労働となってしまい公表できない事象ですが、それほど経済的には厳しい環境の中だったのでしょう。 このアルバムが発表されたのは 1971 年に George Rizzo が何歳だったのか不明ですが、彼が何百もの町をヒッチハイクをしながら仕事を転々としてきた経験から生み出された音楽がここに凝縮されていました。 とくに暇があればつま弾いていたであろうギターの音色はこのアルバムの最大の魅力です。

  レコードに針を落とした瞬間、鮮やかなギターの音色にのけぞってしまう「Scarlet Lace」でアルバムはスタート。 この珠玉の名曲だけで、Georgie のサウンド指向がほぼ把握できます。 ソフトロックのようでもあり、ネオアコのようでもある「Fly」、シンプルな構成のなかにも情念豊かなボーカルが力強い「The Brown Eyed Kind」とアルバムは進行。 ピアノを中心とした MOR 風バラード「A Man’s Kind Of Woman」は彼の個性が前面に出てこないところが残念な印象。 ギターを再び抱えた「When The Good Times Rolled」は憂いを帯びた弾き語り。 解き放たれたような弦の響きと疾走感が心地よい「A Million Miles High」で充実したA面が締めくくられます。

  B 面に移りましょう。 まずは、優しい木漏れ日のようなミディアム「Mrs. Martin」で納得のいく立ち上がり。 ノスタルジックなホンキートンク・ピアノが印象に残る「Candy Store Blues」は後半に登場するブズーギも効果的。 つづく「Next Summer」は Ben Watt のソロ「North Marine Drive」に入っていてもおかしくない曲。 ほんわりした浮遊感がたまりません。 ひとりぼっちの孤独感を歌った切ないバラード「Only Me」は彼のこれまでの人生を歌ったものなのでしょう。 ヒット向きではないのですが、唯一シングルカットされた曲です。 つづく「Your Cake And Eat It」もしっとりした弾き語り。ギターの音色が荒っぽいけどまろやかという不思議な感じです。 ラストの「I’ll Chase Your Tears Away」では、映画のラストシーンのような安らかなムードに包まれならがエンディングを迎えていきます。

  このようにアルバムをレビューしてみましたが、このアルバムは隠れた名盤として語りつがれてもおかしくないないクオリティということを再認識しました。 1971 年という時代には早すぎた感すらあります。 このまま何枚かアルバムをリリースしていけば、Kenny Rankin や Michael Franks のようになったかもしれません。 あるいは、もっと AOR に寄った進化もあったかもしれません。 しかし、不幸なことに GWP はこのアルバムを最後の作品としてリリースした後に、倒産してしまったのです。 それを知った彼の失意はいかほどのものだったのでしょうか。 苦労して手にしかけた夢が途絶えてしまったのです。

  彼のその後については誰にもわかりませんが、自身のリリースはおろか、セッションとしての参加や楽曲提供もほとんど無かったようです。 ところが、興味深いサイトを発見しました。 Explore Talent というサイトに彼が登録していたのです。 それによると彼は現在 60 歳、まだニューヨークに在住しており、まだ音楽活動に意欲を燃やしているようでした。 どんなに辛いことがあっても乗り越えていく… 彼もそうした強い人間のひとりだったのです。

■Georgie / Only Me■

Side 1
Scarlet Lace
Fly
The Brown Eyed Kind
A Man’s Kind Of Woman
When The Good Times Rolled
A Million Miles High

Side 2
Mrs. Martin
Candy Store Blues
Next Summer
Only Me
Your Cake And Eat It
I’ll Chase Your Tears Away

Produced by Andy Wiswell
Published by Five Stars Music Inc.
Words and Music by George Rizzo
Conducted by Dick Hyman
Recorded at Century Sound Studio
Engineer : Joe Benneri

GWP records / ST-2040

Bonfield-Dickson

2011-04-18 | SSW
■Bonfield-Dickson / Portage■

  桜の花も散り、陽気も安定してきていよいよ春本番です。 本来であればこの季節の訪れを手放しで喜びたいところですが、今年はそんな気分に浸ることにためらいを感じてしまいます。 しかし、うつむいてばかりもいられないので、この季節にピッタリな爽やかでフレッシュなレコードを取り出してみました。 
カナダ出身の Bonfield-Dickson が 1976 年に発表した「Portage」は誰もが経験した甘酸っぱい学生時代の思い出に似た清々しさに満ちたフォークロックの名盤です。 Bonfield-Dickson のボーカルやハーモニーは新緑のなかを駆け抜けるそよ風のように感じられ、アコースティックで安定感のあるアレンジに包まれて、サウンド全体が思い出の一コマのように視覚的に訴えてくる感じがします。 その一因は A 面ラストに収録されている「オー!シャンゼリゼ」(原題は「Aux Champs Elysees」)のせいかもしれません。 誰もが知っている曲ですが、レコードでこの曲を聴くという経験は意外でしかも新鮮だからです。

  アルバムは「Aux Champs Elysees」を除いて、大雑把にアップ系とスロウ系に大別できます。 アップ系にはホーンセクションが導入されることが多いのですが、該当するのは「Don’t Know How To Laugh」、「Keeps You Riding High」そして「Cool Baby」の 3 曲でした。 このなかで秀逸なのはオープニングを飾る「Don’t Know How To Laugh」でしょう。 全体的には爽やかで軽快なポップチューンなのですが、ホーンセクションのアレンジなどは 60 年代末のソフトロックのよう。 途中でテンポダウンするアイディアも効果的です。 
  残る 7 曲はスロウ系ですが、とくに出来がいいと感じるのは、A 面では「Gypsy Saviour」です。 リズムセクションがほぼ排除されたこの曲は、うっすらとしたヴェールに包まれたようなスロウなワルツ。 フルートの淡い音色がメロディーに彩りを添えているようです。 B 面では「Take Time」から「Can’t Pretend To Love You」への流れがきれいです。 前者は♪今日のために歌おう。いまのために笑おう♪というメッセージが心に染み入るバラード。 後者は♪きみを愛しているふりなんてできない♪という意味深なメッセージながらも優しいメロディーとメロウなアレンジが美しい楽曲でした。 
  ラストの 2 曲の流れも悪くありません。 「Until Yesterday」はストリングスの温かみに抱かれた素朴なラヴソング。 そして、ラストの「Wendy」は静かな入りから徐々に高揚していく展開に富んだバラード。 僕はこの曲を聴くとなぜか The Beatles の「Dear Prudence」を思い出してしまいます。 ギターの音色とメロディーに一瞬近い部分があるからなのでしょう。

  Bonfield-Dickson が残した唯一のアルバムは、カナダのフォークシーンのなかでも指折りの名盤だと思います。 そのサウンドの鍵を担ったのは、カナダ産のアルバムでしばしば名前を見かける Jack Zaza でした。 トロントにある Zaza Sound Productions という彼のスタジオでレコーディングされたことからも分かるように、Jack Zaza のサポート無しでは、このアルバムは存在しなかったのかもしれません。 
  このアルバムをお持ちの方はお気づきでしょうが、Bonfield-Dickson は彼らの本名ではなく、Henri Audetと Jim Duchesneau の二人組です。 ともにフランス系の名前ですが、どうして彼らが Bonfield-Dickson と名乗ったのかについては、謎のままです。 Jim Duchesneau が 2004 年にこのアルバムについてほんの少し語ったサイトを発見したのですが、そこにもその理由は書かれていませんでした。 おそらく本国でも存在が風化しているこのアルバム。 ユニット名の由来をいまさら詮索する人は、どこにもいないのかもしれません。

■Bonfield-Dickson / Portage■

Side-1
Don’t Know How To Laugh
The Thousand One Twenty Days
Riding High
Gypsy Saviour
Born Dead
Champs Elysees

Side-2
Take Time
Can’t Pretend
Cool Baby
Until Yesterday
Wendy

Produced by Ron Harrison, assited by Paul Zaza
Executive Producer : Ginny Ridpath
Recorded at Zaza Sound Productions, Toronto, Canada 1976

Bonfield-Dickson : Henri Audet & jim Duchesneau : vocals, guitar

Eugene Amaro : tenor sax
Andy Benac : strings
Laurie Bower : trombone
Arnie Chycoski : lead trumpet
Art Devilliers : guitar
Ron Harrison : keyboards
Barry Keane : drums
Moe Koppman : alto sax, flute
Russ Little : trombone
Bob Lucier : steel guitar
Beauna Neilson : strings
Jack Neilson : strings
Frank Radcliffe : strings
Barul Sugarman : strings
Erich Traugott : trumpet
Case Ysselstyn : strings
Jack Zaza : bass, english horn, alto sax, clarinet, flute, harmonica,oboe

Ahmek records CSPS1969

Carlson Roberts

2011-02-20 | SSW
■Carlson Roberts / Sketches■

  アメリカ北西部に位置するワシントン州の州都オリンピアのマイナーレーベルから 1984 年にリリースされた Carlson Roberts のアルバム。 詳しいキャリアや風貌すらも分からない謎だらけの Carlson Roberts ですが、おそらくこれが彼の唯一のアルバムだと思っています。 歌詞カードやクレジットにもう少しヒントを残してほしかったところですが、唯一ベースで参加している Bruce Whitcomb だけは、ジャズ界で多くのレコーディングに参加しているセッション・ミュージシャンと同一ではないかと思われます。

  さて、外見からはそのサウンド指向を想像するのが難しいレコード。 どこにでもいそうな SSW でありながら 1970 年代のウェストコースト風のサウンドとは明らかに一線を画しています。 これと言って特徴のないアレンジやサウンドに、リバーブのかかった浮遊感のあるボーカルが重なってくる曲調が多く、それらが何もなかったかのように淡々と進んでいくのです。 音楽を通じて何かを伝えたいという気持ちが、ほとんんど感じられない無機質な感覚が、このアルバムの最大の特徴だと思います。 

  アルバムの冒頭を飾る「Sketches」は耽美的なサウンドがまるでフレンチ・ポップスのように聴こえる印象的な楽曲。 以前、フランス映画で似たような主題歌があったような気がするのですが、思い出せませんでした。 ニルソン風のポップ・ソング「Everyone’s An Artist」、物憂げなバラード「Diary」、スロウなソフトロック調の「If I Could Live On Your Love」と淡々とアルバムは進行。 「Sneakin’ Away From L.A.」では、イギリスの同時代のネオアコに近いサウンドに頼りなげな薄いボーカルが絡み合います。

  B 面に入ると、Carlson Roberts の多様性がより強く表れます。 清々しいマイナスイオンに包まれたかのような「David’s Song」、落ち着きのあるカフェ・ミュージックのような「Bedtime Ends Each Day」まではオーソドックスな展開が続きますが、ここから展開は大きく変化していきます。 荒削りなバイオリンの音色で始まる「School Of Hard Knocks」は明らかに場面を変わってくる印象です。 しかし、その方向性は定まっていませんでした。 つづく「Old Golden Words」は、一転してピアノとバイオリンのアンサンブルが中心となった美しい楽曲。 ボーカルパートがほとんどが無く、それだけにアルバムのなかで際立った気品と完成度を感じさせます。 間違いなく、このアルバムを代表する最高の 1 曲と言えるでしょう。 つづく「Trumpet Sketches」はタイトルが明示しているようにオープニングの「Sketches」がニニ・ロッソのように演奏されるインスト。 ダサいシンセのアレンジも加味されて、ここまで誰のアルバムを聴いてきたのかすら忘れてしまいそうです。 しかし、このラスト 2 曲の危うい配置は何を目論んでいるのでしょう。 あっさりしたフェードアウトとともに、不安感や欠如感を残して、アルバムは幕を閉じて行きました。

  こうしてアルバムを通して聴いてみると、このアルバムの特異な立ち位置を改めて痛感します。 存在感といえるほどの個性は無いし、人の心を揺り動かす強烈な重力もありません。 さきほど欠如感という言葉を使いましたが、ここには何かが足りないのです。 しかし、もしかするとそれは充足した世界のリスナーからみた一方的な感想かもしれません。 そもそも、Carlson Roberts にはリスナーのことを意識するということは無かったし無意味だったのに違いありません。 自主制作ならではの自由奔放な創造がこのレコードには存在し、それは奇妙な違和感を伴って忍び寄ってくるのです。

■Carlson Roberts / Sketches■

Side 1
Sketches
Everyone’s An Artist
Diary
If I Could Live On Your Love
Sneakin’ Away From L.A.

Side 2
David’s Song
Bedtime Ends Each Day
School Of Hard Knocks
Old Golden Words
Trumpet Sketches

Produced by Robert and Margie Anderson

Background vocals : Nathan Anderson, Kathy Anderson, Robert werner, Carlson Roberts
Drums : Scotty McDivott
Bass guitar : Bruce Whitcomb, Blaine Allan
Bass Syntho : Bruce Whitcomb
Guitar Parts acoustical, acoustical 12 string and electric : Michael Patrick
Syntho all : Bruce Whitcomb
Clavichord : Geno Keys
Piano : Geno Keys, Margaret Smith
Fiddle and violin : Everlyn Hall
Trumpet : Greg Allison
Arrangements : Anderson , Whitcomb and Patrick

Olympic Gold Records

Randy Edelman

2011-02-13 | SSW
■Randy Edelman / Switch Of The Seasons■

  SSWとしての Randy Edelman の現時点での最新作となるアルバムは 1985 年の作品です。 前作のロンドン録音から彼はさらに放浪し、今作はストックホルム録音となりました。 北欧でのファンの支持が根強かったのか、この流浪の理由はわかりませんが、リズム・セクションに現地のスタジオ・ミュージシャンを起用するなど、かつての西海岸で名うての名手を率いてレコーディングしてた過去のキャリアに比べれば地味な印象は拭いきれません。
  
  前作「On Time」が時代に乗り遅れた消化不良の作品だったことを考えると、この作品はモダンなジャケット・デザインから予測できるように、ピアノの音色は影をひそめ、きらびやかなシンセサイザーの音がアルバム全体の色を作り出しています。

  そのシンセのきらびやかな音色で始まる「Turn The World Around」は、イギリスのニューウェーヴのような出だしですが、まろやかで情緒豊かな Randy Edelman のボーカルは健在。 曲が進行するうちに安心感が増していきます。 70 年代だったらピアノで演奏したに違いない「Everything Is Possible」もやはりシンセをバックにした弾き語り。 時代が経るとチープに聴こえてしまうのは、当時のシンセの薄い音の仕業です。 平均的な仕上がりのミディアム「Growing Older」を挟んで、ピアノの音色が懐かしさを誘う「Young England」です。 1970 年代の Randy Edelman を彷彿とさせるメロディーとサウンドは、間違いなく A 面のハイライト。 軽快なポップの「The Music Still Plays」はタイトルともなった Switch Of The Seasons が歌詞に何度か出てくることもあって重要なナンバーなのでしょう。 当時の流行と Randy Edelman の持ち味がうまく融合したミディアムです。

  B 面に移りましょう。 パーカッションとシンセに導かれで始まる「Look Both Ways」は一瞬ですが、Patrick Morazのソロを思い出します。 つづく「It’s A Long Way To Heaven」は往年のキーボード・センスと壮大な展開があいまった傑作。 少年少女向けの SF 冒険映画の主題歌にぴったりな仕上がりです。 つづく「The Italian Star」はお得意のピアノ系バラード、メインストリームのポップな展開「Blowin’ Us Lovers Away」とレベルの高い曲が続き、品のある70年代の作風がよみがえってきます。 ラストの「My Ole Man」は予想外のアップテンポで陽気なお祭り気分でアルバムはエンディングを迎えました。 まだ次の展開がありそうな予感を残したかったのでしょうが、この曲を最後に SSW としての Randy Edelman は封印されてしまったのです。 

  さて、Randy Edelman はこのアルバムの前年 1984 年にセルフカバーアルバム「Randy Edelman And His Piano」をリリースしています。 同じ Elecstar から発売されたこのアルバムは CD 化されていますので、「Switch Of The Seasons」も是非 CD 化してほしいものです。 彼の最新作にあたるアルバムが、実は最も入手困難なレコードになってしまっているのも残念なことですので。

  と、ここまで語っておきながら、どんでん返しとなる情報を入手しました。 それは、Randy Edelman のニューアルバムが今年の 3 月 14 日に発表されるのです。 しかも、どうやらそれは映画音楽ではなく、SSW としての作品とのことでした。 「The Pacific Flow to Abbey Road」というタイトルとジャケット写真も発表されています。 無事にリリースされれば 26 年ぶりとなる彼の新作とどんな思いで向き合えばいいのでしょうか。 期待と不安が交錯しながら、その時を待ちたいと思います。

■Randy Edelman / Switch Of The Seasons■

Side 1
Turn The World Around
Everything Is Possible
Growing Older
Young England
The Music Still Plays

Side 2
Look Both Ways
It’s A Long Way To Heaven
The Italian Star
Blowin’ Us Lovers Away
My Ole Man

Produced by Pans Edvinson and Randy Edelman
Exective Producer : John Velasco
All compositions written and arranged by Randy Edelman
Recorded at Polar Music Studios, Stockholm, Sweden and Jacobs Studios, Surrey, England
Engineered and mixed by Pans Edvinson

Rutger Gunnarsson : bass
Magnus Persson : drums
Randy Edelman : keyboards and synthesizers
Mitch Dalton : guitar
Frank Ricotti : percussion

Backing vocal on ‘Growing Older’ and ‘Turn The World Around’ : Jackie De Shannon

Elecstar VCLP 010

Randy Edelman

2011-02-06 | SSW
■Randy Edelman / On Time■

  ピアノ系 SSW のなかで最も敬愛するミュージシャンの一人である Randy Edelman を久しぶりに取り上げます。 以前、彼のファーストセカンドは未 CD 化作品という理由で取り上げたことがありますが、本作は CD 化された 20th Centry Records の 2 枚、Arista の 2 枚を挟んだ 7 枚目のオリジナル・アルバムとなります。 Randy Edelman を唐突に取り出した理由は後述することにして、現在は映画音楽家として活躍している彼の SSW 時代の後期にリリースされた 2 枚を今回と次回とで紹介したいと思います。 ともに 1980 年代の作品でありながら、未だに CD 化される気配すらありません。

  Arista からの意欲作「You’re The One」(1979)が不発に終わった Randy Edelman には契約してくれるレコード会社が無かったのでしょうか。 この「On Time」は、1982 年ロンドン録音の作品。 Elton John が設立したレーベル Rocket Records からリリースされました。 しかも Train という二軍扱いのような品番でのリリースとなっており、また参加ミュージシャンの少なさからも、かなりの低予算で制作されたものと推測されます。 目撃事例のないことから北米では発売されなかった可能性が高いと見ていますが、なぜか国内盤は「ロンドン/ L.A.」という邦題で発売されていました。 そのライナーによると Randy Edelman の国内盤が発売されたのは、「Fairwell Fairbanks」以来だったそうです。ちなみに国内盤は曲順がかなり入れ替わっていますので、要注意です。 今日はオリジナル盤の曲順に沿って、アルバムをレビューして見ることにしましょう。

  アルバムは、奥方 Jackie De Shannon との共作「Nobody Made Me」でスタート。 往年のエデルマン節全開と言えるメロウなメロディにはメランコリックな装いすら感じます。 ちなみに、この曲には Elton John とのデュエットで有名な Kiki Dee もコーラスで参加しています。 つづく「Please Don’t Stop Remembering」はミディアムで緩やかな曲調を継続するも、やや鮮度に欠ける印象。 80 年代風のシンセの音色にハッとさせられる「Dinner For Two At Su Sing Wu」は映画音楽風のインストゥルメンタル。 タイトル通りの東洋風のメロディーが華麗な印象を残しますが、やや冗長なのが残念。 14 ラウンドで大逆転するボクサーのことを歌った「Round Fourteen」は拍手の SE などの過剰な創作感が耳についてしまいます。 「Turn Around」も彼の真骨頂という曲調なのですが、過去の名曲を凌ぐレベルには達していません。 ミディアムな流れは A 面通して続き、「Half Heaven Half Heartache」で最大の盛り上がりを見せます。 多少、仰々しすぎるきらいはあるものの、それが Randy Edelman の持ち味であり魅力でもあるのです。
  B 面も基本的には同じ流れで進行します。 「Tried And True」、「A Thanksgiving Prayer (Express To Poland)」と壮大なバラードで満腹感をあおります。 とくに後者はピアノ自慢をしたくなる彼の性癖が表れています。 つづく「Katie Go」はサビの部分が最も印象に残る曲で、個人的にはこのアルバムのベストトラック。 「Pretty Girls」は国内盤では A-1 に配置されたポップソング。 唯一のアップテンポ・ナンバーでもあるこの曲を頭に持ってくる意図は十分理解できますが、もっとツボにはまるサビが来るかと思ったら来ない分、期待外れでもあります。 ラストの「Wings」は、「ロンドン/ L.A.」の由来ともなった楽曲。 ラストには必ずしっとりとした楽曲を用意する Randy Edelman なので、安心して聴くことができます。 さりげなくピアノのテクニックも披露しながら、流麗でノスタルジックな味わいあふれる仕上がりが見事です。

  こうしてアルバムをフルで聴いたのは、このアルバムを初めて手にした時以来かもしれません。 B 面の後半にようやく本領を発揮してくる感じですが、全体としては Randy Edelman の魅力が十分に伝わってこないという印象です。 個々の楽曲の質に物足りなさを感じるのも事実ですし、アレンジも工夫が足りないと思います。 Randy Edelman が好きなだけに辛口なコメントになってしまいますが、このアルバムは彼のキャリアのなかでも不本意な出来と言わざるを得ないでしょう。 アルバムは必然的に好成績を残すことはなく、彼は Rocket Records を離れることとなります。
  次回は、1985 年にリリースされた「Switch Of The Seasons」をご紹介します。

■Randy Edelman / On Time■

Side 1
Nobody Made Me
Please Don’t Stop Remembering
Dinner For Two At Su Sing Wu
Round Fourteen
Turn Around
Half Heaven Half Heartache

Side 2
Tried And True
A Thanksgiving Prayer (Express To Poland)
Katie Go
Pretty Girls
Wings

Produced by Randy Edelman and Steve Brown

Randy Edelman : keyboards and vocals
Herbie Flowers : bass
Barry Morgan : drums

Phil Palmer : guitar
Mitch Dalton : guitar
Chris Hunter : sax, woodwind
Guy Barker : trumpets
Frank Ricotti : vibes
Steve Brown : tambourine

The angels on’ Nobody Made Me’ and ‘ Tried And True’ are Jackie De Shannon and Kiki Dee
The boys on ‘A Thanksgiving Prayer’,’ Tried And True’ and ‘ Please Don’t Stop Remembering’ are Tony Rivers, Allan Carvell and Stu Calver
Synthesizer programms by Derek Austin and Chris Payne
Strings arrangements on ‘Su Sing Wu’ and ‘Wings’ by Randy Edelman
All other strings and conducted by Richard Niles
Musical arrangements by Randy Edelman
Recorded at Town House Studios, London, England

Rocket Records / Train 20



James Durst

2011-01-23 | SSW
■James Durst / Songsmith■

  Songsmith とは「作曲家」という意味。 ほとんど見かけない表現なので、古語に近いものかもしれません。 以前、The Songsmith という 3 人編成のグループを取り上げたことがありますが、この言葉を目撃したのは、それ以来の 2 回目です。

  アルバムは A 面がライブ録音、B 面がスタジオ録音という構成。 ともに、イリノイ州でのレコーディングです。 品番が PX01ということで、Phoenix Songs というマイナー・レーベルの最初のリリースとなったレコードと推測しています。 幼少のころ The Kingston Trio や Brothers Four で音楽に目覚め、その後 Pete Seeger、Tom Paxton、Phil Ochs そして Bob Dylan の影響を受けたという James Durst ですが、その傾向は A 面に強く反映されています。

  ライブ録音の A 面は James Durst のギターの弾き語りを軸に、曲によってはブズーギ、ハープシコード、マンドリンなどが彩りを演出しています。 ライブ録音であることを忘れてしまうかのような静寂のなかで淡々と進行するさまは、Phil Ochs のライブ盤と同じ雰囲気です。 曲が終わって、一斉に拍手が入るのですが、歓声は少しも入らないので、肩のこるような硬さが終始つきまといます。 1978 年に Northwestern University のホールでレコーディングされたものですが、この時代性と場所を考えると、不思議な雰囲気です。

  スタジオ録音の B 面に入ると、楽器の種類も増え、フォークよりも SSW 的な居心地に変化していきます。 子供の声の SE から始まる「Next To You」は後半部に挿入される薄いシンセとリリカルなピアノの絡みが印象的なミディアム。 AOR とまでは行かないまでも心地よい浮遊感が魅力となっています。 つづく「To Jesus」は Gram Parsons 直系なカントリー。 Anne Schwartz という女性が Emmylou Harris と同じような息の合ったコーラスを聴かせます。 「Do It For You」はスロウなワルツでリラックスムード満点の楽曲。 感情を抑制したボーカルと演奏、そして心の乱れを投影しているかのようなフルート・ソロが素晴らしい出来です。 個人的なアルバムのベスト・トラックです。 ホーンセクションの導入部からいきなりスワンプに展開する「Credo」は A 面と同じミュージシャンとは思えないほどカラフルなアレンジ。 1974 年に作曲したということなので、James Durst の音楽指向の変移はどうなっていたのか混乱してしまいます。 ラストの「Welcome Home」も 1974 年の曲ですが、こちらはオーソドックスなバラード。 ボーカルの伸びと哀愁あふれるサックスの音色が心に染み入るエンディングを演出しています。

  1978 年にリリースされたこのアルバムは James Durst のファースト・ソロ・アルバムだと思われますが、彼の公式サイトにはこのアルバムに関する記載がまったくありませんでした。 すでに入手困難なものを載せない方針だったのでしょうか、その理由は判りませんが、1970 年代の SSW 作品が好きな方であれば、モノクロの雰囲気あるジャケットも含めて、気に入っていただける内容だと思います。

■James Durst / Songsmith■

Side 1
Cyprus
La Chanson De Massage
Nureyev’s Feet
These Gifts
Wish I Were Here

Side 2
Next To You
To Jesus
Do It For You
Credo
Welcome Home

Produced by James Durst
All songs written by James Durst
Side 1 engineered by Gary Gand and recorded live in concert July 15, 1978
Side 2 engineered by John Miller

James Durst : vocal, guitar
Robert Ganz : bouzouki, second guitar, mandolin
Dan Tinen : harpsicord, wind chimes, piano
Jim Tullio : acoustic bass
Larry Key : flute
Michael Gerry : electric bass
Jim Hines : percussion
Joan Burnstein : strings synthesizer
John Miller : strings arrangement
T.C. Furlong : pedal steel
Luther Didrickson : trumpet
Stan Ryberg : trombone, bass trumpet, horn arrangement
Anne Schawartz : background vocal
Vicky Hubly : background vocal
Judy Storey : background vocal
Josie deChristopher : background vocal

Phoenix Songs PX01


David Habeck

2010-12-30 | SSW
■David Habeck / The Circle Meets Itself Each Time Around■

  早いもので今年最後の投稿となります。 毎年、最後に紹介するアルバムは、その年の最大の収穫、もしくは自分のコレクションを代表する名盤なのですが、今年の David Habeck は前者にあたります。 彼の存在と音楽については、レコードをオーダーするまで知らなかったので、長年追い続けてきた作品というわけではありません。 何か惹かれる臭いを感じたものの、こうして年末の作品として取り上げるとは思ってもみませんでした。

  David Habeck の唯一の作品は 1981 年に発表されたもの。 ウィスコンシン州を拠点にしていたマイナー・レーベル「Makin’ Jam」からのリリースです。 一部のネットでは、Dreamy rural folk psyche と表現されているようですが、このアルバムには不思議な浮遊感、生気の希薄さ、破綻しそうな繊細さ、といったものが危ういバランスで同居していました。 美しいアコースティック・ギターとパーカッションがサウンドの中心となっていますが、誰もいない森の中で独り言をつぶやいているような危険で私的な世界が封じ込められているのです。

  アルバムはパーカッションがギターに先行して引っ張る印象の「I’m Gonna Sail」で幕開け。 David Habeck の頼りなげなボーカルは、すでに掴みどころのない魅力を発揮しており、コーラスの Toni Rades との息もぴったり合った名演となっています。 Ben Watt の持つ陰鬱な雰囲気に近い「Steady She Goes My Friend」はイギリス的な佇まい。 つづく「Dancing In A Sun Stream」は究極のドリーミー・サイケ。 ギターとパーカッション、儚いコーラスが紡ぎ出す奇跡的な瞬間がここには刻印されており、個人的なアルバムのハイライトとなっています。 内向性の強いフォーク「Twenty Years Now」を挟んで、「Dudley Doo-Right」へ。 この曲はバンジョーの音色からして、カントリー色の表れたルーラル・ナンバー。 A面ラストにして、ようやく深い落葉樹林から草原に抜け出たような気分になります。

  B 面はタイトル曲の「The Circle Meets Itself Each Time Around」から。 何か哲学的なメッセージのようにも感じられる曲名ですが、アルバムのなかでは明るめのシンプルなもの。 Toni Rades とのハーモニーが聴きどころです。 続いては、ジャズ&ボサノヴァ風の雰囲気でカフェ・ミュージックの様な「Leisure Time」、Toni Rades とのそよ風コーラスが美しい「The Aftermath」と淡い景色が続きますが、「Daisy Lady」が唯一残念なバンジョー系カントリー。 けして悪い出来ではないのですが、アルバム全体の統一感と完成度を考えると、マイナスに作用してしまうことは否めません。 ラストの「What The Morning Brings」では、いつもの David Habeck の世界に戻り、何事もなかったかのように静かにアルバムは閉じていきます。

 この素晴らしいアルバムの秘密を探る唯一の手掛かりは、プロデューサーの Skip Jones でしょう。 ウィスコンシン州を代表する SSW でもある彼のソロ作品は未聴ですが、彼が David Habeck の才能を見出し、レコーディングの力添えをした可能性は高いと思われるのです。 Skip Jones の公式サイトには問い合わせ先も出ているので、David Habeck が今どこで何をしているのか、尋ねてみることも可能ですが、その行為が正しいことなのか判りません。 おそらくウィスコンシンでも、彼は幻のような存在で、謎めいた消息不明だけを残しているような気がするからです。

  今年もおつきあいくださいまして、有難うございます。 良いお年をお迎えください。

■David Habeck / The Circle Meets Itself Each Time Around■

Side 1
I’m Gonna Sail
Steady She Goes My Friend
Dancing In A Sun Stream
Twenty Years Now
Dudley Doo-Right

Side 2
The Circle Meets Itself Each Time Around
Leisure Time
The Aftermath
Daisy Lady
What The Morning Brings

All songs by David Habeck
Produced by Skip Jones
Arranged by David Habeck

David Habeck : vocals, acoustic guitar
Eric Blite : acoustic guitar on ‘Steady She Goes My Friend’ and ‘I’m Gonna Sail’
Kurby Hoffman : banjo
Michael Duebleil : bass
Jeff Schneider : drums , congas and cabasa
Toni Rades : vocals
Greg Habeck : voice on ‘Dudley Doo-Right’

Maikin’ Jam M.J. 1001

Wayne Rostad

2010-12-25 | SSW
■Wayne Rostad / Writer Of Songs■

  クリスマス寒波が到来して、日本海側は大雪のようです。 これでスキー場も何とか営業開始できるようになるのでしょう。 もう 1 週間早ければお客さんも余裕を持ってスケジュール組めたでしょうけど、こればかりは仕方ありません。
  
  毎年、冬になると雪景色のジャケットのレコードを紹介しますが、Wayne Rostad のデビュー・アルバムもその仲間入りです。 1979 年に発表されたこのアルバムは、ナッシュビルやトロントでレコーディングされたもの。 1947 年生まれという Wayne Rostad が 32 歳で作り出した作品です。 

  アルバムはシングル・カットされた「Willie Boy」で幕を開けます。 この曲はカナダのカントリー・チャートで最高 9 位を記録したスマッシュ・ヒット曲ですが、それほどキャッチーな曲ではありません。 つづく「Good Time Lady」、「The Year McLaren’s Store Burned Down」とスロウな楽曲が続くに従って、Wayne Rostad の男臭さが前面に出てきます。 とくに後者は扇情的なストリングスと哀愁あふれるコーラスが音に厚みを加えて、奥行きと深みのあるバラードに仕上がっています。 ギターのアルペジオが心地よい「Dollard Marlowe」、典型的なカントリーワルツ「Highway Eleven」と弛みなく流れていきます。

  B 面に入っても安定した楽曲が続きます。 アルバム・タイトルにも引用された「Baby, Lady, Poet And Writer Of Songs」は懐深い優しさと余裕にあふれた傑作ミディアム。 アルバムを代表する 1 曲を選ぶとしたらこの曲でしょう。  標準的なカントリー「Ryan’s BP Station」をはさんで、広がりのあるバラード「We Should Have Been Friends」へ。 ストリングスとペダル・スティールの音色が郷愁を誘う様は、まぶたの中の夕焼けのようです。 ここからのラストまではレベルの高いバラードが続きます。 セカンドシングルとなった「Ridean Street Queen」は流れを汲んだ素晴らしいワルツ。 ラストの「Take Me As I Am」はピアノの音色が印象的なバラード。 もう 1 曲あったらおなか一杯になりすぎるという程よい曲数で、アルバムはゆるやかにエンディングを迎えていきます。

  このように、このアルバムは数多くのカントリー系の SSW 作品のなかでも、バラードを中心としたマイルドな味わいの濃い傑作だと言えるでしょう。 テケテケしたバンジョーが煩わしかったりという場面はいっさいありません。 そうした点からも、カントリーであることを意識せずに聴くことができるアルバムです。
  故郷の家に向かい新雪を踏みしめる男。 男のダンディズムを表したジャケットも壁に飾りたくなるような出来映えですが、この伊達男 Wayne Rostad は地元 CBC テレビ場組のホストを 20 年以上勤めたりして、カナダではかなり有名な存在のようです。 公式ページも充実しており、このアルバムも CD 化されて販売されていました。

■Wayne Rostad / Writer Of Songs■

Side 1
Willie Boy
Good Time Lady
The Year McLaren’s Store Burned Down
Dollard Marlowe
Highway Eleven

Side 2
Baby, Lady, Poet And Writer Of Songs
Ryan’s BP Station
We Should Have Been Friends
Ridean Street Queen
Take Me As I Am

Produced by Dallas Harns, Gary Buck
Recorded at MBS Elmira, RCA Nashville, Manta Tronto

Mike Francis : electric guitar, acoustic guitar, fretted dobro
Pete Wade : electric guitar, slid dobro
Bobby Thompson : acoustic guitar
Keith McKay : acoustic guitar
Al Brisco : pedal steel, slide dobro
Lloyd Green : pedal steel
Dave Lewis : drums, percussion
Buddy Harmen : drums
Greg Smith : electric bass
Joe Allen : electric bass
Rob Asrelatine : acoustic piano, electric piano, synthesizer
Pig Robbins : acoustic piano, electric piano
Randall Prescott : monte harp, 5-string banjo
Al Cherney : violin
Brian Barron : violin
Maria Riedstra : violin
Nuala : Freund : violin
Pat McCormick : violin
Larry Toman : violin
Tom Wermuth : violin
Patricia Mullen : violin

Background vocals : Judy Donnerlley, Miffy Kirkham, Carla Jensen, Dave Hifcrift, Randall Prescott, The Jordanaires, Gary Buck and a friend

Stag Creek Records TWA1111