Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Don Jewitt

2007-09-29 | SSW
■Don Jewitt / Between Hello And Goodbye■

 昨日は真夏日で 32 度にもなったのに、今日の日中は 17 度くらいしかなかったようで、季節の変わり目とは言え、極端すぎますね。 いっきに秋へと向かう夜長に針を落としたのは、Don Jewitt が 1979 年に発表した唯一のアルバムです。 彼のプロフィールなどは全く不明ですが、Tony Kosinec が参加したアルバムとして Ron Baumber の「China Doll」と並ぶ名作だと思います。 「China Doll」に参加していた Jon Goldsmith 、Dave Nicol  Bob DiSalle が、このアルバムにもクレジットされているあたりがサウンド面でのヒントとなりそうです。

 しかし、このアルバムを検索してみても、まったく見当たらないのには驚きました。 名称もないマイナーレーベル盤とはいえ、珍しいことだと思います。 そんな Don Jewitt は誰に似ているかというと、Michael Johnson に近いと感じています。 ボーカルの雰囲気、アコースティックギターを基調としている点、そして曲調といったところに共通項を見出すことができます。 さっそくアルバムの曲をおさらいしてみましょう。

 まず、最初に Tony Kosinec がコーラスアレンジとバックコーラスで参加した 3 曲をピックアップしてみます。 それは「No Point Coming Down」、「Overturned Memories」、「Northern Wind」の 3 曲なのですが、どの曲にも共通してこの声が Tony Kosinec だとはっきりとわかる部分はありません。 しかし、アレンジはユニークで、とくにフェードアウト前に小細工してるように聴こえます。 「No Point Coming Down」は、都会的なピアノ、クールなギターソロなどサウンド面での充実が光る曲。 「Overturned Memories」も、同様に哀愁あふれるミディアム。 そして、「Northern Wind」 も Jon Goldsmith のピアノセンスが光るミディアムとなっており、いずれもレベルの高い仕上がりとなっていること間違いありません。

 他の曲も含めてアルバムは、ギターソロのない AOR といった趣向でほぼ統一されており、満足度は極めて高い内容となっています。 アルバムのオープニングを飾る「Turn Down The Roses」、Bill LaBounty に近い AOR テイストを感じる名曲。 こうした傾向の曲は他にも、「Word For Word」や「Tomorrow Never Came」などがあります。 「Tomorrow Never Came」は、アルバム中で最もハードで明るいアメリカンな楽曲ですが、エレキのソロはこの曲を含めて 2 曲のみしかありません。 ですから AOR 風に仕上がっているといっても、サウンド面の主体はアコギとエレピ・ピアノとなっているので、いわゆる売れ線の匂いは全くしません。

 バラードの充実も見逃せません。 タイトル曲の「Between Hello And Goodbye」は、音数の少なさに Jon Goldsmith のストリングスが琴線を刺激する名曲。 同様のテイストとしては、哀愁を帯びた「If You Can’t Always Do Good」や、「What Friends Are For」 があります。 後者は、Jon Goldsmith のピアノが蝶のように舞い続ける美しい曲。 タイトルからしてもしっとりした曲であることが予想できますが、アルバムを代表する名曲でしょう。 「Break Loose」は、Don Jewitt が優れたギタリストであることを証明するインスト。 ラストの「Glory」も本人のみによる弾き語りでしんみりと幕を閉じていきます。

 アルバムを久しぶりに聴きましたが、全体を通してサウンド面での一貫性とスムースな流れ、高いクオリティの楽曲群からして、カナダの SSW のなかでも屈指の名盤であることを再認識しました。 大陸横断の長距離バス「グレイハウンド」のジャケットはあまりしっくり来ないのですが、1979 年にトロントから産み落とされた知られざる至宝を大切に聴き続けたいと思っています。



■Don Jewitt / Between Hello And Goodbye■

Side-1
Turn Down The Roses
Between Hello And Goodbye
No Point Coming Down
Overturned Memories
Word For Word

Side-2
Northern Wind
If You Can’t Always Do Good
Break Loose
What Friends Are For
Tomorrow Never Came
Glory

Produced by Don Geppert

Drums : Jon Anderson , Bob DiSalle
Bass : John Toulson , Dave Nichol , Paul Blaney , Billy Scullion
Piano , Electric Piano , Poly Moog , : Jon Goldsmith
Acoustic Guitar , Lead Vocal : Don Jewitt
Electric Guitar : Hal Ames
Organ , Synthesizer : Robbie King
Percussion : Mat Zimbel
Shaker : Don Geppert
Backing Vocals : Marek Norman , Tracy Richardson , Tony Kosinec

Strings Arrangement by Jon Goldsmith
Back Chorus Arrangement by Tony Kosinec

WRC 1-1144

Keith Sykes

2007-09-19 | SSW
■Keith Sykes / The Way That I Feel■

  G ジャンを背負い、シルクハットで決めたモノクロのジャケットだけでも名盤の匂いがしますが、1960 年代から活動している SSW の Keith Sykes のサード・アルバムはたしかに名盤といえるでしょう。 このアルバムを初めて聴いた 15 年くらい前から、その思いは変わりません。

 このアルバムをとりあげた理由は前回取り上げたPriscilla Herdman の紹介の際に、このアルバムの「The Coast Of Marseilles」のことを触れたからです。 こうなるとオリジナルを聴きたくなりますよね。 ということで、Keith Sykes について語る前に、アルバムをおさらいしておくことにします。

 オープニングを飾る「Sooner Or Later」は、ラフで力を抜いたボーカルがクールな印象。 ジャケットのイメージとぴったりなところが高得点。 「Just As Long As You Love Me」は王道のアメリカン・ロックのテイストを感じさせながらも、キャッチーなメロディーが光る曲。 おそらくは、このシングルカットされたものと思われます。 つづく「All I Wanted」も珠玉のバラード。 覚えやすいメロディーとストリングス、バックコーラスなど絶妙に絡んでくるところは、Keith Sykes のキャリアの絶頂期を感じさせます。 「They Take It」は、ややアップなロックナンバー。 こういう曲はつなぎとしての意味を果たせるか否かが重要ですが、違和感なくバトンを「The Coast Of Marseilles」に渡すことに成功しているといえるでしょう。 そして、名曲へ。 マルセイユのことを歌ったバラードですが、このオリジナルはギターとストリングスを主体に構成され、Keith Sykes の持つ無口で哀愁を帯びたイメージがそのままサウンドとシンクロして胸に伝わってきます。 まさにアルバムのハイライトです。

 B 面に移ります。 「I Feel So Good」は、「Sooner Or Later」と類似した軽いタッチの曲。 こうした曲の雰囲気出しって本当は難しいのだろうなと思いながら聴きました。 エレピのイントロが妙に新鮮に響く「Sounds Like A Hit」は、1977 年という音楽潮流の狭間にいることを印象付ける曲。 このアルバム以後のKeith Sykes の路線に最も近いナンバーとも言えます。 つづく「What’s Different About Her」も同様のアメリカン。 「Call It Love」は、アコギが前面に出るR&B風のフナンバー。 洒落たタッチの小曲に仕上がっています。 ラストの「The Last Line」は、シンプルで素朴なバラード。 ほろ酔いの身の Keith Sykes が女性コーラスに支えながら眠りにつくかのようなシーンが目に浮かびます。 名盤を締めくくるにふさわしい名曲です。

  このアルバムを久しぶりに聴いて、納得のいく作品であることを再確認しましたが、それと同時にいつものことを思ってしまいました。 そのいつものこと、とは Keith Sykes のこのアルバム以降の変化です。 彼は、Backstreet Records というマイナー・レーベルに移籍し、1979 年に「I’m Not Strange , I’m Just Like You」、1981 年に「It Don’t Hurt To Flirt」というアルバムを発表するのですが、これが駄作なのです。 駄作というと語弊があるかもしれませんが、安っぽくて田舎臭い B 級ロックンロールに退化してしまっているのです。 期待して買ったアルバムのジャケットがあまりにも豹変していたので、不安になりながらも針を落とした日のショックを思い出します。  僕はそのせいで、初期のアルバムに手を伸ばすことすらやめてしまったのです。
 しかし、冷静になって彼の名盤を聴くと、初期の 2 枚のアルバムを聴いてみたくなりました。いおずれも、Vanguard からリリースされていることから、王道のフォーキーではないかと推測しています。 

 いずれにしても、初期のフォーク、1980 年代の B 級ロックとのちょうど間、1977 年だからこそ産み落とされたのかもしれないこのアルバムを聴くと、同じミュージシャンであっても時代との兼ね合いがなければ、名作と呼ばれるアルバムは生まれないということを痛感するのです。



■Keith Sykes / The Way That I Feel■

Side-1
Sooner Or Later
Just As Long As You Love Me
All I Wanted
They Take It
The Coast Of Marseilles

Side-2
I Feel So Good
Sounds Like A Hit
What’s Different About Her
Call It Love
The Last Line

Produced by Wayne Crook , Warren Wagner
‘Just As Long As You Love Me‘Produced by Bob Reno


Strings Conducted and Arranged by Carl Marsh
‘Just As Long As You Love Me’ arranged by Jim Ed Norman

All Songs by Keith Sykes except ‘All I Wanted’ by Keith Sykes and Carl Marsh

Recorded as Shoe Productions , Memphis / Kendun Recordings ,Burbank , California

Keith Sykes : acoustic guitars and vocals
Ed Green , Roger Hawkins , Willie Hall , Butch McDade : drums
Bob Wray , Ken Woodley , James Hughert : bass
John Hug , Donnie Bayer , Robert Walden : guitar
Carl Marsh , Swain Schafer : keyboards
Warren Wagner , Joe Mulheron : percussion
Nick Vegos : english horn
Sheldon Kurkland and The Nashville Strings : strings
Rhodes-Chalmers-Rhodes , Herb Pederson , Charles Merrian : background vocals
Andy Black : lip horn

Midland International BKL1-2246

Priscilla Herdman

2007-09-17 | Female Singer
■Priscilla Herdman / Forgotten Dreams■

  すっかり秋めいてきたと思ったら、ここ数日は真夏に逆戻りしたかのような暑さ。 しかも、ここ数日続くということで、精神的にも参ってしまいます。 日中はそんな暑さでも、夜ともなれば虫の声を聴きながら、清涼感ある歌声でも聴きたいところ。 そこで、取り出したのが、Flying Fish の歌姫と僕が呼んでいるPriscilla Herdman のアルバムです。

 このアルバムをはじめ、彼女のオリジナル・アルバムはいずれも CD 化されているようで、このブログのコンセプトからは逸脱してしまいますが、僕の持っているのはアナログ盤しかありませんので、そのあたりは大目に見てください。

 取り上げたのは 1980 年にリリースされた彼女のセカンドアルバム「Forgotten Dreams」です。 彼女のファーストは 1977 年に Philo からリリースされており、このセカンド以降は Flying Fish で 4 枚つづけてアルバムを残しています。

 さて、このアルバムはクレジットを見れば一目瞭然ですが、多くのミュージシャンの名曲がカバーされています。 まずは、メジャーどころの 3 曲から紹介してみましょう。 Randy Newman の「Dayton, Ohio – 1903」は独特のほんわかした雰囲気はそのまま。 オリジナルに忠実なアレンジですね。 女性が Randy Newman をカバーするといえば、オランダの Mathilda Santing の「Texas Girl & Pretty Boy」が大推薦盤です。 つづく「Millworker」は、James Taylor の名作「Flag」のなかでも、とりわけフォーキーな味わいで人気の名曲です。 Priscilla Herdman のバージョンはオリジナルよりもさらに素朴な味わいです。 そして、Tom Waits の「I Hope That I Don't Fall in Love With You」です。 この曲はカバーされる曲の多い Tom Waits のなかでも、とりわけ多く取り上げられる曲ですね。 このアルバムでは、ベースとピアノ、サックスという編成で、オリジナルよりもクールなアレンジがなされており、クオリティの高い仕上がりです。

 メジャーどころに続いて注目したいのが、Keith Sykes による「The Coast of Marseilles」です。 ネットで調べたところ、この曲は Keith Sykes よりも Jimmy Buffett のカバーで有名のようです。 この曲は知られざる名曲で、このアルバムのなかでも際立っています。 Keith Sykes の最高傑作「The Way That I Feel」に収録されていますが、こちらのアルバムも早めにこのブログで取り上げたいと思います。

 他の曲もおさらいしておきましょう。 もはやトラディショナルの領域に入っている Eric Bogle の「No Man's Land」や、カナダのフォーク界の Stan Rogers の「Forty-Five Years」、「Turnaround」もトラッド風の仕上がりです。 ラスト 2 曲の作曲者は聞いたことがありませんでしたが、「January Thaw」の Lui Collins は、ニューイングランドを拠点に今も活動をしている女性 SSW でした。 ラストの「Dreams」を書いた Jeff Jones という人物は同姓も多いため、よくわかりませんでした。 ラストを飾るこの曲は、ピアノのみをバックにした素晴らしい内容です。

 このように彼女のセカンドを 2 回まわしで聴きながら夜を過ごしましたが、曲のクオリティ、アレンジのセンス、サウンドの安定感など、どれをとっても欠点のない名盤であることを再確認しました。 せっかくなら、CD も買ってしまおうかと思うほどです。 クルマのなかで聴くにも最適な、大人のための精神安定剤のような音楽がここにあります。



■Priscilla Herdman / Forgotten Dreams■

Side-1
Forty-Five Years (Stan Rogers)
Dayton, Ohio -- 1903 (Randy Newman)
Millworker (James Taylor)
Brother Can You Spare A Dime (E.Y. Harburg/Jay Gorney)
No Man's Land (Eric Bogle)

Side-2
The Coast of Marseilles (Keith Sykes)
I Hope That I Don't Fall in Love With You (Tom Waits)
Turnaround (Stan Rogers)
January Thaw (Lui Collins)
Dreams (Jeff Jones)

Produced and Arranged by Bill Novick and Guy Van Duser
Recorded at Earth Audio Techniques in North Ferrisburg , Vermont

Guy Van Duser : steel strings guitars ,tenor guitar , acoustic bass , nylon strings guitar , arch top guitar
Brian Torff : acoustic bass
Bob Weiner : drums
Jeff Gutcheon : piano
Ken Pearson : piano
Jun Tullio : acoustic bass
Bill Kinzle :drums
Billy Novick : bass clarinet

Flying Fish FF 230

Ross Ryan

2007-09-13 | Australia
■Ross Ryan / A Poem You Can Keep■

  前回に続いて、セピア色のジャケット。 今日、取り上げてみたのはオーストラリアのシンガーソングライター、Ross Ryan のアルバムです。 Ross Ryan はアメリカ生まれですが、このアルバムを発表した 1972 年には、オーストラリアの西海岸、Perth に住んでいました。 彼曰く、『これは、僕の 6 枚目のレコードだ。 でも不幸なことにあなたが買うことのできる唯一のものだ。』とのこと。 もしかして、カンサス州からオーストラリアにたどり着く前に、自主制作でアルバムを 5 枚も発表していたのかもしれません。 その謎については最後に触れることにします。

 さて、このアルバム、1970 年代前半にありがちな乾いたロックよりの SSW アルバムを予想する方も多いかと思いますが、声質も含めて近いのは、イギリスの Al Stewart じゃないかと個人的には思っています。 あるいは、Cat Stevens とか。もちろん全部が全部似ているわけではありませんが、アルバムの後半に並ぶしっとりとしたメロディとアレンジには、アメリカではなくイギリスの匂いを感じるのです。

  たしかにオーストラリアのイメージを感じる「I Don’t Want To Know About It」や「Goodbye Mitchy」のような曲もあるのですが、半数くらいが音数の少ないバラード、もしくはミディアムなのです。 A 面では、アルバムを代表する名曲「Country Christine Waltz」やまさに Al Stewart にそっくりな「Worth My While」の 2 曲が光ります。 B 面は、アルバムタイトル曲の「A Poem You Can Keep」からエンディングまでの 3 曲が英国的です。 「A Poem You Can Keep」はクラシカルな趣のある上品な曲ですが、メドレー風に途切れずに次の「So Say Goodbye」へと続いていきます。 この曲も翳りのあるしんみりした曲ですが、そのムードはラストの「Last Song」へと受けつがれていきます。 この 3 曲から思い浮かべるのは、どんよりしたイギリスの空模様であって、けっして Perth に広がる青空のイメージではありません。 

  とりあげなかった曲のなかにも変わった曲があります。 たとえば、「Can’t Say It Hurts Me」は、ピアノがリードする二拍子。 軽快なタッチですが、B 面へのつなぎという感じですね。 クレジットはないものの、スィングするクラリネットのソロが印象的です。 陽気な曲なのですが後半は演奏がフェードアウトし、コーラスだけが浮かび上がってきます。 さらにサウンド・コラージュ的な要素も盛り込んで終わったかと思うと、静かなエピローグが待っているという凝ったアレンジになっているのですが、そこはかなり斬新に響きます。
  他には、Todd Rundgren の曲名みたいな「Hello , Remember Me」 は Tony Easterman によるピアノがメランコリックに響く佳作。 Peter Martin のギターのみをバックにした繊細な小曲 「Making The Same Mistakes」も忘れてはいけません。 このように、各曲のさりげないクオリティの高さには、感心させられます。

  後にオーストラリアで最も成功したシンガー・ソングライターの一人となったRoss Ryan ですが、彼のメジャー・デビューとなるこの作品を聴いていると、後の成功が納得できる内容となっています。 とはいえ、代表的な作品である次作「My Name Means Horse」をはじめ、彼のほかの作品を未聴なので、これ以上なんとも言えませんが、おそらく 1970 年代の彼の作品は買って損のないレベルなのだろうと思います。

 最後に、彼の公式ページを発見しました。 すると、たしかにこのアルバムの前に 5 枚もの自主制作アルバムを発表していることが判明。 しかしジャケットが掲載されているのは「Homemovies」1 枚だけという状態。 このアルバムなんとプレス枚数がたった 90 枚だったそうです。 さらには、ファースト・シングル「Christine」にいたっては、Only 3 acetates were made. だそうです。 これには絶句ですね。 3 枚しかないレコードなど、この世に存在するのでしょうか?



■Ross Ryan / A Poem You Can Keep■

Side-1
I Don’t Want To Know About It
Empire Lady
Country Christine Waltz
Worth My Wile
Can’t Say It Hurts Me

Side-2
Hello , Remember Me
Making The Same Mistakes
Goodbye Mitchy
A Poem You Can Keep
So Say Goodbye
Last Song

Arranged by Peter Martin
Produced by Peter Dawkins

All Songs composed by Ross Ryan

Ross Ryan : vocal , acoustic guitar
Tony Easterman : piano , organ , electric piano , clavinet
Dave Ellis : bass
Doug Gallacher : drums, wind chimes
Peter Martin : acoustic and electric guitar
John Sangster : tambourine
Kenny Kitchen : Pedal Steel
Lal Kuring : cello

Terry Walker : background vocals
Mike Leyton : background vocals
Betty Lys: background vocals
Bobbi Marchini : background vocals

EMI(Australia) ST-11221


Jerry Glenn Ward

2007-09-09 | SSW
■Jerry Glenn Ward / Focus■

  1942 年にアーカンソー州で生まれ、1959 年から 1963 年までには徴兵義務により空軍に配属されていたという経歴の持ち主が、今日の主人公 Jerry Glenn Ward です。 このアルバムは彼の唯一のアルバムとして、1971 年にナッシュビルとメンフィスでレコーディングされました。 29 歳のデビューということは遅咲きの部類に入ると思うのですが、彼のフェイバリットとして、Muddy Waters , Ian & Sylvia , Joni Mitchell , Jackson Browne , Gordon Lightfoot を挙げています。 Jackson Browne は 1948 年生まれなので彼より 6 歳も若いのに、フェイバリット扱いしてどうなのかなあ、と思いますが、そんなレコードを紹介してみましょう。

  甲高いながらもシワがれた印象のボーカルが、枯れた味わいをみせる「Why Won’t You Listen」でアルバムは幕開け。 ベースとスティール・ギターがメインの地味な演奏がセピア色のジャケットとマッチします。 つづく「Six Pack Of Trouble」は、フィドルの入る軽いタッチのカントリー。  Muddy Waters 好きということが伝わる「Country Boy Blues」は、ガット・ギターがごつごつ刻むブルースです。  「The Real Me」は、Warren Zevon に通じる悲哀系バラード。 『君は本当の僕を愛していたんじゃない』という論調の歌詞はどの国にも存在するということで…。 A面ラストの「Movin’ In」はパーカションとベースの上にアシッド感あふれるギターが舞う曲。 サイケな感じすらします。

 レコードを裏返します。 「Only Darkness」は、ギター弾き語りの曲。 アルバムの中でもっともチャッチーなナンバーかもしれません。  つづく「Whatever Your Name Is」はフォーキーな曲。 最もJackson Browne 的な響きを持つ「Sometimes I Like To Be Alone」につづく「Wooden Days」が個人的に好みのメロウ・ナンバーです。 フルートの響きやソフトロック調のアレンジがお気に入りなのです。  そして、ラストを飾る「One Place」も美しさでは引けをとらない楽曲。 MOR にも通じるスムースな雰囲気はなかなか侮れません。 このエンディングの充実もあって、このアルバムの余韻は確かなものとして胸に刻まれてきます。

 こうして Jerry Glenn Ward の音楽を聴いてみると、彼の人柄や柔和な性格が伝わってくるようです。 それはジャケットに写った彼の表情からも感じることができるのですが、ビジネスの世界はさすがに厳しく、それだけではヒットや出荷枚数に結びつくわけもありません。 しかも最近の再評価で、隠れた名盤として急に注目度が上がったという話も聞きません。 なぜなら、ネットで検索しても彼の公式サイトどころか、彼のことを語るサイトすら見つからないのです。

 James Glenn Ward 、彼はいったいどこで何をしているのでしょう。 音楽活動から身を引いてしまったというのが妥当な推測ではあるものの、アメリカの小さな町のライブハウスでも経営していそうな気がしてなりません。



■Jerry Glenn Ward / Focus■

Side-1
Why Won’t You Listen
Six Pack Of Trouble
Country Boy Blues
The Real Me
Movin’ In

Side-2
Only Darkness
Whatever Your Name Is
Sometimes I Like To Be Alone
Wooden Days
One Place

Produced by Larry Rogers
Recorded at Bloc-6 Recording Studio , Memphis and Mercury Custom Recording Studio , Nashville

Words and Music by Jerry Glenn Ward

Guitar : Jerry Glenn Ward , Tommy Allsup , Bobby Thompson , Stan Reese
Bass : Jerry Glenn Ward , Henry Strzelecki
Drums : Kenny Malone , Ronnie Korner
Congas : Gary Johns , Kenny Malone
Dobro : Lloyd Green , Bobby Neal
Steel Guitar : Lloyd Green
Piano : Ron Oates
Vibes : Ron Oates , Jerry Glenn Ward
Harmonica : Danny Turney
Flute : Jamie Holmes
Organ : Jerry Glenn Ward
Fiddle : Buddy Spicher
Strings Arrangement : Bergen White
Background Vocals : Ginger Holladay , Paul Lovelace

Mega Records M51-5004