Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Ron Cornelius

2012-01-28 | SSW
■Ron Cornelius / Tin Luck■

  年始になると、「ミュージック・マガジン」のベストアルバムや「レコード・コレクターズ」の再発ベスト 10 みたいな企画が毎年盛り上がります。 再発ものなどを見ていると、オリジナル盤の初 CD 化というものはめっきり少なくなり、発掘音源とのセット売りのようなものが増えているように思います。 さすがに CD が生まれて 30 年以上経過しているので、この期に及んで世界初 CD 化みたいなことは稀なのかもしれません。 
  そんなことを思いながら、メジャーの Polydor からリリースされたにも関わらず、さっぱり CD 化の気配がない Ron Cornelius のアルバム (1971年) を取り出してみました。 このアルバムは 7 年近く前に安価でシールドで入手できたのですが、CD 化されるのを期待して聴かずにずっと保存していたものです。 しかし、さすがに中身を聴きたい気持ちが抑えられずに、さきほど開封してしまいました。

  レコードを手にすると、参加メンバーが Ron Corneluis を含めて 3 人しかいないことに引き寄せられます。 プレイベート盤かと見間違うほどのクレジットですが、サウンドはそのとおりで 3 人編成によるきわめてシンプルで素朴なもの。 けしてスカスカという感じではなく、必要最小限の音によって音の隙間を意図的に描き出しているというようなイメージでした。 
  多くの人がこのアルバムのベストトラックとして、1 曲目の「I’ve Lost My Faith In Everything But You」をあげていますが、その論調にはまったく同意です。 このアルバムの最初の音、それは優しいピアノの音色なのですが、もしかするとそのままピアノソロのアルバムなのではないかと思ってしまうほどでした。 たまたま個人的にここ数日、Bill Evans を聴いていたからかもしれませんが、この曲は僕にとって少なからず衝撃的な出会いでした。 もっと早くシールドを破っていればと後悔です。それにしても、この曲は素晴らしいの一言。 ピアノからボーカルが入ってくるあたりの時の流れは至高のひとときでした。 ベースやドラムスが徐々に荒々しく迫ってくる中盤も見事です。
  2 曲目以降はギター主体のサウンドとなり、スワンプ色が濃いギターの弾き語り「Swim Brown Dog」、ブルージーな「Like It Used To Be」、Neil Youngみたいな「How Could You」、バーボンでも飲みながらギターを弾いているようなインスト「Left Handed Lover」と続きます。
  B 面も流れは変わらず、ゆったりとしたミディアム「Evening Is Coming」、アコースティック・スウィング「Indoor Outdoor Lovin’」と進み、大作の「I Wonder」へ。 この曲は久しぶりにピアノの音色も入り、ギターとのオーバーダビングによってアルバムの中でも最も厚みのあるサウンドに仕上がっています。 1曲目につづくハイライトはここでしょう。 ラストの「Still Gone」はギターの音色が硬めな弾き語り。 孤独感とか喪失感みたいなものが全編に漂っています。

  この名盤をリリースした後の Ron Cornelius の活動はよくわかりません。彼のソロ名義の作品はこのアルバムだけとなってしまったようですが、その謎めいた消息不明もこのアルバムの枯れた味わいとシンクロして、このアルバムの評価をゆるぎないものとしているのでしょう。 
  ところが、ネットの威力はすごいもの。 何と Ron Cornelius が 2010 年に「Like It Used To Be」を歌っている映像が YouTube に存在していました。 なんと彼は健在であるばかりでなく、しっかりと音楽と向き合っていたのです。 素晴らしいことではありませんか。

■Ron Cornelius / Tin Luck■

Side-1
I’ve Lost My Faith In Everything But You
Swim Brown Dog
Like It Used To Be
How Could You
Left Handed Lover

Side-2
Evening Is Coming
Indoor Outdoor Lovin’
I Wonder
Still Gone

Produced by Ron Cornelius for Tin Luck Ink.
Engineers : Neil Wilburn & Robin Cable
Album Cover : Henry Beer
Photography : Mr. & Mrs. Elliott Randy
All songs by Ron Cornelius except ‘I Wonder’ & ‘How Could You’

Ron Cornelius : guitar, keyboard
Joe Davis : bass
Paul Distel : drums

Polydor PD5011


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