■Niki Aukema / Nothing Free■
レコードのクレジットを見ながら、当時の状況を妄想しながら思い浮かべるのが好きです。 このブログにわざわざ時間をかけてクレジットを転記しているのもそうした理由からなのですが、その過程で時折訪れる意外な発見にはたまらないものがあります。
名門 Paramount から 1973 年リリースされた Niki Aukemaのアルバムにはそんな発見がありました。 そもそもこのアルバムは E-Street Band の中心的な存在である Roy Bittan がプロデュース協力していることで手に取ったレコードです。 もちろん、この時期の Paramount から発売された SSW 作品の外れは無いだろうという確信もあったのですが...。 Roy Bittan が Bruce Springsteen の E-Street Band に加入したのは、1975 年の「Born To Run」からですので、ここにはプロとして活動し始めたばかりの Roy Bittan の貴重な記録が収められているのです。 それだけで興味は掻き立てられるのですが、このアルバムには3名のミュージシャンとの意外な出会いが隠されていました。
A-2の「Son Of A Rotten Gambler」は Chip Taylor が作曲し、彼自身もギターで参加している曲です。 Chip Taylor は 1970 年代から活動している SSW ですが、まったく音に触れていないのでここでは興奮はなかったのですが、コーラスのクレジットに驚きました。そこには、Roy Bittan と並んで、Ric Otcasek の名前があったのです。 もちろん、この名前はのちに The Cars を結成するリック・オケイセックのことです。 今はtを外してOcasekと表記している彼は、当時は The Cars の前身グループ Milkwood のメンバー。 彼らは Paramount から唯一のアルバムを 1972 年に発表しているので、そこでの縁で参加することになったのでしょう。 Roy Bittan と Ric Ocasek の邂逅がここにあったのです。
一時クラブ DJ の間で評判になったという B-1 の「Lucky Lost Sin」にも意外な人の名がありました。 それは奇才 SSW、Andy Pratt です。 1970 年に「Records Are Like Life」でデビューしたピアノ系 SSW の彼ですが、ここではなぜかベースとして参加しています。 しかも Ben Orzechhowski というもう一人のベーシストも参加しており、二人もベースがゲスト参加する意味合いが理解しづらいところです。 しかし、このハイ・テンションでファンキーな楽曲を聴きこんでみると、ベースとパーカッションの重要性が見えてきました。 激しいソロプレイの応酬となる中盤の聴き応えは、聴き手を圧倒するエネルギーにあふれ、このアルバムの代表曲として定着していることを認めざるを得ません。 さて、もう一人のベーシスト、Ben Orzechhowski の名前でピンと来た人はいませんか。 その方はかなりの通だと思いますが、彼も The Cars のメンバー、今は亡き Benjamin Orr です。 贅沢なセッションだったわけですね。
さて、Niki Aukema のボーカルの魅力は、低音から天に届きそうなハイトーンまでの声域と、曲によって違う表情を見せる豊かなエモーションにあります。 Roy Bittan 作曲の「Hello Sunshine」のふわっとしてリラックスしたムードから渋めのバラード「Path To Freedom」では泣きそうな雰囲気へ、タイトル曲「Nothing Free」での悲壮感あふれるシャフトから「Just Like You」では甘美でマイルドに変化、といった具合です。 個人的に最も好きな「I’ve Never Been Loved Like This Before」はスケール感あふれるソウルフルなバラードで最も伸びと艶を感じさせる仕上がりの 1 曲です。
しかし、これほど歌唱力のある SSW がどうして消えてしまったのでしょうか。 このアルバムが彼女の残した唯一の作品のようですし、彼女について多くを語るサイトも発見することができませんでした。 運よくアルバムを発表できたものの、Paramount Records の活動停止に直面。 その後、彼女に手を差し伸べるレコード会社が無かったということなのでしょう。
■Niki Aukema / Nothing Free■
Side-1
I’ve Never Been Loved Like This Before
Son Of A Rotten Gambler
Hello Sunshine
Path To Freedom
Sad Dream
Side-2
Lucky Lost Sin
Nothing Free
Just Like You
To Eyes
Produced by Al Schwartz in association with Roy Bittan
Arrangements : Roy Bittan
Niki Aukema : vocal, background vocals, acoutic guitar
Roy Bittan : piano, electric piano, accoridon, acoustic guitar
Chip Tayleor : acoustic guitar
David Bershtein : piano
Tao Leyasmeyer : piano
Jeff Levine : organ
James Goodkind : electric guitar, acoutic guitar
Frank Baier : bass
John Nagy : bass
Andy Pratt : bass
Ben Orzechhowski : bass
Steve merola : drums
David Humphreys : drums, congas
John Payne : tenor sax
Stan Davies : trumpet, flugel horn
Dan Silverman : trombone
Background vocals on ‘Son Of A Rotten Gambler’
: Bob Knox, James Goodkind, Ric Otcasek, Chip Taylor, Tom Boughton , Roy Bittan, Vaughn & Debbie Smith
Paramount records PAS 6055
レコードのクレジットを見ながら、当時の状況を妄想しながら思い浮かべるのが好きです。 このブログにわざわざ時間をかけてクレジットを転記しているのもそうした理由からなのですが、その過程で時折訪れる意外な発見にはたまらないものがあります。
名門 Paramount から 1973 年リリースされた Niki Aukemaのアルバムにはそんな発見がありました。 そもそもこのアルバムは E-Street Band の中心的な存在である Roy Bittan がプロデュース協力していることで手に取ったレコードです。 もちろん、この時期の Paramount から発売された SSW 作品の外れは無いだろうという確信もあったのですが...。 Roy Bittan が Bruce Springsteen の E-Street Band に加入したのは、1975 年の「Born To Run」からですので、ここにはプロとして活動し始めたばかりの Roy Bittan の貴重な記録が収められているのです。 それだけで興味は掻き立てられるのですが、このアルバムには3名のミュージシャンとの意外な出会いが隠されていました。
A-2の「Son Of A Rotten Gambler」は Chip Taylor が作曲し、彼自身もギターで参加している曲です。 Chip Taylor は 1970 年代から活動している SSW ですが、まったく音に触れていないのでここでは興奮はなかったのですが、コーラスのクレジットに驚きました。そこには、Roy Bittan と並んで、Ric Otcasek の名前があったのです。 もちろん、この名前はのちに The Cars を結成するリック・オケイセックのことです。 今はtを外してOcasekと表記している彼は、当時は The Cars の前身グループ Milkwood のメンバー。 彼らは Paramount から唯一のアルバムを 1972 年に発表しているので、そこでの縁で参加することになったのでしょう。 Roy Bittan と Ric Ocasek の邂逅がここにあったのです。
一時クラブ DJ の間で評判になったという B-1 の「Lucky Lost Sin」にも意外な人の名がありました。 それは奇才 SSW、Andy Pratt です。 1970 年に「Records Are Like Life」でデビューしたピアノ系 SSW の彼ですが、ここではなぜかベースとして参加しています。 しかも Ben Orzechhowski というもう一人のベーシストも参加しており、二人もベースがゲスト参加する意味合いが理解しづらいところです。 しかし、このハイ・テンションでファンキーな楽曲を聴きこんでみると、ベースとパーカッションの重要性が見えてきました。 激しいソロプレイの応酬となる中盤の聴き応えは、聴き手を圧倒するエネルギーにあふれ、このアルバムの代表曲として定着していることを認めざるを得ません。 さて、もう一人のベーシスト、Ben Orzechhowski の名前でピンと来た人はいませんか。 その方はかなりの通だと思いますが、彼も The Cars のメンバー、今は亡き Benjamin Orr です。 贅沢なセッションだったわけですね。
さて、Niki Aukema のボーカルの魅力は、低音から天に届きそうなハイトーンまでの声域と、曲によって違う表情を見せる豊かなエモーションにあります。 Roy Bittan 作曲の「Hello Sunshine」のふわっとしてリラックスしたムードから渋めのバラード「Path To Freedom」では泣きそうな雰囲気へ、タイトル曲「Nothing Free」での悲壮感あふれるシャフトから「Just Like You」では甘美でマイルドに変化、といった具合です。 個人的に最も好きな「I’ve Never Been Loved Like This Before」はスケール感あふれるソウルフルなバラードで最も伸びと艶を感じさせる仕上がりの 1 曲です。
しかし、これほど歌唱力のある SSW がどうして消えてしまったのでしょうか。 このアルバムが彼女の残した唯一の作品のようですし、彼女について多くを語るサイトも発見することができませんでした。 運よくアルバムを発表できたものの、Paramount Records の活動停止に直面。 その後、彼女に手を差し伸べるレコード会社が無かったということなのでしょう。
■Niki Aukema / Nothing Free■
Side-1
I’ve Never Been Loved Like This Before
Son Of A Rotten Gambler
Hello Sunshine
Path To Freedom
Sad Dream
Side-2
Lucky Lost Sin
Nothing Free
Just Like You
To Eyes
Produced by Al Schwartz in association with Roy Bittan
Arrangements : Roy Bittan
Niki Aukema : vocal, background vocals, acoutic guitar
Roy Bittan : piano, electric piano, accoridon, acoustic guitar
Chip Tayleor : acoustic guitar
David Bershtein : piano
Tao Leyasmeyer : piano
Jeff Levine : organ
James Goodkind : electric guitar, acoutic guitar
Frank Baier : bass
John Nagy : bass
Andy Pratt : bass
Ben Orzechhowski : bass
Steve merola : drums
David Humphreys : drums, congas
John Payne : tenor sax
Stan Davies : trumpet, flugel horn
Dan Silverman : trombone
Background vocals on ‘Son Of A Rotten Gambler’
: Bob Knox, James Goodkind, Ric Otcasek, Chip Taylor, Tom Boughton , Roy Bittan, Vaughn & Debbie Smith
Paramount records PAS 6055