Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Karl Richey

2006-03-08 | Folk
■Karl Richey / Karl Richey■

 古びた建物の影で、風変わりな自転車について何か語りあっている恋人らしき二人の光景。 この男性のほうがおそらく、今日の主人公 Karl Richey なのでしょう。 これは、無名のフォークシンガー Karl Richey が1969年に発表した、おそらく唯一のアルバムです。 このアルバム、ジャケットがなかなか洒落たセンスをしていて、いったいどんな音が飛び出してくるか、レコードファンの方なら誰でも期待に胸を膨らませるのではないでしょうか? 実際に針を落とすと、いきなり泥臭いハーモニカ、そしてギターの弾き語り。 まさに、フォークのど真ん中というサウンドなのです。 アルバムを通して、大きな変化はなく、ゲストもいないために、Karl Richey の一発録り的なフォークサウンドが展開されます。 そのサウンドは、何となくブルージーでざらっとした感触のもので、この頃の West Coast 的な SSW テイストはまったく感じられません。
 このアルバムは、STUDIO 10 RECORDS というサンフランシスコのマイナーレーベルからの発売です。 1969年のサンフランシスコといえば、ヒッピー文化・フラワームーブメントという言葉が思い浮かびますが、そんな時代だったと思います。 世界的に見れば、 ウッドストック・フェスティヴァルが同年の夏に開かれ、イギリスでは、ブライアンジョーンズ追悼のハイドパークコンサートで、King Crimson が全貌を現しました。 サンフランシスコ郊外で「オルタモントの悲劇」が起きたのもこの年の12月です。 そんなロックの世界がビッグバンのように膨張し始めた1969年に、こっそりとこのようなフォークアルバムが発売されても、世の中に受け入れられるとは思えません。 1950年にシアトルで生まれた Karl Richey の19歳の青々しさ、瑞々しさを閉じ込めたアルバムは、特別な出来栄えだったわけでもなかったこともあり、そうした時代背景のなかに埋没していったのです。 
 ちなみに、このアルバムの評価は世界的には定まっていないようで、入手困難ということで、300ドルもしている中古店もありますが、ふつうに10ドルくらいで買える店があったりもします。 当然、後者ような場合をオススメします。 僕も10ドルくらいで買いました。


■Karl Richey / Karl Richey■

SIDE-1
Stone Livin'
Pussy Cat
Black Fleeced Lamb
Unwed Mother
New York City Girl

SIDE-2
Work Song
Fast Last Night
The Rain Song
People's Park
Mary Jane

Produced by Tom Preuss

STUDIO 10 RECORDS DBX102