さおりは初めて行った町で、古風(こふう)なアンティークの店を見つけた。何かに引きよせられるように店内(てんない)に入ってみると、きれいに装飾(そうしょく)された小さな手鏡(てかがみ)が目に止まった。
「わぁ、すてき…」さおりは思わずつぶやいた。
それを見ていた店主(てんしゅ)の老婦人(ろうふじん)は優(やさ)しく微笑(ほほえ)み、「どうぞ。手にとってよく見て」
さおりは手鏡を手に取ると、恐(おそ)る恐る値段(ねだん)を聞いてみた。年代物(ねんだいもの)の鏡のようで、高貴(こうき)な人が使っていたに違(ちが)いないと思ったからだ。さおりは今まで物欲(ぶつよく)というものを感じたことはなかった。でも、これだけはどうしても手に入れたいという衝動(しょうどう)を抑(おさ)えきれなかった。
「今月の給料日(きゅうりょうび)までは節約生活(せつやくせいかつ)ね」さおりは家に帰るとつぶやいた。でも、後悔(こうかい)はなかった。大切(たいせつ)に持って帰ってきた手鏡を箱(はこ)から出し、自分の顔を鏡に映(うつ)してみる。不思議(ふしぎ)と他の鏡よりも自分の顔がきれいに見えた。何だか嬉(うれ)しくなって笑(え)みがこぼれた。
そのとき、突然(とつぜん)、鏡から閃光(せんこう)が走った。さおりはまぶしくて目を塞(ふさ)いだ。一瞬(いっしゅん)のことで、何がどうしたのか…。目を開けてみると、目の前に女が座(すわ)っていた。さおりは飛(と)び上がった。あまりのことに言葉(ことば)も出ない。それに、その女は双子(ふたご)のように自分とそっくりなのだ。
その女は立ちあがり背伸(せの)びをすると、嬉しそうにつぶやいた。「やっぱり、外(そと)はいいわ」
「あなた、だれ?」さおりは何とか言葉を絞(しぼ)りだした。女はさおりの手を取ると、
「わたしは、あなたよ。あなたは、わたし」そう言って女は微笑んだ。
さおりは混乱(こんらん)していた。何が起(お)きているのか分からず、不安(ふあん)な気持(きも)ちで一杯(いっぱい)になった。
<つぶやき>さおりはどうなちゃうの? この話の続きは…。次の機会(きかい)に。乞(こ)うご期待(きたい)?
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