みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1183「上村くん3」

2022-01-07 17:51:59 | ブログ短編

 それから十日ほどたって、あの喫茶店(きっさてん)に優美(ゆみ)がふらりとやって来た。上村(かみむら)くんはお休みでいなかったが、香里(かおり)が遊(あそ)びに来ていた。香里は優美に抱(だ)きついて、
「ああ…、やっと終わったよ。レポート書くの、大変(たいへん)だったんだからぁ」
 優美は優(やさ)しく香里の頭をなでて、「よしよし、よく頑張(がんば)りました」
「もう、ありがとうっ。うるっときちゃいそうだよぉ。――そうだ。いつものでいい? 店長(てんちょう)、いつものお願(ねが)いね。それと、あたしも、おかわりっ」
 店長はいつもの感じで、「はい、いつものね。了解(りょうかい)です」
 香里は優美を座(すわ)らせると、「今日は、どうしたの? あれから会えなかったからねぇ」
 優美はちょっと言いにくそうに、「あの…、実(じつ)はね。あたし、上村くんを映画(えいが)に誘(さそ)って…」
 店長が口を挟(はさ)んだ。「ああ、訊(き)きましたよ。いいねぇ、若(わか)いっていうのは…」
「店長、うるさいっ。あたし、聞いてないよ。何で教えてくれないのよ。ひどい…」
「ごめん。でも、それどころじゃなかったでしょ?」
「まぁ、そうなんだけど…。で、行ったの? あいつ、まさか断(ことわ)ったんじゃ…」
「行ったわよ。とっても楽(たの)しかったわ。それでね、別れるとき、また誘ってもいいかって訊いてみたの。そしたら、〈ああ、分かったって〉。これってどうなのかな? 私のこと、どう思ってるのか分からなくて。映画観(み)てるときも、楽しそうにしてなかったし…」
「それは微妙(びみょう)ねぇ。あいつ、感情(かんじょう)を表(おもて)に出さないタイプだからなぁ」
<つぶやき>そんなにあせらなくても。少しずつ攻(せ)めていきましょ。逃(に)げられないように。
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