みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1393「人格浮遊症候群」

2023-06-14 17:36:17 | ブログ短編

 朝、目覚(めざ)めて起(お)き上がると頭(あたま)がズキズキと痛(いた)んだ。昨夜(ゆうべ)は会社(かいしゃ)の同僚達(どうりょうたち)と飲(の)み会で、先輩(せんぱい)に三次会(さんじかい)まで付(つ)き合わされた。その後(あと)、どうやって帰ったんだ? 僕(ぼく)は、ふと違和感(いわかん)を感じた。そして、周(まわ)りを見回して思わず呟(つぶや)いた。「ここは…どこだ? 何で……」
 そこは、ぜんぜん知らない部屋(へや)だった。僕は昨夜のことを思い出そうとしたが、頭がぼーっとしていて何も浮(う)かんでこない。ベッドを出て扉(とびら)を開けると、そこはリビングだった。キッチンの方から音がした。女性が朝食(ちょうしょく)の支度(したく)をしているようだ。僕に気づいて声をかけた。
「昨夜、遅(おそ)かったじゃない。早(はや)くしないと、バイトがあるんでしょ」
「えっ、バイト…?」僕は思わず答(こた)えた。何を言ってるんだ。僕は正社員(せいしゃいん)だ。
 その女性は、「もう、顔を洗(あら)ってきなさいよ。私も、今日は早く出ないといけないの」
 僕は言われるままに洗面所(せんめんじょ)へ…。何なんだ。何で見ず知らずの女からそんなことを…。僕は頭をかきむしりながら洗面台(せんめんだい)の前に立った。そして、バシャバシャと顔を洗った。タオルで顔を拭(ふ)く。少しは目が覚(さ)めた。僕は鏡(かがみ)に映(うつ)っている顔を見つめた。そこに映っているのは、若(わか)い女性の顔……? 僕は、叫(さけ)びそうになるのをぐっとこらえた。
 僕は鏡に近づき、手を頬(ほお)に当(あ)てた。鏡の中の女性も同じように手を当てる。そして、頭(あたま)に…鼻(はな)に…くちびる…。確(たし)かにこれは自分(じぶん)の顔だ! 僕はあらためて自分の身体(からだ)を確(たし)かめた。胸(むね)に手を当てると、膨(ふく)らみがある。僕は、女性になってしまったのか?!
<つぶやき>お医者(いしゃ)さんの話では、時間が立てば元(もと)に戻(もど)るそうです。原因(げんいん)は何だったのか?
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