みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0885「しずく92~試す」

2020-05-05 18:13:43 | ブログ連載~しずく

 柊(ひいらぎ)あずみが屋上(おくじょう)から下を見ると、ちょうど水木涼(みずきりょう)が校舎(こうしゃ)の横を歩いて行くのが見えた。あずみは呟(つぶや)いた。
「あの娘(こ)って、なに考えてるのか分かんないわ。問題(もんだい)おこさなきゃいいけど…」
 涼がちょうど真下(ました)に来たとき、下の階(かい)から植木鉢(うえきばち)が突(つ)き出てきた。あずみがアッと思った瞬間(しゅんかん)、その植木鉢は涼をめがけて落下(らっか)を始めた。まさに涼の頭に激突(げきとつ)しようとしたとき、植木鉢は空中(くうちゅう)で停止(ていし)した。涼の能力(ちから)が発動(はつどう)したのだ。涼はまったく動じることなく、植木鉢を手でつかむと下へ置いた。涼が上を見上げると、三階の窓(まど)が開いていた。
 あずみはすぐに階下(かいか)の教室へ飛んだが、そこには誰(だれ)の姿(すがた)もなかった。あずみは開いている窓から下を見た。そして涼と目が合うと、涼はあずみに手を振って行ってしまった。
 あずみはほっとしてまた呟いた。「ほんと分かんないわぁ…」
 別の教室に人影(ひとかげ)があった。窓から帰って行く涼を見つめながらささやいた。
「みぃつけた。こんなところにもネズミちゃんがいたなんて…。あたし、気づかなかったわ。どうしようかなぁ…。何だか、わくわくしてきちゃった」
 教室の暗(くら)がりから姿を見せたのは川相初音(かわいはつね)だ。初音は楽しそうに微笑(ほほえ)むと、静かに教室を後(あと)にした。
<つぶやき>姿なき敵(てき)の正体(しょうたい)が判明(はんめい)――。まぁ、みなさんには分かってたかもですけど。
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