みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0237「フライング」

2018-06-22 18:54:50 | ブログ短編

 料亭(りょうてい)の座敷(ざしき)で若い男が倒(たお)れていた。その男のそばで介抱(かいほう)している女性。心配(しんぱい)そうに彼の顔を見つめていた。どのくらいたったろう、男が目を覚(さ)ました。すると女性は、
「もう、ほんとバカね。呑(の)めもしないのに、あんな無茶(むちゃ)して」
「あの…、商談(しょうだん)はどうなりました? 社長(しゃちょう)さんは…」
「あれくらいの酒(さけ)、私が呑めないとでも思ったの? 私が呑んでたら楽勝(らくしょう)だったのに」
「あっ、すいません。やっぱ、ダメでしたか?」
「あの社長ね、私を女だと思って見下(みくだ)してるのよ。あなたにだって、それくらい分かるでしょ。今度こそ、あの社長の鼻(はな)をへし折(お)ってやれたのに」
「すいません。でも、そんなことさせられません。身体(からだ)こわしたらどうするんです」
「あのね、自分のこと心配しなさいよ。あなたに、そんなこと言われる筋合(すじあ)いはないわ」
「ありますよ。だって、僕(ぼく)……。先輩(せんぱい)のこと、心配しちゃいけませんか?」
「もう、なに言ってるのよ。半人前(はんにんまえ)のくせに」
「そうですけど。でも、僕、先輩のことが好きなんです。だから…」男は自分の言ってしまったことに気づき、「あれ…、これって告白(こくはく)ですよね。あの…、今の、なかったことにしてもらえませんか? もっと、ちゃんとしたとこで…」
 女性は恥(は)ずかしさを誤魔化(ごまか)すように言った。「もう帰るわよ。いつまで寝(ね)てるのよ」
<つぶやき>誰(だれ)かを好きになると、相手(あいて)のことが気になりますよね。でも、告白は慎重(しんちょう)に。
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