『The Lost Symbol』(日本語訳タイトルは『ロスト・シンボル』)は『天使と悪魔』、『ダ・ビンチ・コード』に続くロバート・ラングドン教授シリーズ第三弾で、2009年9月電子書籍版発行。第二弾の数年後という設定です。今回の舞台はヨーロッパではなく、アメリカ合衆国の首都ワシントンD.C.で、ラングドンがさほど遠出せずに済んだのは確かですが、やはり急に呼び出されて散々な目に合う、というパターンは同じです。『ダ・ビンチ・コード』ではパリ警察に追われていましたが、『ロストシンボル』ではCIAに追いかけられる羽目に。
その発端は、フリーメーソンのほとんど最高地位にあるピーター・ソロモン氏がラングドン教授のメンターで友人でもあり、その彼がラングドンを信頼して、「何か」を預けたことにあります。犯人マラーク(Mal'akh)の狙いはフリーメーソンであったアメリカ建国の父たちがワシントンにピラミッドを立てて埋めたと言われる古の神秘、「失われた言葉(The Lost Word)」あるいは「失われた象徴(The Lost Symbol)」で、ラングドンに預けられた「何か」はそのピラミッドの謎を解くカギとなるらしく、彼をソロモン氏のアシスタントのふりをしてCapitol Building(アメリカ合衆国議会議事堂)でレクチャーをするよう嘘の依頼でワシントンに呼び出します。そこで彼が目の当たりにしたのは、ドームの天井を指し示すピーター・ソロモンの切断された右手首で、それぞれの指に「古の神秘(Ancient Mysteries)」を暗示する刺青が入れられていました。その現場に現れたCIA保安局局長イノエ・サトウ(Inoue Sato)という日系の怖いおばちゃんがなぜか「これは国家の安全にかかわることだ」と主張し、ラングドンに知っていることを洗いざらい吐いて、謎を解くように協力を強制。だからと言って、ラングドンはソロモン氏から預かっていて、その日持ってくるように言われていた「何か」のことについて白状する気はなかったので、結局隠していたことがばれて追われる身に。
一方、Noetic Science(認知心理学・超心理学)の研究者であるピーター・ソロモン氏の妹キャスリン・ソロモンにもマラークの魔の手が伸びていきます。彼女はスミソニアン博物館支援センター(SMSC)にある自分の研究室を間一髪で逃れてラングドンと合流することに。
怖いと言えば、やはりこの犯人のマラークの全身刺青という外見もさることながら、その思い込みの激しさ、人を殺すのに躊躇しないところなど、まさしく狂人キャラで、サスペンス度を上げるのに貢献しています。実はかわいそうな人なんですがね。。。
興味深いと言えば、最先端の科学研究であるというNoetic Scienceが古の神秘の問いかけと繋がっているということと、ワシントンの建造物に隠されている象徴的な意味でしょうか。ただ、そのあたりの蘊蓄を詳述するためだけに、事件解決後のエピローグが長引かされている印象も否めず、途中でちょっと飽きてきてしまいました。