徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

ドイツ情報、ヨーロッパ旅行記、書評、その他「心にうつりゆくよしなし事」

ベートーベンオーケストラ&五嶋みどり ボン公演・マチネ(2017年11月12日)

2017年11月12日 | 日記

今日は友達と一緒にベートーベンオーケストラと五嶋みどりのマチネ公演に行って来ました。 
会場はボンのオペラハウス。残念ながらちょっとちゃっちい建物です。まあ人口30万人余りの地方都市に豪華なオペラハウスを期待する方が間違ってるのでしょうけど。

プログラムはチャイコフスキーのバイオリンコンチェルト・ニ長調、op. 35とショスタコヴィッチのシンフォニー6番・ロ短調、op. 54。

Pjotr Iljitsch Tschaikowski (1840-1893)

Konzert für Violine und Orchester D-Dur op. 35

Allegro moderato
Conzonetta. Andante
Finale. Allegro vivacissimo

Dmitrij Schostakowitsch (1906-1975)

Sinfonie Nr. 6 h-Moll op. 54

Largo
Allegro
Presto

指揮者はディルク・カフタン(Dirk Kaftan)。

五嶋みどりさんは世界的に有名なバイオリニストですが、今週末はボンの老人ホームや学校などを3件回って小規模コンサートをベートーベンオーケストラと共にこなし、最後の日曜日にこの11時のマチネコンサートで締めくくるというかなり地味な活動もこまめにこなしていらっしゃるらしいです。「音楽が人々を結びつける。」「経済的な理由などで音楽になじみのない人々に音楽を届ける」というのが彼女の哲学だそうです。国連平和大使を勤めてらっしゃったこともあり、音楽教育にも熱心で、素晴らしい生き方ですね。

私は彼女のライブは今回が初めてで、チャイコフスキーのソロパートが始まった途端になんだか涙が出てきました。どう感じてそうなったのかよく分からず、心と体が勝手に反応して、頭が置いてきぼりを食らったみたいな感じでした。非常に深みのあるブレない音で、素晴らしい演奏でした。高音のフラジョレットの繊細さ、重音の安定した深み、ピチカートの余韻を残す広がりなどどれも素晴らしい技術と表現力ですが、特に低音域の深みと厚みが感動的でした。
30年くらい前にボン近郊のローランズエックというところで彼女の演奏を聞いて感動したという友人も今日隣で同じように泣いちゃってたみたいです。

最前列の席だったため、みどりさんの演奏する時の表情やジェスチャーの細かいところまでよく見られて、つくづくこの方は全身で演奏する方なんだなと思いました。非常に小柄な方ですが、迫力があり、まるでバイオリンを弾きながらダンスでもしているようなパフォーマンスをします。そのジェスチャーの多い演奏法は非常に独特ですね。特にバイオリンの授業では、少なくとも演奏技術の基礎を習得するまでは、体を動かさないように指導されるので、その逆を行く彼女の演奏法には新鮮な驚きを感じました。

このマチネは面白い趣向で、チャイコフスキーとショスタコヴィッチの間に休憩が入らず、代わりに指揮者のディルク・カフタンと後藤みどりさんの対話があり、カフタン氏がみどりさんにインタビューして、お客さんに彼女のことを良く知ってもらうというものでした。みどりさんは話し出したら止まらないタイプのようで、非常に素晴らしく分かりやすい英語で彼女にとって音楽とは何かとか、なぜ地味な活動をするかなどについて延々と語っていて、カフタン氏が「それ全部、私がドイツ語に訳さなきゃいけないこと考えてください」とブレーキをかけなければならない程でした(笑)

この対話の後に、今度はカフタン氏が一人でショスタコヴィッチのシンフォニー6番について説明しました。曲の予告では「春」「喜び」「若さ」を表現するものということだったのに、実際の音楽は葬送曲のようで、そこに隠されたメッセージとは何かについて考察するという趣向です。ショスタコヴィッチのシンフォニーには様々な作曲家のモチーフが引用されているそうで、その引用元(チャイコフスキー、マーラー、バッハ、ロッシーニのウイリアムテル序曲、レーニンの行進曲?)のモチーフとショスタコヴィッチのモチーフを数小節演奏して、聞き比べをさせてくれました。詳しいことは分かりませんが、この曲にはどうやらスターリン政権をこっそり皮肉って批判する意図が隠されているようです。いつ逮捕されるか分からないので、常に旅行鞄を別途の下に置いてすぐに逃げられるようにしてたというショスタコヴィチ。ウイリアムテル序曲からの引用はスイスの自由への憧憬を表していたのかもしれないそうです。

こうした政治的背景や曲に込められているものを説明された後で演奏を聴くのはまた非常に興味深いですね。ショスタコヴィッチのシンフォニーのバイオリンソロを演奏したコンサートマスターはみどりさんとは全然違うタイプの演奏家のようで、実に明晰な透明感の高い音でした。プログラムには名前は載っていませんでしたが、ベートーベンオーケストラのサイトによると、Liviu Casleanu という方のようです。貫禄のある体格なのでバイオリンがおもちゃのように小さく見えるのがちょっと笑いを誘うのですが、演奏は素晴らしかったです。

帰りに中華レストランで飲茶を頂きました。マルクト広場にある広東料理レストラン「Dim Sum」というところで、初めて入りました。同じ場所にあった違う中華レストランには何度か入ったことありましたが、持ち主と店名が変わってからは行ったことありませんでした。というか、店名が変わったことは今日初めて知ったのですけど。飲茶を出す中華レストランは珍しいので、嬉しいです。
 

 

トリップアドバイザーの口コミを読むと、いくつか酷い評価があり、飲茶の種類は多くても冷凍ものを温めているだけじゃないかというコメントもありましたけど、どうなんでしょうね。私たちは結構おいしいと思いましたけど。ものによっては出来合いの冷凍食品という可能性は無くはないと思います。本来飲茶は手間のかかるものなので、ある程度の種類を揃えるにはそういうものを利用せざるを得ないのかも知れません。

ダンナと私がよく行く比較的近所の中華レストランでは6・7品くらいしか天心の種類がなくて、出てくるまでに結構時間がかかり、手作り感が高いです。いや、でした、かな。ついこの前行った時は味が落ちていたので。。。

閑話休題。

 

久々に楽しい休日でした。天気はどんよりとして雨が降ったりやんだりで、日中最高気温が5℃程度という寒さでアレでしたが。。。

そういえば昨日(11月11日)からまた第五シーズン(カーニバル)が始まったのですね。土曜日だったのでいつもより人出が多かったようです。