徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

ドイツ情報、ヨーロッパ旅行記、書評、その他「心にうつりゆくよしなし事」

書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝 十一 其の才、花と共に発くを争うことなかれ』(ビーズログ文庫)

2021年11月21日 | 書評ー小説:作者ア行

『茉莉花官吏伝』の最新刊が出ていたので早速購入して一気読みしました。😊 
ラノベは軽く読めていい気晴らしになりますよね。

さて、『茉莉花官吏伝』のヒロイン・茉莉花はこれまで無理難題をいくつも乗り越え手柄を立てて、破竹の勢いで出世しているため、嫉妬という名の“やっかいごと”に巻き込まれないよう皇帝・珀陽が次に出した課題は「絶対に失敗する任務」で、山に囲まれたバシュルク国への潜入捜査です。その首都トゥーリは難攻不落な要塞都市として知られており、いざという時は外側(アオセン)を切り捨てて内側(イネン)に籠れるように設計されています。外国人に対して鷹揚で、外側ならば比較的自由に外国人の出入りができるものの、立てこもるための要塞機能を持つ内側はどんな間諜でも手に入れられなかった機密情報であり、情報管理は徹底しているという。茉莉花の任務はそうした機密情報を掴み、首都攻略の方法を探るというもの。
この任務のため、茉莉花は以前恩を売っておいた赤奏国で戸籍を作り、サーラ国でジャスミン・ラクテスとしての滞在記録を偽造してもらい、「内乱や戦争のせいでその両国にいられなくなって仕方なく異国人でも入れるというバシュルク国の傭兵学校で勉強するよう知人に勧められた」という設定で傭兵学校への潜入に成功し、順調に優秀さを認められて進級していきますが、想定外の事態に巻き込まれて「次巻に続く」になります。
「え、もう終わり?」という物足りなさが残ってしまう感じですね。

ところで、外側(アオセン)はドイツ語の außen、内側(イネン)は innen だということにだいぶ後になって気づきました。「バシュルク」という国名も何かドイツ語と縁のあるものからもじったものなのでしょうか。山に囲まれ資源に乏しいという国のイメージからすると、スイスがモデルになっているように思えます。だからドイツ語の単語をほんの少し採用したのでしょうか。他にも「ユール」という冬の祝祭に言及されており、これは北欧起源のお祭りで、やはりゲルマン系と言えるので、古代ゲルマン風のファンタジー世界観が構築されているようです。
漢字+カタカナで表記されたドイツ語単語は、アルファベット表記に馴染んでいる私にはある意味新鮮でした。


『茉莉花官吏伝 十一 其の才、花と共に発くを争うことなかれ』をAmazonで購入する。またはHontoで購入する

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

茉莉花官吏伝

書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝 皇帝の恋心、花知らず』(ビーズログ文庫)

書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝 2~ 百年、玉霞を俟つ 』(ビーズログ文庫)

書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝 3 月下賢人、堂に垂せず』(ビーズログ文庫)

書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝 4 良禽、茘枝を択んで棲む』(ビーズログ文庫)

書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝 5 天花恢恢疎にして漏らさず』 (ビーズログ文庫)

書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝 6 水は方円の器を満たす 』(ビーズログ文庫)

書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝 7 恋と嫉妬は虎よりも猛し 』(ビーズログ文庫)

書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝 8 三司の奴は詩をうたう 』(ビーズログ文庫)

書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝 9 虎穴に入らずんば同盟を得ず』(ビーズログ文庫) 

書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝 10 中原の鹿を逐わず』(ビーズログ文庫)


十三歳の誕生日、皇后になりました。

書評:石田リンネ著、『十三歳の誕生日、皇后になりました。 』(ビーズログ文庫)

書評:石田リンネ著、『十三歳の誕生日、皇后になりました。 2』(ビーズログ文庫)

書評:石田リンネ著、『十三歳の誕生日、皇后になりました。3』(ビーズログ文庫)

書評:石田リンネ著、『十三歳の誕生日、皇后になりました。4』(ビーズログ文庫)

書評:石田リンネ著、『十三歳の誕生日、皇后になりました。5』(ビーズログ文庫)


おこぼれ姫と円卓の騎士

書評:石田リンネ著、『おこぼれ姫と円卓の騎士』全17巻(ビーズログ文庫)